《超迷宮奇譚伝 『このアイテムは裝備できません!』》可能を考えれば、無限にある
「なんの音……鳴き聲だ?」
魔だろうか?
僕は、自分の裝備を確認する。魔避けの効果は継続中だ。
魔以外の生……あるいは探索者がいるのか?
いや、魔避けを無効にする魔がいる可能も……
脳裏に高名な探索者の言葉が浮かぶ。
『可能を考えれば、無限にある。 ここはダンジョンであり、何が起きても不思議ではない』
だったら、ここに陣取っていても安全とは言い切れない。
生き殘るためには……不安要素をしなければならない。
松明型の道を地面に突き刺した。倒れないように、周りに石を積んで固定する。
即座に逃避できるようにバックパックは置いていく。
中の半分―――特に重要な道だけは持ち運べるように別の袋に詰め直し、背中に背負った。
もしも、ここに戻れなくても、暫くの生存は可能……のはず。
一歩、一歩、地面を踏みしめる毎に心臓の鼓が響く。
それに比例して、鳴き聲はハッキリと聞こえてくる。
そして――――
「……落石?」
大きな巖。それに追隨したように石と大量の土。
それらが、土砂崩れのようにダンジョンの通路を塞いでいる。
生の鳴き聲はそこから聞こえてきているみたいだ。
「けど……どこだ? この鳴き聲はどこから?」
どこを探しても、鳴き聲の主の姿は見えない。
この下、土砂崩れに巻き込まれたのか?
なぜだろう? 自分の側から湧き出てきたのは、不思議なだった。
この時、僕は助けなければならないと、不思議な使命が芽生えていた。
助けた結果、その相手が魔で、食い殺される可能は頭から抜け落ちていた。
なにか、こう……うまく言えないけれども……確かな予めいたもの?
それが自分よりも、遙かに上位の存在であり、助けなければならないと無意識に理解している。
それが僕を突きかしている。 失敗は許されない。 慎重に、そして迅速に――――
地面を掘り起こしていく。
そして――――
「いた!」
空間? 土の中、ソイツのを守るように小さな空間が存在していた。
魔力で自分の周りだけ防壁を作っていたのか?
僕は、そんな事を考えてる最中――――
ソイツと目が合った。
そう認識した次の瞬間、ソイツは僕の顔面に襲い掛かってきた。
悲鳴を上げる隙もなく、僕の顔を覆うソイツ。 その勢いで、後ろへ倒れた。
生きる罠を化したスライムを連想する。
僕は混しながらも、背中を浮かし、短剣を……あれ?
様子がおかしい。 まるで―――― まるで、実家で飼っていた子犬がジャレついてきてるようなじ……
いや、実際にジャレている? ソイツは僕の顔面をペロペロと舐めまわしていた。
「なんだ?何なんだ?お前はって…… え?」
僕はその生を知っている。
いや、僕だけではない。誰だって知っている。そして、誰も見た事はない。
神話の世界。あるいは古い冒険譚でしか登場しない生。
現実と架空の境界に存在すると言われる生。
まるで爬蟲類をふっくらと太らせたような型。 背中に生えた翼に尖がった牙と爪。
手と足もある。そう、その生とは――――
「もしかして、お前、ドラゴンか? その子供か?」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
『ドラゴン』
それは生であるという説。 それは魔であるという説。 何かわからない未知の存在説。
要するに正不明の生であり、この世の中に存在しているかどうかも怪しいと言われている。
人間を遙かに超える英知と魔力。 そして、単純に巨大な。
単純に魔という種類カテゴリーに分類するには、規格外すぎる。
ゆえに神話生。 それが、僕の顔面に張り付いたモノの正だった。
「……どうするんだよ? これ?」
ドラゴンは、僕の足に頬をりつけている。
要するに完全に懐かれたわけだ。
もしも――――コイツを連れてダンジョンから出できたら……國が買える。
冗談でも、大げさでもなく、本當に小國くらいの領土は購できる。
つまり、國王だ。 それくらいの価値はある。余裕である。
無論、売っぱらってしまえばの話だ。
しかし、それが現実になるのは、ダンジョンから無事に出できたらの話だ。
むしろ、コイツの出會いで、現狀の困難さを実してしまった。
「長い間、人類と流がなかったドラゴンが存在する階層なんだよな……」
絶的だ。 ここがなくとも100層よりも下――――人類が未踏破の領域だとわかってしまった。
唯一の幸運は、100層以下の魔にも、魔避けの効果があるという事だ。
効果がなければ、今頃はの原型すら殘っていなかっただろう。
最も、魔力避けの効果が永遠に続くわけではない。 それが盡きた時が……
「いや、ダメだ。そんな事を考えてたらダメだ!」
僕は頭を振るい。 ネガティブなを振り払う。
大丈夫、僕が落下した場所をオントが見ている。 そこ中心に調べてくれれば……きっと!
僕はバックパックを置いていた場所に戻り、を休める。 火を起こし、食糧に熱をれる。
殘りの食糧は……3日分。 魔力避けの道も同じ3日分の効果だ。
とりあえず、3日は生き延びれる。 たぶん……
簡易的なスープと乾燥させた。
僅かな食事を口に流し込む。
気がつくとドラゴンの子供が「くぅん くぅん」と甘える犬のような聲をだしていた。
「ん~ お前も食べたいのか?」と僕が聞くと、子供ながらも鋭い牙の群れから、大量の唾をらし始めた。
「もしかして、お前、人間の言葉がわかるのか?」
いや、ない話ではない。なんせ、コイツはドラゴンの子供だ。
そんな事を考えながらも、食事をソイツに分け與えた。
すると、ソイツは凄まじい勢いで食を開始した。
「すげぇ、食べるんだな。お前…… ん?」
流石のドラゴンでも、落石で無傷とはいかなかったのか、足に流が見て取れる。
ドラゴンにも回復薬は聞くのかなぁ?
ここに落ちて、最初に使った直接に注するタイプの回復薬はダメだろう。
ドラゴンのに回復用の魔力を注するなんて、何が起きるかわからない。
そもそも、針をに突き刺して注して、敵対行と勘違いされたら灑落にならない。
正直、こんな子供のドラゴンでも、戦闘になれば勝てる気がしない。
……というより、確実に瞬殺されてしまう。
僕は、複數の薬草を混ぜて、化させたタイプの回復薬(塗り薬)と取り出して、傷口に優しく塗ってやった。
ドラゴンも治療をけていると理解しているのか、甘えた犬のような聲を再び出している。
(さて……これからどうしたものか?)
そんな事を考えながら、僕は就寢の準備に取り掛かった。
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