《一兵士では終わらない異世界ライフ》目覚め
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それから暫くのこと……バートゥ・リベリエイジが死亡したことで完全にイガーラ王國の支配制が瓦解。混する民衆に対し、神聖教會の代表でもあるシャルラッハがそこで臺頭し、イガーラ國民を神の名の下に導いた。
これに対して、ベルリガウスは「上手いこと抱き込みやがったなぁ」とシャルラッハを賞賛していたが、シャルラッハはそれがあまりお気に召さなかったようだった。
すっかり王都にある神聖教會の教會を城にしたベルリガウス等は、バートゥとの戦闘以降數週間ほどの時をのんびりと過ごしていた……。
神聖教會の祈りの場にて、今はただ一人ポツンと長椅子に座るエキドナのもとへ、ユラユラとゆったり浮かびながら銀髪の人形――ツクヨミがやってきた。
「エキドナさん」
「あら……ツクヨミちゃん。……どうしたのと尋ねるのも愚鈍なことね。……もう、大丈夫そう?」
エキドナの問い掛けに、ツクヨミは々は言い淀むようにしたが……直ぐに頷いた。含みのある肯定に心配したエキドナは、ものをはっきりと言えないツクヨミのために出來る限りらかく再度訊ねた。
「本當に……大丈夫なの?」
「…………う、ん」
それでも返答はイエス。ならば、ツクヨミを信じてエキドナは待つことにした。最強にして、最高にして、最低なエキドナの主人を。
そして――教會で眠るグレーシュのを世話をしていた修道からある一報が教會に轟いた。その報せに王都の各所に散らばっていた……クーロン、ノーラント、シルーシア、ウルディアナ、ベルセルフ、エリリー、ベルリガウス、シャルラッハ、ラエラは直ぐに教會へと集合することとなった。
既に教會にいたエキドナとツクヨミはグレーシュの眠る部屋にて……ベッドから上半を起こしていたグレーシュに頭を垂れていた。
「お帰りなさいませ……ご主人様」
「お、お帰り……なさい……お兄ちゃん」
グレーシュは跪き、面を下げる二人を一瞥すると肩を鳴らして口を開く。
「……なんか、俺が寢ぼけてる間に々あったみたいだな」
「それはもう……沢山ございます」
「……はぁ。んじゃまあ……もう一踏ん張りと行きますか」
グレーシュは既に狀況の把握を終えていた。
類い稀ない狀況判斷能力、察力、観察力はさすがと言うべきだった。誰から説明されるまでもなく、何があったかを殆ど理解していた。
「さて、もうじきみんなも來るだろう。今後の話をして、行を起こす」
「病み上がりですし……すこしゆっくりされては?」
「ソニア姉が敵の手中にいる……あんまり、悠長なことはしていられないな」
「そうですが……」
が……その後にエキドナが続ける直後に、グレーシュの部屋の扉が開け放たれ、ゾロゾロと人が雪崩れ込んできた。
☆☆☆
なんやかんやと心配させたことや、何やら責められ怒られたりし……最終的に全員と和解したグレーシュは早速今後についての話題を切り出した。と……その前にである。
「ベルリガウス……」
「おう、俺様がどうしたぁ?」
「……いや、事は把握してる。とりあえず、今は味方だと判斷してもいいんだな?」
「おうよ!任せろってぇ」
得意げなベルリガウスにグレーシュは頭痛がするように額へ手をやるが……直ぐに頭を振って気を取り直して言った。
「で……今後の予定なんだけど、対帝國のために々と必要なことがある」
「戦力だな」
グレーシュに続き、ベルリガウスが答えを述べた。これに疑問があったようで、ウルディアナが首を傾げながら口を出す。
「……こちらには多くの達人級の方々に加え、伝説級の方がお二人いらっしゃいますわ。それにグレーシュ様やノーラント様、クーロン様も……それでも、対帝國では戦力が足りないと?」
ベルリガウスは眉を寄せ、ウルディアナの質問に々面倒臭そうに頭をガシガシ掻きながら答えた。
「あっちにゃあ、モーガンの野郎がいやがる……それにだ。一重に敵は帝國だけじゃねぇ。いいか?スプレインの嬢ちゃんよぉ……この世界の勢力バランスは三つになってやがってな?」
「七人の伝説と、七人の魔王、七人の最強によって世界の勢力バランスは保たれているのじゃよ」
