《転生先は現人神の神様》38 収穫祭 3 Indexと霊とは
「そんな怯える必要もありますまい。確かに危険ではありますが、その対策とて同じものから取れるのです。我々人間より強力な者が跋扈する世界、使えるを使わないのは愚か者のすることでは?」
ドヤァ!
言っていることは確かにそうなんだが、蹴り飛ばしていいかな?
何だろう。こう、何かむかつく。
とは言え、蹴り込むのは大人げないので向けた視線を戻し、料理にぱくつく。
そして、微妙な空気が會場を包むのであった……。
ひょい……ぱく……むぐむぐ。
ひょい……ぱく……むぐむぐ。
…………え、なに?
「……なに?」
ルナフェリアがそう尋ねるとぽかーんと會場の皆がちょっと間抜けな顔を曬す。
「……いや! ですから……!」
「そもそも……の魔法すら碌に使えないのに、魔導文字知ってもしょうがないでしょう」
「……は?」
ドヤ顔していた男のみならず、會場の全員がよく分からない様な顔をしていた。
「……え?」
そしてルナフェリアは、何でこいつらがこんな顔しているのか分からないと言う顔をしていた。
ルナフェリアは、創造神様から一部の知識を貰っている。
それはお金の使い方だったり、世界にある大國の場所や名前、それを治める王の名前などの簡単な知識が基本である。だが、ルナフェリアの知識には例外がある。
それは、魔法に関してだ。
夜と魔を司る神である月神の為、魔法に関しての知識はばっちりけている。
だが、人類がどういう認識をしているか……などはまた別の話だ。
「……ふむ? 魔導文字というのは、《魔導工學》の超級である"ルーン"が無いとには定著できない」
セザールがコクコクと頷いている。これは大丈夫そうだな。では次。
「そして、魔導文字と言うのはで使用されている魔法。その魔法陣に使用されてもいる」
またもコクコクと頷いている。
「ではそもそも、とは何か? セザール君」
「えっと……と言うのは、それぞれの魔法の適、才能がある者が使える魔法を標す」
「……ふむ……まあ、いいでしょう。とはマギライブラリと言われる、魔導書や魔導図書館とでも思っておけばいいわね。どこまで扱えるかはその者の努力次第である」
ここまでは一応問題無さそうだな? では次だ。
「さて、そのIndexインデックス>マギライブラリですが、これは……魔導書で言えば初級編であり、練習用である」
「……え!?」
「の魔法なんて《魔力作》が出來ればそれだけで使えるのよ。の魔法陣に組み込まれている魔力暴走防止機能。完全に練習用じゃない。に載ってる魔法だって初級、中級、上級にそれぞれ2個から5個ぐらい。超級なんて1個や2個が々よ?」
あまりに衝撃的だったのか驚愕し、固まっている者達多數。
「だからは初級編で、最初から魔法陣が組まれており、《魔力作》で魔力を流すだけで魔法が発するのよ。本來は今で言うオリジナル魔法がメインなの。どう考えても魔法がこれだけしか無いんじゃ不便でしょう?」
それでもルナフェリアは言葉を続ける。
「で、魔法陣とは魔導文字と魔導回路で組まれている。たとえ魔導文字だけを軽く理解できたところで正直無意味。魔導文字だけでは意味がなく、どういう順番で文字を活化させていくかで効率や効果ががらっと変わる。つまり魔導文字は上級者向け。オリジナル魔法を魔法陣にして魔道にしたり、更に詳しいなら"ルーン"で魔導文字を直接定著させる。それが《魔導工學》という生産魔法。の魔法すら満足に使えないんじゃ話にならないのよ。まあ、の中にも例外はあるけれど、基本的に初級編よ」
お分かり? と、全を見渡す。
そして……ドヤ顔していた男に……。
「適當に誤魔化そうかと思ったのだけれど、それじゃ納得しないのでしょう? だからはっきり言いましょう。まだ、教える段階にすら至ってないのよ。なくとも《魔力作》とどれか1つの魔法ぐらいカンストさせてから出直してきなさい」
そう、我儘な子供に言い聞かせるように告げる。
「なっ……」
「そう……ですな……。これでもそれなりに自信はあったのですが……自惚れていたのでしょう。しかし、こうして高みを見ることが、知ることができた! これほど嬉しい事はありませんぞ!」
ドヤ顔男……いや、魔眼で名前とかも分かってるけど、もうドヤ顔男でいいや。
あいつに言ったつもりだったけど、何かセザールのテンションが上がっている。
