《転生先は現人神の神様》32 治療部隊と1日目の終わり
満月が地上を照らす夜、ルナフェリアは優雅に霊達とティータイムを楽しんでいた。
……作戦中だけど。
そして、ちょいちょい運ばれるようになってきた怪我人達。ジェシカとエブリンが張り切っている。
それと2人から報告があった。何か、ちゃっかり魔法のエフェクトが変わっているようだ。
今まで《回復魔法》って虹のが云々だったけど、魔導文字が対象の怪我した所に吸い込まれてから、虹のが発生し治るようだ。
まあ、うん。が発生しなかったら直接治るグロ映像を見せられるだろうからな……。
補助系や回復系の魔法、対象指定型とでも言おうか。これ系は足元に魔法陣が出るのは変わらず、対象側は魔導文字が周囲に出るようだ。対象にされているかどうかが、分かりやすくなった模様。
この魔導文字がに吸い込まれ、を発し、効果が現れる。のは今までと変わらないようだ。
レジストされると魔導文字が弾かれてバラバラになって消えてった。
うん、嫌いじゃない。良い演出ですね。
それだけ確認してティータイムに戻った。張り切ってる2人の邪魔するのもあれだし。
よって、ジュースでも飲みながら魔眼で眺めている訳だが、ここで、思わぬ効果が出てきた。
軽く流したけど、ちゃっかり《視の魔眼》という犯罪者用達の魔眼があった。
《月の魔眼》と《視の魔眼》でもう何も怖くない。
というか、これDとかCは下げたほうが良いんじゃないかなぁ……。
「隊長とギルマス、し良いかしら?」
「なんだ?」
「なんです?」
「DやC辺りは下げた方が良いかもしれないわ」
「……理由は?」
「先行組がファントムナイトやデスナイトと遭遇。2匹とも闘気持ちを確認。そして、魔眼で見えるあら方がC指定以上」
「ぐぬぬ……DやCが人數的に1番多いってのに……」
「ただでさえ格上のファントムやデスを相手に、報も経験も無い闘気使用者との戦闘か」
「剣を振ると同時に闘気を飛ばしての遠距離攻撃。あのまま立ってたら、Aランク1人死んでたわ」
「むぅ……しかし、ベテランだけじゃ力の問題もあるし、何より數がなぁ……」
「1日2日での制圧はやはり無理ですか」
「ベテラン組しか使えない狀況も考えてはいたが、もうか……」
「では、ベテラン組の作戦に切り替えますか?」
「奴らの命を無駄にする訳にもいかないか……お嬢、魔眼でどこまで把握している?」
「……先行組の進行度、約半分。DやCといった中級組の進行度は更にその半分。先行組の隙間に居た者達と中級組が戦闘、五分五分の為被害あり。今醫療班に世話になってるのがその連中。敵はレッドスケルトンやレイス、1番上でスケルトンアーマーウルフがたまに混じるぐらい。先行組はもう最低でもAとの戦闘が基本でSのファントムとデスが混じり始めている。そして、湖の方にはSをそれなりの數、存在を確認。夜になったからき始めたと思われる。よって、戦闘の本番はここからと判斷される。その為DやCでの戦闘は不可能。ファントムナイトとデスナイトに皆殺しにされる可能大。正直私もそろそろこうかと思っている」
ギルマスは……なぜ苦笑している? ヨハン隊長以外は唖然としてるし。
「……予想以上の報が出てきたな。DとCには中間ぐらいで、ベテラン組の逃げ込む場所を一応作っておくべきか……」
「そうですね、アンデッドを殘すわけにはいきませんし、休憩地點にはなるでしょう」
「よし、ベテランのみの作戦に切り替えるか!」
「夜は下げて防衛に徹し、日が出ると共に攻め込んだほうが良いかもしれませんね……」
「それが理想ではあるんだが、夜に活発になるからな……ベテラン抜きで防衛が持つか……」
伝える事は伝えたし、後は私の仕事じゃないな。頑張れ。
「重癥の人から連れてきて下さい!」
治療班もそれなりに忙しくなっていた。
