《負け組だった男のチートなスキル》another story 勇者たち②
【勇者サイド】
城の一室にあるベットで寢転がっているのは古井沙紀だ。彼は訓練終わりで疲れきっていた。毎日の訓練は、平和ボケしていた地球の生活では考えられないほど、ハードなもので、いくら異世界人補正がついていようとも、神的にも的にも疲労がたまるのは當然のことだった。
そこに部屋の外から聲が聞こえてくる。さすがに防音技は地球よりは優れていないらしい。
「なぁ聞いたか? 一年の月だっけか、見つかったらしいぞ」
「まじか! そりゃあ良かった」
その聲は、昨日から行方が分からなくなっていた、星野月の発見を伝える會話だった。
沙紀はその言葉を聞いて、ベットから起き上がる。だが、このまま部屋を飛び出しても下手に注目を集めるだけだ。
沙紀は深呼吸をして落ち著きを取り戻した。
「月ちゃん……良かった」
沙紀は安堵の息を吐きながら呟いた。沙紀と月は同じクラスで時々話すような仲だった。そのため、心配するのは當然のことだ。
その後、部屋の外にいる生徒たちがいなくなったのを確認した後、沙紀は月が運び込まれている部屋へと向かった。
部屋へ向かう途中、この國の騎士と王族の関係者が話しているのを偶然目にした。
思わず沙紀はに隠れてその話を聞くことにした。玲奈の言葉を聞いてから沙紀は王族に疑いを持つようにしていた。そもそも助を追放してから彼らに対するは悪いものだが。
「報告いたします。異世界人と思しき黒髪の年の死を発見。死は行方不明となっていた勇者月ではなく、追放した異世界人と判斷しましたため、死所へ投棄いたしました」
「……っ!」
沙紀は溢れそうになる言葉と涙を必死に手で覆い留めた。
彼らの會話に出てきていた黒髪の年というのは、ほぼ確実にあの時見捨てられた高月助だと分かってしまったからだ。
「そうか、分かった」
「加えてご報告を」
「なんだ?」
王族の関係者は助の死をさほど気にした様子もなく、次の話題へと移った。その様子に沙紀は飛び出したい気持ちを必死に抑える。
「勇者月が発見されました、迷宮の件でございます」
「あの迷宮がどうかしたのか?」
そこで王族の関係者が初めてピクッと目元をかし、表を変えた。
「王族武庫を守護していた龍種が討伐されていました」
「なに!? それは本當か?」
「事実です」
「武庫は? 荒らされた形跡は?    いや盜難防止があるから大丈夫だとは思うが……」
「ただいま調査中です」
王族関係者は今までと打って変わり聲を荒らげ悪態をついた。だがすぐ息を吐いて落ち著きを取り戻そうとしていた。
「いや、勇者月がそこにいたのだろう? 彼が討伐したという可能は……」
「それについては不明ですが、彼が言うには既にそこには何もなかったそうです」
「一何が起きているというのだ……」
どうやら彼らにとって予測不可能な事態に陥っているらしい。沙紀は必死に言葉を聞き逃すまいと、揺れく心境の中、我慢しながら聞いていた。この報が彼らに復讐できる手がかりになるかもしれないのだ。
「確かにあの龍種は我々が召喚した下位の龍だが、今の勇者一人では勝てるレベルではない……ならば誰か別の第三者が? いやそもそもあの迷宮にるには騎士の検問が……」
ブツブツと呟いて考察を始める王族の関係者。騎士は戸ったようにその様子を眺めていた。
「くそ、あの龍種を召喚させるのにどれだけの……」
「あの自分はここで失禮させていただきます」
「あ、ああ、ご苦労だった」
ひとまず聞きたいことは聞いた沙紀は、ユラユラとした足取りで玲奈の部屋へと向かった。
「投棄ですって……」
沙紀は玲奈へと泣きながら聞いた話を伝えた。
この部屋には今は、玲奈と沙紀にしかいない。勝利と誠は別行中である。
「はい……」
部屋に流れる暗くて重い空気。
「そう……」
