《一兵士では終わらない異世界ライフ》喧嘩別れ
「ソニア姉ちゃーん!お手て繋いでー」
お姉ちゃんと一緒作戦を俺は実行に移した。とにかく、俺は可げのある弟になる。生意気なのはダメだ。
俺はソニア姉の隣に立つとそう言って、ニコニコと笑って見せるのだが。ソニア姉はめっちゃ嫌そうな顔をしていた。やっぱりダメなのか……。
「ほらソニー?グレイが甘えたがってるよ?」
ソニーとグレイはソニア姉と俺の稱だ。ソニーっていうとエンターなテイメントが想起させられるが、別に関係ない。あ、當たり前か。
母さんに言われて、ソニア姉は渋々といったじに手を差し出してきた。よし、ここは想よく可げタップリに喜んでみせるぞ。
「わ〜い」
俺は無邪気にソニア姉の手をとる。五つも年上だがその手は小さかった。背は俺よりもずっと高いのにもかかわらずだ。俺はその小さな手をしっかりと握り嬉しそうに笑ってみせた。が、ソニア姉はプイッと顔を背けてしまった。やはり仲良くなるには時間がかかるようです。
それから俺はソニア姉の手を繋ぎながら母さんと三人で家に帰る。四つ目の鐘が鳴った後に父さんは帰ってきて、その頃には夕飯が出來ていた。
いつも通りだ。俺はソニア姉の隣の椅子に座って、向かいには父さんが座る。父さんの隣には母さんが座る。これが我が家の食卓だ。
「では食べようか」
と父さんが言って、みんなで母さんの用意した食事に手をつける。この世界には食べる前に「いただきます」なんていう作法はない。宗教上の問題でやっているところもあるらしいが、なくとも我が家では言わない。決まりとしては父さんが食べ始めるまでは食べないというのが我が家の暗黙の了解だ。アルフォードパパは別に食べればいいじゃないか?というじだが何となくそんな風な習慣ができてしまった。
今日の夕飯はパンとスープに野草だ。パンとスープの材料は先ほど買いで買ったものだが、野草はそこらへんで採ってきたものだ。この町外れに建っている我が家の周りには食べられる野草が結構生えているのだ。
別にお金に困っているからこんな質素な食事をしてあるわけではない。父さんの稼ぎは多い方だという話を聞いた。というか、學校に通わせるくらいは裕福なんだから、そんなことはあり得ない。
しかし、俺も生まれたということで生活費はいままでよりも多くかかるだろう。六歳になれば學校に通わせるために學費も払わなくてはならない。
すでにソニア姉が通っているために學費は余計に嵩む。そのために何かあったときのための貯金を蓄えるためにちょっと質素な生活をしているのだ。多分……。実際は知らない。だから……決して貧乏ではない。まる。
食事はもちろん味かった。母さんの料理の腕前は良い方らしい。父さんがこの前言ってました!まあでも、こんなに質素なじでも味く作れるもんなんだなと俺は心した。
食べ終わると暇になる。ソニア姉も夕飯を食べ終わると特にやることがないのか寢室にいってしまう。というわけで、お姉ちゃんと一緒作戦を続行。
「お姉ちゃーん。遊んで〜」
俺がペチペチと走りよるとソニアはあからさまに嫌そうな顔をした。
「イヤ」
「え〜」
「もう寢る時間だもん。ちょっと考えてよ」
ソニア姉はそう言って鬱陶しそうに俺をシッシと追い払った。俺は仕方ないと思いつつ、最後にこういった。
「じゃあ一緒に寢てー!」
「イヤ。オネショされたらたまったもんじゃないから」
うん。たしかにしないとは言い切れんなぁ……俺は「ぶー」とできるだけ可く不貞腐れて、その日は眠った。
にしても何とかならないものかねぇ……。
–––☆–––
翌日の朝となった。
俺が起きるころには既に家族全員が起床している。ママンは朝ごはんを作り、ソニア姉は學校にいく準備だ。
パパンは朝の運をしているんだろう。この前、パパンが外で剣の素振りをしているのを目にした。なるほど、だから朝ごはんのときにはいつも汗を掻いていたのか。納得ー。
剣ってカッコいいな……前世じゃスポーツってやってなかったし……なんだったらパパンに剣でも教えてもらおうか。頼んだら教えてくれるかしら……ちょっと僕行ってくる〜。
そういうわけで剣を振っているパパンのところへ俺はやってきた。汗を流し、力強く剣を振るうアルフォードパパの姿はまさに一家の大黒柱。お父さんというじだ。
俺は憧れた。なんとなく剣を教えてもらえればいいやと思っていた俺の考えは吹き飛んだ。
「パパ!」
俺が玄関先でぶとパパンは俺に気づいて、首にかけてある布で顔の汗を拭きながら俺に視線を向けた。
「ん?どうしたんだグレイ?」
優しい聲音だ。さっきまで剣を振っていた凜々しい父さんではない。俺は意を決して言った。
「パパ!僕も剣覚えたい!」
俺は真っ直ぐ父さんの目を見ていった。こういうとき目を逸らしちゃいけないのだ。タップリ數秒たってから父さんがゆっくりと口を開く。
「どうしてだ?」
「パパみたいな男になりたい!」
俺は即答した。アルフォードパパはビックリしたように目を丸くしていた。そりゃそうだ。ガキが男になりたいなんていったら驚くもんだ。
「そ、そうか……」
アルフォードパパはしだか嬉しそうにしてから俺の頭をガシガシとでた。
「そうだな。それじゃあ俺がみっちり教えよう」
おっしゃ!俺は飛んで喜びそうになったのをぐっと堪える。
「ただし、剣は遊びじゃない……絶対に中途半端なところで投げ出さないと誓えるか?」
「うん!」
もちろん即答だ。その答えをけて父さんは満足そうに頷いて、二人で家に戻った。と、ソニア姉に睨まれた。ご、ごめんよー?お父さんをとったわけじゃないんだよー?
