《後輩は積極的》第37話

風呂から上がった俺達は、部屋に戻ってこれから何をするかの相談をしていた。

「で、どうする?」

「どうするって、溫泉街を見て周りましょうよ」

「いやぁ……そうじゃなくて……この旅行って未年も居るでしょ?」

「そうですけど?」

「酒飲んでも良いよね?」

「え? こんな真っ晝間からですか?」

店長の言葉に俺は驚く。

てか、店長ってお酒好きなんだ……。

「いや、未年も居るから皆の意見を聞こうと思って、こう見えても俺、結構酒好きでさ……」

照れながら言う店長。

まぁ、確かに俺もどちらかと言うと飲めた方が嬉しい。

バイト先の人と飲み會なんてしたこと無いから、こう言う機會に一緒に飲んでみたい。

「飲んでも良いですけど、夕方まで待って下さいよ、流石に晝間っからは……」

「それもそうだね、確か近くのお店に酒店もあったし、夕方飲む用に買ってこうようかな」

店長はすっかりお酒の事で頭がいっぱいのようだ。

とりあえず、陣がお風呂から上がるのを待って溫泉街に行くことになったが、なにぶん浴は長い。

「トランプでもする?」

「そうだな」

「でも、何するっす?」

「大富豪とか?」

流れでトランプをする事になり、俺たちは陣が風呂から上がるまでトランプをする事にした。

大富豪を始めて10分ほど経ったところで、ようやく陣がお風呂から上がってきた。

「じゃあ、行こうか」

「そうね」

みんな集まり、俺たちは溫泉街を歩き始める。

始めてのバイト先での旅行。

楽しいはずなのだが、俺の隣の子校生は先ほどから、俺に厳しい視線を送って來ている。

「ま、実ちゃん?」

「なんですか?」

「あんまり睨まないでよ……」

「睨んでませんもん!」

そう言ってプイっとそっぽを向く実ちゃん。

最近わかってきた事だが、実ちゃんがこういうじで機嫌が悪い時は、なかなか機嫌を直さない。

「あ、実ちゃん。溫泉まんじゅう食べる?」

「太るから要りません」

「いやいや、普通に細いじゃん……」

「何ですか? 先輩は子高生のを見るのが趣味なんですか?」

「そうじゃねーよ! 一般論だ!」

食べで釣る作戦は失敗。

となると次は……。

「じゃあ、俺もう実ちゃんに近づかないから、皆と居るときは楽しそうにしててよ」

「え……」

俺はそう言って実ちゃんの側を離れる。

こういうときは、必要以上に関わらないのが一番だ。 変な事を言って余計にこじれても面倒だし。

そう思いながら、俺はし先を行く小山君達に合流しようとする。

しかし……。

「ん? えっと……どうしたの?」

実ちゃんが急に、俺の浴を握ってきた。

「べ、別に……機嫌は悪くないもん……」

いやいや、さっきまですげー悪かったじゃん。

まぁ、それを言ったらまたこじれるかもしれないし、ここは俺が大人になるか。

「そっか、じゃあ一緒に行くか?」

「……うん」

顔を真っ赤にさせて小さくうなずく実ちゃん。

こう言うところは可いのになぁ……。

俺はそんな事を思いながら、実ちゃんの橫を歩いて溫泉街を散策する。

「足湯まであるのか」

「でもさっき溫泉りましたよ?」

実ちゃんが機嫌が戻ったようで、いつも通りだった。

みんなでお土産屋に行ったり、晝ご飯を食べたり、あまりバイトメンバーでこんな経験をしないので、みんな結構楽しんでいた。

「小山さん! 木刀が! 木刀が売ってます!!」

「そうだね、そんなに珍しくないよ?」

「真嶋さん、俺ちょっとお酒買ってくるけど、今晩飲む?」

「私は……その……なんでも」

「雪ちゃーん、この髪飾りどうかな?」

「うん、とっても似合うよ」

晝飯を食い終わり、俺たちは自然と二人一組になって行するようになっていた。

店長は真嶋さんと今晩飲む飲みの買い出し。

小山君と安達君は、お土産屋を見に行き、椎名さんと雙海さんは仲良く髪飾りを見ている。

そして俺と実ちゃんは……。

「先輩、先輩!」

「何?」

「あの二人は不倫でしょうか?」

「いや、普通に夫婦だろ?」

茶屋の屋外席でお茶を飲んでいた。

味しいですねぇ~このお茶」

「あぁ、買っていこうかな?」

先ほどまでの不機嫌さはどこへ行ったのか、今の実ちゃんは凄く穏やかだ。

「お団子も味しいですぅ~」

「太るよ?」

「えい」

実ちゃん……痛いんだけど」

の子のお腹は、甘いを食べても太らないようになってるんです!」

「何それ超便利。俺もしい」

俺と実ちゃんはそんな話しをしながら、茶屋でのんびりと過ごしていた。

「先輩」

「なんだ?」

「やっぱりみんなで來て正解ですね」

「そうだろう?」

「はい……すっごく楽しいです」

「なら良かった」

「でも……先輩と二人ならもっと……」

「ん? なんだって?」

「なんでも無いですぅー! それよりも寫真撮りましょうよ!」

「寫真? なんで?」

「記念です! 子高生とツーショットなんて羨ましがられますよ!」

「まぁ、良いけど」

「やった! じゃあいきますよぉー」

「どこから自撮り棒を……」

実ちゃんはどこからか出した、自撮り棒に自分のスマホを取り付ける。

「はい先輩笑って~」

「そう言われてもなぁ……ってか近すぎる、もっと離れて」

「えぇ~良いじゃ無いですかぁ~、先輩と私の仲でしょ?」

「どんな仲だよ……あんまり言いたく無いけど、當たってるの!」

「何がですが?」

「む……が……」

「え? あぁ、別にちょっとくらい良いですよ? 減るもんじゃないですし、なんならって見ます?」

るか!」

いや、この子何を言ってるの!?

普通そこは恥ずかしがるもんだろ!

俺はそんな事を考えながら、実ちゃんから距離を置く。

「なんで離れるんですか?」

「前々から実ちゃんに言いたかった事がある」

「ん? 急に何です?」

「君は男との距離が近すぎる!」

「そうですか?」

いや、そうだよ!

急に手を握ってくるし、くっついて來るし!

そんな事をしてたら、男は勘違いしてしまうぞ?

