《超迷宮奇譚伝 『このアイテムは裝備できません!』》別れ 帰還 謝罪 疑
『本當にいいのですか?ダンジョンの外じゃなくて?』
「あぁ、構わないよ。ダンジョンで行方不明になった僕がダンジョンの外で発見されたら、必要以上に疑われたりするだろうから」
1層まで送り屆けてくれれば自力で帰還できる。そのくらいの実力はあるつもりだ。
しかし、僕の返答にドラゴンは首を捻る。
『それじゃ、サクラさんは、この邂逅をにするのですか? 折角、1層から348層まで移する手段が見つかったって言うのに?』
ドラゴンの言う通りだ。 だが、僕はこのアイテム――――『竜の足枷』を人に教えるつもりはない。
僕の実力にすぎる武アイテムだし、の丈に合わない武は他人から狙われやすい。
武自も…… あるいは所有者の命も…… だから、僕はこの武を匿する。
それに、僕の験談は、他人が聞いたら酷く荒唐無稽な容でしかない。
果たして、信じる人間が1人でもいうのだろうか?
それらの事から、僕はダンジョンの出來事を他言にしないと決意を固めた。
もしも、この事を他人に話すならば――――ドラゴンからけ取った武に相応しい人間になった時だけだ。
……もっとも、簡単に348層に人類がたどり著けるようになったとしても、その階層を進むほどの力を人類は有していない。
それが一番の理由…… もちろん、今はまだ……
「うん、それは僕らにとって、まだ早すぎるだろうからね」
僕は、そう呟いた。
ドラゴンも、それだけで理解したのか『……そうですか』と呟き返していた。
『それでは、いきますよ!』
ドラゴンの魔力が一ヶ所に集まっていく。
まるで世界の理法則が、大きくねじ曲がり、れていくような魔力。
やがて、空間がれにれて、扉が生まれた。
『さて、サクラくん。この扉をくぐれば、貴方の日常へ戻れます』
ドラゴンの言葉に、おもわず僕は笑う。 そんな僕をドラゴンはキョトンとした様子で見る。
「最後に教えてあげるよ。僕らの――――いや、僕ら探索者の日常は、ここダンジョンを指すんだよ」
そう言って僕は、扉を開いて潛り抜けていく。
その背後から、ドラゴンの聲。 僕の言葉が気にったらしく、笑い聲が混じっていた。
『それでは、また。いつか再びお會いいたしましょう』
それは、今度は実力で來い。ここ500層まで……そういう意味だ。
可能は0に等しい。 けど――――僕は頷いてみせた。
「あぁ、また會う。絶対に!」
そう言ってドラゴン親子と別れを済ませた。
1層に到著した僕は、すぐさま捜索隊に発見され學園に戻る事ができた。
そして次の日――――
場所は醫務室。 発見直後から異常はないか検査が行われていた。
そんな場所で大きな聲が響いた。
「すまなかった!」
その聲の主は、オム・オントだった。
彼は、頭を下げて微だにしない。
「お前を編から連れ出し、こんな事にあわせてしまった。それも、俺のくだらぬ矜持なんかのために」
よほど力を込めているのだろう。の端から赤い滴が零れ落ちている。
いや、だけではない。強く、強く握りしめた拳からが流れ落ちている。
そんな彼を、僕は慌てて止めた。
「いや、僕が崖から落ちた後、君が盡力を注いでくれた事は聞いているよ」
彼は自らも探索チームに志願してダンジョンを駆けまわったそうだ。
それだけではなく、自分の家にも協力を仰いだ。
國家管理下の探索者養機関であるシュット學園に、國家指定ダンジョン貴族の介を強行しようとしていたらしい。
同じ國家の元で働く組織であれ、全く違う命令系統の組織に連攜を取らせようと走り回っていたという。
実現すれば、危なく歴史がく所だった。
そんな大仕事に挑んだ彼は、実際にダンジョンで遭難した僕以上に疲弊して見える。
しかし――――
「すまない……本當にすまない……」
當の本人は謝罪を止めるつもりはないみたいだ。
……どうしたものか?
その後、検査報告のために來た教員によって、オントは追い出されるまで、彼の謝罪は続くのだった。
「――――さて」と醫務室の教員は椅子に腰かける。
長髪を後ろにまとめた髪型は印象的な先生だ。
本當に20代なのか?疑ってしまうほどの顔。 それでいて整った顔立ちで子生徒から人気が高い。
名前はなんだったか? 確か――――
「……キク」
僕は、何を言われたのかわからず、「え?」と聞き返した。
「本名を覚える必要はない。名前がわからないならキクとだけ呼べ」
「あっ、はい、……キク……先生?」
「……」
彼は無言で資料らしい羊皮紙を巡っている。
そんな重い空気に耐え切れず、「あ、あのキク先生?」と聞いてみた。
すると、彼は一言だけ発した。 「わからん」とだけ。
続けてキク先生は質問をしてきた。
「お前、本當は、あのダンジョンで何があった?」
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