とりあえず魔導剣を返してもらい、ペグー型魔法瓶の方を渡してあげた。
「"アナライズ"…………これは、"クール"に"ウォーター"ですね……? 殘りの2つは何だこれ……」
むむむむ……。と、"アナライズ"で浮かび上がった魔法陣を見つめるセザール橫目に、料理にぱくつく。
さて、《魔導工學》中級の"エクストラクション"に気づけるかな? のとは一部変わっているが……どうだろうな。もう一個の方はまず無理だろう。"メディテーション"だからな。
そこでふと、ファーサイス國王が話しかけてくる。
「ルナフェリアよ」
「なに?」
「の中にも例外があると言ったな? それはなんだ?」
「ああ、それはね……まず《回復魔法》」
「ふむ、やはりそうなのか」
「ええ。あれは神々の力の一片だからね。あれは初級編と言うより、人類でも使えるように簡略化されたものよ。後はー……《魔導工學》もさっき言ったように実は上級者向け。《従魔魔法》とか《召喚魔法》もあれはオリジナルとかも無いから、例外と言えば例外よね」
「ふむふむ……」
「後は例外というか……《重力魔法》と《空間魔法》。この2つは使用を推奨するわ」
「ほう? それはなぜだ?」
「制難易度が高すぎる。例えば《空間魔法》を下手にオリジナルなんかしてご覧なさい。時空の狹間に閉じ込められるわよ? この2つは下手にオリジナルで失敗した場合、空間が歪んだり、下手したら崩壊する可能もある。被害は自分一人じゃ済まないのよ。むしろやってみなさい私が始末しに行くわ。……使った本人をね」
國王や宰相、王太子などの顔が引き攣っているが、こちらは大マジである。
失敗して崩壊したとしても、一応自修復はされる。小さければ、だが……。
という事で、大きかった場合は割りとマジで神としての出案件です。
つまり、神としての『仕事』なんですよ『仕事』。
その場合、私は容赦なく本人を処分するか、同じく《空間魔法》で固定する。
一回目はまあ、厳重注意だな。二回目は即座に始末する。
「そうね……その2つは私ですらアレンジを使用する……と言えばいいかしら? 萬が一失敗した場合に問題がおきないように……ね」
「……そこまでか」
「亜空間などに閉じ込められるのはどうでもいい。私はまた使えば帰ってこれるし。ただ、歪んだり崩壊した場合が不味いから、別に急ぎでも何でも無い時はアレンジを使用しているわね」
「ふむ……。その2つのオリジナル使用を國として止した方がいいか?」
「んー……正直止しても使うやつは使うだろうし……たとえ失敗したとしても小さければ自修復されるのよね。崩壊までするサイズを開けられるかというと……だいぶ怪しいと思うわ」
「そうか……」
「強いて言えば《霊魔法》だけれど……この子達は頼まれても『空間』と『重力』に関することは弄らないからね。どうなるか『知っている』から絶対にしない」
ああ、《霊魔法》もでは例外ね。と、伝えておく。
まあ、基本オリジナルもクソもねぇだろってやつが例外だ。
《召喚魔法》でオリジナル? 召喚どっから持ってきたお前ってなるからね。
《召喚魔法》は召喚する魔法であって、後は召喚の育て方次第だ。オリジナルもなにもない。そういうのが例外。
「ま、待て! 何だそれは! そんなの初耳だ! 我々を騙し獨占するつもりか!?」
ドヤ顔男再び。何なのだこいつは。
《真実の魔眼》は非常に便利だが面倒くさいんだぞ。
思考を読めるのは便利だがな、過去を見る機能はあまり使わせないでしいものだ。
私は前世のテレビとかでやってた蕓能人苦労話とかの類が大嫌いなんだ。
何が嬉しくてどうでもいい奴の人生を知らなければならない。
しかもこの、忘れることができないんだからな? 何の拷問だ? 速攻で創造神様にヘルプしたわ。ゴミ箱に捨てるイメージで隅っこに投げ捨てなさい言われてその通りにしたらすっきりした。
ああ、こいつそろそろ貴族から平民に墮ちるから、何かしらの手柄がしいただの馬鹿だ。ぽーい。
可哀想なものを見る目で話してあげよう。きっと、生暖かい目をしているんだろうな、私。
「こんな王族が沢山いるところで噓をつくかしらね?」
「ぐっ……」
「それに、私は最初に言ったはず。売るつもりはないと、出回らせるつもりはないと。私が使うから作っただけであり、手放したら意味ないでしょう。趣味で作ったのも無くはないけど」
「……」
忌々しそうにめっちゃこっち睨んできてるけど、周り見ろ?
