――私は、何を勘違いしていたのだろう。

驚愕の表を張り付けたままのラルくんの頭が、くるくると回りながら空中を舞う。

そして、嫌な音を立てて広場の地面に叩きつけられた。

頭蓋が砕け、その中と共に赤黒いがぶち撒けられ、地面を汚す。

エーデルワイスがそれを見て、これ以上ないほど満足そうな顔で頷いていた。

私はそれを、ただ指をくわえて見ていることしかできなかった。

なにも、できなかった。

「うっ……うううううぁああああああああああッ！！！」

ぶことで楽になれるのなら、もうとっくに楽になっている。

んでいるのは、ただ目の前にある現実を直視できないから。

「あら、どうしたのアリス。気がれてしまったのかしら」

エーデルワイスが、心配そうに私の顔を覗き込んでくる。

吐き気を催すその姿に嫌悪を覚える余裕すら、今の私にはなかった。

勘違いだった。ただの思い上がりだった。

異世界に転生して、圧倒的な才能とこの世界の全てを奪えるほどの力を手にれて、自分なら何でもできると思っていた。

何が『大罪』の『傲慢』だ。

何が『終焉の魔』だ。

本當の私は、たった一人だけのする人すら幸せにすることができない、どうしようもないじゃないか。

「あぁ……いやぁぁぁぁあぁああああっ！！！」

目をつぶり、頭を振りながら否定の言葉を口にする。

今の私にできるのは、狂ったようにび続けることだけだ。

……だから、気付かなかった。

自分のがいつの間にか、赤い棺の前まで引き寄せられていることに。

「――――ッ！？」

棺の隙間からびる闇霊でできた手が、私を拘束している十字架ごと私をここに引っ張ってきたのだと、遅れて理解した。

あまりにも濃すぎる闇霊の気配に、私ですら寒気をじる。

だが、その中に懐かしいものをじるのもまた事実だ。

それはおそらく、私のがあの棺の中にっているからなのだろう。

「私が、しいの……？」

闇が鳴めいどうする。

それは、私の言葉を肯定しているように思えた。

「……そっか」

ラルくんさえいれば、ほかに何もいらなかった。

心の底からそう思っていた。

だから、私が出した結論も、これ以外には考えられなかった。

――ラルくんを取り戻す。

たとえどれだけの犠牲を払ってでも、世界からあなたを取り戻してみせる。

「そのためにはまず、を取り戻して『憤怒』を奪わなきゃ」

『憤怒』は、人間の魂を司つかさどる。

あの悪辣な魔師――カミーユなら、間違いなく彼の魂を縛り付けているはずだ。

……それならまだ、可能はある。

ラルくんを取り戻せる可能が。

そして、そのあとは――、

「やっぱり私、嫌な子だ……」

また、私は罪を重ねる。

きっと彼は許してくれないだろう。

でも、それでもやらなければならない。

はじめから、すべてをやり直すために。

私は自分の意思で闇にれた。

その途端、私の意識は急速に沈んでいく。

「――――」

二度と、戻って來られないかもしれない。

そんなことをぼんやり考えながら、私は心地よい闇にを委ねる。

そして私は、意識を手放した。