＊

「ん！　味しいなこの料理！」

「確かに味しいっすねぇ～」

卓球を終え、現在俺たちは晩飯を食べていた。

結局卓球は店長が優勝して終了した。

俺は卓球の後、みんなから「おっぱい星人」と言うあだ名を付けられた。

正直もう死にたい……。

「先輩、先輩」

「ん？　どうした？」

俺が食事をしているお、急に橫から実ちゃんが話し掛けてきた。

「はい、あーん」

「え？　いや、なんで……」

実ちゃんはそう言いながら、俺の方に箸を向けてくる。

「なんとなくです、食べさせてあげます」

「いや、自分で食えるし」

「まぁまぁ、遠慮せずに」

「いや、良いって」

俺は無視して食事を続ける。

そんな俺の態度が気にらなかったのか、実ちゃんは頬を膨らませて、俺に向けていた箸を自分の口元に持って行く。

「折角私が優しくあーんしてあげたのに！　先輩これで一生の子にあーんして貰えませんよ？」

「そんな未來を俺は信じない」

そう言いながら俺は食事を続ける。

一何がしたいのか……。

俺がそんな事を思っていると、今度は目の前の席の小山君が、俺にビール瓶を差し出してくる。

「岬君もどう？　味しいよ」

「あぁ……じゃあしだけ」

俺はコップを手に取り、小山君からビールを注いでもらう。

自分で言うのもなんだが、俺はお酒は強い方だ。

記憶もしっかり殘るし、あまりフラフラにもならない。

しかし、あまり飲み過ぎると直ぐに寢てしまう傾向がある。

俺はビールを一気に飲み干す。

「ぷはぁぁぁ！　うめぇな！」

「あんまり酔っ払っちゃダメだよ？　未年も居るし」

「それは小山君もだろ、それ何本目だよ」

小山君は既に缶ビール日本と瓶ビール一本を飲んでいる。

なんでも小山君はビール黨らしく、最初から最後までずっとビールらしい。

ちなみに俺はビールは最初の一杯で終了だ。

なので二杯目は自的に缶酎ハイになる。

「先輩、酔っ払って私を襲っちゃダメですよ？」

「安心してよ、酔っ払っても実ちゃんは無いから」

「それはどう言う意味ですか？」

「いだだだだ！！　ごめん！　ごめんって！」

実ちゃんは俺の脇腹を思いっきり抓る。

一応安心させるために言ったのだが、逆効果だった様子だ。

とは言っても、俺は本當に酔わない。

友人と酒を飲みに行っても、し口か數が多くなる程度だ。

小山君もそこまで酔っているじはしない、問題は……。

「てんちょ～じきゅう上げて～」

「ま、真嶋さん……飲み過ぎ……」

既に酔っ払ってしまっている真嶋さんだ。

顔を真っ赤にし店長に絡んでいる。

いつもの真嶋さんでは、絶対にありえない様子だった。

浴も著崩れており、しセクシーなじになっている。

対する店長は、真嶋さんがそんなじだからか、あまりお酒が進んでいない。

「じきゅうあげろよぉ～この雇われ店長！」

「ま、真嶋さん……酔いすぎだよ」

「ん？　よってないよぉ？」

「酔っ払ってますよ、しお水飲んで下さい」

「ん……おしゃけが良いです……」

「ダメだよ、ほらし酔いを覚まさないと」

「じゃあ、おそといく……」

「え？　外？」

真嶋さんは真っ赤な顔でそう言い、店長の袖を摑んでそういう。

なんと言うか……いつも大人っぽい人が、子供っぽい事を言うと可いな……。

「先輩」

「ん？」

「今、真嶋さんの事可いとか思いました？」

「もちろん」

「えーい」

「だから脇腹はイダダダダ！！」

なぜか知らないが脇腹を抓られてしまった。

俺と実ちゃんがそんな事をしている間に、店長は真嶋さんを連れて外に出て行こうとしていた。

「ごめん、ちょっと真嶋さんを介抱してくる」

「ん～てんちょ～早くいこ………」

「わかったから……じゃ、ちょっと行ってくるね」

「了解です」

店長はそう言うと、真嶋さんを連れて外に行った。

殘った俺たちがは料理を楽しみつつ、雑談をしていた。

俺は小山君と安達君と酒を飲みながら、バイトの話しをしていた。

もちろん安達君の飲みはジュースだ。

「岬さんのポテトの塩加減丁度良いですよね」

「そう言う安達君は塩振り過ぎだって」

「でも、忙しくなると振り過ぎちゃうよね～」

話しはバイトあるあるだ。

あの常連が最近來ないとか、新作のハンバーガーがどうとか容はそんなじだ。

「それより岬君」

「ん？　何？」

俺が三杯目の缶酎ハイに手を掛けたのと同時に、小山君が聞いてくる。

「実ちゃんの事は本當になんとも思ってないの？」

「へ？　なんで？」

「そうっすよ、仲も良いし付き合えば良いのに」

「いや、なんて言うか……実ちゃんは妹みたいなじだしなぁ……」

実ちゃんは子高生同士で話しをしていて、一切こちらには気がついていない。

俺は酒のせいでしテンションが高く、思っている事を包み隠さず話す。

「確かにさ、実ちゃんは可いし……おっぱいも………」

「流石はおっぱい星人」

「安達君黙れ」

「すんません」

「えっと、話しを戻すけど……実ちゃんは可いよ、でも俺のこの可いは、の好きじゃないんだよ」

「そうなのかい？」

「あぁ、なんて言うか……実家の妹を見ているようっていうか……」

「わかった！　つまり岬君はシスコンなんだね！」

「どうしてそうなる？」

どうやら小山君は、酔い始めているようだ。

俺はそんな小山君を放って、実ちゃんの方を見る。　大きな瞳に綺麗な、は大き過ぎず小さくも無い。　手足もほっそりしていて、俺が同い年だったら確実に好きになっていたと思う。