DとかCからしたら、AやA+の魔は相當辛い。しかも、視界の悪い森でA+のスケルトンアーマーウルフとか來たもんならボコボコである。冒険者側が。
そんなこんなで、忙しくなっていた。
「すまん! 通してくれ! うちのを! うちのを助けてやってくれ!」
そんな時、後ろの方からび聲が聞こえ、皆の視線が移ると……。
半だらけの獣人族の男が支えられていたが、既にほぼ意識が無さそうだ。
「こ、これは……」
ジェシカとエブリンは聖一行と呼ばれていただけに、《回復魔法》を使い慣れている。
それはつまり、己が治せる限界も知っているということであり、ジェシカが見た男は、既に治せる限界を超えていた……。
《回復魔法》も萬能というわけではないのだ。治す時に力を消費する。つまり、疲労する。
手には力が必要と言われるあれだ。
瀕死になればなるほど、生命力の低下は早くなっていく。《回復魔法》での増加分より、低下が早ければ當然死ぬ。が治っても力が足りず、目が覚めずにそのまま死んでしまう事もある。
そんな事もあり、《回復魔法》は萬能ではない。神々の奇跡ではあるが、所詮一片である。
だが、そうとは取られず……。
「俺らを庇ってこうなったんだ! 獣人族だが良い奴なんだ! 頼む!」
《回復魔法》の使い手を抱え込んでいるのは人間至上主義の法國だ。
『獣人族』だから、と言う理由だと思っているんだろう。
「私は教會の人間ではありません……ベアテ様、ルナ様に使用許可がしいと伝えてもらえますか?」
そう言ってから數秒後、橫にが現れた。
「ルナ様!」
「……ダメよ」
「ど、どうしてですか!」
「超級の"リストレーション"を使うのでしょう?」
「はい! しでも可能があるのなら!」
「"リストレーション"はね、一度かければ良いのだけど、効果自はゆっくりで全を直すの。この人の狀態じゃ、効果中に死ぬわ」
「そ、そんな……ルナ様でもどうにもなりませんか……?」
「……手はあるけど、使いたくないわねぇ」
「頼む! 頼むよ! 良い奴なんだ! 仲間なんだ!」
瀕死の男を支えてきた男が必死に懇願している。
その男をルナフェリアは一瞥し……。
「エブリン、來なさい」
「はーい!」
「何も《回復魔法》1つでやる必要はないし、1人でやらなきゃいけないという決まりもない。ジェシカは"リストレーション"。エブリンは"リラクゼーション"。その後2人で"ハイヒール"を掛け続けなさい。どうせ放っといても死ぬのだから、やってみなさい」
「は、はい!」
「了解です」
ルナフェリアの言うように、そんな決まりは當然無い。
ただ、初級だろうが《回復魔法》という事で、お金を取られる。それも、そこそこな額を。
ポーションやハイポーションといったものは、徐々に効果が現れ、傷が殘ったりする。
回復魔法は一部を除き、即座に効果が現れ傷が殘らない。
その為、金額の差があるのだが、時が経てば経つほど、教會組が調子に乗り、金額の差が大きくなっていった。そんなこともあり、1人を複數で治すなどは行われないのが普通だった。
「すぅ……はぁ……」
ジェシカは深呼吸をし、落ち著かせる。
《回復魔法》、それも超級の詠唱だ。地上で超級を使える人類はただ1人、ジェシカだけだ。
ルナフェリアに拾われ、慈と長の神との遭遇などにより、ジェシカは超級、エブリンは上級まで使用可能になっている。
ジェシカは杖を持ち、"リストレーション"を選択する。
すると足元に6メートルにも及ぶ巨大な魔法陣が出現し、詠唱(魔法陣に魔力を注ぐ事)を開始する。
魔力が注がれていくと、魔法陣は《回復魔法》の、虹に輝きだし、対象である瀕死の男の周りに魔導文字が出現していく。詠唱が進むにつれ、輝きが強くなり、魔導文字の文字數も増えていく。
その橫で、ジェシカも上級の"リラクゼーション"の詠唱にる。
こちらも足元に虹の、4メートル程の魔法陣が出現し、対象に魔導文字が浮かぶ。
