《男がほとんどいない世界に転生したんですけど》告白
優馬が起きたのは雫が起きた時間とほぼほぼ同じだった。
──俺は意識を失っている時、ある夢を見た。
俺の事を転生させてくれた恩人と言える神様が俺の事を溫かいで生き返させてくれる夢。
よく意味のわからない…………が妙に記憶に殘る変な夢であった。
俺はゆっくりと目を開ける……目に映るのは、知らない天井。だけど、天國では無いと分かる。
を起こし、回りを見ると、どうやらここは病室らしいな。
ん………!?
頭を整理して、だいぶ冷靜になってくると………から冷や汗が大量に吹き出てくる。
……ッ!?え……っと、俺……は、助かったのか!?生きてるのか?
「よ、良かった………」
深い息を吐きながら、またベットに重を預ける。
自分のをペタペタとったり、かしたり、つねったり。々としてみたけど、痛い箇所は無いし、異常は無さそうだ。
「──お兄ちゃんるね……」
「──お母さんもるからね……」
すると、お母さんと茉優が俺の病室にってきた。
でも、2人ともやつれていて聲にハリが無い。
顔を見ると、目のクマがすごく、寢ていないと分かる。
「あ、お母さん、それに茉優……」
俺は笑顔で迎える。なんだか久しぶりに見た気がする2人の顔はどことない懐かしさを思い出す。
「「───っ!?」」
2人は俺を見た瞬間に、大粒の涙をポロポロと流し始める。そして、2人とも全速力で抱きついて來た。
「優くーんッ、優くん、優くん。心配したよぉぉぉ。起きてくれてよかったぁぁぁぁぁ!!!」
「お兄ちゃん。心配かけないでよぉぉぉ。お兄ちゃんがいなくなると思ってすごく怖かったよぉぉぉ。」
2人とも大號泣だ。それぐらい心配をかけたようだ。
「ごめんね、本當にごめん。心配かけた。」
そう言って2人の頭をでる。このも、言葉も、溫かさも……俺が生きているのをじさせてくれる。これが死を実することによって生じる生への強い執著か。
今起きたばっかりの俺のは、酷く重く、もっとお母さんと茉優を抱きしめ返してあげたいけど、優しい力で抱きしめ返すことしか出來なかった。
「──じゃあ、お母さんはお醫者さんを呼んでくるから安靜にして待っててね優くん。」
「あ、うん、よろしく。」
お母さんは、お醫者さんを呼びに病室を出て行った。
だけど、茉優はまだ俺に抱きついたまま離れない。
「お兄ちゃん。お兄ちゃん……っ。」
「何だい?茉優。」
「えへへ。またお兄ちゃんの聲が聞けて、幸せだなって思って。」
「はは、ありがとう。これからも、何度でも聞くことが出來るさ。」
デレデレに甘えてくる妹に嬉しさをじながら茉優の暖かい溫をいっぱいにじる。
「うん、よし。……まだ足りないけど、私も部活の先生に報告してくるからしだけ席を外すね。」
そう言って茉優も病室から出ていった。
2人共忙しいはずなのに……俺のために、ありがたい。
「……………………あ、雫!」
そういえば雫は無事なのか?
1人になって……雫の顔が頭に浮かんだのだ。
うーん。でも俺が無事だったのなら雫も多分、大丈夫なはずだろう。
もしかして同じ病院で院しているかも。
そうしだけ考え事をしていると、ドアが開きお母さんと茉優、それにお母さんが連れてきたお醫者さんがってきた。
お醫者さんはってきてすぐに、俺のをこと細かくチェックして、記憶の確認も行ったり、とにかく々な検査を行った。そして問題が無くピンピンしている事を確認して、皆が安心した所で……
俺のにどんな事があったのかを説明してくれた。
そして、「國に報告してきます」と言って病室から出ていった。
お醫者さんが話してくれた事を要約すると、俺のに毒が注され細胞が全て死滅する前に、解毒薬が使われたのが幸いで何とか助かったとの事だった。
なるほど、ということは雫が命の恩人なのかな?
考えたらそうなるよね。
毒牙 毒味……なんてあるはずが無いしな。
「優くん……」
「ん、どうしたの?」
さっきまで明るかったお母さんの表が急に暗くなった。
「優くんがこんなになったのって……1人のの子のためなんでしょう。かすみから聞いたよ。」
「……………うん。」
お母さんが言いたいことを何となく察し真剣に話を聞く。
「どうして……?」
「どうしてって……雫が危ない、だから助けに行く。ただそれだけだよ。」
雫の名前を出したのはしだけ不味かったかもしれないと思ったけど、俺がいた理由は本當にそれだけだった。
「でも……優くんは“男の子”なんだよ。もっと、もっと、自分を大切にして!お母さん……優くんと離れ離れになるなんて考えられないからね。」
瞳に涙を貯め、本気で心配してくれる。隣にいる茉優もお母さんと同じ表だ。
「うん。もちろん。分かってるよ。これからは…………気を付けるよ。」
2人は本気で俺の心配をしてくれているのだ。
その気持ちは十分に伝わった。
俺も……自覚しなければならないのだ。
この世界のことを……男の重要さを……
☆☆☆
お母さんと茉優は俺の著替えや勉強道などを持って來てくれるという事で……病室から出ていった。
茉優は出來る限り、俺と一緒にいたかったそうだが……お母さんに中學校へと強制的に連行されて行った。
「ふぅ……暇になっちゃったな。」
話し相手がいなくなったことで、急激に暇になる俺。スマホもどこかに行っちゃったし本當にやることが無い。
あ!そうだ、雫のお見舞いに行こう!
