《負け組だった男のチートなスキル》第五十一話 天才と異端
あの後、逃げるように基地へと移したコウスケら。
ヨハネはさっきのテンションが噓のようにしょぼくれ、アービスは目を輝かせてコウスケも見つめる。ドランの方はチラチラとコウスケの槍を見ていた。
「あのごめんなさい」
「どうして謝る?」
ドランがコウスケへ頭を下げた。だがその意味が分からない。
「ヨハネを抑えられなかったのは僕たちのせいでもあるので」
「それなら俺も止めようと思えば止められた。俺も悪い」
そう言われたドランはこれ以上何も言わなかった。
それからしばらく経ち、話はあの時の會話に戻った。
「そういえば何でアービスは俺に武を教えてくれなんて言ったんだ?」
彼らが言うには小人族は剣しか認めない。ならば他の優れた武を使ったってその待遇が変わるとは思えなかった。現にヨハネは銃を作っても現狀はこれだ。
「凄い武を作れたら、大人たちから認められるかもしれないから」
アービスは小さな聲で呟いた。
彼はひと際自分が剣を作れないことにコンプレックスをじているようだった。三人の中で唯一武ではない盾を作ったからかもしれない。
「俺はそれでも今の狀況は変わらないと思うけどな」
「……そう、かもしれません」
ここで噓をついても彼らの為にはならない。コウスケは正直に彼らに告げた。
彼らもその自覚はあったのだろう。すっかり意気を失っている。
「魔人族の俺には、どうして剣にこだわるのかが分からない。だがそれは小人族では変えようがない価値観だ」
「はい……そうです」
いつの間にかコウスケの口調にも力がこもり始めていた。才能があるのにウジウジしている彼らに苛立ちが芽生えてきたのだ。
「ならその古い価値観を自分たちの力で覆すしかないだろ。他人からもたらされた付け焼刃なんかじゃなくてな」
「……でも」
まだ彼らは下を向いている。今までの環境が彼らをこんな格にし、自信を奪ってしまったのだろう。
「ヨハネ」
「は、はい」
「お前の銃で、小人族一の剣に勝てると思うか?」
「え、えぇっと……」
普通の人、地球人なら間違いなく銃が勝つと言うだろうが、ヨハネは即答しなかった。
「じゃあヨハネがこの剣を使って、俺が銃を持つとする」
このままでは埒が明かないとじたコウスケは、懐から短剣を取り出してヨハネに渡す。そして自分は銃を構えた。
「どっち勝つと思う? っていってもやってみないと分からねえよな……ドラン!」
「は、はい」
「何でもいいから合図をしてくれ。その瞬間から勝負の開始だ」
「え、ええ! ここでですか?」
ドランの指摘は無視する。勝負とは言っても直ぐに決著のつく簡単な実験のようなものだ。
「……分かりました。じゃあ始めますね……初め!」
「――え?」
ドランが開始の合図をした瞬間に、銃聲が鳴り響いた。何のことはない。コウスケがヨハネの足元に向けて銃を撃ったのだ。
「分かったか? 銃は剣より強い」
「で、でも」
「卑怯だとでも? ちゃんと開始の合図は待ったじゃねえか」
「……はい」
ヨハネはコウスケの言い分に丸め込まれた。あとは、もうし自分たちの才能に自信を持つだけだ。
次は――
「アービス」
「お、おう」
ひと際コンプレックスの強いこいつを矯正するのは骨が折れそうだが、ひとまず盾が他の武より優れていることを分からせる必要がある。
「さっき剣より強い銃手元にある、でお前の手元には盾だ」
殘念ながら盾は持っていないので、イメージでの話だ。
「この狀況どっちが勝つと思う?」
「そりゃあ銃が――」
「違う」
アービスが答えると同時にコウスケは否定した。今の雰囲気だと銃と答えるのは予想通りだ。
「アービス、盾があればさっきの不意打ちめいた攻撃も防げる可能があるんだ」
「分かってるけど……」
「一発しか打てない銃だと、これを防ぐだけで勝負が決するんだ」
「た、確かにそうだけど」
し揺した様子のアービス。銃に勝てるというイメージが浮かんだのだろう。
「それに盾は武にもなる」
「え?」
「投げたり叩いたりできるじゃないか」
アービスは思っても見なかったという表をした。