「あの子はそのうち彼氏が出來るよ」

「だろうね、モテるし」

「この前もお客さんにナンパされてたっすよね？」

出會ったばかりの頃はし苦手なタイプだった。

しかし、話しをしていくうちに仲良くなっていき、今では一緒に買いに行く程の仲だ。

「ホント……可いよな」

遠くで笑う彼を見ながら、俺はぼそりと呟く。

そんな時だった、部屋の扉が急に開き、店長が帰ってきた。

背中には真嶋さんを背負っている。

「真嶋さん酔っ払って寢ちゃってから、陣の部屋につれて行きたいんだけど、鍵開けて貰って良いかな？」

「あ、じゃあ私が」

店長からそう言われ、椎名さんが立ち上がり、店長と共に部屋を出て行く。

「岬君、飲み買ってきてくれないか？」

「え？　有るだろいっぱい」

小山君の頼みに、俺は機いっぱいに置かれた酒とジュースの山を指さす。

「いや、お茶を買ってくるのを忘れちゃってね、買ってきてくれる？」

「あぁ、まぁいいか……ちょっと待ってて」

「ありがとう」

俺は小山君に言われ、財布を持って部屋を出る。

＊

「実ちゃん、実ちゃん」

「はい？　なんですか小山さん」

私が心桜ちゃんと話しをしていると、突然小山さんから話し掛けられた。

「今、岬君が飲みを買いにコンビニまで行ったから、追いかけてきな」

「え？　本當ですか」

「うん、二人きりになるチャンスだよ？」

小山さんにそう言われ、私は勢いよく立ち上がった。

「い、行ってきます！」

「うん、気おつけてねぇ～」

私は小山さんに見送られ、先輩を追いかけて部屋を出た。

先輩と二人きり！

小山先輩ナイス！

私はこの旅行中、先輩と二人きりになる瞬間を何度も狙っていた。

お晝に二人きりになった時も良い雰囲気になれたが、夜に二人きりと言うのは、雰囲気が全然違う。

「あ、いた！」

し歩いて私は先輩を発見した。

「先輩！」

「うぉ！　ま、実ちゃん？　どうしたの？」

私は先輩の背中を叩き、先輩に聲を掛ける。

先輩は先ほどからお酒を飲んでおり、しお酒の匂いがした。

「私もコンビニ行きますぅ～」

「あぁ、そういうことね……夜だから足下気を付けるんだよ」

「私は先輩に危険をじちゃいます」

「なんで？」

「酔っ払った先輩が、私を襲っちゃわないか……」

「安心してよ、絶対無いから」

「むぅ……」

私は頬を膨らます。

別に私は先輩になら襲われても良い。

確かにお酒の勢いとかは嫌だが、お酒がっているのに、絶対無いとまで言われるのはなんだかムカつく。

「本當に絶対襲いませんか？」

「襲わないって」

「じゃあ、こんな事してもですか？」

「うわっ！」

私は先輩の背中に抱きつき、自分のを先輩の背中に押し當てる。

正直結構恥ずかしい。

でも、しでも先輩に私を意識してしい。

しかし……。

「歩きにくいからやめて」

「先輩、ちゃんと付いてます？」

「何が？」

本當にこの人は何なのだろう？

人が恥ずかしがりながらしていると言うのに、まったくなびかない。

そんな先輩に私が若干イライラしていると……。

「ほら」

「え？　なんですか？」

先輩は私に手を差し出して來た。

「手、繋ごうよ」

「え？　え！？　い、いきなりなんですか！」

「いや、夜だしし坂になってるから、転ばないように」

「あぁ……知ってましたよぉ～」

いきなり手を繋ごうなんて言うからドキッとしたのに……。

私はしガッカリしながら先輩と手を繋ぐ。

先輩の手は大きくて暖かかった。

コンビニに向かう道は緩やかな下り坂になっており、し気を付けないと転んでしまう。

しかも夜と言うこともあって、足下が見にくい。

「先輩……」

「どうしたの？」

「先輩の手……暖かいですね」

