《転生先は現人神の神様》34 豚ちゃんは出荷よー
作戦が終わり、これと言った急ぎの用事が無くなった為、のんびりと過ごした。
當然ギルドには行って報酬もらってきた。またたんまり貰った。
ドラゴン素晴らしい。
そしてある日の午後、いつもどおりティータイムしてたら思い出した。
「あ、そう言えば教會の事忘れてたわ」
「教會がどうかしましたか? また何か相でも?」
『また』って所が笑えるわ。普段の評価がよく分かる。
「力を與えてる側の我々からしたら、今すぐにでも叩き潰したいのだけれど、《回復魔法》が無くなったら困るでしょう? だから國王にでも愚癡ってやろうかと」
「ああー……あー? 特に困らないのでは? ほぼ利用されていないかと」
「……と言うか、何でこの國教會なの? 霊信仰って聖堂じゃなかったかしら?」
「それはですね……うちもそれなりに長い歴史があるのですよ。霊信仰は比較的新しいのです」
「霊信仰ができる前から教會があった……と」
「そういうことです」
まあ確かに、そう簡単に建て替え、とは行かんわな。私じゃあるまいし。
「まあ、私よりも霊達が潰したくてしょうがないみたいでね? 現狀私の命令で止めている狀態なのよ。でも、この間の作戦で會ったけど、予想以上にゴミだったからもういいかなって。既に《回復魔法》は沒収してるし」
「……えっ? 今なんと?」
「霊達が我慢できない?」
「いえ、最後です」
「ああ、《回復魔法》は沒収済みよ。あれは我々神々の力。こうして私がいるなら回収も當然可能」
「そう言えば、ブリュンヒルデさんはあの時いませんでしたね」
「そうか。貴達拾ってきた直後だったわね。ブリュンヒルデが來たのはその後だから、回収できるのは知らないか」
「回収済みなら潰しても変わらないのでは?」
「回収済みはゴミ共だけで、一応まともなのは殘したままよ」
「ああ、なるほど。ふむ……」
「現狀考えてる事と言えば、霊達の命令を解除すれば、気にらない奴をたこ毆りにしに行くだろうから、そうすれば騎士達も被害の調査やら何やら言ってれるんじゃない? そしたら『たまたま』別の何かが見つかったりするかもしれないけど」
「ふふふ、それは名案ですね。ええ、ええ。霊様が暴れたら、騎士達が暴れた原因を調べなければなりません。國民の前でおきたことです、隠し通すこともできませんから公表せざるを得ません。じゃないと國民が安心できませんからね。それはいけません」
「ということで王の所行ってくるけど?」
「私もお供いたします」
「じゃあちょっと行ってくるわ」
「「行ってらっしゃいませ!」」
"ゲート"でお城に移し、國王のところに突撃。ブリュンヒルデにした話をしたら、何か喜ばれた。特に宰相さんに。どんだけ嫌われてるんだと。
「あいつら、碌な事しねぇからな」
「ええ全く。しかも稅を無駄遣いするんですよ。どうやって締め上げるか考えていましたからね」
という目が笑って無い狀態でお言葉を貰いました。結構怒らしい。
まあ、そういうことなら遠慮はいらんな。霊達を開放しよう。
「じゃあ、好きにさせるから。契約霊はかさないよ」
「そうですね。いちゃもん付けられる可能があるので、契約霊はかさない方がいいでしょう」
「できるだけ書類系は殘しておいてくれ」
つまり書類系以外はどうでもいいんだな?
