《一兵士では終わらない異世界ライフ》クロロと冒険?
–––☆–––
殘り一週間……さて、どうしようかと思っていたところに、クロロからおいがあった。何かと思えば、俺の実力が知りたいから、ちょっと冒険に出ようとわれた。
ちょっとで冒険ってなによ……って思ったがこの世界ではまったく普通なことのようだ。俺としても丁度一週間何をしようか決めかねていたので助かったところもある。
俺は二つ返事で了承した。
そんなわけで俺は、クロロとゲフェオンの町のり口で待ち合わせをしている。多分、これから、「ごめん待った〜?」「いやいや、全然待ってないよ?」なんていう會話が起こるのだろう。
ねぇか。
バカなことを考えていると、不意に聲を掛けられた。この聲と気配は……と視線を向けると金髪を綺麗に一つに纏めたソニア姉が、両手に何やら沢山抱えて立っていた。
「こんなところで何やってんのグレイ?」
「あ、ちょっと待ち合わせをしてるんだよ」
「待ち合わせ?」
ピクリとソニア姉の眉が吊り上がり、訝しげな視線を俺に送った。俺はとりあえずご機嫌取りに、ソニア姉の手荷を持ってあげることにした。
「それ持つよ」
「ん?いいよ別に」
「いや、いいから」
俺はそう言って強引にソニア姉の手荷を持った。それでソニア姉はしきょとんとした顔をしたが直ぐに笑って、俺にお禮を一言述べた。
「ありがとね」
「どういたしまして……で、これなぁに?」
ソニア姉の持っていたものは、包帯とか傷薬とか、そういう醫療品だった。なんだろう?
「うん。あたしにも何かできることないか探してたの……グレイは戦爭に出ちゃったでしょ?でも、あたしは何もできてないって思って……だから、お母さんと同じように怪我人の人達の看護をしようと思って」
「そっか……お姉ちゃん、頑張ってるんだね」
俺は苦笑した。俺も家族を守るために、何かできることがないかって探して、義勇軍にったんだ。これが正しい選択だったのか正直分からない……。
自信だってないけれど、後悔はしていない。いずれアルフォード父さんのような立派な兵士になりたいとも思っている。
だから後悔はないんだ。
「うん、それでグレイ?待ち合わせって何かな?」
おや?どうやら誤魔化せなかったみたいだ。俺が答えあぐねて苦笑いしているところに、運悪くクロロがやってきてしまった。
「おや?」
「む……」
「はぁ……」
最後の溜息は俺です。幸い、俺の脳で警報は鳴っていないが面倒なことが起こる予だけはしていた。
「お待たせしました、グレイくん」
「いえ、全然待ってないですよ」
「グレイ……くん?」
ソニア姉……そこから突っ込むか。思い描いていたシュチュエーションだったけど、全然嬉しくないよぉ……ふえぇぇ。
「えぇと……グレイくん。この人は……」
「僕の姉です。ソニア・エフォンス……お姉ちゃん、こちらはクーロン・ブラッカスさんだよ」
俺が二人の間に立って、それぞれの紹介をする。ソニア姉は年上であるクロロに臆することなく値踏みするように睨んでいる。
クロロの方はそんな視線に気がついているが、気にしない風で困ったような笑みを浮かべているだけだ。
「クーロンさん……グレイとはどんなご関係で?」
ソニア姉のストレートな言いにクロロは苦笑して答えた。
「そうですね……仲間、といったところですよ。背中を預けられるかは別ですけど」
そういってクロロは俺にウィンクを飛ばしてきた。今度は俺が苦笑する番だった。
「ふーん……」
ソニア姉は意味深な視線を向けたきた。えー……なに?
「まあ、いいです。それじゃあねグレイ。失禮しますクーロンさん」
そう言って、ソニア姉は俺から先ほどの持ちをけ取ると、踵を返して歩いていった。
一なんだったんだ?
「好かれているんですね」
「まあ……嬉しいかぎりです」
前世じゃあ仲は最悪だったもんな……帰ったら、ちゃんとフォローしねぇとなぁ。
–––☆–––
本來、ここで魔退治なんかに行くはずなのだが、何分俺は魔を殺せない・・・・。グリフォンを倒したときにのその話も、クロロにはしてある。
だから、今回俺たちはゲフェオンの町から半日くらいしたところに現れるという盜賊を倒しにいくことなった。
盜賊には賞金がかかっているので、マジ冒険。あれ?俺が知ってる冒険ちゃう……これじゃあ、本當の意味で危険を冒すってやつやん……。
あ、どうでもいいけど危険を犯すだったら卑猥。なにこれ卑猥……うん、本當にどうでもいいね!
