《嫁ぎ先の旦那様に溺されています。》一つ屋の下での事(8)
時が止まってしまったかのように大和と見つめ合う。
そんな中で、大和と一緒に境にきていた初老のが私に近づいてくると――、「參拝はいいかね?」と聞いてきたので、「はい」と返す。
本殿の前で何か願い事をしているのか、その姿を遠目で見ている私と大和。
「なあ……」
遠慮がちに大和が話しかけてくる。
それに対して、私は何も返す言葉を持っていないので黙することにする。
「なあってば!」
私が何の反応も返さなかったことが癇に障ったのかも知れない。
し強めに私に話しかけてくる彼。
「ここって、お前の家じゃないよな? たしか亡くなった神主さんの……高槻の爺さんの家だよな? どうして、そんなところでお前が居るんだ? しかも巫服まで著て」
「それは……」
「アルバイトをしているってじじゃないよな? お前、何を隠しているんだ? もしかして、あの婚約者ってのと関係があるのか?」
こういう時ばかり鋭いを働かせてくる大和に私は驚く。
なんて答えていいのか私は迷う。
彼に本當のことを話す訳にはいかない。
それは、高槻さんとの約束を違えることになるから。
それに何より、表面上は嫁ぐという事になっているから、それもバレてしまっては駄目。
しでも説明をすれば、そこから綻びが出來て破綻するかも知れない。
それなら……、いっそのこと。
「大和には関係ないでしょ……」
何も話さないのが誰も傷つかなくていい。
それが一番いいから。
「なんだよっ! それっ!」
想定していた答えと違っていたのかも知れない。
だけど、それしか大和には言えない。
「何か悩んでいるんじゃないのかよっ!」
「――ッ」
その言葉に、私はを噛みしめる。
言えることなら言っている。
だけど、約束を違えたら私は生活できなくなるし、何より大和に心配をかけさせたくない。
「……何も……、何も悩んでないから。だから、もう此処には來ないで……」
「莉緒……お前……」
「大和、どうかしたのかい?」
「ばあちゃん……」
「大和、朝は寒いし、階段は急勾配で降りるのが大変だから」
彼に、遠回しに早く帰ってと伝えると、ギリッと歯ぎしりが聞こえてくる。
すると、突然――、大和に腕を摑まれて――、
「そんな顔で! 何の問題もありませんって! 何だよ! 何なんだよ! そんなに、俺は頼りないのかよ! 何の説明も出來ないくらい俺は――」
すごく辛そうな表。
馴染のそんな顔を見るのは初めてで――、だからこそ……、ううん……だから! 私は大和には本當のことは言えないと決心する。
――これは、私の問題。
「私の家の問題に、他人が首を突っ込まないで」
「なん……だよ……。何なんだよ! 何で、そういう言い方をするんだよ!」
たぶん、私が頼ったら大和は助けてくれるかも知れない。
だけど、大和は學生で県大會を控えている。
余計な心労はかけたくない。
「大和は、剣道の県大會があるんでしょ? 私なんかに構っていたら駄目だよ」
大和の手を振りほどきながら、拒絶の意を示す。
「お前……」
「ほら、おばあちゃん待っているんだから。早く帰らないと駄目だよ」
「…………また來る」
「もう來ないで」
私の決心が鈍ってしまうから。
だから、ハッキリと告げる。
「…………分かった」
その言葉を聞いたと同時に、私はが強く強く締め付けられる。
大和が、階段を降りていく――、見えていた背中が小さくなっていく――、それに思わず駆け出して手をばしそうになった。
――だけど……。
「できるわけがない……じゃない……」
何時の間に泣いていたか分からない。
涙混じりの自分の聲が――鼓を揺さぶる。
もしも変わってしまうなら
第二の詩集です。
8 144【完結】苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族戀愛~
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下著泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 當たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏 24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以來、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 戀愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を與えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以來、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 表紙畫像 湯弐様 pixiv ID3989101
8 107お久しぶりです。俺と偽裝婚約してもらいます。~年下ワケあり生真面目弁護士と湯けむり婚前旅行~
☆甘辛こじらせ両片思い×偽裝婚約×溫泉旅行☆ 初戀の思い出を支えに生きる司書の葉月の前に、その相手・朔也が十四年ぶりに現れる。 美しく成長し弁護士となった彼は突然プロポーズ! だが、それは遺産を得るための偽裝婚約に葉月を加擔させるためだった。 葉月は朔也の家族旅行に同行し、婚約者を演じることになってしまう。 朔也は悲しむ葉月の唇を強引に奪ったかと思えば、優しくエスコートしてくれたり、他人の悪意から守ってくれたり。 戸惑う葉月だが、彼が何か秘密を隠していることに気づき、放っておけなくなって…。 クールなようで內面は熱くて真面目、そして若干ヘタレな年下弁護士 × 気弱なようで相手を想う気持ちは誰より強い司書 波亂ありですがわりと甘々な再會愛&初戀成就ストーリー。 隠しててもヒーローは最初からヒロイン大好き! 8/30に完結しました!
8 186脇役転生の筈だった
乙女ゲーム『エデンの花園』に出てくる主人公……の、友人海野咲夜。 前世の記憶というものを取り戻した咲夜はある未來のために奮闘する。 だって、だってですよ? この友人役、必ず死ぬんですよ? 主人公を庇って死んじゃうんですよ? ……折角の2度目の人生、そうそうに死んでたまるかぁぁぁ!! という思いから行動した結果、何故か私を嫌っている筈だった兄が重度のシスコンと化したり…。 何故か面倒事に巻き込まれていたり? (特にシスコン兄の暴走のせいですが) 攻略対象者とは近付かないと決めていたのに何故か友人になって…。 しかもシナリオとは違って同じクラスになってるし…!
8 119視線が絡んで、熱になる
大手広告代理店に勤める藍沢琴葉25歳は、あるトラウマで戀愛はしないと決めていた。 社會人3年目に人事部から本社営業部へ異動することになったが… 上司である柊と秘密の関係になる 今日も極上の男に溺愛される 「諦めろ。お前は俺のものだ」 本社営業部 凄腕マネージャー 不破柊 27歳 × 本社営業部 地味子 藍沢琴葉 25歳 本編 20210731~20210831 ※おまけを追加予定です。 ※他サイトにも公開しています。(エブリスタ)
8 107機甲女學園ステラソフィア
-スズメちゃんと一緒に人型兵器のある生活、はじめませんか?- 人型兵器がありふれた世界。 機甲裝騎と呼ばれるその兵器は交通、競技、戦闘と日常から戦場まで人の営みと同居している。 このマルクト神國にはそんな機甲裝騎を専門に扱う女學園があった。 通稱、機甲女學園とも呼ばれる國立ステラソフィア女學園―― そこに1人の少女が入學するところから物語は始まる。 今、1人の少女の數奇な運命が動き出した。 4年と1ヶ月と21日の連載を経て、機甲女學園ステラソフィアは完結しました。 今までありがとうございました!
8 175