《異世界戦國記》第六話・勝幡城外の戦い
「織田信友、三千の兵を率いて今もここに向かって進軍中です!」
父信定から正式に家督を譲られて二週間ほどたったころ織田信友がこちらに向けて進軍していると報告が來た。幸いにも藤左衛門家は兵を出していないようだ。出ていたら完全に勝ち目はないな。十年前とは違い今の弾正家はかなり疲弊しているからな。
「こちらはどれだけ出せる?」
俺は重臣の一人である林道安に聞く。道安は祖父の代から仕えておりその経験の多さから五年位前から重臣の一人となっている。
「あまりに急ですので…二千集められればいい方でしょう」
敵の三分の一か。いや、半分と言う可能もあるな。それなら急がないとな。
「ならば急ぎ兵を集めよ。敵はこうしている間にも侵攻してきている。半介、蟹江城にも使いを出して兵を連れてくるように命じろ」
「はっ!」
俺は命令を出すと「出陣の容易に取り掛かれ」と下知を出して自分も評定の間を出た。向かうは自室だ。そこに父から譲りけた足がある。俺が今まで著ていた鎧よりも丈夫できやすい鎧だ。何でも弾正家に伝わる足らしい。
「三郎様…」
と、どうやら既に雪が待機していたらしい。部屋にると雪が正座をして待っていた。
「戦になると聞きました。それもワシの実家と…」
「…そうだ。だが、離縁はしないぞ」
家臣の中では雪を実家に帰そうという者もいたが俺は雪をしているし息子である三郎五郎を思うと離縁と言う選択肢はない。家臣たちの前でもその事は斷言しているし父も認めていた。家臣たちも渋々であったが認めてくれていた。
「…私は敵方の者です。私がいれば三郎様にいろいろと言う方もいるでしょう」
確かに家臣の間で不満や不安が出てはいるが雪が別にしないすることではない。それに、
「だから「何を勘違いしている」」
雪の言葉を遮り俺は言う。
「お前は確かに織田達勝の娘であり今攻めてきている清州織田家の一族だ。だが、今は違う。弾正家當主の妻であり嫡男三郎五郎の母だ。今の雪の居場所は清州織田家ではない。ここ、勝幡城で俺のそばだ!」
俺は力強く斷言する。雪は一瞬驚いた表になるもすぐに目に涙を貯め始めた。
「私が…ここにいてもよろしいのですか?」
「當たり前だろ。既に俺たちは家族だ」
俺は斷言する。それで雪は決壊し、手で顔を覆うが泣き出してしまう。…これはうれし涙だよな?つい勢いで言ってしまったが間違っていないよな?あっているといいんだが。
「…ありがとうございます。うれしゅうございます」
…よかった。嫌われてたらどうしようと思っていたが杞憂だったようだな。俺は泣く雪を抱き寄せると涙で覆われた瞳を見る。そして次第に顔を近付けそのにキスをした。
「兄上、準備が完了したようです」
雪に鎧を著せてもらい準備を済ませ城を出た俺を出迎えたのは織田木瓜の旗を掲げる織田兵であった。ざっと見ても千五百はいそうだな。
一門衆も弟の信康、信、そして今回初陣となる信次だ。他にも父の兄である織田敏宗も參陣している。これだけでもそうそうたる陣容だ。まあ、織田家の存亡がかかっているからな。
今まで三千の兵で攻めて來た事はない。あったとしても藤左衛門家と合わせての話だ。それだけに今回の戦で蹴りをつけようとする信友の思が分かる。確かに勝幡城はかなり守りやすい城ではあるが確実に守れるという保証はないし蟹江城はそこまで堅牢ではないからな。
「どのくらい集まった?」
「千八百です。予想以上に集まってくれましたよ」
俺の問いに叔父の敏宗が答えてくれる。だが、これだけの兵でもまだ足りない。こうしてみれば兵士の一部は信次と同年代と思われるものがちらほらいる。明らかに無理に集めたような狀態だ。それだけここ數年の弾正家が迫している証拠だな。余計にここで滅ぼさせるわけにはいかないな。
「殿、出陣の下知を」
「ああ。…全軍、出陣!」
「「「「「おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!!」」」」」
俺の聲に合わせて兵士たちが一斉に聲を上げた。
こうして俺は兵千八百を率いて出陣した。弾正家を滅ぼさないために。
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