さっき、お醫者さんに雫の事を何となく聞いてみたら、同じ病院に院している事が分かった。
ここは特別な病棟だから男の俺が自由に歩いて問題無いそうだけど、俺が雫のいる一般病棟に行ったらそこではパニックが起こるだろう。
でも……そんなのはどうでも良かった。
俺は心の中で決めたことがある。このをすぐにでも雫に伝えたかったのだ。
俺はゆっくりとベットから立ち上がる。まだ、點滴を打っているため早くは移出來ないけど雫の元へはいつか辿り著けるだろう。
そんなノリで俺は病室を出るため、ドアを開ける。
「……っっ!?」
すると、突然のの子の聲。
……っ!?
「あ、あれぇっ……!?…………やぁ雫。お、おはよう。」
えっ!?えぇ!?
なんで目の前に、雫が!?
俺は相當揺した。だけど、なんとか顔だけは変えずに耐え、無難な挨拶をする。
ナイス耐久だ自分ッ!偉いぞ!
「……おはよう、優馬!」
あれ……?
雫は笑顔で明るく抱き著いてくる。
いつもの雫のじじゃない。
でも……この雫はなんだか好きだな。
俺は再び、今持てる全ての力を雫を抱きしめ返す力に使う。更に雫に會えたことでが抑えきれなくなり、雫の顔を見て「可い」と連呼してしまう。
雫も強く強く、抱きしめてくる。
それから暫く、その狀態が続いた。
「……………………っと。まず部屋にろうか。中にって、それから話そう……ね。」
數秒後、中々のヤバい狀況だと気付いた俺は顔を真っ赤にしながら言う。
「……うん。そうする。」
俺達は一旦離れ、2人共顔を真っ赤にした狀態で、俺の病室にる。俺はベットに、雫は近くの椅子に腰を下ろした。
「……………………………………」
「……………………………………」
無言の時間が場を支配する。
──何故なら、2人の頭の中には相當の“恥”があったからだ。
雫は優馬を見て舞い上がってしまい、いつもとは違う行をとってしまったこと。
優馬は雫を見てが抑えきれなくなってしまったこと。
それに……2人には共通で伝えたい事があった。
それで更に2人に恥としてプレッシャーを與える。
…………っ。いつまでも黙っててもしょうがない。俺から話を始めるとするか!そう思い、雫に聲をかけようとしたら……
「……優馬。」
俺よりも早く、雫が話し掛けてきた。
こういう場面では男の俺が積極的に話しかけないといけないのに……クソ、自分のヘタレが発してしまったとじた。
 「どうした、雫。」
「……話したい事があるの。」
雫はさっきのテンションとは真逆の暗く小さな聲で言ってきた。いつもの……いや、いつもの雫よりも暗い。
「……優馬って、毒牙先生から注を刺された後の記憶はある?」
「えぇ?えーっと………雫。まず聞きたいんだけど、解毒薬を使ってくれたのって雫なんだよね。」
雫の話したい事が俺の予想していたものとは大きく違かったもので、しだけ揺する。
「ええ。そうだけど。」
「そっか……ありがとうな。助かったよ。」
お禮を言う。本當に頭が上がらない。雫を助けに行ったのに俺が助からない人になる所だった。
「……優馬、それはこっちのセリフよ。優馬のおかげで私は無事でいられるんだから。本當にありがとう。」
「いやいや……」
と、話がしだけ線したので話を戻す。
……話を戻さないとまた自分のが制出來なくなるかもしれないと思ったからだ。
「それで、雫の質問に答えるけど。
俺が注されてからの記憶はほぼほぼ無いに等しいかな。」
注してすぐに効力を発揮する毒を作り上げた毒牙 毒味はやはりすごくてヤバいやつだった。
だから、注されてからの記憶はほとんど無かった。
「……そう。」
雫は俺の答えを聞き何故かホットしたようだった。なぜかは知らないけど。
「また、話が線しちゃうけど……毒牙 毒味ってあれからどうなったの?」
雫の次の次の次の次くらいには気になっていた事だ。雫がもし知っているなら教えてしい。
「……私もそこまでは知らないけど。
毒牙先生は警察に洗いざらい喋って、男の優馬を命の危険に曬したとすぐに罪を認めたそうよ。
それで、今は特別な刑務所に移送させられたらしい。」
そうだったんだ……って、あれ。
「俺の知る毒牙 毒味って、そんなじだったっけ?」
俺の知る毒牙 毒味は、自意識過剰、自己中心的思考の持ち主、薬品関係の天才、以外に能力が高いというじだ。
だから、警察の人達の質問には素直に答え無さそうだし、変な思想を語っているのかなーなんて勝手に思っていた。
「……まぁ、々あったのよ。」
「ふーん。まぁ、2人共無事だったんだからいっか。」
もう二度と會うことは無いのだ。俺が転生して初めての宿敵として……記憶の中に永遠に留めておこう。
「……そんな簡単にあんなすごい出來事を片付けるのね。やっぱり優馬は大ね。」
そう、雫から呆れられながら褒められた。
「じゃあ、2回目の線は終わり。雫の話に戻そう。で、結局雫は俺に何を聞きたかったの?」
「……っ。」
俺が雫に話を振ると……何故か顔を真っ赤にさせてモジモジとする雫。
「あー、もしかして俺が意識が無くなってる時に変なことしたんだろう!?そうだろ!例えばキスとか!」
俺は空気を明るいじに戻す為に、適當な冗談を言ってみた。
でも、言い終わってから気付く。
“キス”はないだろう!?と。
あれ……え……でも。雫の反応が…………さっきよりも明らかに赤面していて、今にも湯気が出そうなほどだった。
「キス?」
「…………………っ!?」
なるほどな……どうやら雫は“キス”という言葉に反応しているらしい。
ということは……雫は俺に?