「神々よ、癒やしの奇跡をここに…… "リストレーション"!」
「彼の者に安らぎを…… "リラクゼーション"!」
エブリンによる"リラクゼーション"で浮かんだ魔導文字はに吸い込まれて、効果を発揮する。
ジェシカによる"リストレーション"で浮かんだ魔導文字はに纏わりつき、失われた腕部分がで形作られた所に、魔導文字がびていきテープのように纏わりついている。
あの中ではにょきにょきと生えてきてる事だろう……。
超級と上級の使用で二人共肩で息をしているが、すぐに"ハイヒール"を使用する。
とりあえず死なない程度まで持っていかないと、使った意味がない。
寢ている男に翳された手から魔導文字が出続け、治療が必要な所に自的に飛んで行き、に吸い込まれていく。
ルナフェリアは橫で瀕死の男を見ている。その目が軽く輝いているので、魔眼を使用して眺めていた。
実は、魔力の流れを見れば『あ、死にそうなんだな』というのがある程度分かる。魔力制の余裕が無くなり、を離れていってしまうからだ。寢る、とかなら無意識下の制があるが、死にそうならそれすら無い。そんな余裕がなくなるため、大は分かる。
魔力の流れを見るには魔眼や、"マジーアトレース"という《無魔法》の中級が必要になるが。
その為、この方法は知られていない。
「ふむ。もう良いわよ」
「大丈夫なんですか……?」
「ええ、後は放っとけばいいわ」
"ハイヒール"も數分続け、流石に疲労が浮かぶ2人だが、ルナフェリアの言葉で復活した。
二人は魔法使用を止め、運んできた男に「もう大丈夫です」と伝える。
「ありがとう! 本當にありがとう! 出來る限りのことはする! なんでも言ってくれ!」
「気にしないで下さい。我々は神々より授かったお力を使用したに過ぎません」
「だ、だが……」
にこやかーに返すジェシカに言い包められる、運んできた男を目に、ルナフェリアは寢ている男を《生活魔法》の"ピュリファイ"で綺麗にしておく。
そんな中、突然でかい聲を出す男がいた。
「す……素晴らしい! 素晴らしい《回復魔法》ですよ! 是非とも教會へ!」
「いやいや、これはアクウェス法國へお連れするべきでしょう」
ジェシカとエブリンは寢ている男の方を見ていた、つまりこの教會組には背を向けているのだが……完全に目が據わっていた。見た目はお嬢様してる人の目が據わってるとそりゃもう怖い。
その場にいた冒険者や騎士達が、教會組を見て顔をしかめたと思ったら、2人を見てびくっ! ってする程度には。騎士達はポーカーフェイスも立派なお仕事なので分かり辛いが、微かに変化していた。
教會組が好き勝手言っている中、據わっていた目を戻し、笑顔に変えてから振り返った。
「そのお話はお斷りしたはずですが?」
「先程は教會での治療でしたが、本部であるアクウェス法國への推薦でどうでしょう?」
「その《回復魔法》の腕でしたら大歓迎されるはずですよ」
「王族に近い待遇を約束しよう、どうかね?」
その言葉を聞いた、ジェシカとエブリンがきょとんとする。
その反応を見て行けると思ったのかニヤついているが當然そんな事もなく。
2人は顔を見合わせ、教會組へと向け……。
「「聖域で暮らしている今より良い待遇が約束できちゃうんですか?」」
「……」
ちなみに、2人の言葉を言い換えると『聖域より良い環境をお前如きが約束できるのか?』である。
當然黙る。できますとか言えるわけが無い。
「……聖域とはし違うが、神聖な場所だぞ?」
「住んでいる所は聖域で、1人1部屋。ふかふかベッド」
「お風呂もかけ流しでいつでも暖かいのにれます」
「土地にある果実なら食べ放題」
「基本的に22時就寢、5時起床。食事も経費でお給料あり」
「土地には結界があり、萬一抜けてきても霊様達によるふるぼっこ」
「ルナ様がお作りになられた他では売られていない魔道で快適空間」