お前もめっちゃ睨まれてるからな? 自國の貴族達に。完全にゴミを見る目だぞ、周り。
「そもそも、私が噓をついて獨占した場合のメリットは何かしら……」
「なっ……! 攻撃にも転用できるし、生産ギルド本部のサブマスターがその反応だ! 売れば相當な額が手にるだろう!」
「…………」
「な、何だその目は!」
いや、もう、本當に我儘な子供を見るというか、生暖かい目になってしまう。
口を開こうとした國王を手で止め……。
「攻撃に転用できる……けど、私からしたらする必要がない。そんなことせず魔法を普通に撃った方が早い。むしろ手間。そして2つ目。確かにお金にはなるでしょうが、ドラゴンでも狩ってきて素材なり売った方が……ねぇ……。それに、私にとってお金というのは『必須』ではない」
ドヤ顔男は怪訝そうな顔しているが、國王などは頷いている。
「家はそもそも自分で魔法で作れる。火も水も魔法でいい。なんならこの子達に頼んでもいい。更に我が家の果樹を見ての通り、野菜なども植えれば霊達が加護を與えてくれるでしょう。我が家がなぜ果樹だけか……それはお金を報酬として貰ったが、野菜まで自家栽培しては使い道がないから。私ばっかりが溜め込んでしまったら、お金が回らなくなってしまう。そうなってくると困るのは貴方達より國民でしょう。我が家は霊達がいるから食べの消費は非常に多い。よって、農國だし野菜だけでも買うようにした。本來私達は食べる必要すらないし、侍の2人とブリュンヒルデぐらいなら自家栽培で十分なのだけどね。だから、どちらかと言えば『お金を得る方法』より『お金を使う方法』の方が我が家は問題なの。お分かり?」
生暖かい目で、子供に言い聞かせるようにしゆっくりと、教えてあげる。
私、優しい。
まあ、いずれ國作るかもだから、その資金に回すけどね。
その國も霊達だけならお金いらないんだよな……。
「そもそも生産量のない果樹やこの國では手にりづらい、もしくは無い香辛料しか土地に無いのはそういう事でしたか……。どう考えても買わずに土地で栽培した方が味しくなるとは思っていましたが……。(まあ、塩や砂糖は品質が違いすぎるのであれですが……)」
ブリュンヒルデがしみじみ呟いているが、今靜かだから響くよ……。
あ、ブリュンヒルデが仕留めた。ぐうの音も出ないとはこの事か。可哀想(笑)に。
まあ、完全に自で自業自得だけどな……。
仕掛けてこなければやられなかったのに!
「後、気づいてる? 私がさっきから"インベントリ"や"ストレージ"を使用している事に」
またも怪訝な顔をしているが、やっぱこいつ頭良くないな。
一部の者は今の一言で気づいたぞ。上流階級の者は言う前に気づいてたけどな。
「何が言いたいのか分からないようね。誰か教えてあげたら?」
「……城には"魔封結界アンチマジーアフィールド"があるのが普通。にも関わらず、"インベントリ"や"ストレージ"を使用している……それはつまり……」
「結界を張った者より遙かに魔法技が上であり、やろうと思えば今ここで攻撃魔法の使用すら可能である……ですね?」
「Exactly」
右手にお酒のコップを持っているので、左手を下から上にでるようにかし魔法を使用する。
會場上空、天井付近に埋め盡くさんばかりの氷でできた槍が出現し、3秒後に何事もなかったかのように消えていった。
「な……なんという……」
「ああ、そうそう。何か勘違いしてる人がこの人以外にいても面倒だから、先に言っておくわね?」
國王すら何を言う気だ? って怪訝な顔してるのは見なかった事にして。
「私この國に住み著いてるだけで、扱い的には王の客人扱いだから、間違えないように」
「……ああ、そうだな。あの土地に関しても取引だ。『好きな分だけ土地を確保していいから、城壁を建ててくれ』というな。ちなみに、立場としては我の方が下になるぞ? だから釘を差しといたはずだな? この者相手に余計なことはせず好きにさせておけ……と。関係が崩れたらどうしてくれようか?」
……後半報はいらなかったんじゃないの? 國王? あ、こいつ割りとマジギレしてる。
「そうですねぇ……まず、家の取り潰しは當然として……もちろん財産なども全て回収ですね。ドラゴンを単騎撃破……しかも純正竜ですからね……それを敵に回す、霊様達とセットの可能もありなので……そう考えると、反逆罪で済みますかね? 下手しなくても我らの國が滅ぶ相手です。しかも……どちらの純正竜も我らの國、1つはシーフープに現れたシードラゴン、もう1つは王都東に現れたミストレイスドラゴン。それを自分が住み著いてる國だからと片付けてくれ、更に霊様の加護により野菜が作。まさに『恩を仇で返す』ですね。これらを考えると當人達だけではなく、しでも協力した者達纏めて反逆罪として一族纏めて……が妥當かと」
宰相まで乗った! こいつら笑顔だけど目が笑ってない。しかも思考読む限りガチだ。
マジ話だこれ!
