《一兵士では終わらない異世界ライフ》義勇軍にるために
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義勇軍の本部はゲフェオン領主邸の一室を借りている。そこで義勇軍への志願が可能だという。俺は義勇軍に參加しようと思っているが……そのまえに母さんやソニア姉と相談しないとな。さすがに、勝手に志願するのは忍びない。だから俺は父さんの弔いをした翌日……避難民のキャンプ地の仮住宅用の簡易テントに二人が揃っているときに話すことにした。
「相談したいことがあるんだけど……」
俺が真剣な顔で話すとラエラ母さんもらいつものほんわかとした雰囲気から打って変わって、真面目な表をした。ソニア姉はどうしたらいいのか分からずオロオロとしている。
まだ父さんが亡くなったことから立ち直ってないんだ。仕方ない。
とにかく……俺は話すために一度呼吸を整えた。
「僕、義勇軍に志願しようと思うんだ」
「え……?」
というのはソニア姉からだった。ソニア姉は呆然と俺を見つめたあと、悲しそうに俺の方に寄ってきて俺を強く抱きしめてきた。
「や、だっダメだよ……そんな。戦爭……なんだよ?お父さんも死んじゃって……グレイまで、死んじゃったら……」
俺はゆっくりとソニア姉の抱擁解いた。するとソニア姉は一気にぶわっと泣き出したので俺は困ったように笑うしかなかった。
「……グレイ」
「母さん……」
俺はソニア姉から視線をずらして母さんを見る。そのとき初めて俺は、母さんからとんでもない威圧をけた。
「……」
でも、それに負けちゃいけないと思った。だから俺は目を逸らさないようにじっと母さんを見返す。やがて母さんは諦めたように溜息を吐くとし悲しそうに笑った。
「本當に……グレイはアルフォードの息子だよ。頑固のところなんかそっくり」
「男なんて皆んなそうじゃないかな?」
「言い返すところも……ね」
「そっか……」
ラエラ母さんはふぅ、と息を吐くと言った。
「あなたのしたいように生きなさい」
「母さん……」
母さんの返答に、となりでソニア姉が怒ったようにんだ。俺はそれを宥めて二人に背を向けた。
「絶対……戻ってくるから」
「當たり前……親より先に死ぬなんて許すわけないじゃない」
「あはは。うん……わかったよ」
最後に俺は笑って仮住宅のテントから出た。向かうところは領主邸だ。ここからだとそこまで距離はない。俺は歩いて行き、途中で何人かの人とすれ違いながら領主邸にやってきた。
すると、領主邸の前で見知った顔を見つけた。あの耳と尾は……。
「ギシリス先生?」
俺がそう聲をかけるとピクリと頭についたフサフサな耳が反応して、俺の方を振り向いた。褐の獣人……間違いなくギシリス先生だ。
「……グレーシュか」
「はい。えっと……ここでなにを?」
俺が來るまでギシリス先生は目の前の甲冑を裝備した男と話していたようだが……邪魔してしまったか?
「むぅ……ちょっとな。それより、アルフォードのことは殘念だった……」
「あ……いえ」
なんかっぽい空気になってしまった。當然か……えっと……。
「父さんのこと知ってるんですね。軍にいたるときに?」
「あぁ。私と同期なんだ」
「同期?」
この人って十年くらい前まで兵士やってたんだよな……何歳なのこの人?アルフォード父さんは三十八歳とかだったよな……ギシリス先生めっちゃ若く見えるんだけど。しかし、に年齢を聞くと碌な目に遭わないのを知っているので、俺はその疑問をぐっと飲み込んだ。ここは異世界だ。ギシリス先生は長壽なのかもしれない。
「あいつは同期の中じゃあまり強くなかったな……それでも必死に戦って多くの戦場で生き殘り大師長の座にまで登りつめた男だ。お前の父親は立派な男だ」
「そう……ですか」
なんだか俺は奇妙な気分になった。
「そういえば大師長って軍階級だとどの辺なんですか?僕の知り合いにもそういう人がいるんですけど……」
その知り合いというのは、もちろんソーマだ。
「そうだな……とりあえずかなり偉くて強いってことだ。お前の父親も強かったろ?」
「はい。僕たちを守りながら大勢の敵を倒していました」
俺は即答した。父さんは強かった。
「お前も素質はあるからな。きっとあいつのようになれるさ」
「はい!頑張ります!」
俺がはっきりと返すと、ギシリス先生はしだけ困ったような笑みを浮かべたが、直ぐにいつものような表に戻った。
「それで、ここに何の用なんだ?」
「あ、はい。実は義勇軍に志願しに來たんですけど……」
言った途端ギシリス先生の眉が上がった。
「ふむ……義勇軍に志願……か。父親の敵討ちでもするつもりか?」
「違います。僕はただ……何かできないかと思って」
「むぅ…」
ギシリス先生は暫く考えたあとに俺に向かっていった。
「そうだな。よかろう……私が募集員に紹介しよう」
「え?ありがとうござます……?」
そして俺は言われるがままにギシリス先生のあとについていく。果て、紹介?
