《異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編》第65話 王都からの帰路
俺とリベルトさんとお父様の聲が重なる。
「「「…………」」」
それから暫く沈黙が続いた後、お父様が口を開いた。
「マズイことになったな…」
「はい。狀況はかなり切迫しております」
と騎士団長が同意する。
「帝國の奴らは南下を続けているのだな?」
「はい。続けております」
「そうか。なら考えられる手は1つ」
と區切りゆっくりと騎士団長を真っ直ぐ見る。
「準英雄級と呼ぶべき魔法使いを參戦させておるな?」
(準英雄級?)
俺には分からない會話が続いていく。
「はい。お見事です。
報告によりますとレベル8の魔法使いが今回の作戦に同行しているそうです」
その瞬間、ズンッと空気が一気に重くなる。
レイン以外の全員の顔が険しくなる。
「そ、うか……予想はしていたが実際に聞くとやはり違うな。
レベル8の魔法使いまで同行させるとは……。
それで此方は如何するつもりだ?
対抗手段としては數でMPがきれるまで押すか同レベルの魔法使いを出すしかない。
數で負ける此方に前者はあり得ない。
なら、同レベルの魔法使いを出すのか?」
この國でレベル8の魔法才能を持つ者はレインを含めて4人、コリドー家筆頭プリタリアとコリドー家にもう1人、宮廷魔師筆頭エリルという者だけだ。
宮廷魔師とは回復魔法の専門家でいわば醫者だ。
當然、エリルは除くとして殘り3人になる。
「うむ。故に今回はプリタリアを參戦させようと思っておる」
と王様が後を引き継ぐ。
(ああ、だからこの場にプリタリア様がいないのか……。それにしてもレベル8ってそんな凄いのか?)
「プリタリア様ですか……」
とリベルトが呟く。
「そうだ、では、話を続けよう」
と言い、では、と団長が後を引き継ぐ
「帝國の船から攻めてきた軍の數ですがその數およそ2萬5千弱、レベル8魔法使いと更にレベル7魔法使い3名がそれに同行」
レベル7魔法使いが3名のところでまた空気が重くなる。
「それが城を落としながら南下しております。最新の報では既に3城が陥落したそうです。
更に西の方から同盟を理由におよそ8萬の大軍がリュミオンに侵攻を開始しております」
(……報量が多すぎて頭が痛くなってきた。
知識不足で話に全然ついていけないんだけど。
いろいろ質問もあるし。
プリタリア様じゃなくてもう1人の人が行けばいいんじゃないの?とか。
というかなんで俺ここにいるんだ?
傍目から見ると違和半端ないと思うんだが)
大人達が真剣に悩んでいる中に1人だけ6歳児がいるというのはなかなかシュールな絵面だ。
レインは置いてけぼりの中、議論は進んでいく。
「8萬……」
と誰かが呟き、また空気が固まってしまった。
それから暫く會議が続き、結局レインは話についていけないまま會議が終わってしまった。
帰り道ロンドとレインが2人で歩く。
「お父様、僕、全然話についていけなかったのですが……」
とレインから切り出す。
「ん?そうだったのか。やけに靜かだなと思ったら理解してなかったのか」
「すいません。レベル8の魔法使いってそんな凄いのでしょうか?」
(俺は水魔法が既にレベル8だしな〜。
これがよくある自分が當たり前に持っているとなんとやらってやつか……)
「そうだな。お前は當たり前に持っているかもしれんが、レベル8というのは國に殆どいないのが普通なのだ。
ましてや他國を攻めるのに使うなどこの國周辺では前例がないな。
我が家にはないから知らんのも無理はない。南西の魔導大國が攻め込まれた時の逆襲に偶にやる戦法だ」
「そうですか」
まだよくわからない。
「的に言うとレベル7の魔法使いが10人いて、城壁に登り詠唱が唱えられさえすれば城が落ちる。
だが、レベル8魔法使いは城壁に登る必要さえない。城の前で詠唱すれば城門と城壁は々になる。
後はわかるな」
「城壁にられれば後は地上戦、ですね」
「そうだ。ただでさえ南に兵を集めて防衛に必要なギリギリの數しか城にいないのに城壁という利を取られたらもう烏合の衆でしかない。リュミオンはこの対応に大慌てだろう。
全く、小國相手に容赦なく攻めおって!」
と語尾を強くして憤っている。
「あ、あと戦爭なのですがコリドー家のもう1人の方が行けばいいんじゃないでしょうか?わざわざ當主が行かなくても」
「奴はダメだ。表に出せない」
即答だった。
「え?なんでですか?」
「……お前はまだ知る必要はない。
とにかく無理だという事だけわかっていればよい。それと外でその話はするなよ」
「わかりました。
すると消去法で僕かプリタリア様ですか」
「うむ、なら先を見據えてプリタリアだな。まあそうじゃなくてもお前を行かせたりはしないがな」
「ですか」
ですかとしか言いようがない。
「それと…」
といって立ち止まり顔を近づけてくる。
「ソフィーはお前がここに來る時なんか言っていたか?」
「え!?えーと、ちゃんと無事な姿で帰って來なさい、でしたね」
(うん、憶えてる)
一週間前の記憶だがちゃんと憶えてた。
「そうか……確実に怒っておるだろうな…」
「ですか……」
ですかとしか言いようがない。
「僕は明日には帰るつもりですが、お父様はいつ帰られるのですか?」
「ん?そうだな〜、戦後処理がまだまだ殘ってるからな…しばらく帰れん」
「お疲れ様です」
と労う。
「戦はどうだった?得るものはあったか?」
「え?え〜と……まあそれなりにはありましたよ」
「そうかそれは良かった。
因みに今回お前がこの會議に參加した理由だが恐らく今後を期待してだろうな」
「ん?どういう事ですか?」
「お前に王様達も含めて期待しているという事だ。もちろん私も含めてな」
「そうでしたか。ありがとうございます」
そう言いながら別館への道を歩く。
次の日の晝頃に別館を出て、帰路に著く。
(最近、怒濤の日々と化しているのは何故なのだろうか?)
