《異世界戦國記》第十三話・連歌
「今川氏様の命令で連歌の開催をお伝えに來ました」
とうとうこの日が來てしまった。那古野城にて開かれる連歌のいが來たのだ。この日のために練習はしていたが上達した気はしない。
俺は使者の案の元那古野城に向かう。更に、お供に前田利昌、佐久間信晴、更にともに連歌に挑む織田信康と五人ほどの護衛を連れて那古野城へと向かった。那古野城は清州城よりも近いため一日もかからずに到著することが出來た。那古野城の城門では今川氏が自ら出迎えていた。
「良く參った信秀殿」
「氏殿自らの出迎えとは、謝します」
「これからともに連歌を行うものだ。このくらい安いものだ」
氏はほぼ同年代ではあるが俺以上に優秀なようだ。氏が収める城は尾張の中にも複數あり並々ならぬ勢力となっていた。信友だって氏に領の通行許可をもらって攻めてきていたからな。
「連歌は明日からだ。今日は疲れを取って休まれるといい」
「ありがとうございます」
連歌は明日からか。張が長引くな。
そう思っていると視界の端に織田信友に藤左衛門家の當主織田良頼など尾張の有力當主が見えた。思わず氏に険しい表を向けてしまう。
「氏殿、これはどういうことか?」
俺の問いに氏は淡々と答える。
「半年前に信秀殿と信友殿が戦をしたと聞いた。和睦はすんでいるだろうがまだギクシャクしているようだからな。勝手ではあるがこの機會に両者の中が良くなればと思っている」
程、氏なりに気を使ったと言う事か。…あまり意味はないが。
此方としても信友勢力と敵対することは避けたい。しかし、あちらは今すぐにでも俺を殺したいと思っているようだ。こちらに気付いたのか織田信友が先ほどから睨みつけてくる。幸いなことに利昌や信晴、信康や他の護衛も気付いていないみたいだったからよかったがもし気付いていたら闘になっていたかもしれないな。
俺は護衛を待機させて信康と二人で連歌の會場である部屋に向かう。そこには既に何名か來ていたようだ。知っている者もいれば知らない者もいた。
「さて、全員集まったようなので早速始めましょう」
暫く観察していると集まったようなので主催者である氏の號令の元地獄の時間ともいえる連歌會が始まった。
「兄上、大丈夫ですか?」
「あ、ああ。なんとかな」
俺は信康に支えられながら勝幡城へと向かっている。俺は神的にくたくただ。連歌會は何とか練習したおかげで良くもなく悪くもない狀態を保つことが出來た。
「しかし、信康は連歌の才能も有るんだな」
「たまたま、ですよ兄上」
信康はそう言って謙遜するが実際の所信康の連歌はうまく他の參加者も心していたからな。俺なんかとは大違いだよ。
「しかしあれだな。ここまで多彩なら家督も信康に譲った方がいいのかもしれないな」
「またまた、織田家の當主は兄上ですよ?そんな事を私がするわけないじゃないですか」
それは分かっている。信康は俺よりも武勇があるだけではなく様々な才能を持っている。しかし、それでも俺を慕い支え続けてくれているのはひしひしと伝わる。恐らくよほどのことがない限り俺を裏切る事は無い。そう思わせるほどだ。
「兄上、人によっては縁の下の力持ちになる事で才能を発揮する人だっているのですよ」
「…それが信康だと言いたいのか?」
「兄上は弾正家の當主です。弟として、家臣として支えるのは當然でしょう?」
「…そうだな」
…與次郎と言われていた期は俺にくっついてくる可い弟だったが今では頼りになる一人の家臣にまで長した。
「…ならば、これからも頼むぞ。俺は信康程才能がないからな」
「勿論ですよ」
俺は信康に支えられながら笑い勝幡城への道を行くのであった。
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