「「これを超える環境と設備が用意できるのですか?」」
「……」
「正直待遇が良すぎると思いますが」
「良いに越したことはないので甘んじてけれる」
ルナフェリア家の労働環境が暴されたが、教會組は黙った。
「2人共ポーションは?」
「騎士さんから支給品を貰っているので大丈夫です!」
「そう、なら飲んでおきない。あの者達は役に立たないようだしね」
「……そうですね。治すために使わないのでしたら不要ではないかと」
エブリンも頷いている。慈と長の神と話している時に居た2人には意味が通じたようだ。
『使わないようだし、もう沒収していい?』『金儲けにしか使わないみたいだし、2人で頑張ります』
という會話である。
「じゃあベアテ、貴が邪魔していると判斷した場合、簀巻にして捨てておきなさい」
「分かりました」
その後ルナフェリアは、ジェシカとエブリンに"エクステントリラクゼーション"を使い、"ジャンプ"で椅子に戻った。
ジェシカとエブリンの2人は支給品のマナポーションを飲み、「忙しくなるなー」と言いながら治療に戻っていった。
そして、教會組の男達は、全員《回復魔法》が無くなっているが、気づくのはもうしだけ後のお話。
さて、教會組の《回復魔法》は沒収したし、お留守番してる者は一応まともそうだし見逃しておくか。
私個人としては教會自を潰したい気もするが……はて、どうしたもんかねぇ。
やっぱ本である法國を叩くべきか。
ちまちまと喧嘩を売って向こうから仕掛けさせて、反撃と言う大義名分を掲げて皆殺……粛清するか。
ああ、大量の霊達をけしかけるのもいいな。大混しているうちに《回復魔法》を回収していく。
超遠距離から衛星砲サテライトシューターぶち込んで、天罰じゃーってのも面白そうだ。
はて、何が1番面白いだろうか。
……おや? ……ふむ。敵ながらやるな。
「おらぁ!」
「ふんっ!」
「"ライトボール"!」
骨と戦うとある冒険者6人PT。
盾で防ぎ、きが止まったところで、もう1人が橫から攻撃する。
攻撃をけ流し、バランスが崩れたところでとどめを刺す。
"ライトボール"を當て、怯んだ隙きに1人が攻撃する。
と言うように、順調に倒していたのだが……敵の増援が來たようだ。
「っ! 敵が來る! 見つかってる!」
「まじか!」
「敵は!?」
「リーダー! 引こう!」
「分かった! 下がるぞ!」
リーダーの命令により全員が、すぐに撤退を開始する。
「左後ろに鎧ワンコだ、注意しろ!」
「おう!」
スケルトンアーマーウルフを警戒しつつ走る。
しばらく走っていたが、どうも違和をじ始める。様子がおかしいのだ。スケルトンアーマーウルフが攻撃を仕掛けて來ない。
「おい、攻撃してこねぇな?」
「あ、ああ。何か一定距離を保って追ってきてるような……」
これはまるで……。
「っ! 前だ! 避けろ!」
「なにっ!」
斥候が言うように前を見ると、デスナイトがまさに剣を振り下ろそうとしている最中だった。
咄嗟に橫に飛び、その攻撃での被害は無かったが……。
「噓だろおい……」
「始めてみたぜあんなの……」
そのデスナイトの後ろから……討伐推奨冒険者ランクSS+ファントムロードがタワーシールドと片手槍を構えて待っており、SSのデスロードもカイトシールドとモーニングスターを構えて待っていた。
當然ファントムナイトとデスナイトも數おり、冒険者達の後ろからはスケルトンアーマーウルフと、さっきまで戦ってた一行様だ。
討伐推奨冒険者ランクが2個上ともなると、1パーティーVS1で死闘を繰り広げるレベルだ。
特にA+から上のS S+ SS SS+ SSSとなるとそれぞれに壁があり、桁が違う強さを持つ。
6人のベテラン冒険者、全員が絶的な顔をしていた。気づくのが遅すぎた。
導されたのだ、スケルトンアーマーウルフに。まるで牧場犬のように。
