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ギルダブ先輩に負けてから俺は考えていた。どうしたら、もっと強くなることが出來るかを。

長すれば、そりゃあ強くなれるのだろうけど、いつどんな時に何が起こるかは分からない。今この瞬間にすら、ソニア姉やラエラ母さん……それにアルフォード父さんに何かあるかも知れない。そんな時に、俺はまだ小さいからと言い訳するのか？そんなこと出來るわけがない。

ふと、そんな時だった。ある日、俺はトーラ學舎の學舎長……エドワード・ネバース先生に呼び出された。あるうぇ〜？僕ちゃん何もした覚えないんだけどなぁ……。

若干、不安になりながらも學舎長室へ向かい、高級なじの扉を恐る恐る叩くと、『りなさい』と聲がしたので、ドアノブを遠慮がちに回して扉を開けた。

「し、失禮します……」

中へると、まず視界にったのは大きなデスクと高級そうな椅子に座るエドワード先生だ。長い白い髪がデスクに広がっている。

室はシンプルで、床に高そうな絨毯と、向かい合うように置かれたソファと、それに挾まれたテーブルがあった。

俺がどうするべきかと、その場で固まっていると、エドワード先生が両手を組んで顎を乗せて言った。

「よく來たね……グレーシュ・エフォンス君」

久々に聞いたエドワード先生の聲は、老齢者特有の聲がした。だが、俺に向けている視線はとても老齢者の者とは思えなかった。

エドワード先生は目を伏せて、そのまま続けた。

「では、早速本題にろうか。君を呼んだのは君のこれからについてだ」

「僕の……？」

一どういうことなのだろうかと、俺は首を捻った。俺の疑問に答えるようにして、エドワード先生はさらに続けた。

「先日の……エフォンス君とセインバースト君の闘技大會での戦いを見ていたよ。とても素晴らしい戦いだった……それ故に殘念でならない。エフォンス君やセインバースト君のような才能ある生徒を十分に育てる環境が、この學舎にはないんだ」

エドワード先生は言いながら、首を橫に振った。それだけ殘念なことらしい。別に俺はそうは思わなかったし、思ったこともない。それに才能がある生徒というのも、やはり過大評価しすぎだ。俺はまだまだだ……。

「我々教師は生徒の才能をばしていくことが仕事だと……私はなくても思っていてね。君には是非とも、その才能をばしてしいと思っている」

「はぁ……」

妙に遠回しだと思いつつ、俺は何となく返事をした。つまり……何を言いたい？俺が、それを待っているとエドワード先生は咳払いしてから一拍置くと、口を開いた。

「それで、提案があるんだ。君が現在けている午後の授業の講師……変えてみないかい？」

「講師……先生を変えるということですか？」

俺が確認も含めだ問いを返すと、エドワード先生は何も言わず、組んだ両手の上に顎を乗せたままニッコリ頷いた。

う、うーん……野営のギシリス先生が変わっちゃうのは嫌だなぁ……。しかし、先生が変わる……か。場合によっては、何か強くなるヒントがあるかもしれない。どうするかなぁ……。

俺が考えてあぐねているのを見てか、エドワード先生が口を挾んだ。

「一応……もう講師を誰にするかは決めているんだ。剣では一対一でギシリス君。魔では同じく一対一で私だ。野営と弓はそのままだがね」

俺はエドワード先生の言ったことに耳を疑った。剣でギシリス先生と一対一……だと？

ギシリス先生は元軍人なのは本人から聞いていた。しかし、ギシリス先生が強いという確信はあった。

野営の授業で時折、獲を狩る時に剣を握ったギシリス先生の剣閃は目にも止まらないということ表現がぴったりだった。ギルダブ先輩のの突き程では無いにしろ、あんな速かったら避けきれないのは目に見えている。

そんな人とマンツーマンで教われるのか……しかも、ギシリス先生ときたら願ったり葉ったりだ。

それに……と、俺はチラリとエドワード先生に目を向けた。老齢のお爺ちゃんエルフにしか見えないが、聞いた話じゃこの人は有名な元宮廷魔師だったという。

宮廷魔師というのは、軍にいる魔師達の頂點であり、その國の魔の先進者……。

もしも、この人が噂通りの人であるならば……。俺はそこで々なことを考えた。

今の俺に必要なのは知識……それに経験だ。こんな人達に師事して貰えるのならば、むしろこっちからお願いしたい。

そうと決まれば、俺のやるべき事は決まったな。

「是非お願いします」

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エドワード先生がマンツーマンで魔の授業で俺に々と教えてくれるようになってから、早くも一年……俺は魔に関しての様々な知識をにつけていた。中には、エドワード先生の自論もあったけれど……それでも俺は々なことを頭にぶち込んだ。それで、ある授業で興味深いことを知った。

この世界には固有オリジナル魔なるものがあるらしい……。固有魔というのは、言わばその人特有の魔……魔はルーンを構することで生まれるわけだから、作ることが出來るのは當然と言える。で、課題で簡単な固有魔を作る機會があった。

詠唱に必要なルーンには法則があり、それを理解しなければ到底作ることは難しい。文法や、一つ一つのルーンの意味……まさか、こんなところで前世の文系特化の知識が役に立つとは思わなかった。