他國の者達はともかく、一部のファーサイス貴族達の表がヤバい。今にも倒れそう……と言うか、死にそうな顔してる。ヤバいのは心當たりがある奴らだな。上級貴族達の顔は別に変わっちゃいない。
いや、ある意味変わっているが。怒りの方で。どう考えてもこの事態、自國の恥を曬している訳で。
まあ、今にも死にそうなのもしょうがないと言えばしょうがない。
だって、この國の國王と宰相の言葉である。更にまずいことに、他國の王族がいるんだ。
王族の言葉は非常に重く、他國の王族も聞いていたと言う狀況は非常にまずい。
それはなぜか。
この國の國王。つまりトップが口にし、他國のトップ、王族の者達が聞いた。
國王と宰相の會話。あれが実行される確率が非常に高い……と言うより実行しなければならない。
じゃないと國王が、國が他國に舐められる事態となる。
『あの國は王が言ったにも関わらず、有言実行されていない』それはつまり信用が無くなる。
王同士で話したにも関わらず、それがされないかもしれない。となったら堪らないのだ、どの國も。
だからこそ王、王族の言葉は重いのだ。
「こ、國王様! 私はっ!」
「ええい! これ以上喋らせるな! 叩き出せ! いや! もう私が叩き出す!」
ドヤ顔男が喋る……途中で別の男、上流階級の貴族が遮った……どころか自分で叩き出しに行った。
名前:マリウス・ディーボルト
種族:人間
別:男
職業:ファーサイス 農産相
分:貴族
……ブリュンヒルデの父親だこれーっ! ディーボルト侯爵じゃないか。
あ? 何か近衛が1人參戦したぞ。
名前:クラウス・ディーボルト
種族:人間
別:男
職業:ファーサイス 近衛騎士
分:貴族
ブリュンヒルデの兄だな。近衛にいる言ってましたね。親子でボコボコにしながら叩き出したわ。
近衛の方はまだしも、何で農産相の父親まで【武闘】スキル高えんだ……。
ふと、ブリュンヒルデの方を見ると……小さくガッツポーズしていた。「(よくやってくれました!)」
そして私と目の合ったブリュンヒルデはそっと手を下げ、目を逸らした。
うん、親子だな……間違いない。【武闘】の家系ちょっと舐めてたわ。
親は《剣》に《格闘》、息子は《剣》と《盾》がLv7とかLv8なんだよな……。
ブリュンヒルデは【武闘】の最高スキルレベルがLv6とかのものの、どんな事にも対応する為か、かなりスキルが幅広い。まあ、《奉仕學》とか言う従者用達スキルがLv8とかなんだけど……。
《奉仕學》
    任意の対象が求めている事が何となく分かる。
    効率のよい、より綺麗な汚れの落とし方。より細かな汚れの発見など。
プロの勘……と言うかもうエスパーだよな……。
なお、流石に私には効きが悪い模様。それでも多効いてるのが驚きだが。
「む……"エクストラクション"……? しかし微妙に違うような……それにもう1個がさっぱりだ……」
「ほう……"エクストラクション"で正解。一部魔道用に魔法陣を書き換えているからね。もう1個は"メディテーション"よ」
「"メディテーション"という事はまさか……!」
「ええ、魔石は必要ない。マナがあり金屬が劣化しない限りはき続けるわね。まあ、大々的に使用するのはお勧めしないけど」
「…………あー」
「魔石商売が終わっちゃうからねぇ……。まあ、何人が"メディテーション"を刻めるか知らないけど」
「《生活魔法》である"メディテーション"は使用しても魔法陣が表示されない……しかし、魔法陣を見てみるとその難易度は超級レベルの代……と言う認識なのですが」
「その認識は微妙ね。確かに単純なサイズで見れば超級ぐらいだけど、中は比にならない程複雑よ。《重力魔法》や《空間魔法》に匹敵、下手したらそれ以上と思っていいわ」
「《生活魔法》で"メディテーション"だけやたら難易度が高いのはなぜなのでしょう……」