(閑話休題)
とはいえ、ここでクロロにある程度俺の力を見せないとダメだ。これはある種の試験でもある。俺の一週間後のトーラの町の奪還作戦の配置は、義勇軍の戦闘部隊ともに敵の本陣に突っ込むこと。
なお、ギルダブ先輩率いる軍の本隊は、市壁の南門で敵本隊を引きつける役目を負っている。その他、部隊の配置もあるが……大まかな配置はこんなじだ。
つまり、俺たちは敵地に毆り込むわけだ。
そこで必要になるのは信頼だ。ここでしっかりとクロロに俺の実力見せないとな。
そんなこんなで半日ほど歩いて、俺とクロロは盜賊の潛む山にやってきた。どうやら山頂に拠點を構えているようで、上からの攻撃に要注意だということ。
こ、これから戦うんですかぁ?歩き疲れたんですけども……関係ないですよね。
「それでは……」
俺はクロロの指示で低姿勢を保つ。なんだかサバゲーやってる気分だ。クロロは慣れているようで、気配を消すのが上手い。が、俺の索敵スキルは見逃さない。
二回と半分の鐘の時……つまりは九時くらいから半日かけてここまでやってきて、辺りは暗い。気配なんか消されたら、クロロを見失ってしまうものだが、俺の臆病なこのスキルはそんな微かな気配にも敏に反応する。
暫くクロロについて行っているとふと、クロロが俺の方を振り返った。
「よく付いてきますね」
「え?あ、はい」
いきなり言われて、俺は慌てて返事してしまった。クロロは慌てる俺を見てクスクスと笑った。
「前に言いましたよね?私は夜髪コクヤ種という種族で、人族の中でも特に長壽なんですよ」
「ええ、聞きましたけど……」
「夜髪コクヤ種の名前の由來はその名の通りの闇の髪なのですが……もう一つ、夜髪種は気配を消すことに長けているんですよ。特に暗闇の中で」
なるほど、その気配の消し方は種族補正がかかっているのか。
「だから、改めてグレイくんを凄いと思いましたよ。自惚れているわけではありませんが、私はこれでも隠行が得意なんですよ?」
「まあ……そうでしょうね」
その忍びみたいな服みりゃあ分かる。
「というか……僕の場合はちょっと事があるんですよ」
前世のときの臆病な俺の危機察知能力。こればっかりは最底辺の人間にしか手にれることはできない……と、思う。
「事?」
「です」
クロロが訊きたそうにしていたので、釘を刺しておいた。だって、前世から転生したんだ☆なんて言って、誰が信じるというのか。いや、誰も信じない。
クロロは肩を竦めてわざとらしく殘念そうにすると、再び前を向いてしずしずと歩き始めた。
俺も隠スキルを使ってその後を追う。暫くして、人の聲が聞こえたので俺たちは木のに隠れて様子を見た。
山頂付近……その場所にあるの前に盜賊が一人、二人……見張りとして置かれている。中からは明かりがれていて、いかにも盜賊がいることをアピールしていた。
バカか……。
俺が呆れても言わないでいると、クロロが突然周りをキョロキョロし始めた。どうしたんだ?
それからクロロは何故か小聲で、「……グレイくん?」と俺を呼んだので返事した。
「なんですか?」
「ひゃっ」
クロロはび上がりそうになったが、途中で自分で口元を抑えて何とかばずに済んだ。
「もう、脅かさないでくださいよ……どこにいたんですか?」
「え?ずっと後ろにいましたけど……」
何を寢惚けたこと言ってんのやら。
「え?」
「え?」
クロロは何を言ってるの?みたいな風だったので俺も思わずそれで返した。
「本當にいたんですか?」
「本當にいましたけど……」
「そ、そうですか」
「?」
謎だ。
それから俺達は気付かれないように、見張りがどこかに行かないか様子見していたが、どこにも行く気配がないので正面突破することにした。
「グレイくんは弓が使えましたね?ることはできますか?」
試すような言い方と表。見張り二人との距離はざっくり五十メートルほどだ。変な音を立てれば、気付かれるような距離。
「じゃあ、やってみます」
「では私は後ろに控えていますね」
そういってクロロは音も立てずにササッと後ろに下がった。多分、俺がるのに失敗してもクロロがフォローしてくれるだろうから大丈夫だろう。
俺は弓を構え矢を二本・・取り出す。弦を引いて目標に向ける。狙うは頭部へのダブルショット……一撃で決める……。
スーッと意識が変わり戦闘モードへ移り変わる。なんだかクリアな頭の中で、風や度やらでける矢の影響を計算して補正を加え地いく。
最近わかったが、戦闘モードの俺はどうも頭の回りが早いようだ。
「シュッ!」
短い気合いとともに俺は弓を放った。二本同時に目標に向かって飛んでいき、見張り二人はその矢に気づくことなく絶命した。
ヘッドショット……完璧だ。
「ほぅ……」
クロロは心したように目を細めていた。まあ、これで実力は示せたかな?
「躊躇いなく殺しましたね」
「………」
クロロの言葉に俺は押し黙った。た、確かに……行不能にするだけでもよかったんじゃないのか?
「良い選択です」
と、クロロは俺が考えていたこととは逆で俺を褒めてきた。
「見張りを生かせば騒ぎになって敵が群がってくるだけ面倒です。その歳にして、躊躇いなく人を殺せるのは立派なものです。林の出來事は本當だったのですね」
ちがうよ……止めてくれ。クロロはどこか殺すことが當たり前という言いだ。実際、この世界じゃそれが當たり前なのかもしれない。
アルフォード父さんだって……。
でも、それは果たして立派なのだろうか。父さんは守るために殺した。俺はどうだ?この弓で、剣で、魔で何のために殺したんだろう。
林とき、俺はあのままではあの兵士の人もアリステリア様の侍のアンナさんも危なかった。そして、そのまま侵攻されていたらソニア姉やラエラ母さんだって……。
うん。なら、覚悟を決めよう。殺す覚悟をな……。
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