俺は首を傾げた。ギシリス先生についてテレテレと歩いていき、俺は領主邸の中に通される。
領主邸の中は俺が思い浮かべていた通りの貴族の屋敷のような造りをしていて、非常に貴族らしいなと思った。
それから領主邸のとある一室に通された。そこには何人かの人がいた。男の人もいるしの人もいる。その人達は取り囲むようにして中央のテーブルにんな資料を広げて何か話し合っていた。
俺とギシリス先生がると視線は俺たちに集まった。
「ん?ギシリスさんじゃねぇか」
「うむ。邪魔するぞ」
「いいさ、気にしなくて。んで?何の用で?」
こいつがこの中で一番偉いのだろうか。一人の男がギシリス先生と喋っている。顔は割といいと思う。アイクほどではないがイケメンだった。マジファックじゃね?
俺がくだらないことを考えている間にも二人は々と話している。
「この子が……義勇軍に志願したいらしくてな。連れてきた」
「ん?」
そこで初めて男は俺を見た。周りの奴らも會話を聞いていたのかギシリス先生から俺へ視線を向けてくる。どれも訝しげな視線だ。
さしずめ…子供が志願?とか舐められているのだろう。まあ、こんな形をしていればそう思われても致し方ないことだとは思うけど……。
「ん〜子供か…子供だよなぁ?ギシリスさん?いくらなんでもそれはねぇんじゃねぇか?」
男の意見はもっともだ。何が悲しくて子供を戦場に送らなくてはならないのか。しかし、ギシリス先生はフッと笑うと言った。
「子供と思って見縊らない方がいい……見た目にわされるな。こいつは……私が剣を教えたのだからな」
周りの人達に揺が走り、男は言葉に詰まるが難しそうな顔をしている。
「うーん……俺たち義勇軍は後方支援擔當だからあまり危険はないけどなぁ。あんたが師事したんなら……確かにつぇぇだろうな。だがわ一応実力は見させてもらってもいいか?それで判斷するってことでよ」
ギシリス先生は男の提案にしばし逡巡したあとゆっくりと頷き、俺に目配せしてきたので俺も頷いた。
「うし、じゃあここじゃなんだし領主邸の庭にいこう。あそこは広いからな」
「わかった。いくぞグレーシュ」
「はい」
俺たちは部屋から出て領主邸の庭へ移する。男は後から行くと言っていたので別行だ。庭は確かに広い。トーラの學舎程ではなかったが……暫く庭でぼーっと待っていると男が何人か引き連れてこっちにやってきた。
取り巻き?とは雰囲気は違うか……とにかくその取り巻きっぽい人達は全員武裝している。義勇軍の戦闘隊員か何かだろうか?
「待たせて悪かったな」
「いや、問題ない」
ぬ?なぜギシリス先生が答えたんですか……試験をけるのは僕なんですけどねぇ。まあ、ギシリス先生の紹介がなければ最悪門前払いだったか……素直に謝しておこう。
ありがたやぁ……獣人さまぁ……。
「それじゃあ……えっとまずは名前を聞いていいか?」
と、男が俺の方を向いていった。あぁ……名前ね名前。
「グレーシュです。グレーシュ・エフォンス」
「グレーシュか……俺はナルク・ナーガブルだ。義勇軍の指揮を執っている」
「宜しくお願いしますナーガブルさん」
俺が一禮して言うとナーガブルは驚いたような顔をしていた。
「へぇーガキにしちゃあ禮儀正しいな。どっかのぼっちゃんか?あと、ナルクでいいぞ」
「ぼっちゃんじゃないですよナルクさん」
なんて會話しながらしだけナルクと親睦を深める。気さくな奴で子供と見て、俺のことを舐めてはいたが馬鹿にするようなじではない。
「つーわけでだ。グレーシュにはこいつと戦ってもらう」
そう言われ、ナルクの取り巻きから一人のが前に出てきた。闇の髪を一つに束ねたなんか大和子みたいなべっぴんさんが出てきた。黒髪人到來っ!