「はは、まじかよ……SSとSS+だぞ……」
「っ! 來るぞ!」
「……ええい! やってやらぁ!」
気合をれ直し、立ち向かう冒険者達だが、すぐにボロボロになる。
當然だ、相手は最低でも同格で、基本的に格上。更に囲まれているのだから。
「くそ! せめてお前らだけでもとか思ったんだが……」
「ははは! 馬鹿言うな。お前だけにかっこいい真似させるかってんだ!」
刺々しい黒い鎧に、兜を付け、タワーシールドと片手槍と言う重裝備にも関わらず、重さをじさせない速度で突っ込んで來て槍を突き出す。
決して油斷していた訳ではないが、疲労も、2個上と言うのもあり、反応が遅れた。
対象になった冒険者はスローモーションにじ、自分に迫りくる槍をしっかりと見ていた。
ああ、こりゃ死ぬな……とか思っていた時、ふと、ファントムロードとの間にが現れ、あろうことか素手で槍を摑んだ。思わず、餅をついてしまう。
そのは摑んだ槍を、ファントムロードごと軽々と投げ返した。
「なっ……」
右手に持っているにとってはかなりでかいであろうスタッフ、それを地面にとんっと突きながら、抑揚のない、しかしよく通る聲で呟く。
「《魔導武裝》……聖なる鉄槌」
の、ルナフェリアの周囲に敵の數だけのハンマーが出現する。
「打ち砕け」
言葉とともに軽く振られる左腕。それにより、ファントムロード、デスロード、ファントムナイト、デスナイト、スケルトンアーマーウルフ。更に後ろから追いついてきた奴、全てに1本ずつ飛んで行き、白く輝く大木槌の様なのハンマーが振り下ろされる。
追いついてきた中にいたスケルトンヘビーアーマーは、盾で防いだにも関わらず、盾とハンマーが當たった瞬間のの小発により消し飛び、避けようとしたスケルトンアーマーウルフも、振り上げたままるように移してくるハンマーをもろに貰い消し飛んだ。
ファントムロードとデスロードは、盾で防ぎ耐え、盾で弾くようにかしたのだが……その弾かれるきに逆らわず、でも軸はかさずそのまま一回りし、野球かのごとくフルスイングされ、2の顔面にクリーンヒットし、顔どころか小発で上半ごと消し飛ばした。
人間が持っている訳じゃないんだ、武自が360度き放題の回り放題。當たった瞬間消滅の相手からしたらクソゲーである。それを死なないとは言え喜んで相手するんだから、ファーサイスの騎士達もへんた……失禮、逞しい奴らだ。その蔭でルナフェリアも練習になったのだから、何も言うまい。
「た、助かったのか……」
「その、ようだな……」
「全員集まりなさい」
特に何も言わずに集まる6人のベテラン冒険者達に"エクステントハイヒール"と"エクステントリラクゼーション"をかけ、回復させる。
ちなみに、この世界に靴のハイヒールは存在しない。靴は基本的にきやすさを重視されている。
魔がいるんだ、わざわざ自らきづらくする必要もあるまい。ただでさえドレスできづらいのに。
まあ、それはともかく。
ルナフェリアはこの戦闘中、ずっと目を閉じ、《月の魔眼》を使用していた。
《月の魔眼》と《視の魔眼》による木をガン無視した上からの視點と、《月の魔導》による知で森の中でも問題ない。
し気になることがあるから魔眼で全を見ているんだ。
決して常に目を閉じてるけど、何の問題もないキャラクターっていいよね、とか思っていない。
「やっぱり、敵のきが変わったかしら?」
「……なに?」
「相手のブレインがき出したか、生まれたか……」
「リッチか! それでい込まれたってのか……」
「慎重にきなさい」
「あ、ああ。分かった」
「助けた報酬はこれだけでいいわ。他はあげる」
「いや、助けてもらったのにそれはな……」
ルナフェリアはファントムロードから出た魔導石を回収し、"ストレージ"に放り込んだ。