「リュミエール、命令解除していいわよ。紙にれないように言っといて」
「分かりました」
「じゃあ、私は帰るわ」
「おう」
ブリュンヒルデは自分で帰ってくる言ってたから、先に撤収。
のんびりティータイムと行きましょう。
帰ってきた時には既に、殆どの妖、霊がいなかった。今頃教會は阿鼻喚の地獄絵図か……。
頑張れ騎士達。
王都でそこそこ広い土地に建っている、白をベースとした教會。
表は大きい禮拝堂があり、裏には居住區などが存在する。
そこは、神々にお祈りする場所で、とても靜かで厳かな雰囲気が漂っている……べきなのだが……。
いや、ある意味では現実離れしたような、とても貴重な景を目の當たりにしている事だろう。
なんせ今の教會は、霊達が飛び回り、怒り狂っているのだから。
本來妖や霊といった者達は、魔眼持ちかエルフやドワーフと言った者にしか見えない。
それ以外では理的に干渉する場合に姿を見せるが、基本的に干渉する事がない為、霊を見たことある人はない。
もう1つとして、聖域がある。これは特異點と言われるマナが出ている場所で、エネルギーを気にする必要がない為、割りと霊達の姿を見ることができる。聖域にたどり著ければ、の話だが。
妖と霊というが、基本的にこの違いは力、魔力量などの差でしか無いので、一般的には両方まとめて霊、霊様と言われている。
そして今の教會は、大小、様々な霊が飛びっていた。
霊とは神々に変わり、自然を管理する者である。霊の力=自然界の力と言える為、非常に強力で、その為地獄絵図と化している。
そもそもこうして霊達が暴れているのが異常なのだ。
霊達は基本、自分勝手というか、マイペースというか、自由人というか、そんな存在である。
基本的には空中を、世界をふらふらと飛び回っているだけだ。
そして、稀に気にった生などに加護を與えたりする。その加護は生にとって非常に有り難いもので、病気になりにくかったり、怪我の回復が早かったりと言った恩恵がある。
気にった土地があれば、そこに住み著き、土地に加護を與える。その加護は、植達の長を促したり、果実などの味が良くなったりと言った恩恵がある。
つまり、基本的に霊達は生達に害を與える事はまず無い。それどころか助けてくれる存在だ。
だからこそ霊様と、様付けで呼ばれる事が多く、近な神として信仰される。
にも関わらず、この有様である。しかもよりによって教會が、である。
神々に謝を、祈りを捧げる、聖職者。
神々の代理である霊達からすれば、自分達の主に祈りを捧げる者達である。
その住処を『集団』で『襲撃』である。
傍から見たら『何事だ!?』となるのが普通だろう。
ただでさえこの王都には聖域があり、普段から霊達の穏やかな、楽しそうな姿を見ているんだ。
楽しそうに遊ぶ小さい霊、果実を収穫して運んでいる霊、味しそうに果実に齧り付いてる霊など、非常に穏やかな、微笑ましい姿を日常的に見るようになったんだ。
そんな霊達が大群で暴れていたらそりゃ気になるだろう。
教會からは當然悲鳴やび聲が聞こえる。
「せ、霊!?」
「か、壁がー!」
「や、止めてくださいませ! 霊様! っ! きゃーっ!」
そりゃあもう、大混である。
「何の騒ぎだ! っ!? なんだこれはー!」
「「「「「「うるせー!」」」」」」
「ぐっほぁ!」
裏から出てきた男が、霊達による全方位からの蹴りによって、その場で崩れ落ちた。
「やめっげほげほ! ぐふっ! や、やめ! がっはっ!」
崩れたところで止められる事もなく、死蹴りである。
そして、別のところでも……。
「せ、霊!? あのルナフェリアとか言う奴の指矩さしがねか!」
「「「「「「様をつけろよデコスケ野郎!」」」」」」
「がはっ!」
「誰にもっ!」
「ぐっふ!」
「命令なんかっ!」
「ぐはっ!」
「されて!」
「がふっ!」
「ないよ!」
「や、やめっ!」
「「「「「「うるせー!」」」」」」
「がっはっ!」
「「「「「「このっ! 罰當たりめがー!」」」」」」
「がっ!」
この景を目撃した……してしまったは真っ青になりながら、部屋の隅でガタガタしていた。
そのは《回復魔法》が使えるので男に助けを求められたが、霊達の睨みによりけず、隅っこで育座りをし、ガタガタしていた。
そんな景が所々で目撃され、これは尋常じゃないと騎士達に知らされる。
仕事とは言え、知らされた治安部隊の騎士達はたまったもんじゃないだろう。
相手が霊だ『いったいどうしろと?』としか為らないのだ。しかも1ならまだしも集団。
知らされたからには、知らなかった振りはできないわけで。
勝てるわけもなく、近づいたらあれの仲間りと言うのが分かる。
「おい……」
「……なんだ」
「……俺は行かねぇぞ?」
『ああはなりたくないからな……』と騎士はボロ雑巾のようになって転がっている男を指差した。
それに同意するようにその場にいた騎士達は頷いた。
そして彼らは、一先ず近くの住民たちを避難させ、安全確保を優先した。
