《G ワールド オンライン ~ユニークすぎるユニークスキル~》第十二話 厄介事
今、勇人の目の前には焦茶の髪に空の瞳を持つ好青年だった。
下手すると紅谷よりもイケメンであり、なら誰もが振り向くであろう容姿の持ち主である。
ヘルメスも十分に整った顔立ちなのだが、アレスはそれを凌いでいた。
「私の町に何のようだ、アレス」
アテナはそんな彼に怖じける事無く、逆に嫌そうな顔をしながらアレスに言葉を発する。
「そんなことは俺の勝手だ、それでだ、お前らが俺の悪口を言ったような気がしたが気のせいか? ヘルメスよ」
勇人は思った。
この人は人に嫌われるタイプだと。
「うーん、急に僕に振られても困るんだけどなぁ……あ、そうだ」
ヘルメスは悪戯を思いついたような顔をし、勇人を見た。
それに気がついた勇人は、ゆっくりとその場を去ろうとするが。
「あの彼が君の事を馬鹿にしていたんだ」
案の定ヘルメスが勇人の見ながらアレスにそう告げ口をした。
アレスはその言葉を聞き、勇人の方を見る。
「うん? この人間がか?」
アレスは今まで勇人がいることに気がつかなかったような仕草をし、言葉を発した。
「そうだとも、僕はやめとけって言ったんだけどね」
今までの會話で勇人がヘルメスに対して思う事は、悪戯好きで好奇心旺盛の人なつっこい神という認識に固定されていた。
現に今現在も、面白い方へと導している。
「人間風が、俺の悪口とはな」
アレスはすっかり信じたようで、勇人に対して見下したように言葉をはなつ。
本當に嫌なやつだと心底勇人はじる。
「いい加減にしろヘルメス、それにそんな簡単に信じるお前も大概だがな」
そこへアテナが話しに割ってはいる。
しっかり、アレスに毒を吐いて。
「なんだと? アテナ、今何と言った?」
アレスは誰もが予想したとおり怒り、言葉を吐き出す。
ヘルメスとアテナは慣れっことばかりにヤレヤレと肩を竦めていた。
「そうか、せっかく遠回しに言ってやったんだが、バカなお前には直接な言い方しか伝わらなかったか」
アテナも相當アレスが嫌いのようで、今まで冷靜だったアテナがしあつくなっていた。
ヘルメスは相変わらずひょうひょうとしており、勇人は一刻も早くこの場から去るべくしずつ後退していく。
「もうお前の戯言は聞き飽きた、今すぐ殺してやる」
アレスは腕を前に出すと、何もないところから剣を出現させてそれを摑み取る。
それに対してアテナは未だ呆れ顔のままアレスと対峙していた。
「相変わらずの、戦闘馬鹿、そして唯一の取り柄といっても良い戦闘事態もそこまで強くないと來た、お前が私に勝利したことがあったか? アレス」
「過去の栄にいちいちすがるとは落ちたなアテナ」
「挑発もその程度か、馬鹿は語彙も足りないのか」
アレスとアテナはだんだんとヒートアップしていきこのまま戦闘に発展していきそうな雰囲気だ。
それでもヘルメスは狀況を楽しんでいるようだった。
「ちょっとストップ、お二人とも」
勇人が仕方が無く二人の喧嘩を止めるために口を出す。
「あぁ? なんだお前」
「勇人よ、いくら君でも私の事に口を挾むことは許さないぞ?」
「いやいや、このまま二人が戦闘でもして下さい、きっとこの町に相當な被害が起きますって、アテナさんはこの町の守護者なんでしょ? それでいいんですか?」
「う……それもそうだな、私としたことが熱くなってしまったようだ」
アテナの方は説得出來た勇人だったが、アレスの方は未だ剣を構えたままだ。
「人間ごときが神に意見だと? アテナ、お前もだ、そんなやつに説得されやがって……ん? そうか、貴様がアテナの駒か」
駒という言い方にムッとなる勇人。
その言い方にアテナも呆れ顔になる。
「アレス、駒というのは語弊を招く言い方だ、そんなことを言っていると協力者が得られなくなるぞ」
「語弊も何も、実際そうではないか」
「はぁ、何を言っても無駄なようだな」
アテナはため息をついて首を振った。
「そんなことはどうでもいい、おいそこのお前、アテナの駒なのだろう? ならば俺が直々に相手をしてやらんでもない」
アレスはニヤリと笑みを浮かべて勇人に聲を掛ける。
勇人はチラッとアテナを見るも、アテナは呆れを通り越して諦めの表を浮かべていた。。
「アレス、お前はもうし事を考えてからだな……」
「お前には聞いていないアテナ、そこのお前だ、まあ斷った場合はこの町の人間を皆殺しにするがな」
アレスは楽しそうに笑いながら言った。
この発言にはアテナも眉間にしわを寄せ、勇人を見る。
これで勇人はアレスと戦闘しないといけなくなってしまった。
「すまない、君に面倒事を押しつける形にしてしまって……私があいつをやってもいいのだが、あいつ相手では加減を出來る自信がない、そうなればこの町にも被害が出てしまうだろう」
アテナは申し訳なさそうに勇人に頭を下げた。
神がそんな簡単に頭を下げて良いのかと勇人は驚いたが、そこへアレスが口を挾む。