基本的に、冒険者同士は手出し無用だが、ヘルプを要請した場合はその限りではなく、その時のドロップ品は後腐れがないように、助けてもらった側が全て渡すのが暗黙の了解となっている。
「いくら魔導石とは言え、闇はあまり使い道がねぇ……それに、私は聖域に住んでるから魔晶石が自宅で採れるのよ」
「!? そ、そうか。聖域で採れるって言われてるな……まじで採れるのか」
魔獣や魔から取れる、魔力の塊が魔石。々なの力源となっている為、需要がある。
魔力の塊の為、使うと小さくなっていき、最終的に消えてしまう。
その魔の屬を持っており、薄っすらがついている。
魔法生系から取れる魔力の塊が、魔導石。
手法が魔法生系からのみで、魔石より出力も高く、長持ちするため、高価。
魔石よりこちらの方が綺麗で、ひと目で分かる。こちらも屬を持ち、がついている。
そして、ある特定の場所でのみ、発見される魔晶石。自然から取れる、マナの塊。
魔石が魔力石なら魔晶石は魔導水晶。魔導石より高出力で長持ちする。1番高い。
特異點と言われるマナ濃度の高い場所で、マナが結晶化してできる。
その特異點は大聖域か、魔の巣窟と化しているので、手が命懸け。
マナ水晶のため薄っすら緑。き通る淡い緑で非常に綺麗。
そのため、バッテリー以外にも寶石の一種として扱う場合もある。
こちらは屬が無い、萬能燃料。ただし、手が命懸けで、あるとも限らない。
ちなみに、魔石と魔導石のサイズは、敵の強さとほぼイコールである。
魔力タンクとしてに作るため、魔に魔法をたくさん使わせると、魔石が小さくなりがっかりする事になる。つまり、余剰魔力を取っとくために、魔石や魔導石にしてに保存している。
さっくり倒してしまうのが、素材の狀況的にも、魔石的にも味しい。
どの魔から取れたか、と言うのは鑑定で分かる。○○の魔石。○○の魔導石などと出る。
ベテラン達は、今回の作戦で取れた魔導石を売るだけでも、結構な額である。
それ相応の苦労はしてる訳だが。
だが、ルナフェリアの魔道諸々は、"メディテーション"で自供給の為、魔石自使わないのでどうでもいいと思っている。
金の為に売るなら家で採れる魔晶石売ればいい。それこそ桁が違う。
自分で使うにしても魔晶石使えばいい。さすがのレア度だ、全てが優れている。
よって、ルナフェリアは全くもって価値をじていない。
「あ……」
「ん? どうしたんだ」
「ふ、いるじゃない……」
目は閉じたままだが、口元が笑っている。
冒険者達は何のことだ? となっているが、それに構うことはなく、行に移る。
杖で地面をとんとんしつつ、魔法を使用する。
「"ホーリーモルタル"」
すると、杖でとんとんしていた場所に、の筒が現れる。屬の迫撃砲だ。
當然こんなものはに存在しないので、オリジナル魔法である。
そして、もちろんこんなことする必要もなく、ただ《魔法》をぶち込めば済むのだが、気分の問題である。つまり、完全に趣味。暇つぶしであり、楽しいが正義。
の迫撃砲を、杖でつんっとしてやると、キーンという音と軽い発音をさせながら発された。
山なりに飛んでいったの弾はピンポイントでリッチの頭に直撃し、周囲をで包み、もろとも一掃した。
「ストライーク。ヘッドショットだわ」
知っているものがいたら突っ込んだことだろう。『それそういう兵じゃねぇから!』と。
間違いなく対象の頭を狙うじゃないし、狙って當たるもんでもない。本來は。
リッチの不幸は間違いなく月神に見つかったことである。魔法を司る神である月神が魔法で遊んだ。
それだけである。知っている者が見たら哀れ過ぎて全力で目を逸らすだろう。
ここには居ないし、森の中だし、リッチが居たのはほぼ中心近くだから、誰も見ていないだろう。
結論として、問題ない。
「じゃあ帰るわ」
と言って、左手をふりふりしながら瞬時に消えた。《空間魔法》の初級である"ジャンプ"だ。