「それは簡単。"メディテーション"も《回復魔法》に近いからよ」
「……はい? "メディテーション"は神々の力の一片だと……?」
「神々……と言うよりは、月神の力の一片ね」
「月神ですと!?」
この世界に存在する神々は3柱と言われている。
穣と大地の神、戦と勝利の神、慈と長の神だ。
月神が生まれたなどの神託はしていないため、一般的にはこの3柱のままである。
「この世界に影響を與えられる神々は5柱。まず、教會(笑)が認めている3柱。穣と大地の神、戦と勝利の神、慈と長の神ね?」
「う、うむ。(教會の部分に何か悪意をじるが)そうだな」
「(霊様達も『教會』の部分で鼻で笑った件について)」
ファーサイスの國王とブリュンヒルデの口に出してない部分は當然のようにスルーして。
「それに加えて、この世界を創造した創造神様。後は、夜と魔を司る神である月神がいるわね」
「……魔を司るだと? 邪神ではないか!」
ちょっと離れた王族組の方からそんな聲が聞こえた。
ファーサイスの國王、宰相、王太子、更にブリュンヒルデがびくっと反応し、ギギギとこちらに顔を向けてくる。正確には、私より霊達に向かって。
上機嫌にパクパク、ゴクゴクしてた霊達がその言葉を聞いた瞬間にピタァ……ときを止めた。
私は……見なかったことにしようと思う。
「うおっ……」
ゆっくり持ってた皿やコップ、フォークを置いたと思ったら、すっと消え邪神発言をした男を囲み、據わった目で睨みつけていた。
「な、なんだ!」
「一応言っておくけれど、魔は魔法の魔よ。夜と魔法を司る神ね」
「ふんっ。……ぐあっ! な、何をするか!」
後ろにいたヴルカンが後頭部を蹴り飛ばした模様。
そして、後頭部を蹴られた男は當然後ろを向く。その際、正面から後ろになったリュミエールが後頭部を蹴り飛ばす。
「ぐっ、止めんか! この私を誰だと!」
再び後頭部を蹴り飛ばされた男は、止めさせようとリュミエールに手を出すが……いや、出そうとしてしまった。その瞬間、囲んでいた6人全員に頭を蹴り飛ばされる。
「がっはっ!」
座っていた男は椅子にズルズルとみっともなく崩れる。
「……やれやれ」
「ぐっ! 貴様の契約霊だろ! なんとかしろ! ……ぐあああああああ!」
ドゴン! という音と共に男の座っていた椅子が砕け散り、男が床に激突した。
「アホね……さっさと謝って発言を取り消せば済むものを……分や権力を振りかざすのは勝手だけれど、相手を選ぶべきね。霊相手に効果があるとでも?」
「ぐぐぐ……」
「『溫厚な霊達は怒ると怖い』と言うか、『溫厚な、普段干渉しない霊達を怒らせる程の事をした』という自覚を持つべきね。それだけ貴方の発言が霊達にとってNGだった、ということでしょう」
「お、おい! 騎士達は何をしている! がはっ! この私が! 王族が襲われているんだぞ! や、止めぐっ止めさせろ!」
騎士達が出荷される寸前の豚ちゃんのような目でこちらを見てくる。
その目は止めろ、お前達近衛だろう……エリートだろう……。行きたくないのは分かるけど。
霊王を凌駕してる霊皇6人だぞ? 人間如きが勝てるわけ無いじゃん。
奴ら1人でも魔法使ったら會場自が消し飛ぶわ。
……ただの蹴りに屬が混じり始めたな。
「霊達の攻撃に屬が混じり始めたわね。さっさと謝らないと死ぬわよ? 基本的に霊達は生を殺そうとはしないから、ただの蹴りで所謂『脅し』だったけど、それが無駄だと分かれば霊達は普通に殺すわよ?」
「と、止めないのか?」
「なぜ私が止めるの? そいつが霊達に喧嘩売ったんじゃない。私はその子達に攻撃命令何か出してないわよ? つまり『霊達が勝手にいた』の。さっき言ったでしょう。『霊達を怒らせる程の事をした』と。それだけのNG発言だったのよ、あれは。まあ、當然だけれど」
「……當然?」
ドン! ミシミシ……。
