――懐かしい思い出に浸っていた意識が、現実へと帰ってくる。

そうしている間にも、カミーユのに突き刺さっている『常闇の蔓』はその數を増やし、彼の存在を食らっていった。

「あとは、任せましたよ……」

驚愕に目を見開くエーデルワイスの姿に、カミーユは場違いな傷を覚える。

思えば、『憤怒』に覚醒してから、エーデルワイスとはずっと共に過ごしてきた。

よき友人だった。

『』の魔師エーデルワイスならば、必ずこの世界の罪を裁くことができる。

そう信じて、『憤怒』の魔師カミーユは、その瞳をゆっくりと閉じる。

自の中から、徐々に『憤怒』が抜け落ちていく。

それは紛れもなく、何本もの『常闇の蔓』によってカミーユの存在が削られている覚に他ならない。

「おや？」

もはやなど無くなったはずの視界に、一點のが差し込んだ。

は、徐々に人の姿を形作っていく。

その姿が明瞭になると、カミーユの頬から一筋の雫がこぼれ落ちた。

「……そうですか。一緒に、來ていただけますか」

その呟きは誰にも聴こえることなく、闇に溶けていく。

返事が來ることなどまない。

ただそこにいてくれさえすれば、それで十分すぎた。

「しています。あなただけを、いつまでも」

萬の想いを込めて、目の前で微笑むしい夫の手を取り、カミーユは暗い奈落の奧底へと沈んでいく。

その手を最後まで離さないまま、カミーユの意識は霧散した。