ギュッと琴葉を抱きしめる力を強める柊に、気のせいです、とようやく口に出すが既に柊の手が琴葉のブラウスにり込む。

「っ…まって…」

「抱きたい」

甘く囁かれ、全が痺れる。唾を呑み込み何とか平常心を保とうとするがすぐに柊のが耳たぶをし足が生まれたての小鹿のようにがくがくと震えだす。

「…やっ…ぁ、」

舌が耳たぶからうなじへ移し、その間も用にブラウスの中を弄る手に熱のこもった息がれ出る。は柊を求めている。その証拠に既に下腹部が疼いている。

「しゃ、シャワーを…」

「無理だ」

何が無理なのだろう、と思っているとひょいっと簡単に琴葉のを持ち上げ、すぐ橫に置かれているベッドへ琴葉を移させる。

一瞬のお姫様抱っこにドキドキしてしょうがない。

「あのっ…」

ベッドの真ん中でブラウスがれた狀態の琴葉を見下ろす柊の顔はいつにも増して艶麗で見とれてしまいそうになる。視界に柊だけが映るとすぐにを塞がれた。

れるだけのキスではなく、すぐに舌がり込む深いキスにくぐもった聲がれる。

ベッドにい付けるように手首を摑まれ柊が主導権を握る今、ただ彼にを任せることしかできない。

靜かな室で、唾を換する音が耳朶を打ち、思考を破壊するほどのとろけるキスに琴葉は意識を手放しそうになる。

彼の手が太ももをで、簡単にストッキングをがせる。柊の重みをじながら、目を閉じた。

…―…

…

翌朝

出社時間を遅らせているものの、柊は普段通りの出社だから同じ時間に起床した。を合わせた後、琴葉はすぐに寢てしまいシャワーを浴びていない。柊はその後、シャワーを浴びたようだ。お互いでベッドの上にいる。

「…おはようございます」

「おはよう」

昨日は特に熱くお互いを求め合った。抱かれている間何度も名前を呼ばれた記憶はあった。これをセフレというのだろう。柊が上半を起こしてシャワーを浴びるようだ。筋質な大きな背中を見ながらぼんやりと柊のことを考えていた。

これからどうすべきなのか、このままでいいのか、それとも…―。

「どうした」

「いえ」

「今日はフレックスで出社時間が遅いんだよな」

「そうです」

「今日の帰宅は遅くなりそうか？」

「多分…21時から制作部の人たちと立ち會いなので」

「そうか。じゃあ合鍵、渡しておく」

「えっ…」

「何だ」

いえ、といったが心では合鍵の意味を必死になって考える。柊がシャワーを浴びに浴室へ行っている間に攜帯電話で検索してみるが検索ワードが悪かったのか琴葉のしい答えは出てこない。

ため息を溢しながらベッドの上から下りると寢室の床には昨日著ていた服がぎ捨てられている。

（…されているようなセックスだった）

服を拾いながら昨夜のことを思い出していた。

柊がシャワーを終え、琴葉も続くように浴室でシャワーを浴びた。

浴室から出て髪を乾かし、リビングへ行くと既に準備を終えた彼がいた。

「一度自分の家に戻るからもう行く」

「わかりました」

柊を玄関まで送ろうとバスローブ姿のままついていく。

後姿でも、十分に他とは違うオーラをじ取ることが出來る。確かに、ここまで素敵な男が琴葉を特別な存在と認識するわけがないのかもしれない。

しかし、柊のおでお灑落をするのが楽しくなっているのもまた、確かだ。

彼のおだ。

汚れ一つない黒い沢を放つ革靴に足を通して琴葉の方へ振り向く彼は優しい顔をする。

その顔が好きで、どうしても自分だけに向けてほしい。

（どうしても、私だけに…―私だけが獨占したい）

邪な考えをの奧深くに留めておきたい。それなのに、琴葉の口から出たのは

全く別の言葉だった。

「好きなんです…」

「…琴葉？」

それは、やはり隠しておくには大きすぎる巨大に膨れ上がった柊へのの言葉だった。

泣きそうになりながら発したそれを聞いた柊は珍しく目を見開き、驚いている。そして…

しだけ眉を下げる。それを見た瞬間、柊が困っていると悟った。

「ごめんなさい！何でもないです」

「琴葉、違う、」

「あの！行ってください！遅刻しますから！」

無理やり玄関のドアを開けて彼を追い出すと琴葉は全を力させて、その場に座り込んだ。

「間違えちゃった…」

あのような顔をさせたかったわけではない。でも、どうしてもこのままの関係は嫌だった。

セフレになんかなりたくない。

―柊の目に映りたい

どうしても、彼の瞳の中に映りたい。