今のところ周囲に影響は無いので、余裕を持って避難させることができた。
「なあ……」
「……なんだ?」
「……何したら霊様がああなるんだ?」
「……確かに、なんだろうな……」
そう話す騎士達は、遠い目をしていた。
ゾロゾロ騎士達が集まってきたが、全員同じような目になった。
「あれ、でも無事な奴らがいるな?」
「ん? ああ、そう言えばそうだな。確かに無事だ。と言うか、差が酷いな……」
「つーことは、あいつらが何かしたのか?」
「その可能は……あるな」
「と言うか、そうなんだろう。霊様が意味もなく暴れるなんて聞いたことがない」
「……そうだな。大喧嘩売った馬鹿がえらい目に遭うって聞くな」
その言葉の後、騎士達は顔を合わせ、顔を顰めたり、苦笑したりと様々だった。
全員思い當たる節があるんだろう『馬鹿』の部分に。
ただ、彼らは騎士だ。國に仕えるものであり、貴族も中にはいる。『馬鹿』と言う訳にもいかないので、誰も口には出さなかった。口には出さなかったが、全員思っていることは同じだろう。
「で、どうしようか、これ」
「…………」
ぶっちゃけきたくない、きたくないのだが、騎士としてそうもいかない訳で。
とりあえず、渋々無傷の無事な人達の救助、と言うか回収に向かう。
その際話しかけた時に、スーッと霊が出てきて、ジーっと無言で見つめ、しばらくしたらスーッと消えた。回収する側も、される側もびくっ!っとして固まり、消えた時に安堵の息を吐いてそそくさと撤収した。中には1発蹴り込まれる奴もいたようだが、それだけだった。
騎士達には何事もなかったが、1つだけ問題があった。
それは、ボロ雑巾と化した者を回収しようかと思った時、大量の霊達が壁になるように、スーッと現れて、思いっきり睨まれるのである。
その際、會話できることは知っているので、ぶっちゃけ個人的にはどうでもいいが、仕事上そういうわけにもいかないので、頼んでみる訳だが……全員同時にぷいっとそっぽを向くのである。
などかやってみても変わらないので、こりゃダメだとそそくさと撤収する。
ちなみに、誰がやっても同じで、そっぽ向いた後しばらくするとまた正面を見るんだが、その際頼むとまたぷいっとそっぽを向く。
そしてたまに、並んでる所から霊がいたと思うと、蹴り込むのであった……。相當怒っているらしい。その際、『うっ』という聲が一応聞こえるため、生きてはいるようだ。
そして、騎士同士の話し合い(笑)の末、1人の騎士が霊達の前に行って渉するが、當然そっぽを向かれ、その際腰の剣に手をばした瞬間、一斉に騎士をガン見し、それにびくっ!っとした瞬間一斉に蹴られて、後ろに倒れた。
その後、ものすごい勢いで仲間の、話し合い(笑)してた騎士達に回収されていった。
完全に生贄、実験臺のソレだった。可哀想に。
まあ、霊達も騎士達には何の恨みも無く、人の本質を直で理解する為、かなり手加減されていた。
ちなみに、その蹴られた騎士はしばらくご機嫌斜めだったらしい。
そんなこんなで、時間が経ち、気づくと霊達の姿は消えていた。
騒ぎのものがものだけに、治安部隊だけでなく、城からも騎士が來ており、結構な數で捜索された。
その後、王都にある聖域では普段通りの霊達が見えていたのだが、その數日の間、國民は気が気じゃなく、ざわついていた。
調査の結果、教會の様々な不正が出てきて公開できるものは公開された。
『神々や霊の名を使って不正を行っていた為、激怒したのだろう』という事で、國民は納得し、日常に戻っていった。
當然ボロ雑巾のようになっていた者は王都から叩き出され、上層部は法國に抗議するとニッコリしていた。無事だった者達は一応殘されているのだが、さぞ肩の狹い事だろう。
ちなみに、殘った者達はどちらかと言うと霊信仰のようで、味をしめた教會の上層部がずっと居座っており、殘ったもの達からしても、奴らは邪魔だったらしい。
今後はマシになるだろう。なんたって霊達の襲撃を験しているのだから。
この間、ルナフェリアは殘った契約霊達とティータイムを楽しみながら、魔眼で見て心笑していた。完全に娯楽と化していた。この世界は娯楽がない。
ジェシカもエブリンも、2人して『いい気味です』と言っていた。
「教會も片付いたし、しばらくのんびりしましょう。次は何しようかしら」
「近いうちに収穫祭がありますよ」
「収穫祭?」
「はい、収穫祭です。3日間続くお祭りですね。自然の恵みに謝を。ということでパーっと行くお祭りです。他國からも結構な人が來ますよ。まあ、1月程は先ですが」
「収穫祭ねぇ……」
「新作料理のお披目などが各店で行われることが多いですね」
「ふむ。1月先となると、が何個かできてるわね……。そうだ、ローストビーフも作りましょう。オーブン……あった方がいいかしら? 収穫祭で新作料理2品作りましょうか」
あれ? 『次は何しようかしら』とか言ったけど、私ほとんど何もして無くね?