「ああああああ! 足! 足があああああ! 悪かった! 発言は取り消す! だから止めてくれ!」
ミシ……ミシ……。
「ほんとに! 悪かった! 止めてくれ!」
……ふいっと霊達が帰ってきて、また料理にぱくつき始めた。
「王宮治療師、治してやれ」
「畏まりました」
王宮に仕えている、軍とはまた別の人だ。中級までの《回復魔法》が使える模様。
ここは比較的幅広い知識を持っている必要がある、王族付きの侍に確認しておくべきか。
「ブリュンヒルデ、貴霊についてはどのぐらい知っているの?」
「霊様ですか? あまり詳しくはありませんね……そもそも霊様自謎が多く、ほとんど知られていなかったかと」
「その理由は?」
「まず、霊様を見れる者自が限られているという事。魔眼持ち、もしくはエルフなどですね。魔眼自が希で、エルフ達は基本森で暮らし數もないです。そして、誰にでも見れる場所というのが聖域です。ですが、聖域は場所的に危険であり、研究所どころかテントすらろくに建てられません。よって、霊様の報がほとんど手にらないのです。今知られている報は一部エルフや《霊魔法》持ちの方達からの報だったはずですね」
「ふぅん……そうなると、《霊魔法》の使い方などが主で、生態とかはさっぱりなわけね?」
「生態はもちろん、生まれや霊様の長、更に加護の詳細などなど分からない事の方が多いです」
「そう言えば、聖域調査依頼が來たことがあったな? アエストからだったか。斷るしか無かった訳だが……直接本人と渉してしい。我の方に來ても斷るしか無いのでな」
「霊や魔法に関して私より詳しいのはいないでしょうし、住まれても邪魔だから私が教えてもいいけれど」
「ほう、それはそれは……。ん? なあ、もしかしてギルドの方に指名依頼出せば、うちの子達に講義とかしてもらえるのか?」
「別にいいわよ。報酬とける者達のやる気次第だけれど。魔導文字教えろ言われても教えないけど」
「ふむ……依頼出すのはありだな……」
「私に依頼出す前に聞きたいことを纏めておいて、それに私が答えていくタイプの方がこっちとしては楽ね」
「魔法師団の者達が黙って無さそうな案件ですね……」
「別に魔法師団が混じってても構わないけれど、その分額は弾むわね!」
「程々に頼むぞ……(月の神直々の魔法講義とか、対価が恐ろしいな)」
「収穫祭終わったら冒険者ギルド本部行くけどね」
「そうか、冒険者ランク上がるのか……」
「依頼料跳ね上がりますねぇ……」
HAHAHA、そこまでは知らん。
もっと早く気づけばよかったものを。まあ、騎士達に実技の方既にしているのだがな。
あっちは私の実踐訓練ってるからいいとして、座學ぐらい金取ろう。
「……我が國の學園でも魔法講師して貰えますかね?」
「その時に私が暇で、そういう気分で、やる気があったらね。私霊達とグーダラしてるのが好きだから」
ファーサイスの國王がブリュンヒルデに視線を向ける。本當か? 的な視線だ。
そんな國王に、ブリュンヒルデは苦笑じりに答える。
「本當です。よくソファーに手足を投げ出しグダっとしてるか、お手製のぬいぐるみを抱いてゴロゴロしています。もうちょっとシャキッとしてしいのですが、軽々しくかれてもそれはそれで困るので……」
おいお前ら、なんだその目は! なんだそのやたら優しい目は! 騎士達は微妙に違うけど。
まあ、騎士達と會うのは訓練場が基本だからな。1対多でボコボコにしてるし。
ふいっと目を逸らし、お酒を一口飲んでから、話を逸らす。
「まあ、私の普段はどうでもいいとして、あの発言がなぜ霊達にとってNGだったのか、教えてあげましょうか」
「ああ、気になるな」
このパーティーは基本親睦會。他國も混じってるから懇親會こんしんかいか? 的ならしいので、こういう話は大歓迎なのだろう。ちょいちょい馬鹿が湧いてるが些細な事だ。
ああ、セザールは霊が暴れ始めた頃に、私に魔道を返して席に戻っている。
