《後輩は積極的》第37話
*
風呂から上がった俺達は、部屋に戻ってこれから何をするかの相談をしていた。
「で、どうする?」
「どうするって、溫泉街を見て周りましょうよ」
「いやぁ……そうじゃなくて……この旅行って未年も居るでしょ?」
「そうですけど?」
「酒飲んでも良いよね?」
「え? こんな真っ晝間からですか?」
店長の言葉に俺は驚く。
てか、店長ってお酒好きなんだ……。
「いや、未年も居るから皆の意見を聞こうと思って、こう見えても俺、結構酒好きでさ……」
照れながら言う店長。
まぁ、確かに俺もどちらかと言うと飲めた方が嬉しい。
バイト先の人と飲み會なんてしたこと無いから、こう言う機會に一緒に飲んでみたい。
「飲んでも良いですけど、夕方まで待って下さいよ、流石に晝間っからは……」
「それもそうだね、確か近くのお店に酒店もあったし、夕方飲む用に買ってこうようかな」
店長はすっかりお酒の事で頭がいっぱいのようだ。
とりあえず、陣がお風呂から上がるのを待って溫泉街に行くことになったが、なにぶんの浴は長い。
「トランプでもする?」
「そうだな」
「でも、何するっす?」
「大富豪とか?」
流れでトランプをする事になり、俺たちは陣が風呂から上がるまでトランプをする事にした。
大富豪を始めて10分ほど経ったところで、ようやく陣がお風呂から上がってきた。
「じゃあ、行こうか」
「そうね」
みんな集まり、俺たちは溫泉街を歩き始める。
始めてのバイト先での旅行。
楽しいはずなのだが、俺の隣の子校生は先ほどから、俺に厳しい視線を送って來ている。
「ま、実ちゃん?」
「なんですか?」
「あんまり睨まないでよ……」
「睨んでませんもん!」
そう言ってプイっとそっぽを向く実ちゃん。
最近わかってきた事だが、実ちゃんがこういうじで機嫌が悪い時は、なかなか機嫌を直さない。
「あ、実ちゃん。溫泉まんじゅう食べる?」
「太るから要りません」
「いやいや、普通に細いじゃん……」
「何ですか? 先輩は子高生のを見るのが趣味なんですか?」
「そうじゃねーよ! 一般論だ!」
食べで釣る作戦は失敗。
となると次は……。
「じゃあ、俺もう実ちゃんに近づかないから、皆と居るときは楽しそうにしててよ」
「え……」
俺はそう言って実ちゃんの側を離れる。
こういうときは、必要以上に関わらないのが一番だ。 変な事を言って余計にこじれても面倒だし。
そう思いながら、俺はし先を行く小山君達に合流しようとする。
しかし……。
「ん? えっと……どうしたの?」
実ちゃんが急に、俺の浴を握ってきた。
「べ、別に……機嫌は悪くないもん……」
いやいや、さっきまですげー悪かったじゃん。
まぁ、それを言ったらまたこじれるかもしれないし、ここは俺が大人になるか。
「そっか、じゃあ一緒に行くか?」
「……うん」
顔を真っ赤にさせて小さくうなずく実ちゃん。
こう言うところは可いのになぁ……。
俺はそんな事を思いながら、実ちゃんの橫を歩いて溫泉街を散策する。
「足湯まであるのか」
「でもさっき溫泉りましたよ?」
実ちゃんが機嫌が戻ったようで、いつも通りだった。
みんなでお土産屋に行ったり、晝ご飯を食べたり、あまりバイトメンバーでこんな経験をしないので、みんな結構楽しんでいた。
「小山さん! 木刀が! 木刀が売ってます!!」
「そうだね、そんなに珍しくないよ?」
「真嶋さん、俺ちょっとお酒買ってくるけど、今晩飲む?」
「私は……その……なんでも」
「雪ちゃーん、この髪飾りどうかな?」
「うん、とっても似合うよ」
晝飯を食い終わり、俺たちは自然と二人一組になって行するようになっていた。
店長は真嶋さんと今晩飲む飲みの買い出し。
小山君と安達君は、お土産屋を見に行き、椎名さんと雙海さんは仲良く髪飾りを見ている。
そして俺と実ちゃんは……。
「先輩、先輩!」
「何?」
「あの二人は不倫でしょうか?」
「いや、普通に夫婦だろ?」
茶屋の屋外席でお茶を飲んでいた。
「味しいですねぇ~このお茶」
「あぁ、買っていこうかな?」
先ほどまでの不機嫌さはどこへ行ったのか、今の実ちゃんは凄く穏やかだ。
「お団子も味しいですぅ~」
「太るよ?」