と、凄いどうでもいい事を考えている今日この頃。
「何故なのだろうか?」
「うぇ?!ふぁ、ふぁんです?」
とコウに振ったら慌て始めた。
を食っている最中に話しかけて悪いね。
「最近、僕は怒濤の日々を過ごしていると思うのですがどう思います?」
え?質問が違うって?気にすんな。
「ど、どうと言われましても。
まあ大変ですね〜としか」
「的には?」
無茶振ってみる。
「え?え〜と…」
目が泳いでいる。正確にはスクナ達にヘルプを求めている。
「コウ、お前の主人はそんなだったのか……」
とガクッと項垂れる。
奴隷として連れてこられているので主人も何もないのだが……。
「え?!い、いえ、そんな事は」
すると、キッとスクナがコウを睨む。
「コウ、貴方レイン様への忠誠心が足りないんじゃないの?」
「そうだそうだ」
便乗してみた。
「因みにスクナはどう思いますか?」
「私ですか?畏まりました。
ただでさえお忙しい毎日をお過ごしのレイン様に外敵による問題が事あるごとに起こり、それを盡く対処してくださるレイン様に敬意を表すと共におのお合に異常がないか気をむ毎日を過ごしております」
「「「おおーー」」」
と拍手を送る。
「凄いなスクナは。
思い付きでやった何の脈絡もない振りにここまで対応するとは。
流石だ」
と絶賛する。
「お褒めに預かり栄に思います。
ですが私は本心を述べただけですので」
「うん。完璧だ。素晴らしい
で!メイは?」
「私ですか?畏まりました。
ただでさえお忙しい毎日をお過ごしのレイン様に外敵による問題が事あるごとに起こり、それを盡く対処してくださるレイン様に敬意を表すと共におのお合に異常がないか気をむ毎日を過ごしておりま」
「一言一句パクってんじゃないよ!!」
と突っ込んでやる。
メイは最近パクリキャラになってきている。
「パクるのは兄限定にしておきなさいよ」
「畏まりました」
「いやそれもどうかと思われますけど」
と奴隷達と団欒している。
「そういえば、コウ達は僕のお母様が買っていたと言っていましたが、スクナは知っていましたか?」
「はい。勿論です。コウとメイとスクナは奧様がわざわざ隣國に行ってまで買われた高級な奴隷です」
「なるほど。やはり知っていたのか。やれやれ言ってくれれば……いや、何も変わらなかったな」
「申し訳ありません」
「いやスクナは悪くないですよ。
それと海戦の最中「纏まりました」……え?」
突然アイナがカッと目を見開きそう言った。
「レイン様、纏まりました」
 「え?何が?」
何をまとめたんだ?
「レイン様に対する労の言葉です」
「え?ああ、さっきの?」
今かよ!!遅いよ!もう次の次の話題にいっているよ!
因みにアイナに聲をかけなかったのはコウに聞いた瞬間目を閉じ始めたからだ。
私に聲をかけるなというサインじゃなくて真面目に考えてたのね。
「はい。では始めても宜しいでしょうか?」
「えーと、いや、うん、せっかく考えたんだしどうぞ」
「ハッ!では。
レイン様、大変お疲れ様でございます。レイン様の素晴らしい活躍とまるでこの世の全てを見通すが如く優れたご慧眼、私、アイナは服いたしました。その素晴らしい知識、と知恵、その他優れた才能にしでも近づける様、日々の努力を怠らぬ決意を再確認させられました。まだ努力が足りない、そう確信させられるほど優れた出來事でした。まずは何より敵の策をない報量で見抜いたその素晴らしいご慧眼。レイン様がいなければポルネシアは大混に陥り、結果リュミオンに援軍を送る事ができなかった事でしょう。次にそれに対する対抗策を瞬時に考え出すその知恵の高さは並び立つ者がいない程で……」
「いや待て待て。長いよ。途中から全く聞いてなかったよ」
アイナ……、お前全然纏まってねーじゃねーか。
「10文字以で表してくれ」
と無茶振ってみる。
「え?えっとあのえっと」
とアイナの武士面を剝がす事に功した。
「ありがとうございます」
いろんな意味で。
そんな団欒の中レインは公爵領への帰路に著く。
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