その玲奈の言葉を最後にしばらくの間、この部屋には沙紀のすすり泣く聲だけが響いていた。
「沙紀、月の所にいって話を聞きましょう」
「え……?」
突然の提案に沙紀は涙目で玲奈を見た。
「今は彼のためにしでも前へ進むべきよ」
玲奈は力強く立ち上がり部屋の扉へと歩みよった。彼は靜かにドアの前に佇んでいた。
「行くわよ」
「……はい」
そして二人は、月の元へ向かっていった。
月の部屋の前に著くと、數人の生徒の聲が部屋の中から聞こえてくる。二度の盜み聞きに沙紀は悪いと思いながらも、玲奈の指示によって部屋の前に張り付くことになった。
「月、大丈夫?」
「うん、スキルで治るから」
「そっか、良いなぁ、便利なスキルで。私なんて――」
會話の容はただの學生がする雑談だった。そんな容を聞いて何が得られるのかと、玲奈へ不思議な顔を見せる沙紀。玲奈はその顔を見て、ただ口元に指を置いただけだ。
「そういえば聞いた?」
「何を?」
「二年の助って人、死んじゃったらしいよ」
「え!? そ、そうなの?」
突然始まる助の話題にギュッと拳を握る沙紀。玲奈も表を引き締め、話を聞いていた。
「なになに? 月って助って人と知り合い?」
「え、う、ううん、知らないよ」
「そう? まぁいいけど。助って人ってあの人だよね。勇者落ちしてた」
「そ、そうだね」
「あの型と顔で私らの學校にいること自おかしかったんだけどね――」
その後、沙紀と玲奈はその生徒が話し終わって出てくるまで待ち続けた。
しばらく経ち、ようやくその生徒が部屋から出てきた。ちゃっかり今來たことを裝う沙紀と玲奈。
その生徒と顔見知りでもなかったため、玲奈と沙紀は顔を合わせずすれ違い、月の部屋の前へと立つ。
「今、良いかしら」
玲奈は月の部屋の扉をノックする。
「はい、どうぞ」
中から月の聲が聞こえてきたのを確認して、玲奈と沙紀は扉を開け中にった。
部屋の中は、様々な人から貰ったと思われる々がたくさん置いてあり、そのそばのベットに月は座っていた。
「こんにちは月さん」
「あ、はい、こんにちは」
玲奈を見て月は張したように挨拶を返した。玲奈はあの大將グループのクラスの委員長ということもあり、結構有名だったりするのだ。
「あ、沙紀ちゃん」
月が沙紀に気が付いて呟いた。その言葉に沙紀はし會釈をして挨拶をした。その様子に月は小首を傾げて不思議そうな表をするも、玲奈からの質問ですぐさま表を変えた。
「何度も聞かれたと思うけど、あの迷宮で何があったの?」
「えっと、その」
明らかに先ほどの張とは別のベクトルの顔に月はなっていた。何か隠し事がありそうだった。
玲奈はその様子を見て、小首を傾げた。
「どうしたの? 何もなかったんじゃないの?」
「はい……そうです」
「でもその様子だと何か隠し事をしているようね」
玲奈の追及に月は何も言わなくなってしまった。今のところ、帰ってきたばかりの月に誰もしつこく
追及してこなかったのだろう。この揺で誰も追及しない方がおかしな話だ。
「ごめんなさいね、龍を相手にするのは大変だったでしょう」
「え……」
恐らく玲奈は、今までの報をまとめた上で、月にかまをかけたのだろう。その結果見事に月は引っかかった。あの迷宮で何も見ていなかったと言った月が龍の存在を知るわけがない。だが月の表は明らかに揺していた。
「後、助君も」
「な、なにを……」
次の言葉は、月だけでなく沙紀も驚かせた。ここで助の名前が出てくる意味がまるでわからなかった。
「助君ってし難しいところがあるものね、ね、沙紀」
「え、あ、はい、そうですね」
突然話を振られて沙紀は揺しながらも答えた。その會話が何を意味するのかは分からない。
「ねえ、話してもらえる? あの迷宮でなにがあったのか」
そうして玲奈の追及が始まった。
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