「どうした人間、よもや怖じ気づいたのではないだろうな?」
さすがにアレスの態度に勇人はイライラが溜まっていた。
「分かったよ、やれば良いんだろ」
「それで良い、さあどこからでもかかってくるがよい」
「お言葉に甘えて!」
すかさず白金の剣プラチナソードを取り出し、勇人はアレスへ斬りかかった。
それにアレスとアテナは驚き、ヘルメスは興味深そうに瞳を細めた。
「っは、人間にしては良いを持っているな」
「うるせえよ!」
勇人が振り下ろす銀の剣筋をアレスが持っている剣で防ぐ。
両者が何度も何度も武を重ねることで辺りには甲高い金屬音が響き渡っていた。
武のグレードとしては、幸運な事にアレスは神話上有名な武が無く、勇人の白金プラチナの剣と同程度の能だった。
「この、人間風が!」
アレスが思いがけない苦戦に苛立ちの聲を上げ、思い切り武を振るう。
かろうじて勇人は一歩下がることでそれを避け、剣を構え直す。
「……人間にしてはやるようだな、そうでなければ困るが」
「いちいちうるさい野郎だな」
普段は穏やかな口調の勇人だったが、アレスに対してはトゲトゲしい口調に変化していた。
勇人は決めていたのだ。
アレスには遠慮はしないと。
「ははは、戦いとはこうでなくてはな」
アレスは勇人と剣をえながら、興したかのように聲を荒らげる。
相変わらずうるさいやつだと勇人は思いながら剣を振り続ける。
今のところ一進一退である。
「どうした? 重さが無くなってきたが、もうバテたか?」
「ちげえよ、お前と違って筋馬鹿じゃないからな」
「っは、減らず口を」
とは言ったものの勇人のスタミナは確実に減っていく。
いくらゲーム世界での威力が向上したものの、スタミナは無限ではないのだ。
対して、アレスは疲れる素振りも見せず、かえって剣のキレは増してきていた。
そこへアレス、勇人、両者の間にまばゆいと轟音が現れる。
そのに勇人は目を細め、次に現れた衝撃によって、勇人のは後方へと吹き飛んだ。
何が起こったのか分からない勇人は呆然と前方を見つめる。
そのが落ちた場所には大きなクレーターの様なが出來ていた。
アレスも勇人と同様に後方へと飛ばされていたようで、顔は優れない。
「あらら、父上にばれちゃったか」
そこへヘルメスがそう聲をあげた。
「父様が干渉するなんて珍しいこともあるもんだ、もしやヘラ叔母様に仕置きを食らったか……」
続いてアテナがそう呟く。
勇人は二人の會話を聞き、この閃を生み出した者を考えつく。
ギリシャ神話の最高神ゼウス。
この場にいる、アテナ、アレス、ヘルメスの父親であり一瞬で世界を焼き盡くす程の力を持つとされている神だ。
「……ゼウス様がこれを?」
思わず勇人はアテナに質問をする。
アテナはその質問に頷いて肯定の意を示し言葉を発する。
「そうだ、いつもは何も言わないんだが……今は不機嫌の様だな」
アテナは微笑んでそういい、アレスの方を見つめる。
アレスはもう戦意がないようで、武を持っていなかった。
「ッチ、人間、命拾いしたな」
そうだけ言ってアレスは何処かへ去っていく。
それを見屆けた勇人はホットしその場に寢転がった。
「はぁー、勝てる気がしなかった……」
勇人は悔しがる素振りも見せずボソッと呟く。
正直、全く勝算が無かったので生きていること自が勇人にしては上出來だったのだ。
「それにしても、タイミングが良すぎるよな……」
その勇人の呟きにアテナが反応する。
「君もそう思ったか、私もだ、そうか……ヘルメスお前の仕業か」
アテナはそう言い、ヘルメスの方を見ると、ヘルメスは相変わらずニコニコと笑みを浮かべたままだ。
「そうかもしれないねー、まあご想像にお任せするよ、じゃ、僕も良いものを見られたんでそろそろ行くね」
ヘルメスは笑顔で手を振りながら去っていった、
「えっと、どういう事です?」
勇人は困した様子でアテナに尋ねる。
「そうだな、ヘルメスは簡単に言えば、父様、ゼウスの手足のようなものだな、ヘルメスがいるところには父様がいると言っても良いだろう」
「そうだったんですか」
「安心しろ、父様はアレスとは違って戦闘狂ではないさ、むしろアレスは神々の中では嫌われ者だ」
アテナは勇人にそう説明した。
アレスの立場の説明には勇人は直ぐに納得出來たのは當然ともいえる。
そしてアテナは勇人をまっすぐと見據え言葉を発する。
もちろん、勇人はもう立ち上がっている。
「り行き上だが、アレスに君が私の代理人だという認識がされてしまった以上だな……」
アテナは言いにくそうに言葉を紡いでいく。
勇人はそれを察して言葉を発する。
「分かりました、自分はアテナさんの代理者になります」
「そ、そうか、これから宜しく頼む」
アテナは嬉しそうに笑みを浮かべ、勇人とかたい握手をわした。
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