本來は視點の短距離転移魔法だが、《月の魔眼》と使用することにより、関係ない。
長距離転移は超級の"テレポーテーション"となる。
転移門である"ゲート"は上級で、自分以外も転移するのに重寶する。
重寶すると言っても、使える人間はそうそういないが。
完全に々な意味で置いてけぼりだった6人だが、いそいそと魔導石を回収して休憩にり、ぼそっと呟いた。
「まじで、何者なんだ……あの子」
「あれ、"テレポーテーション"だよな……來た時も、帰る時も」
「ほんと……何者なんだろうな……」
しみじみと話していたベテラン冒険者6人であった……。
ちゃんとリッチの魔導石は回収しました。主にいたという証拠として。
ギルマスに報告だけして、その夜は救助のために転移を繰り返した。
不死者の森殲滅作戦 2日目に突。
草魔法師クロエの二度目の人生
6/10カドカワBOOKSより二巻発売!コミカライズ好評連載中! 四大魔法(火、風、水、土)こそが至高という世界で、魔法適性が〈草魔法〉だったクロエは家族や婚約者にすら疎まれ、虐げられ、恩師からも裏切られて獄死した……はずなのに気がつけば五歳の自分に時が戻っていた。 前世と同じ轍を踏まぬよう、早速今世でも自分を切り捨てた親から逃げて、〈草魔法〉で生きていくために、前世と全く違う人生を歩もうともがいているうちに、優しい仲間やドラゴンと出會う、苦労人クロエの物語。 山あり谷あり鬱展開ありです。のんびり更新。カクヨムにも掲載。 無斷転載、無斷翻訳禁止です。
8 121反逆者として王國で処刑された隠れ最強騎士〜心優しき悪役皇女様のために蘇り、人生難易度ベリーハードな帝國ルートで覇道を歩む彼女を幸せにする!〜【書籍化&コミカライズ決定!】
【書籍化&コミカライズ決定!】 引き続きよろしくお願い致します! 発売時期、出版社様、レーベル、イラストレーター様に関しては情報解禁されるまで暫くお待ちください。 「アルディア=グレーツ、反逆罪を認める……ということで良いのだな?」 選択肢なんてものは最初からなかった……。 王國に盡くしてきた騎士の一人、アルディア=グレーツは敵國と通じていたという罪をかけられ、処刑されてしまう。 彼が最後に頭に思い浮かべたのは敵國の優しき皇女の姿であった。 『──私は貴方のことが欲しい』 かつて投げかけられた、あの言葉。 それは敵同士という相容れぬ関係性が邪魔をして、成就することのなかった彼女の願いだった。 ヴァルカン帝國の皇女、 ヴァルトルーネ=フォン=フェルシュドルフ。 生まれ変わったら、また皇女様に會いたい。 そして、もしまた出會えることが出來たら……今度はきっと──あの人の味方であり続けたい。王國のために盡くした一人の騎士はそう力強く願いながら、斷頭臺の上で空を見上げた。 死の間際に唱えた淡く、非現実的な願い。 葉うはずもない願いを唱えた彼は、苦しみながらその生涯に幕を下ろす。 ……はずだった。 しかし、その強い願いはアルディアの消えかけた未來を再び照らす──。 彼の波亂に満ちた人生が再び動き出した。 【2022.4.22-24】 ハイファンタジー日間ランキング1位を獲得致しました。 (日間総合も4日にランクイン!) 総合50000pt達成。 ブックマーク10000達成。 本當にありがとうございます! このまま頑張って參りますので、今後ともよろしくお願い致します。 【ハイファンタジー】 日間1位 週間2位 月間4位 四半期10位 年間64位 【総合】 日間4位 週間6位 月間15位 四半期38位 【4,500,000pv達成!】 【500,000ua達成!】 ※短時間で読みやすいように1話ごとは短め(1000字〜2000字程度)で作っております。ご了承願います。
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