《転生先は現人神の神様》閑話01 ジェシカとエブリン
閑話『ジェシカ』
なぜ? なぜなのだろうか。
確かに、耳や翼、尾があったりなかったり。耳の形が違ったりといった違いはあるかもしれない。
逆に言えば、それだけしか違わないという事。
そして、多姿は違えど會話ができる。意思疎通はできるのだから、別に問題は無いではないか。
別に結婚しろとか、優遇しろとは言っていない。ただ、普通に。そう、普通に接すればいい。ただそれだけなのに、なぜそれができないのか。
アクウェス法國。
《回復魔法》を神々の奇跡と謳い、神々へ謝をするため、祈りを捧げるために教會を広めた國。
だが、どの國にも暗部、闇という部分があるだろう。この國は人間至上主義だ。
『人間こそが選ばれし者であり、頂點に立つべきである』とか言う、よく分からない事を言っている。
人間は數が多い、多いのだが『人類』の中では數が多いだけで、能力的には全てに劣ると言っても過言ではないと思う。
『人類』とは人間、魔人、獣人、ドワーフ、エルフ、ドラゴニュートの事だ。
魔法の扱いに長けた人間、魔人。
貓、狼、兎などのの耳や尾と言った特徴を持った人間、獣人。
地の霊と人間から生まれたと言われる、ドワーフ。
風の霊と人間から生まれたと言われる、エルフ。
ドラゴンと人間から生まれたと言われる、ドラゴニュート。
と言うように、全て人間から派生した、我々人間こそが祖だという。
我々人間こそが優れ、お前達は祖である我々に盡くすべきである。というのが法國の言い分だ。
私からすれば何言ってるんだ、としか思わない。
魔人も獣人も、ドワーフやエルフも、ドラゴニュートだってそれぞれ特徴を持っている。
魔人は魔法を、獣人は優れた能力に鼻や耳と言ったならではの特を。
ドワーフは《土魔法》や《火魔法》に優れ、細かい作業に通している。
エルフは《風魔法》や何と言っても《霊魔法》に優れ、必ず霊様1人と契約をしているという。
ドラゴニュートはドラゴンのが流れており、どの『人類』よりも優れたと魔力を持っている。
それに比べ我々人間はどうだ? 數が多い以外に誇れる所はあるのだろうか。
《回復魔法》持ちが人間に多いそうだ。
これは他の『人類』より、能力などが劣るため、神々の慈悲ではないかと思っている。
『癒やしの力を與えましょう。他の種族と協力し生きるのですよ』
そういう意味で、神々はこの力を與えてくれたのではないか。私は常にそう思う。
だが、今の法國はどうだろう。《回復魔法》持ちを抱え込み、人間じゃないからと手を差しべない。
そんな我々を、力を與えてくれた神々は許してくれるのだろうか?
『得た力をどう使おうが、我々の勝手』
それは、まあそうだろう。それ自は否定するつもりは無い。
だが、限度、節度というものがあるだろう。今の法國は、明らかに度が過ぎていると私は思う。
私は《回復魔法》を上級まで使用できる。これは、世界でも數える程度しかいない。上級の《回復魔法》は非常に有り難みがある魔法なのだ。
なぜなら……魔などの被害により失った手足を治すことができるから。
上級魔法の"リカバリー"を使用することにより、手足が生えてくるのだ。
これがどれだけ貴重なことか。そして、こんな魔法が使用できる私を法國が放っておくわけもなく。だからと言って私も黙って利用される訳もなく。
人なんて誰がなるかと。そんな訳で、私は旅に出ます。このまま法國の駒になる気なんてありません。その際しっかりと親とは縁を切り、出てきました。
ああ、別に喧嘩別れとかではありません。その辺りは特に問題では無いのです。
その時ちゃっかりとエブリンも付いてきていましたが、特に何も言いません。
《回復魔法》で治療の旅に出て、しでも苦しんでいる人を助けられれば、それでいいでしょう。
エブリンはそれなりに良いとこの貴族なのですが、周りの評価的にはあまり良くありません。別の意味で貓をかぶっているのを私は知っています。
だって、私と2人の時や、旅している時はしっかりとした、非常に頼りになる人なのですから。お姉ちゃんとはこういうものなのでしょうか。
お世話になってばっかりです。
面と向かっては言えませんが、いつもありがとうございます。
◇◇◇◇
閑話『エブリン』
私はアクウェス法國と言う國の、上級貴族の家庭に生まれ、言われるがままに生きていました。
しかし、小さい頃にジェシカと言う平民の子と會いました。
會った當時はそんな気にしてはいなかったのですが、ある日ふと気づいたんです。
何か、他の子達と違う気がする……と。その時から既に惹かれていたのでしょう。
今ならなぜ違う気がしたのか、良く分かります。彼は、ジェシカはしっかりと自分を持っていたのです。
『なぜなのか? どうしてなのか?』という事をよく考えず、ただ親に言われるがままに生きていた私との差。そんな彼に私は惹かれていったのです。
その時に『良い子な私』はいなくなったのでしょう。
良い子と言うのは『扱いやすい、言ったことに従う子』です。
上級貴族であり《回復魔法》の中級まで扱える私。
自分で言うのもなんですが、人の目を引く優れた容姿。
そんな私を親が、法國も放ってはおきません。
貴族のと言うものは、駒でしか無いのです。そんな生涯を、私はみません。育ててくれた親には悪いと思いますが……いえ、言うほど思いませんね。
『』とは程遠いと、気づいてしまったのですから。
良くも悪くも、ジェシカという存在は私を変えました。
ですが、後悔はありません。むしろいい出會いだったと謝しています。
私の夢は『彼と同じ世界を見ること』です。
ジェシカ、貴は私に謝しているようですが、お禮を言いたいのはこちらの方です。貴と出會ってから、人生が変わったのですから。
それに、貴は我々からしたら分かりやすすぎますからね。
渉事には向きませんよ。貴をフォローする人間は、必要でしょう?
