《異世界戦國記》第六十一話・勝幡城攻防戦~決戦3~
「氏興……?」
「ああ?せっかく來てやったのにその態度はなんだ?」
予想外の人の登場に俺は聞き返した。確かに俺は氏興に使いを出したがまさか來てくれるとはな。いや、彼の格を考えれば妥當と言えるか。
「で?こいつらは皆殺しにしていいのか?」
「ああ、好きなだけ殺していいぞ」
氏興の登場で一瞬固まった晴の本陣の兵は既に刀や槍を構えこちらを警戒しつつ反包囲を始めている。氏興によって吹き飛ばされた茂康と名乗った兵も立ち上がり巨大な刀を構えている。先程は一瞬で気付かなかったが茂康の刀は彼のに見合っただ。普通の刀の二倍はデカいそれはもはや刀ではなく西洋剣に見える。切り裂くより叩き潰すを重視したのだろう。
そんな大剣の切っ先を氏興に向けながら覇気を放つ茂康。それに対し氏興も負けじと覇気を出すと周囲の空気が一気に重くなる。一呼吸するのも難しい両者の圧は俺だけではなく周囲の晴の兵も同じようだ。反包囲が一歩だけ広がっている。逃げだしたりしないあたり本陣を守るにふさわしい兵たちだな。
「貴様、何だ」
「那古野今川家當主、今川氏興」
「程。織田に降ったという話は聞いていたが本當だったようだな」
「人を殺せるのなら下に付こうと気にしない」
「ふん!噂は本當のようだ、な!」
茂康は言い終わらないうちに踏み出すと右斜め上から左斜め下に振り下ろす。それを氏興はギリギリで回避できる位置まで下がり剣が通り過ぎると同時に右手に持った刀による突きを放つ。狙いは頭部、眉間の間。態勢を整える暇のない氏興の神速の一撃は同じく紙一重で回避され茂康の頬の皮一枚を切り裂いただけに終わった。
そこまでをお互い終えると一旦下がり両者ともに態勢を整える。辛うじて見えた範囲では二人とも互角の戦いに見えるが殘念ながら氏興を援助する程の武蕓を、俺は持ち合わせていなかった。それは俺の後に続いてやってきた兵も同じで例え傷と疲労がなかったとしても不可能だった可能がある。とは言え相手も同じようなもので二人のせいで俺の方に行くことが出來ない為氏興に警戒しつつ俺がどういても対応できるようにしている。
「っ!」
「はぁっ!」
2合、3合と剣と刀を撃ち合っていくが氏興の刀がすぐにボロボロになった。刀の利點は相手を切り裂く事にある。剣などと幾度となく撃ち合うのに向いている武ではない。
しかし、そんな刀を見ても氏興はめげない。それどころか面白そうに笑みを浮かべている。それも狂気のり混じった寒気を覚える笑みだ。
「ハハハハハハハハハハ!やっぱり楽しいなぁ!」
「貴様……!」
「あ?何険しい顔をしているんだ?ほら、もっと楽しもうぜぇ!命の奪い合いをよぉ!」
「ぐっ!」
茂康は氏興の狂気を諸に浴び、怯むが直ぐに立て直し橫なぎに払う。氏興はその剣を足場に跳躍する。茂康の頭上を越え後ろに著地した氏興は刀を振るった。
「……がっ!?」
背中を切り裂かれた茂康は鮮を噴き出すが鍛え抜かれたを切り裂いたことで途中で氏興の刀ははんばから折れてしまった。しかし、氏興は攻撃をやめずに折れた刀をおもいっきり突きさした。右の腰に元まで突き刺さった為茂康は低くうめき聲をあげた。
「ぐ!ぅぅぅっ!」
「まだだ!」
氏興は膝をつく茂康に背中から抱き著くと首に手を回す。するとそのまま締め上げ始めた。苦し気な表と聲を出して茂康は抵抗するが氏興は目をかっぴらきながら狂ったような笑い聲を発しながら全く緩める事はなかった。
「っ!茂康を援護しろ!背中にへばりつく奴を殺せぇ!」
「そうはさせるな!氏興の援護をしろ!」
両者の決著が近づきつつあることでようやくけるようになった自の兵に晴が狂ったような聲を上げて命令を出した。見ればその表は焦りをじさせると同時に大量の汗を流し先ほどまでの余裕な表は失われている。
ここが攻め時とじた俺が一部の兵と共に晴を狙おうとした時、更なる追い風が俺に向かって吹いてきた。
「ハッハッハッ!信秀殿を援護するぞ!突撃ぃ!」
何時の間に突破したのか、晴の軍勢の真橫を水野忠政率いる五百の兵が強襲した。
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