を覆い、俺を保護する。覚が研ぎ澄まされ、世界が後から遅れてやって來る……と、男が再び線を放ってきた。

もう一度【ロックシールド】で防いでから、俺は走り出した。【ブースト】の補助作もあって、俺は男との間合いを直ぐに詰めた。

男は線を放ち終えて、直ぐに俺の方に右手を向けてくる。だが、この間合いなら近接の方が速いっ！

俺は背中にある剣を抜き放つと同時に、男に斬りかかる。右上から叩きつけるように振り下ろした剣の刃が男の首元を捉えた。しかし、斬り裂くことは葉わず、男は一歩下がって剣の間合いから抜けて、俺の攻撃を躱す。【ブースト】の補助をけた俺の攻撃は、自分でも速いことを自負している俺としては驚きだ。

やはり過信は良くない。

俺は直ぐに切り返して振り上げる。今度は己の右手で男は俺の剣を防ぎ、そして強引に押し返してきた。

ここで俺は抗わずに一歩下がる。俺はそのまま後方に下がりながら、剣をぶん投げる。武を放り投げるなんて非常識な上に攻撃手段を失うような真似を普通はしない。

それ故に相手の意表をつくことができる。

ブンブンと回る剣が男の部にクルクルと向かっていく。男は右手を向けて線でもって、剣を吹き飛ばす。

そしてその線は、一直線上にいた俺の方までびてきた。

「ぬぉっ！？」

俺はギリギリでしゃがんでそれを躱した。ちょっと髪を掠めたために焦げた。

あぶねぇ……。

「ちっ……ちょこまかと鬱陶しいなぁ！」

男はさらにもう一発線を放ってくる。あの右手の機械はどうやら無制限に放てるようだ。無制限でこの威力か……【ロックシールド】で防げるが正直チートな気がする。

俺は迫ってくる線を、ちょうどしゃがんでいたので地面に手をついて【ロックシールド】を発して防ぐ。轟音と衝撃波がこの広い空間を支配する。俺は【ロックシールド】の影に隠れた狀態で弓を取り出し矢を上に放った。

俺も、的である男の姿は見えていないが位置は完璧に分かる。索敵スキルによって男の気配を敏に察知し、マッピングしたマップ上に男の姿がはっきりと見えているのだ。距離も高さも正確に把握して放った矢は、まさに目視したときと同じような命中率を誇る。放った矢が山なりに男に向かって飛んでいく。線を放ち終えて、俺が何もアクションを起こさないことに男は訝しげな顔して……そして、上から飛んできた矢に気がつき、咄嗟にそれを避けようとを投げた。だが、気付くのが遅かった。狙いは外れたが、矢は男の左肩を抜き、貫通した。が飛び散りが吹き上がる。

「ぐぁっ！！クソガァッ！」

男は目を走らせて右手を向けてきた。また、線を放ってくるかと思ったら線ではなく違った。

機械部から放ってきたのはミサイル・・・・だったのだ。

「なんだよそれ！？」

思わずそうんでしまった。というか、よく見たらミサイルではない……限りなくミサイルの形に近い何かだ。林でも見た奴だ。

魔力を利用して飛んでいるように見える。

高速で近づくミサイルが三本……俺はそれを一本の矢でもって撃ち落とす。

「【フェイクアロー】！」

ぶれた矢が三本になってミサイルを抜く。矢とミサイルの先端が接すると同時に、ミサイルが発し、辺りに黒い煙を撒き散らした。立ち込める煙、視界が遮られているが、俺には男のいる位置が分かる……男はこの煙の中でも慌てず、傷を負った肩を押さえて止しているようだ。