「えい」
「実ちゃん……痛いんだけど」
「の子のお腹は、甘いを食べても太らないようになってるんです!」
「何それ超便利。俺もしい」
俺と実ちゃんはそんな話しをしながら、茶屋でのんびりと過ごしていた。
「先輩」
「なんだ?」
「やっぱりみんなで來て正解ですね」
「そうだろう?」
「はい……すっごく楽しいです」
「なら良かった」
「でも……先輩と二人ならもっと……」
「ん? なんだって?」
「なんでも無いですぅー! それよりも寫真撮りましょうよ!」
「寫真? なんで?」
「記念です! 子高生とツーショットなんて羨ましがられますよ!」
「まぁ、良いけど」
「やった! じゃあいきますよぉー」
「どこから自撮り棒を……」
実ちゃんはどこからか出した、自撮り棒に自分のスマホを取り付ける。
「はい先輩笑って~」
「そう言われてもなぁ……ってか近すぎる、もっと離れて」
「えぇ~良いじゃ無いですかぁ~、先輩と私の仲でしょ?」
「どんな仲だよ……あんまり言いたく無いけど、當たってるの!」
「何がですが?」
「む……が……」
「え? あぁ、別にちょっとくらい良いですよ? 減るもんじゃないですし、なんならって見ます?」
「るか!」
いや、この子何を言ってるの!?
普通そこは恥ずかしがるもんだろ!
俺はそんな事を考えながら、実ちゃんから距離を置く。
「なんで離れるんですか?」
「前々から実ちゃんに言いたかった事がある」
「ん? 急に何です?」
「君は男との距離が近すぎる!」
「そうですか?」
いや、そうだよ!
急に手を握ってくるし、くっついて來るし!
そんな事をしてたら、男は勘違いしてしまうぞ?
「でも私、先輩以外にこんな事しませんよ?」
「へ?」
「だって私、先輩以外の男の子と二人で食事とか行ったことないし、手も繋いだことありませんよ?」
「なんで俺だけ?」
「だって、先輩は先輩だし」
「いや、理由になってないよ……」
「先輩は良いんです! ほら、早く撮りましょうよ!」
「だから近いって!」
グイグイと俺にくっついて來る実ちゃん。
仕方なく俺は実ちゃんとくっついて寫真を撮る。
「あ、これ良いですね。私の待ちけにしよ」
「いや、そういうのって彼氏と撮って待ちけにするもんでしょ?」
「じゃあ、學校の皆には先輩が彼氏だって言います」
「どんな噓だよ……」
見栄を張るにしても微妙過ぎる。
どうせなら小山君と寫真でも撮って、これが彼氏って言えば良いのに……。
「はぁ……実ちゃんは本當に……」
「本當に?」
「俺をからかうのが好きだね」
「………好きなのはからかう事じゃ無いし……」
「ん? なんか言った?」
「なんでも無いです! すいませーん! お茶おかわり下さい!」
「まだ飲むの……」
俺と実ちゃんはその後しばしゆっくりした後、皆と合流して旅館に戻った。
*
「え? 卓球?」
「はい! 先輩やりましょう!」
旅館に戻ってし休んだ後、実ちゃんが突然やってきて俺にそう言った。
「良いね、みんなでやる?」
「良いっすね! 俺もしたいっす!」
「ですよね! 皆さんも一緒に行きましょう!?」
実ちゃんの一言で、皆で卓球をする事が決定し、俺たちは付に斷って、卓球臺とラケットを借りて卓球を始めた。
「さて、どうせならトーナメント形式でやらない? 丁度八人だし」
「良いっすね! じゃあ、対戦表作りますか!」
話しはどんどん進み、トーナメント表が出來上がる。
「じゃあ1回戦は! 小山さんと雪ちゃん!!」
司會兼審判は雙葉さんだ。
「えっと……よ、よろしくお願いします!」
「お手らかにね」
爽やかな笑顔でそういう小山君。
しかし、試合が始まると……。
「えっと……11対0で小山さんの勝ちぃぃぃ!!」
「大人げねぇ……」
「小山さん酷いっすね」
「フフッ、遊びでも本気でやらないとね」
「うぅ……強いですぅ……」
小山君の事だから、手加減するのかと思ったが……メッチャ本気だった。
と言うわけで、一回戦は小山君の勝利。
続く二回戦は、安達君と店長だ。
「店長! 手加減しませんよぉ!!」
「俺、卓球ってしたこと無いんだよなぁ……」
「それでは行ってみましょう!! 試合開始!!」
二回戦は安達君対店長。
