《超迷宮奇譚伝 『このアイテムは裝備できません!』》者あり オム・オント
僕は無意識に自分の手を見た。
手の中部にめられた武。龍の足枷ドラゴンシール……最強の武。
それを賭けろと?
「おい……、サクラ?どうしたんだ?」とケンシの聲。
「え?」と顔を上げる。
ケンシだけではなく、コロちゃん様も僕の顔を見ている……いや、2人だけではなく、話を聞いていた周囲の人間も訝しげな表で僕を見ている。
思わず、揺。ドッキっと心音が高鳴る。
「い、いや、なんでもない」と、僕は誤魔化そうとする。
迂闊だったのかも知れない。 王族との賭け。負けたら所有している道アイテムを全て譲渡する。 普通に考えたら、躊躇する理由はない。 平民出の僕が、王族用達の裝備一式を手にれるチャンスになるからだ。
それらの金銭的な価値は、計り知れない。
とりあえず、最低でも、一生食い扶持に困らない額にはなるだろう。
周囲の人間は、僕にデメリットがないと思うのが普通である。むしろ、一攫千金のチャンスであると思うのが普通だ。
まさか、僕が最強の武を所有しているとは……誰も思わないだろう。
「ふむ、妙な奴じゃな。それでは、構わんのだな」
「え…… いや、何て言うか…… 僕は最近、別の人間と決闘したばかりなので、それにダンジョンで行方不明になって……帰還したばかりと言うか……なんというか……」
僕は必死に言い訳を考える。しかし、斷るための決定打にはならない。
どうする? いくら考えを巡らせても回避できそうにない。
「ちょっと、待って貰おうか?」
いきなり、聲がした。大きな聲だった。
だれ?と聲の方向へ顔を向ける。
そこにいたのは――――
オム・オントだった。
オントは、こちらに向かって歩いてきた。
王族相手でも怖じしない態度。
客観的に言えば、決して褒められたものではないのかもしれないけど……
「コロロアコロ様。そちら様には悪いけど……」
「コロちゃんと言え」
「……」
ヤバい。オントのやつ、王族相手に無言で睨み合ってる!?
「……いや、コロロアコロ様、悪いのですが…… コイツとは再戦の先約があるので譲るわけにできないんですよ」
「ほう……譲れぬか?」
え? 再戦の約束なんてしたけ?
というか、オントとコロちゃん様は両者は、互いの顔と顔が接するほど、近づいて睨みあってる。
……ヤバい。
「お主、名前は何と申す?余の會話に割ってってくるとは、良い度というやつじゃな」
「……オム・オントって言う。一応は貴族だ」
「ほう……オム家……知らぬ名だ。で?貴族風が、どんな理由があって余の決闘にケチをつける?」
「そちら……王族だったら、決闘と言っても決闘代理人がいるだろ? 決闘って言っても自分じゃ戦わないから、そんな態度でいられるんじゃないか?そんな考えも頭に浮かんだものでね」
え?決闘代理人? そういえば……
そう言えば、聞いた事がある。
決闘は國が認めた正當な手段だ。己の権利、主張、名譽……エトセトラエトセトラ
それらを賭け、あるいは守るための神聖な戦い。
しかし、問題は王族にも適応されてしまう事だ。
王に勝って拍を付けたい。敵國の人間が、王に恥をかかせるためだけに決闘を申し込む。
あるいは、暗殺目的…… さらには王位継承権を賭けた王族同士の凄慘な戦い……
ならば、王族を決闘の決まり事から排除した例外として取り扱えばいいではないか?
そんな主張もあったが、國を統べる王が敵からの挑戦に背を向けてはならない……そんなマッチョイズムによって一蹴させた。 結果として、王族の代わりに決闘をける決闘代理人という制度が生まれたらしい。本末転倒だ。
敵から逃げるのと、別人に役目を肩代わりさせる。それほど、違いがあるとは思えないのだが……
「卑しい分の人間が考えそうな事よな。代理人の何が悪い?王たる者の兵もまた、王の力よ」
「なるほど、じゃ、コイツの友達ダチもコイツの力って認めるかい?」
「ん……? それはいったい?」
「コイツの決闘代理人を俺が引きけるって意味だよ」
「良いだろ?おい?」っとオントは僕とコロちゃん様の両方をみる。
コロちゃんは「余は構わぬ」と笑いながら一言。 それを見てオントは満足気だった。
もう、僕の意見はらない。 當事者(?)の意志は無視され、話が進んでいく。
「では、余の代理人を紹介しよう」
紹介する?今?ここで?
そんな疑問も一瞬で消滅した。
ソイツは、そこに立っていた。
食堂にいる生徒たちの気づかれる事なく、コロちゃん様の後ろに――――
ソイツは、そこの立っていたのだ。
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