ともあれこれで剣を習えるのだ。やっぱり家族を守れるくらいは強くなっておきたいよな。
–––☆–––
翌日から剣の修行は始まった。とはいっても最初は力作りが中心だ。言っても、三歳児だから走り込みといってもヨチヨチとしか歩けないし、筋力トレーニングができるほども発達していないので軽く走ってから軽く素振りといったのが主だ。
今は素振りしてる。意外と素振りって辛いのね……まだ十回くらいだけど腕が上がらなくなってきましたよ。
「こら、集中するんだ」
あ、怒られた。真面目にやろう。
こんなじで朝に修行を見てもらう。そして俺は時間がある時はいつもこれらを繰り返した。反復練習が大事なのだと父さんが言っていたからだ。
とにかく頑張ろう。前世の失敗を繰り返さないためにも。
ソニア姉との関係は相変わらずギズギスしている。俺が近づくと嫌がられるし、鬱陶しそうに追い払われる。
さて、そんな俺とソニア姉との間についに事件が起きた。食事をとりおえたとき、俺が「ソニア姉遊んで〜」といつも通り甘え、ソニア姉の手にれると払われた。それも強く。
「もうやめてよ!」 
その拒絶の言葉と同時にだ。俺は急に払われて後ろに倒れこんでしまった。ゴスッと鈍い音がした。後頭部を床にぶつけたのだ。痛い……これが並の三歳児なら泣き喚いているところだ。
しかし、俺は前世持ちだ。オネショはしても泣きわめきはしない。ただし限りなく泣きそう……だって痛いんだもん。
俺が倒れて直ぐにいたのは母さんだ。母さんは俺を助け起こすと同時にソニア姉に厳しい目を向けた。あ、これアカン奴だ。
「ソニー!グレイに謝りなさい!」
「っ……」
ソニア姉はスカートの裾を強く握りしめた。そりゃあそうだ、母さんは自分ではなく嫌いな弟を擁護してるんだから。父さんも「謝りなさい」と言っている。味方のいない空間……それほど辛いことはない。
やがてソニア姉は絞り出すように聲を出す。
「だって……だってそいつが」
「ソニー」
言い訳しようとするソニア姉を父さんが厳しい口調で遮る。これはいけない。
「なんで……なんでよ……そいつが來てから!そいつばっかり!!」
ソニア姉は泣きんでから家を飛び出した。突然のことでパパンもママンも追いかけることが出來ず!その場に直してしまっている。
この場でけるのは俺だけのようだ。俺は聲なく放心してしまっている母さんから離れてソニア姉を追った。後から「グレイ!」と父さんのび聲が聞こえたが構わず俺は家を飛び出した。
あたりは薄暗くなり始めている。完全に暗くなったら街燈もないこの世界では絶対に発見はできなくなる。
冗談じゃないぞ。喧嘩別れなんて!
俺は前世の記憶を頼りにこういうときの対処法を瞬時に思いつく。
足跡だ。
前世とちがってコンクリじゃなくてらかな土の地面なら足跡がつく。狩人はの足跡を見て、樹海などで獲を探すという。
よし、と俺はソニア姉の足跡を探し…見つけた。ソニア姉は森の方に走って行ってしまったらしい。なんとかして見つけないとな……。
俺は焦りながら、ソニア姉を探した。
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