「誰も盾を投げたらダメなんて決めてないだろ? それに盾で當たりなんかしたら、ない場合よりも斷然自分にもダメージがなく、かつ相手にダメージが與えられる。一石二鳥じゃねえか」
「か、考えても見なかった」
まさに唖然という顔のアービス。アービスだけじゃなく他の二人も同様の顔をしていた。
し考えれば思いつく戦闘方法なのだが、恐らく剣でのみの戦いを教えられてきたのだろう。それに加え、地下に籠っているから対人戦は滅多にない。そのため、効率の良い戦闘方法しか生まれてこないのだろう。
「後はドランだ」
「は、はい」
張した面持ちのドラン。し考えが固まってはいるが、正直この中で一番まともな部類である。
「剣が一番じゃないってことは分かっただろ?」
「は、はい。でも……」
「まだ何かあるのか?」
もしかして槍の優位も話さないといけないのだろうか。ドランなら直ぐに分かってくれると思ったのだが。
「僕の父は、小人族の族長なんです」
「そうなのか」
そういえば聞いた気がするなと思いながら話を聞く。
「それなのに僕は剣が作れない。族長の息子なのに腕が悪いんです」
なるほど。ドランの場合は、偉大な父がいるが故の悩みのようだった。
「族長はどうやって決まるんだ?」
「えっと、一番腕があって、統率力のある人です」
突然、何を言い出すのかという表のドラン。
「腕があるね……」
問題はそこだ。
「ドラン、なぜ腕が悪いって決めつける?」
「だって、剣が……」
やはりそこに行きつくようだ。
「俺はお前の武は凄いと思うがな」
「な、なにを」
ドランが困した様子でコウスケの顔を見る。
それに合わせるように、コウスケはあるを取り出した。
名前 レイソウェイ
創造者 ドラン・エドロン
分類 unknown
スキル 隠蔽
そうあの黒槍だ。以前と変わらず、ほとんどステータスが隠されている槍。だが名前と創造者だけはハッキリしている。そしてその創造者というのが、
「ドラン・エドロン」
「……はい」
「これはお前が作った槍だろ?」
「そうです」
ドランは槍を懐かしそうに眺め呟いた。
「俺はこれで數々の魔を殺してきた」
言葉だけでは伝わらないかもしれない。だがそれでもコウスケは続ける。
「時にはキマイラっていう魔もだ。この腕はその戦いの名殘だな」
「……っ!」
コウスケが右腕を三人に見せた。明らかにの違うその腕を見て、三人は息をのんだ。
「こう見えてもドラゴンも倒したことある俺が、片腕をこうするほどの相手だ」
「ど、ドラゴン!?」
流石はドラゴン。小人族とはいえ認知度があるようだ。
「じゃ、じゃあそのキマイラはドラゴンよりも?」
「簡単には比べられねえが、同じくらいかもしれないな」
「そんな魔が……」
すっかり驚いている様子のドランを含む三人。
「そしてそんな魔を倒せたのはこの槍のおだ」
掲げるように槍を突きたてた。正確にはスキルのおではあるが、役に立たなかったわけではないので、噓は言っていない。
「誇れよドラン。お前はそんな相手にも負けないような槍を作ったんだぞ」
「そ、そうなんですか?」
「噓は言ってない。それにこの槍は」
製作者なら知っているかもしれないが、コウスケは試しに槍を部屋の隅へ投げた。
「何を!?」
「まあ見とけって」
そして壁に突き刺さった槍がコウスケの手元へ戻ってくる。
「え!?」
「俺は何もしてない。この槍の力だ」
ドランの顔を見るに、この力を見るのは初めてのようだった。
「だから誇っていいんだ。ドラン。お前らもな」
三人の顔を見て言うコウスケ。今すぐには無理かもしれないが、先観を打ち破るきっかけは與えられた。後は、こいつらが自信をつけるだけだ。
「し外に出てくる」
コウスケは顔を下げたままの三人にそう言い殘し外に出た。
「し熱くなっちまったな」
苦笑いを浮かべ、冷たくる星々を眺めて呟いた。
じょっぱれアオモリの星 ~「何喋ってらんだがわがんねぇんだよ!」どギルドをぼんだされだ青森出身の魔導士、通訳兼相棒の新米回復術士と一緒ずてツートな無詠唱魔術で最強ば目指す~【角川S文庫より書籍化】
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