「そうか？　実ちゃんの手が冷たいんだよ」

「彼氏とも手なんて繋いだ事ないのに……」

「彼氏居ないんだろ？」

「どうせ獨りですよぉ～」

「俺もだから気にすんなって」

コンビニに到著した私たちは、店にって目的のを探す。

繋がっていた手が離れてしまい、私はし寂しさをじた。

「えっと……お茶……お茶……お、あった」

「先輩、私アイス食べたいです」

「はいはい」

先輩は仕方なさそうなじで、私の持ってきたアイスをけ取り、そのままレジに持って行く。

「さて、帰ろうか」

「あ！　ちょっと待って下さい！」

「ん？　どうかした？」

「し、散歩して帰りませんか？」

「え？　あぁ良いけど……」

このままただ帰るだけでは、何も進展しない。

なんとしてでも先輩との仲を進展させたい。

「綺麗だよなぁ……」

「ふぇぇぇ！　い、いきなりなんですか！？」

「だって綺麗だろ？　この夜空」

「へ？」

いきなり綺麗なんて言うから、私は自分の事だと思って勘違いしてしまった。

ややこしいのよ！！

「先輩……もし私に彼氏が出來たら……嫌ですか？」

「え？」

このままでは、何も始まらない！

ここはし積極的にならなければダメだ！

私は先輩の橫を歩きながら、そんな事を尋ねる。

「うーん……本音を言うと……ちょっと嫌かな？」

「え！？　本當ですか？」

「なんで嬉しそうなの？」

この返答は結構嬉しい。

そうかぁ～、私に彼氏が出來たら嫌なのかぁ～。

私は口元が緩むのを堪えながら、先輩に尋ねる。

「な、なんでいやなんですか？」

「うーん……遊びとかえなくなるだろ？　それはし寂しいかな？」

「そ、そんなに私と遊びたいんですか？」

「まぁ、なんだかんだ言っても楽しいからね……」

「もぉ～先輩ったら～」

「機嫌良いね……」

そっか～、そんな風に思ってたんだぁ～。

お酒を飲んでいるせいか、今日の先輩はなんだか素直だ。

「それに、やっぱり可い子に彼氏が出來ると嫌かな」

「なんですかぁ～、私の事好きなんですか？」

「うん、好きだよ」

「え？　えぇぇぇぇ！？　い、今なんと？」

突然の先輩の告白に私は驚き聲を上げる。

「あぁ、もちろん友達としてね」

「あぁ……はいはい」

まぁ、そんな事だろうとは思いましたけどね……。

先輩と私は川の近くのベンチに座り、コンビニで買った飲みを飲んでいた。

「ほい、ジュース」

「ありがとうございます」

私は先輩からジュースをけ取る。

先輩も自分用に買ったお茶を取り出して、飲み始める。

私はそんな先輩の橫顔をジーッと見ていた。

私の好きな人、ずっと一緒に居たい人。

その人は鈍で、鈍くて、でも優しくて……。

そんな先輩が私は大好きだ。

「先輩……」

「今度はなんだい？」

先輩は私の問いかけに、口元を緩めながら尋ねる。

月明かりに照らされた先輩を見ながら、私は頬が熱くなるのをじる。

今日の先輩はなんだかいつも以上に格好良く思えてしまう。

なぜだろう、別に特別なにかあった訳ではないのに……。

そんな先輩の顔を見て私は言う。

「月が……綺麗ですね」

「ん？　あぁ、確かにそうだね」

「はい……」

この言葉の意味になんてきっと気がついていないだろう。

でも、今はそれで良い。

いつか、私は絶対に先輩の一番になってみせるのだから。

私はそんな事を思いながら、先輩の腕に抱きつく。

「お、おい……離れてくれよ……」

「嫌ですぅ～離れませ～ん」

「はぁ……いろいろ當たってるんだけど？」

「今日はサービスです」

「あのなぁ……」

「えへへ～」

こんな日常がいつまでも続けば良いのに。

願わくば、先輩と付き合う事が出來れば……。

END