大こういう人って強いんだよなぁ……俺がうへぇってなっているところに、その大和子が自己紹介してきた。
「クーロン・ブラッカスです。宜しくお願いします、グレーシュ君」
「あ、はい。改めてグレーシュ・エフォンスです、ブラッカスさん」
「クーロンでいいですよ。皆んなからはクロロって呼ばれています。そっち呼んでもらっても構いません」
「ではクロロさんで……僕もグレイでいいです」
「じゃあ、グレイ君で」
大和子ことクロロさんは予想に反して結構気さくな人だった。ナルクの影響?それを知るには付き合いが短いので追い追いしるしかないか……。
ともかく、俺はこのクロロというと戦わなければならないようだ。と、そのは俺に問いかけてきた。
「それで、グレイ君はどうやって戦うのですか?」
訊かれた俺は、し躊躇ってから答えた。
「えっと……剣と弓と魔を々……」
「ん?じゃあほい」
ナルクは俺に剣を貸してくれようと、自分の腰にあった剣を俺に寄越してくれた。
「ありがとうござます」
俺はナルクに禮を述べて鞘に仕舞われた剣を引き抜く。ズッシリとした重量をじた。これが剣の重さ……か。今まで何度か握ってきたけれど、いつもと違って重みがある。
よく考えたら冷靜な狀況で剣を握ったのは初めてかもしれない。そう思うってみると途端に剣が重くじた。命を奪う道の重さ……か。こんなの、実際に持ってみなくては分からない。
「どうした?」
ギシリス先生が俺の隣で首を傾げていた。この人はもともと軍人だから分からないだろう。いや、それでも初めてってのは誰でもあるか。ギシリス先生でも俺みたいにこの剣が重くじたことがあるだろうか。
「はじめていいか?」
ナルクの言葉に俺は頷いて、クロロから一度距離を取る。鞘を捨てて剣を両手で握る。重い……。
闘技大會のときと違うな……。
「それでは準備はいいですか?」
「はい、お願いします」
クロロが構えをとったので俺も剣を構えた。そしてナルクの、「よーい、ド〜ン」という間抜けな合図で試験が始まった。
先にいたのは俺だ。その直ぐ後にクロロが一歩を踏み出す。子供の足と見てタイミングをずらしたか……なら。
俺は小聲で初級風屬魔【エアフォルテ】を詠唱した。大きな追い風をけた俺のは、途中で急加速した。
「っ!」
クロロはそれに驚いていたが、直ぐに対応してきた。タイミングを合わせるようにまた一歩遅らせた。
くそ……上手いな。
思わず舌を巻きたくなった。そして、互いに間合いにり、先手を打ったのは俺だ。下から切り上げるよりも、俺は振り下ろす方が早い。
上段に構えた剣を振り下ろす。その攻撃を読んでいたのか、クロロは振り下ろされる剣をガインとけ止めた後、手首を返して俺の勢いをけ流した。
ちょっ!まじで大和子っ!?
心中絶してしまったが、追撃を避けねばと思い魔を行使する。使うのはさっきの【エアフォルテ】だ。
俺は発した【エアフォルテ】でクロロと俺の間に発するような風が発生させ、俺とクロロを同時に吹き飛ばした。
「くっ」
クロロもこの手は読めなかったようで、後方に後退する。俺も風に吹き飛ばされてクロロとなんとか距離をとることができた。
にしてもクロロ……この大和子って義勇軍の志願兵なんだよな?強くね?これでも俺は普通の兵士ならば何度も倒してきている。
つまり、クロロは普通の兵士より強い……でも、クロロは飽く迄も義勇軍なんだ。なんだってこんな人が軍隊にらず義勇軍に……そこまで考えて俺は一つの可能に辿り著いた。
あぁ……冒険者か。
冒険者はラノベとかによく出てくる職業だ。クロロは恐らく冒険者。ギルドとかで依頼をけて獨自に力をつけた人なんだ。
道理で強いわけだ。
俺はクロロの力量を確認し、新たな作戦を構築する。フェイントを織りぜた攻撃……ならば通るか?
もしも、クロロが対人戦闘の経験がなく、魔とかと戦っていればフェイントをかまされることはないはず……。俺は次の手を構築し、行に移す。
クロロも、暫く俺の様子を伺っていたがき出した。俺はクロロの周囲を左回りにグルグルと回転し始める。
クロロはそこで攻撃しようとせずに中央で剣を中段に構えた。迎えうつって?
