《異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編》第76話 勝てるわけがない
お父様があまりにも淡白過ぎるのが気になる。
なので、お父様がローゼさんを説得するところを神眼で覗く事にする。
神眼で視界を飛ばすと、お父様の後ろ姿が見える。
堂々とした後ろ姿で、俺が教えたローゼさんの居場所、修練場にどんどん進んでいく。
そして、相変わらず鍛えているローゼさんの前に行き、二言三言告げ、帰ろうとする。
だが、ローゼさんは無表なのに、明らかに怒った雰囲気でお父様の裾を摑み、それを押し留め、何か言っている。
それに対し、お父様がまた二言三言述べる。
そこで決著がついたようだ。
膝から崩れ落ち、俯くローゼさんを置いてお父様は城の方にさっさと帰ってくる。
(oh……マジか)
つい心の中で呟いてしまう。
俺は、そんなお父様の元に向かい話し掛ける。
「何を言ったのですか?」
我ながら率直すぎる言葉である。
そんな俺の言葉に対し、お父様は、
「ん?戦爭にはついて來るなと命令しただけだ」
と至って、普通の顔で呆気らかんと言った。
「oh……。
も、もうし言葉、と言いますか、言い方といいますか、その様な説得の仕方があったのでは?」
(俺もだけどお父様も率直すぎるぜ)
それに対し、お父様は「例えば何だ?」と聞いてくる。
(そんなこと言われましても……。
人生経験のない俺にそんなことを聞かないでくれ)
だが、聞かれた以上は答えなくてはならない。俺はを張り、深呼吸をする。
「お、お前のこ、事をしておるから、戦爭に來てもらっては困るのだ。わかってくれるな」
(フゥ〜、なんとか言い切った)
噛みまくったが何とか言い切ってやった。口に出してしているとか言うのは予想よりもずっと恥ずかしい。
「噛みまくりだな。後、を張るのは深呼吸をした後の方が楽だぞ」
ちょっとやってやったぞという顔の俺にお父様がそう突っ込んできた。
「そこ突っ込まないで下さいよ」
余計に恥ずかしくなるじゃないですか。
「しているか……」
そんな俺を見てしだけ微笑みそう呟いた。
そして次に衝撃的な言葉を言ってきた。
「言ったぞ」
(え?なんて?)
「え?なんて?」
頭の中の言葉がそのまま口から出た。あまりの衝撃すぎる言葉に固まってしまう。
「だから言ったぞ?お前の事をしている。死なれては困るから來るな、と」
キョトン、という言葉が似合う様な自然さでそう言い放った。
「おぶっ‼︎」
予想外の言葉に俺はよろめき後ろに倒れてしまう。
顔面を毆られた様な衝撃をけた。
(そんな恥ずかしい言葉を真顔で言うなんて、何て図太い神経をしているんだ)
突然奇聲をあげて倒れた俺に、お父様は眉をひそめる。
「どうしたレイン?気分が悪いのか?
なら……」
いや違う。そんなんじゃない。
俺は慌てて立ち上がり、
「僕は一生お父様に勝てそうにありません」
ただそれだけだ。
「いや、レベルならお前の方が既に上だろ。
口に出して言ってみると結構傷付くな……。私はこれでも結構努力したのだが」
後半は無視して俺は落ち込んだ聲で、
「レベルではなく人として、男としてです」
まあ俺、クズだし。最初から勝てるわけがなかった。
そんな愕然とした顔をしている俺を見て一瞬驚き、すぐに大笑いする。
「子供のお前にこの私が男として負ける訳がなかろう?ハッハッハ!」
と、ご機嫌な様子で城の中に去っていた。俺はそれを呆然と見送り、しばらくして我にかえる。
取り敢えずローゼさんはあのままでいいか。俺の出る幕はもう無いっす。
戦爭前に何青春してんだよ。
ふざけんな。
その役、俺にください!
甲冑を著込んでたことから分かるように俺が呼んだから本當にちょっとよるだけだったようだ。その日のに早速、進軍を開始する事になった。
俺も準備は數日前から完璧に揃えている。それを取りに部屋に戻る。
だが、俺は忘れていた。
ローゼさんとお父様とお母様の三角関係に頭を悩ませていて彼達の存在を……。
そう。スクナ達の存在だ。
あいつらの存在、マジで忘れてた。
案の定、俺の部屋に鎧を著て準備萬端の狀態で立っていた。
ドアを開けた狀態で佇む俺に、スクナとアイナは敬禮をしてくる。
コウとメイは両手を合わせてくる。
本當にわかりやすい奴らだ。
「……そうか、それがお前達の答えか」
聞かれなくてもなんて言いたいのか分かる。
スクナとアイナは付いて來たいのか。
コウとメイは遠慮させていただきたいか。
「まあ結論から言わせてもらいますと、四人共今回は來なくていいです」
俺は彼らに対してそう言い放つ。
「「な、何故ですか?!」」
と、驚きをわにするスクナとアイナに対し、コウおメイは「「……」」無言のままだ。
「理由は……」
彼らの力が未だ足りないから。
盜賊3人と戦った時や、敵の船が來たら、逃げる事前提の船に乗り込むのとはわけが違う。
敵味方り混じる戦場で彼等はステータスも経験も足りない。最低でも後5年は戦場に出すわけには行かない。
俺だってこれでも貴族として、人の上に立つ教育はけている。
まだまだ全然だけど、こういう時、中途半端に「まあ、なんと言うか、力が足りないから、じゃないですかね?」などという中途半端な言い方をするのはいけない事くらい分かる。はっきりというべきなのだ。
力が足りないから來るな、と。
それを俺の口から言わなければならない。
顔にが上り、過呼吸気味になる。
手足もし震えてきた。
深呼吸を何度も繰り返し、そして、
「お前達の力が未だ足りないからだ。今付いてこられても邪魔なんだ」
吐き気のするような気分と共にそう言い放った。
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