この試合はなかなか良かった。
二人のレベルが同じくらいだったので、かなり良い試合だった。
結果は13対11で店長の勝利だった。
「なかなか楽しかったね」
「て、店長強いっす……」
続く第二試合は、真嶋さんと雙海さんだったのだが……。
「あ! 私はいいやぁ~、審判だし!」
と言う理由で、雙海さんが棄権したので、真嶋さんの不戦勝。
そして、ついに俺の番がやってきた。
対戦相手は……。
「先輩! 手加減しませんよぉー!」
実ちゃんだ。
まぁ、力勝負で実ちゃんに負ける事は無いとは思うし、しくらい手加減しないと後がうるさそうだ。
「先輩! ただやるんじゃ面白くないので、負けたら罰ゲームをしませんか?」
「え? 罰ゲーム?」
「負けた方が勝った方の言うことを何でも聞くってのはどうですか!」
「えぇ……やだよ」
「なんでですか! もしかして私に負けるのが怖いんですか?」
「あぁ、怖いよ」
「即答!?」
正直本當に怖い。
実ちゃんがこんなに自信満々に言うときは、何かしら理由がある。
負けたら、また買いに付き合わされたりするに決まっている。
それに、別に実ちゃんに頼みたい事もないし。
安全策を取るのが一番良い。
「なんでですかぁ! やりましょうよぉ~」
「嫌だよ……何か裏がありそうだし、俺は別に実ちゃんに命令したい事も無いし」
「エッチなお願いも出來ますよ?」
「バイト仲間がこんなに居る中でそんなお願いしないよ……」
「むぅ~、つまんないなぁ……」
「なんとでも言え」
実ちゃんの意見を卻下し、俺と実ちゃんの試合は普通に始まった。
「えい!」
「ほい」
「たぁ!」
「ほい」
「あっ………」
「岬さん一點です!」
「もぉ! 真面目にやって下さいよ!!」
「やってるって」
実ちゃんは結構上手かった。
しかし、きが大きすぎてスキが多すぎる。
だからか、點を取るのは難しくない。
だが……。
「おっと……」
「やったぁぁ!」
「実ちゃんに一點です!!」
點數を取られてしまった。
そう、點數を取ることは簡単なはずなのだが……俺は実ちゃんの大きなきのせいで、逆にピンチにもなっていた。
その理由は、実ちゃんがく度に浴がしズレて、の谷間がチラチラ見えるのだ。
そのせいで、ボールに完全に集中出來ない。
「9対8です! 岬さんはあと一點で勝ちですよ!」
「絶対負けないですからね!」
「はいはい」
そんな事は言っても、先ほどから実ちゃんのおっぱいが気になって仕方ない。
いや、気になってではない。
ただ単にラッキーだと思っている。
だから、このラッキーを続ける為に俺は……。
「ほい」
「たぁ!」
「よっと」
「えい!」
長くラリーを続ける。
そうすれば、実ちゃんの揺れる谷間を眺めていられる。
いや、確かに実ちゃんにとかはしないよ?
でも男なら見ちゃうよね?
「あ、やべ!」
「わーい! これで同點だぁ!!」
「しまったなぁ……」
実ちゃんのおっぱいを見過ぎて、同點になってしまった。
これはまずい……。
やるからにはどうせなら勝ちたい。
今度は本気でやろう。
そう決めて、俺はサーブを打った、しかし……。
「わーい! 先輩に勝ったぁ!」
「まさか負けるとは……」
結局俺も男だったと言うことだろう……実ちゃんのおっぱいから目を離す事が出來なかった。
「私のおっぱいばっかり見てるからですよぉ~だぁ!」
「そうだな………ん? 今なんて?」
「私のおっぱいばっかり見てるから、負けるっていったんですよ?」
「知ってたの?」
「はい、途中から先輩、ボール見ないで私のおっぱい見てましたもん」
やっべ……死ぬほど恥ずかしい……。
俺は自分の顔が熱くなるのをじる。
小山君と安達君は、俺の事をおっぱい星人と呼んでからかっている。
「き、気がついてるなら言えよ!」
「言ってもよかったんですか?」
「いや……それは……ちょっと」
「私のおっぱいそんなによかったですか?」
「黙れ!」
「あうっ! 自分が悪い癖にぃ~」
俺は、からかってくる実ちゃんの頭にチョップをかます。
八つ當たりなのは自分でもわかっている。
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