「結論から言えば、月神は霊達にとって生みの親だからよ」
「生みの親?」
「霊達のを構しているのはなんでしょうか」
「魔力じゃないのですか?」
「違うのよ。霊達のを構しているのは『魔力』ではなく『マナ』よ。『マナ』での枠組みを作り『魔力』を中に詰める……というイメージでいいかしらね」
「マナなのか……」
「神々やその眷屬と言えなくもない霊達は、貴方達人類や生達と魔法の構が違うのよね。霊達は當然なんては使用しない。だから魔法陣も表示されず、霊達は『魔力』に『マナ』を込め魔法を放つ為、とてつもない威力を発揮する。『魔力』は魔法を使うのに必要なエネルギーであり、引き金トリガーでもある。霊達は引き金トリガーとして『魔力』を、エネルギーとして『マナ』を使用する。それが霊達の魔法の。『マナ』は『魔力』の數倍のエネルギーを持つ。契約霊が契約者から『魔力』を貰い、それにしだけ『マナ』を混ぜて放つ。それが《霊魔法》」
近くの王族達のみならず、立食の方の皆まで難しい顔をして聞いていた。
「そして、ここで問題なのが『を構しているのがマナ』という事と『マナを込める』という事ね」
「そこが問題なのか」
「『マナをる力』を持つのは、神々の中でも創造神様と月神のみ……なのよ。この世界に存在するとされる3柱にもその力は無い。それこそが霊達が月神の子供と言われる理由。そしていくら霊達といえども、自分達の周囲ほんのししかれない」
「……ふぅむ。"メディテーション"が月神の力か……」
「"メディテーション"と言うのは、周囲のマナを取り込み魔力を生、回復させる《生活魔法》ね。言い換えると『周囲のマナをり、寄せ集め吸収し魔力を生、回復させる』《生活魔法》よ」
「……そうか、なるほどな」
「ただ、範囲は凄い狹い。霊達ですら狹いのだから、無いよりはマシだろう程度の代ね。最大限効果を発揮したいなら"メディテーション"をしながら走り回るのが1番効果的よ」
「そ、それは無理では!?」
「……ええ、まあ無理でしょうね」
《生活魔法》の括りにいるが、神々の力の一片だ。制するのに必死でく余裕なんて無い。
瞑想メディテーションである。つまり実用は無く、魔法訓練時などに使う代だ。
「さて、私は月神は生みの親と言った。では育ての親は誰か……。それこそが霊達の持つ能力の1つが答えよ」
「……加護、ですか?」
「ええ、正解よブリュンヒルデ。霊達の持つ加護は、穣と大地の神の力の一片である。よって、育ての親とは穣と大地の神になるわね。まあ、例えだけれど」
「それで作達が味しくなったりするのですね……」
「そう。よって霊信仰は月神と穣と大地の神、2柱の信仰と言えるわね」
「ふむ……」
「というわけで、生みの親。月神を邪神と抜かした間抜けをボコボコにするのは當然よね」
「……そうだな」
「(それでルナフェリア様に霊様が集まっているのですか。納得しました)」
「作に効果がある理由はわかりましたが……生への加護の説明が不十分では?」
「そんな事は無いわよ? 神々が共通で持つ癒やしの力、つまり《回復魔法》が正だからね」
「ああ……そういうことですか……。何かアホみたいですね私」
「そんな事は無いでしょう。疑問を持つことは良いことよ。じゃないと発展はあり得ない。ちなみに、《回復魔法》と言ったけど、正確には違う。《回復魔法》はあくまで人類、生が扱うの事を言う。そして最初の方に霊や神々は魔法の構が違うと言ったわね。だから貴方達の使う『回復魔法』とはまた別のだから、効果が違うのよ」
「ははぁ……」
當然信じる者もいれば、信じない者もいる。が、まあその辺は別にどうでもいい。
信じる信じないはそいつらの勝手なので、その辺りは放置だ。
ついでに1つ弾を投下してやろう。
「では、教會(笑)から神々の使いと言われている天使はどうでしょうか」