これでも貴より年上で、上級貴族として教育されてきたのです。
その辺りはお姉ちゃんに任せてください。その代わり料理などは任せましたよ。
◇◇◇◇
閑話『帰るつもりのない、巡禮の旅』
旅をしている間に様々な事がありました。
私達を囲い込もうとする國や、治療の報酬としてちゃっかり息子を差し出そうとしたり、拉致ろうなんてものもありましたね。
こういうのも何ですが、人2人で旅ですからね。妙な輩は嫌でも寄ってきます。
しかし、上級貴族として育てられ、こうした旅で経験も積んでいるのです。
そんな罠には嵌りませんょ。と言うか、ただの人が2人旅なんてするわけ無いでしょう。自分で言うのもなんですが、かなり逞しいつもりですよ。
最近では解も覚えましたからね!
治療する旅してるのに生きを殺すのかって? それとこれとは話が別です。
貴族生活より、こういう生活の方が生き生きしている自信があります。
旅をする際早々に冒険者登録もしましたしね。
そんなこんなで旅していると、ジェシカが聖なんて呼ばれるようになっていました。気づいたら聖一行です。一行と言っても2人しかいませんが。
私達にそんなつもりはなくても、治療してもらっている側からすればそうなのでしょうね。
◇◇◇◇
閑話『運命の日』
……遂に我々が邪魔になりましたか。
法國と言う事で堂々と『そういう者』を付けますか。この者は確実に『裏の人間』でしょう。隠しているようですが、のきが完全にシーフのそれです。
ところどころ見えるきが、武を嗜んでいる者のきです。
こんな聖職者がいてたまるもんですか。
……しかし、これは困りましたね。間違いなく狙いはジェシカでしょう。
なんとかしなければなりませんね……。とは言え、本職相手にどれだけ立ち向かえるか……。
……いいえ、やれるだけのことをやるしかありませんね。
私は後悔したくはありません。まずは、ジェシカから離れないようにしよう。
ジェシカ自も鈍くはありません。恐らく気づいている……。
覚悟はしていたとは言え、黙って殺られる気はさらさらありませんからね。
いくら全員《回復魔法》が使えるとは言え、3人で不死者が沢山いる森に行くとか、ふざけてますね……。何度かさり気なく邪魔してやったので、痺れを切らしたのでしょうか。
とは言え、非常にまずい事には代わりありません……。
いったいどうなっているんですか! この森は!
なぜこんな高位アンデッドがゴロゴロと!
これはまずい! あいつを監視してる余裕が!
……とか思っていたら、あっさり足を切られ、アンデッドを避けるサークルから蹴り出され……ジェシカも刺されてその場に崩れ落ちてしまいました……。
ああ、これで死ぬのでしょうか。隨分とあっさりした最期ですね……。
せめてもうしあの子の側に……ん……?
アンデッドが寄ってこない事に気づき、確認しようとしたら上から聲がして、閃と共にワラワラいたアンデッドが消し飛びました……。一何ごとですか……?
……天使? とか思ってるうちに何でも無いかのように治療されました。
なんですか、その詠唱速度は……。しかもエクステンドオプション付き……。
"エクステンドハイヒール"なんてにはないはず……しかも"エクステントキュアオール"? "キュアオール"だけでも《回復魔法》の上級……。
3対の羽って……ソロネ、ケルビム、セラフィムと言った最上位天使のどれかってこと……? 天使なら今の《回復魔法》も納得はできるけど、こんな所に最上位天使がいることがおかしい……。
「あ、貴は……」
ジェシカが呟くように問いかけるけど……。
「……ただの冒険者」
いや、その答えはおかしい! って赤!? 赤い腕ってCランクってこと?
そんなバカな!
って何かアラクネと戦い始めたんですけどー!?
えっアラクネいたの!? あの時點でもう勝てる気しないんですけど!
うわ、うわ、あれ完全に遊んでる……。うわ、強い。
え、何か繭?に包まれた。あ、こっち來た。
行く宛はあるかと聞かれたが、當然無い……。
もう帰れないだろう。元々帰るつもりは無かったし。
そうして、私達はこの人?に付いて行くことになった。
まさかこのようj……この方が月の神様だったなんて。
ルナ様を見てると頬が緩みそうです。何と言うかその、所々子供っぽい所があるというか、ぬいぐるみを抱えて布団に潛り込む姿とか堪りませんね。
侍の特権です。眼福です。とか思ってるとぬいぐるみが顔に飛んでくるんです。
らかいとは言えかなりの速度で結構痛いです。
私のポーカーフェイスは完璧なはずです。思考を読むのは卑怯だと思います。
これからジェシカと私、エブリンの幸せな日々が始まります。
聖職者として、神様本人にお仕えする日が來るなんて、思いもしませんでした。
いえ、聖職者と言うのは投げ捨てましょう。ええ、そんな肩書はいりません。
私は今、とても幸せです。それが全てです。
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