「でも私、先輩以外にこんな事しませんよ?」

「へ?」

「だって私、先輩以外の男の子と二人で食事とか行ったことないし、手も繋いだことありませんよ?」

「なんで俺だけ?」

「だって、先輩は先輩だし」

「いや、理由になってないよ……」

「先輩は良いんです! ほら、早く撮りましょうよ!」

「だから近いって!」

グイグイと俺にくっついて來る実ちゃん。

仕方なく俺は実ちゃんとくっついて寫真を撮る。

「あ、これ良いですね。私の待ちけにしよ」

「いや、そういうのって彼氏と撮って待ちけにするもんでしょ?」

「じゃあ、學校の皆には先輩が彼氏だって言います」

「どんな噓だよ……」

見栄を張るにしても微妙過ぎる。

どうせなら小山君と寫真でも撮って、これが彼氏って言えば良いのに……。

「はぁ……実ちゃんは本當に……」

「本當に?」

「俺をからかうのが好きだね」

「………好きなのはからかう事じゃ無いし……」

「ん? なんか言った?」

「なんでも無いです! すいませーん! お茶おかわり下さい!」

「まだ飲むの……」

俺と実ちゃんはその後しばしゆっくりした後、皆と合流して旅館に戻った。

「え? 卓球?」

「はい! 先輩やりましょう!」

旅館に戻ってし休んだ後、実ちゃんが突然やってきて俺にそう言った。

「良いね、みんなでやる?」

「良いっすね! 俺もしたいっす!」

「ですよね! 皆さんも一緒に行きましょう!?」

実ちゃんの一言で、皆で卓球をする事が決定し、俺たちは付に斷って、卓球臺とラケットを借りて卓球を始めた。

「さて、どうせならトーナメント形式でやらない? 丁度八人だし」

「良いっすね! じゃあ、対戦表作りますか!」

話しはどんどん進み、トーナメント表が出來上がる。

「じゃあ1回戦は! 小山さんと雪ちゃん!!」

司會兼審判は雙葉さんだ。

「えっと……よ、よろしくお願いします!」

「お手らかにね」

爽やかな笑顔でそういう小山君。

しかし、試合が始まると……。

「えっと……11対0で小山さんの勝ちぃぃぃ!!」

「大人げねぇ……」

「小山さん酷いっすね」

「フフッ、遊びでも本気でやらないとね」

「うぅ……強いですぅ……」

小山君の事だから、手加減するのかと思ったが……メッチャ本気だった。

と言うわけで、一回戦は小山君の勝利。

続く二回戦は、安達君と店長だ。

「店長! 手加減しませんよぉ!!」

「俺、卓球ってしたこと無いんだよなぁ……」

「それでは行ってみましょう!! 試合開始!!」

二回戦は安達君対店長。

この試合はなかなか良かった。

二人のレベルが同じくらいだったので、かなり良い試合だった。

結果は13対11で店長の勝利だった。

「なかなか楽しかったね」

「て、店長強いっす……」

続く第二試合は、真嶋さんと雙海さんだったのだが……。

「あ! 私はいいやぁ~、審判だし!」

と言う理由で、雙海さんが棄権したので、真嶋さんの不戦勝。

そして、ついに俺の番がやってきた。

対戦相手は……。

「先輩! 手加減しませんよぉー!」

実ちゃんだ。

まぁ、力勝負で実ちゃんに負ける事は無いとは思うし、しくらい手加減しないと後がうるさそうだ。

「先輩! ただやるんじゃ面白くないので、負けたら罰ゲームをしませんか?」

「え? 罰ゲーム?」

「負けた方が勝った方の言うことを何でも聞くってのはどうですか!」

「えぇ……やだよ」