ベルリガウスが適當に説明をすることを見越し、シャルラッハが分かりやすいようにウルディアナへと説明してやる。
この世界には七人の伝説の他、魔族が住まうアスカ大陸を7つの領地に分けて統括する七人の魔王、そして霊峰フージの山を登ってクルナトシュへと至った者の中でも最も強い――人類最強の七人。
伝説、魔王、霊峰……この三つによって世界の勢力バランスは均衡を保たれていたわけだ。が、現在ではそのバランスがれている。
伝説陣営も、魔王陣営も、霊峰陣営も一枚巖ではない。それぞれが、それぞれの思でいている。今回……ゼフィアンの帝國側に付いた者、グレーシュ達のように帝國に敵対する者、どちらでもなく中立を保つ者……三者三様。
ここでもっとも問題なのは各陣営のトップ……伝説序列一位のモーガン、魔王にして神話に名を連ねるオールバス、霊峰の長にして今を生きる神話たるミスタッチ……この三人の向だ。モーガンはゼフィアンの味方であるのに対し、オールバスとミスタッチはどちらも不干渉……所謂、中立の立場を取っているというところが問題だ。これのおでバランスが大いに崩れてしまっている。
圧倒的に帝國に敵対している側が不利だ。こういう理由から、戦力増加を図る必要がある。闇雲にソニア救出へ向かっても、手痛い返り討ちに遭うだけだ。
「仲間を集めよう……帝國に負けないくらい強い。そのために、協力者を募る。時間はない……まずはチームを分けようと思う。シルーシアには森人エルフ達に協力を仰ぎに説得をしてもらいたい」
「え?お、オレか?」
「うん。……で、暫くここを拠點として使うから何人か殘ってしい。あとは……」
と、グレーシュが続けようとしたところでベルリガウスがそれに割ってるように口を開いた。
「おっとっと〜ちぃっとばかし、俺様に提案があるんだがよぉ?」
ベルリガウスからの提案という単語に幾分か全員の警戒レベルがあがり、構えた。さすがのベルリガウスはしいじける様に眉を寄せ、ムスッとした様で口を開く。
「こっちに後もう一人……伝説を仲間に引きれようじゃあねぇか」
「……心當たりでもあんのか?」
シルーシアが訊くと自信を持ってベルリガウスは頷く。この場では、それぞれが未だ出會っていない伝説序列6番と5番のことを指しているのだろうと考えるが……察しの良い面々――クーロン、エキドナ、グレーシュ、シャルラッハは頬を引きつらせていた。
「まさか……」
と、シャルラッハが言うと同時にベルリガウスが高らかにんだ。
「セルルカ!セルルカ・アイスベートだぁ。伝説序列3番……のなぁ?」
グレーシュは思わず頭を抱え、一部の面々も口を開けて呆然としている。
セルルカ・アイスベート……つい先日グレーシュと対峙し、破れた伝説の魔師だ。が、今のベルリガウスの発言から考えられるに……グレーシュに殺されたとされるセルルカは生きていて、今なおどこかにいるということになる。
まあ……ベルリガウスにしろ、バートゥにしろ……伝説が々と規格外でしぶといというのは理解できている。できていても、中々スンナリと飲み込めないものだとグレーシュは遣る瀬無い気持ちになった。
「どこにいるんだ……」
「海底王國エーテルバレーだぁ」
「……ぇ」
と、グレーシュの質問に答えたベルリガウスのその答えに逸早く反応して見せたのは……ウルディアナ・スプレインだった。そして、それに続いてシルーシアとベルセルフが「あっ」と聲をらしてウルディアナへと目配せする。
「どうかした?」
グレーシュがウルディアナへと尋ね……ふと、そういえばとグレーシュは思い出す。ウルディアナ・スプレインは魚人族鮫鮫さめ種。海底王國エーテルバレーは、そういう魚人族が住む王國なのだ。ウルディアナがそこの出であるのは明らかだし、なによりもスプレインという名前……世界創生の四大神の名前だ。
神の信仰深い國では、王族が神の名前を冠する場所もある。…………そう、ウルディアナ・スプレインという人は海底王國の王族。そして、帝國との取引で人質として見捨てられた王だ。
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