1.リュミエールとオスクリタに魔法を使わせて、自分も使った。
2.《月の魔眼》で見てた事を隊長格に知らせた。
3.ベテラン騎士や冒険者達の救助活。
4.ミストレイスドラゴンとエルダーリッチの排除。
うん、4個しかやってないな?
いや、いや、いや。十分か。他のやつにはできないことをしていたんだし、いいだろう。
報酬はたんまり貰っているんだし、逆に言えばそれだけの事をしたと判斷されたんだろう。
そういうことにしておこう。『人類』からすれば十分なんだろう。例え私が足りなくてもな!
…………オーブン作ろ。
オーブン アーティファクト
    ルナフェリアの作品。
    調理の1種。
    溫度調節機能付き。
はい、完。
いや、うん。私からすれば単純なオーブン作る分には時間かからんよ……。
ちょっと大き目の作っておいた。持ち運ぶもんでもないし、燃料魔力だけだし。
溫度設定可能で、溫度を一定に保つと言う設定に多考えたぐらいかな……。
『そういう』にするのは止めた。嫌な予するから。
神 オーブンとか堪らんわ。
アーティファクト:神が與えしアイテム。
という時點で、私が作ったは問答無用でアーティファクトになるから、そこを気にするのは止めた。
與えしとか言ってるけど、與える気は頭ない。誰がやるか。自分で使うから作ったんだ!
快適生活とアーティファクト量産と言う天秤は、余裕で快適生活が勝ちました。
そう言えば、本人達に確認しておかなきゃなるまい。
「ジェシカ、エブリン。座りなさい。大事な話をしましょう」
「「は、はい」」
ジェシカとエブリンを向かいに座らせ、ブリュンヒルデは立っている。
魔眼で大は把握しているとは言え、本人の口から聞くのは重要である。
普段から魔眼で思考は読んだりしているけれど、わざわざソレを言うこともあるまいて。
悟り妖怪が気味悪がられたり、嫌われたりしているんだ、《真実の魔眼》はあれ以上だからな。
「エブリンはともかくジェシカ。貴の夢って『困っている人を助けたい』だけれど、的には?」
「えっと……怪我や病気で困っている人を助けられれば……と」
「怪我と病気限定?」
ジェシカは一瞬キョトンとしたけれど、言いたいことが分かったらしい。
「はい、怪我と病気限定です。それ以外の事に干渉するつもりはありません」
「そう……」
「治ってからどうするかはその人次第です。私は治すことしかできませんし、それ以外に責任はもてません。偽善者だと思いますか?」
「いいえ? むしろ無駄な正義がなくていいわ。怪我や病気治してはいさよならできるし。面倒くさそうなら2人で行かせようかと思ったけれど、これなら旅に連れて行ってもいいわね」
「どこに行くのですか?」
「特に決めてないわ。冒険者として護衛しながらふらふらしてもいいし、馬車作ってもいいし」
「なるほど。私も別に場所はどこでも構いません。……法國以外なら……」
「ふむ。エブリンはジェシカと一緒に居れれば良さそうだしいいとして……」
「……まあ、そうなんですけど……」
2人は冒険者登録もしていたようだが、どういう処理されてるんだろうか。
そう言えばあの裏切り者、ステータスリング持っていかなかったぞ?
……気づかなかった事にしよう。侍として連れて歩けばいいや。
思考破棄。
とりあえず、収穫祭まで大人しくしてようと思う。
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