「もしかして……しちゃったの?」
雫は無言で頷く。
えっ!?え!?俺のファーストキスの相手は………雫?
……………
俺は心の中で拳を高く高く、限界まで掲げガッツポーズをする。
おっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
今にもび転がり回りたい程に嬉しかった。
まぁ、雫の目の前だからそんなカッコ悪いことはしなかったけど。
「……で、で、でも、しょうが無かったんだよ。キスというか……口移しで解毒薬を飲み込ませなかったら優馬は死んでたんだから。」
「へぇー、そうやって飲ませてくれたんだ。」
俺はニヤつきながら答える。嬉しさが心の中から溢れ出てしまっているのだ。
だけど雫は涙目で、
「……ごめんなさい。嫌だった…よね。こんなにを奪われるなんて。」
「え、そんな訳ないけど?むしろ嬉しすぎるんだけど?」
ものすごく申し訳なさそうに答えた雫に対して即答で答えを返す俺。
テンションの上下の差がえげつない。
「……。」
「ん?雫。」
雫は俺の反応を見て、しだけ笑う。そして……
「……好きよ、優馬。どんな事にでも前向きなあなたが。どんな事にも諦めないあなたが。自分の事を後回しにしても、相手を助ける優しいあなたが。全部全部好き。してる。」
──唐突の雫からの告白。
「も、もう!先言うなよ。俺が言いたかったのに!」
それを聞いて、俺はし怒る。だって、雫に言うための言葉だって、雰囲気だって初めてなりに々と考えてたのに。
雫の唐突の告白で全てがダメになってしまった。
「……それって。」
「俺も好きだよ、雫。だから、付き合おう。」
そう耳元で囁く。
「……え。」
あ、そうだ!雫も唐突に告白してきたんだ!俺も唐突でいいよね?
そう考え、雫とキスをする。
雫のと俺のを合わせる……甘酸っぱい青春のキス。
「……っ!?んんっ。…んーん!」
雫は相當揺したようだが、すぐに大人しくなった。
そして俺とのキスに集中してくれた。
──數秒後に俺はゆっくりとを離す。
「ふぅ……」
素晴らしい経験だった。本當に……好きな人とのキスはたまらなかった。何度でもしていたいほどに。
「……っっっ!な…………何で今するのよ。もっと、こういうのには段階って言うものが……」
「今更、段階とか関係無くない?雫だって、俺にキスしたんだし。」
「……だから、それは仕方が無くて…………はぁ、ええそうね。考えたら確かにそうかもね。」
ため息混じりで既に降參の、雫。
「で、雫。返事をくれないかな?」
「……分かりきってるくせに、意地悪ね。」
「いいじゃん。俺はちゃんと雫の口から聞きたいんだ。」
「……もう。“はい”……こ、これでいいでしょ。」
「うん。……大満足だよ。」
面倒くさそうに、恥ずかしそうに、でも幸せそうに雫は答えてくれた。
俺の心は既にぽっかぽかに溫まり、俺の目標……そして憧れだった“青春”のようやく1ページ目が埋まった気がした。
「これから改めてよろしくな、雫。」
「……もちろん。」
雫は笑顔で返してくれた。
その後2人は再び、を確かめるため……を育むためを合わせるのだった。
俺の“青春”は始まったばかりだ!
☆☆☆
初めての彼が“雫”か……
俺はなんて幸せ者なんだろうか……
転生して約15年。ようやく1歩前進した俺の“青春”
これからどんな試練があるかは知らない。だけど、俺はもう1人じゃない。それだけで、怖気付くことは無い。
神様……どうか見守っていて下さい。
俺は恩人の神様に手を合わせ祈る。
俺はこれからも、“鈴木 和也”としてでは無く、新しく生まれ変わった自分“神楽坂 優馬”として……2度目の“青春”を楽しんでいきたい。
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