「まあ、出來なくとも特に問題はないと思うがね」

「どうしてですか？」

俺は羽ペンで固有魔を構するのに必要なルーンや必要な魔力量、系統、形式、規模……その他もろもろを計算し、シュミレーションしながら紙に書き込み、エドワード先生に尋ねた。

「固有魔というのは、汎用魔よりも欠陥だらけだからね」

「欠陥……？」

「……いいかい？汎用魔というのは、昔の人達が長い年月を掛けてルーンを構し、作った魔なんだ。だからこそ、欠點らしい欠點もない……だから汎用と呼ばれ、君たちは學舎で教えられるんけだ。その點、固有魔で生まれる魔が汎用を超えるには魔師としての才能が必要だね」

なるほど……言っていることはもっともだな。俺は頷きながら魔の設計図を仕上げていく。

「……ちゃんと、聞いているかい？」

「あ、はい。聞いていますよ」

だから、こうやって固有魔を作っているんじゃないですかぁ〜。エドワード先生が何と言おうとも、固有魔は作りたい。それが、男の浪漫じゃねぇか！

「……ふむ」

エドワード先生は傍らから俺の書き込んでいる設計図を覗き見てくる。が、直ぐに首を傾げて頭上にハテナを浮かべた。

「の周りに魔力のを張るのかい？そういった防魔は既にある筈だが？」

「それくらい、知っています。中級風屬魔【バリア】ですよね？先生の授業で習ったんですから、覚えていますよ」

【バリア】は風で自分のを守り、敵の攻撃を防ぐ防魔だ。だが、俺が作っている固有魔はそんなチャチなものじゃない。

設計図に細かく文字をれている俺に、エドワード先生は再び首を傾げた。

「……ふむ。何語だい？全く読めん……」

「神聖語じゃないですらね……」

そう、俺はこの設計図を神聖語ではなく日本語・・・で作っているのだ。エドワード先生が読めないのも無理はない。

ちなみに、日本語で設計図を作るのも拘りだ。やっぱり、男は浪漫に生きるべきだろ……まあ、エドワード先生みたいなお年寄りには分からんのですよ。

俺は夢中になって設計図を作っていき……そして、遂に完した。

「出來た！」

「ほぉ……見せてみなさい。あぁ、読めないんだったね……じゃあ、ちゃんと使えるかどうか試してみなさい。そしたら課題は終わりだよ」

「わかりました！」

やった！早速使ってみよう！

俺は何度も何度も試行錯誤して作って、一から構したルーンを紡ぐために魔力保有領域ゲートから魔力保有領域ゲートから魔力を引っ張り出し、口を開く。

「〈鋼鉄の障壁・我がに」

これは初級魔のように、ただ詠唱するだけで発するような魔じゃない。その構造を理解し、魔力を自分で作する必要がある……。

魔力保有領域ゲートから引っ張り出した魔力で、俺は自分のを覆った。

「走れ・閃」

魔力のが微弱の電気を帯びて、微かに放電する。

魔力のは鋼鉄のようにくなり、俺のを保護し、微弱な電流は俺の脳と電気信號で繋がっており、俺のを覆う鋼鉄のスーツをかす。

「燃える巨星・天高く」

を覆うスーツにさらに々と付加していき、絶大なパワーを引き出せるようにする。そして、俺は最後にこの固有魔の名前をんだ。

「切り開け〉【ブースト】」

俺がそうんだ瞬間に呼応するかのように、が軽になり、辺り一帯に突風が巻き起こった。

「お……おぉ……」

エドワード先生の老が、それでよろめきながら後退し、倒れそうになった。

俺は【ブースト】狀態で加速された知覚報で、瞬時に反応し、軽で思い通りにくでエドワード先生の所まで走る。

ズドンッと地面が抉れるくらい強力な腳力で、俺は走って、エドワード先生の背後に回り込んで支えた。

「大丈夫ですか？」

俺が言うと、エドワード先生は驚いたように目を丸くさせた。

「これはこれは……凄いのぉ。強化の類いかい？」

「あぁ……」

俺は答えようとしたが言い淀んだ。強化……確かにそうだ。しかし、し違う。

恐らく、エドワード先生の考える強化というと、筋力増強だとかスピードアップだとか……まあ、々あるだろう。

俺の【ブースト】の理論はこうだ……平たく言えばパワードスーツのようなものだ。某ヒーローのアイデアから生まれたこの魔は、鋼鉄の度にまで上げた魔力のに加え、パワードスーツのような運補助の機能を雷の元素で作り上げているのだ。

強化……とはやはり違うだろう。

パワードスーツってかっこいいね！

「しかし……これは功なのか？」

「え？功ですよ」

「むぅ……」

エドワード先生はどこか納得していないようだ。はて？と首を傾げると、エドワード先生は溜息を吐いて言った。

「確かに凄い……しかし、髪のが変わっているよ」

「え……」

俺は慌てて、エドワード先生を離して髪をばして確認する。目にかかっていた前髪を見ると、黒だった俺の髪のが金に輝いていた。

「あー……」

まだまだのようですね……私は。これじゃあ、パワードスーツじゃなくてスーパーなんたら人だよ……。

それもかっこいいなぁ……。