《異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編》第122話 読書
「では、レインを迷いの森に行かせることに賛の者、挙手を」
長い議論の末、最後に國王の審議の結果は……。
「やはり心配事は絶えませんが……致し方あるまい」
最後まで反対派であった宰相を含め、満場一致で決定した。
「では満場一致にて、これにて會議を終了とする!」
陛下の言葉を最後にバラバラと俺たちは立ち上がり、部屋を出て行った。
「全く……宰相のせいで無駄に長くなった」
「そうですね……」
どんだけ心配なんだあの人は……。
三時間も同じ話題を話すことになるとは思ってもみなかったよ。
あれやこれや理由をつけて何かと行かせたくなかったみたいだ。
「では僕は先ほどアリアンロッド王殿下との約束がありますのでここで失禮しますね」
「ああ、私は迎賓館にいるから終わったらこちらにきなさい」
「わかりました」
お父様と別れた俺は王宮の近衛兵一人に連れられ、王がいる部屋へと向かう。
俺の代わりに近衛兵が扉を叩く。
「王殿下、レイン様がお著きになりました!」
「どうぞー!」
中からの返事があった為、近衛兵が扉を開ける。
「では、私は扉の前におりますので」
「はい。ご苦労様です」
どうやら城では俺と一緒に行するようだ。
促された俺は室へと足を踏みれる。
そこは昔とあまり変わらない、白よりピンクよりの豪華な子供用の家を設えた部屋だった。
そしてその中心に置かれたテーブルにはすでに紅茶が用意してあり、椅子にはアリアンロッド王殿下が座っていた。
「お待たせして申し訳ございませんでした」
「……し長いお話だったみたいだけど、どんなお話だったの?」
「……申し訳ありませんが、陛下よりの話、とのことですので」
「ふーん……、とにかく、約束を守ってくれてありがとう」
「いえいえ、王殿下きっての頼みとのことですので」
「もう、お世辭ばっかり……」
「うふふふふ」
頬を膨らませる王の後ろで佇む。
「バリナさんもお久しぶりです」
「私のような者を覚えてくださるとは栄ですわ。もう三年になりますのに、私の名前まで」
筋骨隆々の男なら見飽きているが、それがなら印象深すぎてむしろ忘れられないさ。
まあ名前は神眼で確認したんだけど。
「記憶力はいい方でして」
「ねえねえ、私の名前は?」
バリナさんと話していると、橫から王が割ってってくる。
俺は澄ました表をしながら一禮をし、
「もちろん覚えておりますよ。アリアンロッド・アンプルール・ポルネシア王殿下」
と挨拶をする。
「そ、そう、それならいいんだ」
し頬を赤くしながら王が俯いた。
俺のイケメン合に磨きがかかっているようだ。
「レイン様は神という噂を耳に致しましたが、噂に違わぬ賢人ぶりですわね」
「いえいえ、名前を覚えていたくらいで褒めすぎですよ。これくらい大したことではありませんから」
「おほほ、ご謙遜なさるところも素晴らしいですわ」
「あはははは……」
俺は乾いた笑いをする。
どうも向こうのペースに乗せられているが否めない。
「もう!今日は私と話しに來たんでしょ!バリナもちょっと靜かにしてて!」
「これは申し訳ありませんでした、王殿下」
そう謝りながらもバリナの表は朗らかだった。
「申し訳ありません、アリアンロッド王殿下」
どうやら怒らせてしまったみたいだ。
マイッチングー。
「それでねレイン!最近一杯本を読んで読んでいるからね、レインにその話をしようと思って!」
「それは素晴らしいですね」
「ふっふーん、もう大人の人が読むような本も読めるんだから!因みにレインは何冊くらい読んだの?」
王殿下が質問をしてくる。
何冊くらいと言われても數えたことがない。
ゼロ歳児が読んでいるから、ざっと二、三千冊といったところだと思うが、今年はあまり読んでいないなー。
多分百冊くらいだと思う。
が、それでも常識外れなのは重々承知しているので、半分ぐらいに減らしてみた。
「五十冊……位ですかねー」
「えっ……」
王が絶句する。
しまった。やはり多過ぎたか。
「というのはし見えを張りました。二十冊くらいです」
さらに半分にしてみた。
「……」
これでもダメだったようだ。
「というのも冗談で、実は十冊くらいですよ、はっはっは!」
そういうと、驚いた表をしていた王の顔にとたんに朱が指して怒る。
「もう!見えを張り過ぎ!半年で五十冊も本を読めるわけないでしょ!」
「すいません……」
気を使ったのに謝らなければならないとは。
「私は十六冊も読んだんだからね!それも大人の人が読むようなこんな分厚い本を!」
そう言って王は機の端から端までの手を広げてみせた。
そんな本があったらページ開けないだろ。
「そうでしたか。 さすがは王殿下、そのお年でそれだけの本をお読みになるとは……」
「去年は五冊も本を読んだんだから」
「えっ……」
今年にってからじゃねぇのかよ。
しかし、王は俺の絶句を驚嘆ととり、自慢げな顔をさらに高める。
だが、バリナは俺の絶句の意味に気づいたらしく、クスクスと後ろで笑っている。
「それでね、一番面白かったのはね……」
そこから怒濤の王のお喋りは続き、俺はただ相槌を打つマシーンと化していった。
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