この煙の中では俺がけないと思っているのか……その侮りが命取りだよ。

俺は男に向けて矢を放った。その矢は煙を吹き飛ばし、男のに向かって飛んでいく。

當たる！というところで男は矢に気づき右手の機械部でそれを弾いた。勘のいい奴だ。

「ぐっ……うぅ…ちくしょう。ガキがぁ！」

男は肩を押さえていている。もう終わりだ。俺が止めをさす必要もない……。

クロロがいている男の首を撥ねた。

–––☆–––

「終わりましたね……」

「そう……ですね」

疲れたぁ……マジ疲れた。クロロも相當披しているのか、その場でヘナヘナとへたり込み、刀を地面に突き立ててそれに寄りかかった。

「はぁ……はぁ……ん、ありがとうございました。グレイくんのおかげて助かりました。やはり、強いですね」

「いえ……クロロさんがあいつを疲れさせてくれたからですよ。二人の勝利です」

「そう言っていただけると……私の面子が保てますね」

クロロは疲れた笑みを浮かべて言った。実際、疲れているのだろう。俺は疲れているが【ブースト】を使えばける。

俺はクロロに肩を貸してやり、クロロを立ち上がらせた。

「ありがとうございます」

「いえいえ。それより、メイドさんやあの……の子のところに戻りましょう」

「あ、そうですね。では、すみませんが暫く肩をお借りしますね」

「ええ……あ」

と、俺とクロロは部屋を出ようとしたところで、倒れている男の死が目にった。首はさっきクロロが斬り飛ばしたので死からし離れたところに落ちている。

結構衝撃的な景だが、そんなものはこの世界じゃ當然の様子だ。そう割り切れば気になることではない。

俺の目を引いたのは男の右手にある機械だ。俺もクロロも気になり、メイドさん達のところに行く前に、し寄って見ることにした。

機械部はやはりどこか既視のある造りをしている。林で見た巨大な魔道機械マキナアルマに酷似している。これはその小版ということだろうか……これは一どういうことなのだろうか……。

々と気になることがあったが、とりあえずメイドさん達のところへ行かなくてはならないので、俺とクロロは部屋を出て、あのメイドさん達の元へ向かった。

マッピングした道と気配察知で直ぐに會えた。

「あ、よくご無事で！」

そう言って近づいてきたメイドの一人が俺を見て一瞬だけ訝しげな目をしたのだが、肩を借りて歩いているクロロを見て慌てて治療にった。

多分……【ブースト】で変した金髪を見ての反応なんだろうな。

応急処置の心得があるようで、直ぐに手當てしてくれた。もう一人のメイドさんが俺の手當てもしようとしたが斷った。

ちなみに、彼らの主人は気を失ったままだ。 

治療の終わったクロロは、気恥ずかしげな笑みを浮かべつつも、俺のところへやってきて一言述べた。

「あの……ありがとうございました」

「いえ。大事なくてよかったです」

俺が心からそう言うと、クロロは微妙な面持ちで頬を掻いた。

「うーん……けないところを……」

どうやら、俺に助けられたことが恥ずかしいらしい。いつものクロロだったら、また狀況は違ったかもしれないが、なくとも今回のクロロはユリユリ……じゃなかった、激おこプンプンファイナルリアリティなんたらだったからなぁ……激おこプンプン◯の最上級って名前長すぎて覚えられねぇよ。

てかなんだよ、最上級って……なんなら比較級もあるの？ネット用語でも勉強しなくちゃいけないとか、ネットサーフィンしてる奴らはみんな勉強熱心ですね！

かなり、どうでもいいけどFPSジャンルのゲームも覚えることが多くて參っちゃう。クリアリング、頭出し、マッピング、地雷武……ははん？ゲームでも勉強とか俺氏勉強熱心過ぎる。

（閑話休題）

「お訊きしたいのですが……」

と、メイドさんの一人がそう切り出したので、俺とクロロは視線をチラリと移した。

「私共は、イガーラ王國の王都へと向かわなくてはならないのですが……ここはどこなのでしょう……」

俺はメイドさんの問い掛けを怪訝に思いながらも、答えるために口を開いた。

「えっと……ちょうど王都イガリアから半日くらいしたところにある窟ですよ……？」

答えると、メイドさん達の顔が明るくなった。それから遠慮がちに、俺たちに言った。

「その……助けていただいて差し出がましい申しつけとは十分分かっています！それでも、お願い致します！私共を王都まで連れて行ってはくれませんでしょうか！」

深く頭を下げたその姿勢は……oh、ジャパニーズDOGEZA！！お見事です！この、土下座検定一級の私から見ても嘆の息がれるくらい素晴らしい土下座です。

しかし……と、俺は何かを言おうと口を開きかけたクロロを遮るようにクロロの前に手を出した。クロロは不思議そうに首を傾げたが、俺はなにも言わずにメイドさん達に向かって首を振った。すると、メイドさん達は今にも泣き出してしまそうなくらいに目に涙を溜めた。

はぁ……。

「頭を上げてください。別に斷る訳じゃないんです」

そう言うと、再び明るくなったメイドさん達……なんかオモロイ。

俺は一度咳払いをし、立ち上がったメイドさん達を見て、真面目くさった態度でこうお願いしてみた。

「萌え萌え〜キュン♡……って、やって貰ってもいいですか」

仕草も付けた俺の完璧な作にクロロが若干引いた気がした。ハッ、貴様には分からんのですたい！リアルメイドだぞ！？やって貰わなくてどうすんだよ！それでも玉ついてんのか！？

と、クロロのに俺は視線を向けてから何も言わずに再び視線をメイドさんに戻した。

馬鹿か……。

俺はもちろん冗談であると言おうととして……だが、メイドさん達は真剣なんか顔で、「やります！」といって本當にやってくれた。

とりあえず、俺は申し訳なさと幾分かので微妙なじになりながらも、彼達を連れて、まずはゲフェオンの町へと帰還することにした。