4月の始業式まで、あと一か月。

寒い冬が終わり、桜が芽吹いている3月という春先。

まだ朝6時し過ぎだと謂うのに私は境の掃き掃除をしていた。

「ううっ……」

思わずを震わせる。

もう春先で普通は溫かいはずなのに、やっぱり明朝というのは冷えてしまう。

境を竹箒で掃除をしているとは言え、服裝は仕事著――巫服ということもあり、類の隙間から風がってくると溫を奪う。

本當は私服がいいのだけれど、參拝者が朝早くから來ないとも限らないから仕方ないのだ。

「はぁ……、私服ならコートとか羽織れば大丈夫なんだけど……」

一人呟きながら、私は參道を竹箒で掃く。

境に桜があるけれど、桜は散りやすいので見た目が悪い。

參拝者に神社を綺麗に見せる為には大変なのだ。

掃き掃除が終わったあとは、母屋に戻り自室で高校指定の紺のブレザーの制服に著替えてからエプロンをに付けて朝食の準備に取り掛かる。

朝食は、お母さんが死んでから私の當番だったから慣れたもので、臺所は違えど要點させ押さえればすぐにできるもので――、

朝食は、出巻き卵と大のお味噌、あとはご飯とアジの開きを焼いたモノと大おろし。

二人分の朝食を用意したあとは、雇い主である高槻さんを起こしにいく。

囲爐裏のある居間の隣――、そこが高槻さんの部屋。

襖を開けると、布団の上で寢ている男の姿が目にる。

「……」

その姿に私は首を傾げる。

今日、初めてお越しにきたのだけれど、何と言うか……。

「パジャマを著てない？」

――そう、布団の隙間から見えるのは分が多めで――、パジャマを著ているようには見えなかったから。

「いけない、仕事仕事」

家事は私の仕事の一つ。

きちんと起こさないと駄目。

「総司さん、朝ですよ。起きてください」

何度か聲をかけながらを揺さぶると、薄っすらと目を開けてボーッと私を見てくる。

私も高槻さんを見ていたので當然、見つめ合う形になるわけで――、

「朝食の準備が出來ました。もうすぐ7時ですので起きてください」

「そうか」

彼は、短く答えると布団から這い出る。

もちろん、その時に男のが見えてしまう訳だけど――、はすごく引き締まっていて何と言うか細マッチョ？　と、言ったじで……。

ちなみに幸いなことにパンツは穿いていたのでホッとをでおろす。

「……どうかしたのか？」

何かあったのか？　と、ばかりに高槻さんが話しかけてくる。

思ったよりもジーッと男の人の上半のを見ていたのかも知れない。

「――いえ！　何でもありません。朝食が出來ていますので、早く食べないと冷めてしまいます」

「そうか、わかった」

起床を確認したあとは、臺所から部屋へ食事を運ぶ。

二人分という事なので、そんなに手間ではなく用意が終わったころには、スーツ姿の高槻さんが姿を見せた。「いただきます」と朝食を摂り始めたところで、何の話もないのは流石に気まずいので、話題を振る事にする。