「なんでですか! もしかして私に負けるのが怖いんですか?」

「あぁ、怖いよ」

「即答!?」

正直本當に怖い。

実ちゃんがこんなに自信満々に言うときは、何かしら理由がある。

負けたら、また買いに付き合わされたりするに決まっている。

それに、別に実ちゃんに頼みたい事もないし。

安全策を取るのが一番良い。

「なんでですかぁ! やりましょうよぉ~」

「嫌だよ……何か裏がありそうだし、俺は別に実ちゃんに命令したい事も無いし」

「エッチなお願いも出來ますよ?」

「バイト仲間がこんなに居る中でそんなお願いしないよ……」

「むぅ~、つまんないなぁ……」

「なんとでも言え」

実ちゃんの意見を卻下し、俺と実ちゃんの試合は普通に始まった。

「えい!」

「ほい」

「たぁ!」

「ほい」

「あっ………」

「岬さん一點です!」

「もぉ! 真面目にやって下さいよ!!」

「やってるって」

実ちゃんは結構上手かった。

しかし、きが大きすぎてスキが多すぎる。

だからか、點を取るのは難しくない。

だが……。

「おっと……」

「やったぁぁ!」

実ちゃんに一點です!!」

點數を取られてしまった。

そう、點數を取ることは簡単なはずなのだが……俺は実ちゃんの大きなきのせいで、逆にピンチにもなっていた。

その理由は、実ちゃんがく度に浴しズレて、の谷間がチラチラ見えるのだ。

そのせいで、ボールに完全に集中出來ない。

「9対8です! 岬さんはあと一點で勝ちですよ!」

「絶対負けないですからね!」

「はいはい」

そんな事は言っても、先ほどから実ちゃんのおっぱいが気になって仕方ない。

いや、気になってではない。

ただ単にラッキーだと思っている。

だから、このラッキーを続ける為に俺は……。

「ほい」

「たぁ!」

「よっと」

「えい!」

長くラリーを続ける。

そうすれば、実ちゃんの揺れる谷間を眺めていられる。

いや、確かに実ちゃんにとかはしないよ?

でも男なら見ちゃうよね?

「あ、やべ!」

「わーい! これで同點だぁ!!」

「しまったなぁ……」

実ちゃんのおっぱいを見過ぎて、同點になってしまった。

これはまずい……。

やるからにはどうせなら勝ちたい。

今度は本気でやろう。

そう決めて、俺はサーブを打った、しかし……。

「わーい! 先輩に勝ったぁ!」

「まさか負けるとは……」

結局俺も男だったと言うことだろう……実ちゃんのおっぱいから目を離す事が出來なかった。

「私のおっぱいばっかり見てるからですよぉ~だぁ!」

「そうだな………ん? 今なんて?」

「私のおっぱいばっかり見てるから、負けるっていったんですよ?」

「知ってたの?」

「はい、途中から先輩、ボール見ないで私のおっぱい見てましたもん」

やっべ……死ぬほど恥ずかしい……。

俺は自分の顔が熱くなるのをじる。

小山君と安達君は、俺の事をおっぱい星人と呼んでからかっている。

「き、気がついてるなら言えよ!」

「言ってもよかったんですか?」

「いや……それは……ちょっと」

「私のおっぱいそんなによかったですか?」

「黙れ!」

「あうっ! 自分が悪い癖にぃ~」

俺は、からかってくる実ちゃんの頭にチョップをかます。

八つ當たりなのは自分でもわかっている。

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