琴葉には疑問があった。

それは、例えば今後も柊と一緒にいられるとして…そのたびにを合わせるのかということだ。

今だって迷っている。持參してきた薄手の水のパジャマにを包み、柊がシャワーを浴び終えるのを広いリビングで待っていた。

歯磨きも終えた。髪も乾かしている。ソワソワするのを表面に出さないように寢室へ行く。

（一緒に寢るんだよね？）

キングサイズのベッドでは二人でも広すぎるほどだった。

縁に腰かけて寢室を見渡した。ってすぐのり口側の壁に置かれた本棚には難しそうな本が並んでいる。小説もいくつかあるが、どちらかというと専門書だったりビジネス書が多い印象だ。

勝手に見るのは失禮だからベッドの上でじっとそれを見る。

いつの間にか外したコンタクトは一日中つけていると疲れをじるから、シャワーを浴びる前に眼鏡にしたが自分にはこっちの方がしっくりくると思った。

丸眼鏡を通して本棚を見ていると寢室のドアが開いた。

柊がってくると一変して全のが琴葉のを駆け巡るのがわかる。

彼はバスローブ姿だった。

「どうした」

「…いえ、あの」

柊は琴葉とは違い、普段通りだ。

「おやすみなさい」

「眠たいのか」

「…まぁ」

もじもじとしながら柊から目を逸らせば、途端彼が足早に琴葉に近づく。

そしてベッドの縁に座る琴葉の目の前に立つと、すっと音もなく顎を掬った。顔を隠していた髪がサラリと元の位置へ戻ると、柊と目が合う。

「抱きたい」

ハッキリとそう言われ、琴葉は返す言葉もなく目を見開く。

こくり、無言で頷くと同時に柊が顔を近づける。

目を閉じた瞬間を塞がれた。柊はベッドに膝立ちをする狀態で、琴葉の後頭部に手を回す。

「…ふ…ぅ、…」

舌をねじ込んでくるような深いキスかと思えば、今度はチュッと軽くリップ音を立てる、をついばむようなキスに変化する。琴葉はそれをけれるだけで一杯だった。

角度を変えて繰り返すキスが昨日を合わせた時のそれよりも長くじた。

後方に手をついて上半を起こしているのに必死だった。

がくがくと震える腕をとうとうどうすることもできずに重力に従ってをベッドへと預けた。

ようやく離れたは酸素を吸い込むのに必死だ。

大きくをかして呼吸をしていると柊が顔を覗き込む。

ぎらつく柊の目を見て、下腹部に熱が生まれた。柊の腕が琴葉のをひょいっと簡単に持ち上げてベッドの中心へ移させる。

スプリングベッドの軋む音がやけに耳に殘り、そしてそれが卑猥に聞こえる。

いつの間にか照明が薄暗く変化した。柊がバスローブをぎ捨てるのを視界で捉えるがはかない。

靜寂に包まれる中、柊が琴葉に覆いかぶさる。

彼の重さをじたと思えば、次の瞬間には柊のが琴葉の頬や額、首筋に落ちる。

その都度、小さな聲がれた。

そして、また琴葉のへ柊のそれが重なる。

「んぅ、っ…」

くぐもった聲がれる。お互いの唾が絡み合う音が寢室に響いていた。

何度も何度もキスをされて、気づくと琴葉の両目じりには涙が薄っすらと浮かんでいる。

柊の手が琴葉のパジャマのボタンにかかるとはびくりと反応する。

「嫌か？」

ゆらゆらと首を橫に振った。ぼんやりと薄暗い寢室で、柊の男らしいに自然と視線が向く。柊の手がそっと琴葉の髪に指を通す。そのままその指が頬からに移る。

そして、もう一度先ほど外そうとしていたボタンに手を掛けて、ついに元がになった。柊の手が外気にれたそこにれると、甘な聲がれ出る。

そのうち、意識が朦朧としてくる。柊が何度も「琴葉」と甘く囁いてくれていたがそれに応えることが出來ないまま気づくと朝になっていた。