「はぁっ!」
俺は裂帛の気合いとともに剣を振るう。クロロはそれを難なくけた……が、それは囮だ。俺は攻撃すると同時に地面に手をついていた。さっき風の魔を使ったせいで魔力が半分しかないが模擬戦で全力を出す必要はない。
その半分の魔力のさらに半分の魔力で俺のお得意な【ロックランス】詠唱して発させた。巖の槍が地面から突き出て、クロロに向かっていく。これで俺の勝ちだと思った……しかし、甘かった。
「【斬鉄剣】っ!」
「え?」
クロロがぶと剣がりだした。発した【ロックランス】がクロロに當たるところまでいくと、クロロが俺の剣ごと【ロックランス】を一刀両斷した。
「あぁぁ!?」
というのはナルクのび聲だ。あーこの剣元々ナルクの剣だもんねぇ。
「あ」
クロロはやっちゃったてへ☆みたいな顔をしている。最後のは俺が勝手につけた。まあ、でもこれで勝負は終わりか。俺は大人しく両手を挙げて降參した。
つまり勝負終了の合図。いつのまに集まったのか野次馬達の拍手が聞こえる。俺はというと真っ二つに折れた剣を抱いて涙を流すナクルとそれを必死になってめているクロロが憐れだと思い眺めていた。
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「んんっ」
ナクルは仕切り直すかのように咳払いした後に、話し始めた。
「まずはグレーシュ。お前の実力はわかった。義勇軍はお前を歓迎するぜ」
「ありがとうございます」
俺たちは領主邸の義勇軍本部に戻っており、俺はそこで義勇軍にるに當たっての々な注意事項などを聞いた。
「まあ、まだ的方針は決まってねぇからそれは追って連絡する」
「はい」
「じゃあ、なんか聞きたいことはねぇか?」
俺はナクルの言葉にし唸る。聞きたいことか……俺はそれでチラリとクロロを見た。クロロは、「ん?何か?」という顔を で俺を見返した。
うーん……。
「えっと、クロロさんが使ってた【斬鉄剣』】ってどういうものですか?固有オリジナル剣技ですよね?」
ちなみに俺はそういうのを前にも一度見ている。斬鉄剣じゃないしりのも違うけど……それはギルダブ先輩が闘技大會のときに俺に使った【瞬剣】だ。
「その通りですね」
クロロは腰に帯びている刀の柄に手をれて、言った。すると、ギシリス先生が何かを案じてか、クロロが何か言う前に遮るように口を挾んだ。
「グレーシュはまだ八歳だ」
「八歳……なるほど。グレイ君を師事しいるのはギシリスさんですからね」
クロロは納得したように頷いて、俺に向かって話した。
「グレイ君にはまだこの剣技は早いですよ。魔もそうですが、グレイ君には魔力が足りなさ過ぎます。剣技は魔と同じように魔力を使います。グレイくんは八歳でしたよね?十歳になると剣や魔の授業で魔力向上のために魔を狩り始めるんです」
それはエドワード先生の魔力に関しての授業で既に知っていた。
魔というのは、魔力によって兇暴化したであり、そのには魔力石と呼ばれる石を生しているのだという。その魔力石を、俺たちが得ると魔力が増えるのだという。レベル上げみたいだ。
「男なら小難しい話しするよりさっさとかした方いいんだよ。今からクロロと一緒に魔退治にでもいってくりゃあいんじゃねぇか?」
「ちょっとナルク……」
「え?いいんですか?」
正直ナルクの提案は有難い。俺が子供らしいウルっとした目を向けると抗議しようとしていたクロロが折れた。ふっ、ちょろい。
「全く……まあ、グレイくんの実力ならそこらの魔には負けないと思いますけど」
本來、十歳から始めるのはそういった安全面の問題なのだろう。しかし、俺なら問題ないはずだ。というか、こんなところでたたらを踏んでいるわけには行かない。
「宜しくお願いします、クロロさん」
俺がそう言うとクロロは肩を竦めて言った。
「グレイくんは、あまり子供ってじがしませんよね」
うっ……俺は思わず目をそらした。
「ん?どうしましたか?」
「いえ、なんでも」
中は三十路すぎのオッさんなんだよなぁ……。
俺が、苦い顔をしていると壁際で腕を組んで寄りかかっていたギシリス先生が口を開いた。
「私も同行しよう」
ギシリス先生が……一緒に?
俺の剣の先生であるギシリス先生の実力は十分に知っている。クロロも強いのは分かった。これほど心強いパーティーは無いだろう……しっかし、ショタが一人いるとなんかいけないパーティーみたいだな……。
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