「それは……? …………!」
ファーサイスの私の正を知っている者達が愕然としている。
ふふふ、気づいてしまったようだな。
天使達が使うのは『人類と同じ』《回復魔法》だ。殘念ながら奴らは神々と直接の関係はない。
ただ創造神様に、『悪魔』との対抗勢力として『天使』が追加されただけだ。
こいつらは一応人類らしいぞ。住んでいるのが天界と魔界ってだけだ。
下級天使と下級悪魔は喋れんし、魔のようなもんらしいが。
地上にどっちかが降りてくると、どっちかが喧嘩売りに來て、周囲荒らして行くはた迷な奴らだ。
ちなみに、天界と魔界は亜空間の為、天空にあったり地下にあったりするわけではない。
そして、弾を投下するだけして、後は知らんぷりである。
お酒をコポコポ補充し、飲むために口に持っていくと……。
にゅっと青白い小さなが氷から上半を出してきた。
「なん……にゃ゛!?」
ビタンとそのまま顔に張り付いてきた。
「「わー!」」
ビタンビタンとヴルカンとシルヴェストルも參戦。顔に3人の霊をり付けることに。
とりあえず3人を引き剝がし、一番最初に張り付いてきた青白い娘を見てみる。
うん、間違いないか……これは……。
「「氷の霊だー!」」
そう、氷の霊だ。新しい娘が生まれてきた模様。
「生まれたてにしては、だいぶ力が強いですね?」
「私が作った氷から生まれたようだから、そのせいかしらね」
「ああ、なるほど……」
「どうせなら、雷の霊もでないかしらね……どうせなら一緒に契約したいわ」
橫の空いてるスペースに結界を張り、中で雷をバチバチさせながら放置する。
きゃっきゃしてる1人増えた霊達を眺めつつ、お酒をちびちび……。
そんなこんなで數十分が経った頃、ひょこっと青白い娘がでてきた。
黃じゃなくて青白ときたか。プラズマ狀態だったかな?
まあ、は同じ青白いじだが、見た目が全然違うから間違えることはないな。
すすーと移してきた娘を差し出した右手でけ止め正面に持ってくる。
放置してたバチバチは片付ける。
「「雷の霊だー!」」
さて、一応チェックしておくか。検索けんさくぅ。
"サーチ"
範囲:世界
対象:氷の霊
…………
……
結果:1
範囲:世界
対象:雷の霊
…………
……
結果:1
……よし、この子達が最初のようだ。
ちなみに、"サーチ"は《無魔法》の上級。範囲を指定して検索できる魔法だ。
便利に聞こえるだろう? 魔力消費やばいからね。検索度、検索範囲共に使用魔力依存だ。
人間が使うなら頑張っても街1つを何となく……程度じゃないかな。
さて、名前どうするか……。
氷……グラス、グラース? 雪でネージュとかもありだが……。
雷……トネールだったか。
グラキエス、トニトルスでも良いかな……。
統一するか。グラース、トネールだな。
どちらも青白いけれど、片方は冷気、片方は放電をしている為、ひと目で分かる。
生まれたてだが霊ではなく、普通に霊クラスのようだ。契約すれば霊王ぐらいにはなるかな?
それ以上は時間をかけて長するしかあるまい。
「さて、2人共契約するわよー」
呼びかけると2人共飛び込んで來たのでけ止め、土地の方に転移しそこで契約をする。
「貴はグラースで、貴はトネールね」
2人が最適化にるのを見送り、會場に帰るとファーサイス國王が話しかけてくる。
「今のは霊なのか……?」
「そうよー。氷の霊と雷の霊、新しい子達ね」
「初めて聞いたな……」
「新しい子達って言ったでしょう? 新規よ新規。世界に初めて生まれた氷と雷の霊があの子達」
「……まじか」
「まじよ。『変化の時』で追加でもされたんじゃない? 何か種族も増えたっぽいけどねー」
「は? 種族が……増えた?」
「『妖族』って言うのが増えたらしいわねぇ。それぞれ自然発生するタイプらしいけど」
「『妖族』……ねぇ」
「ああ、余計な手出しはしない方が良いと思うわ」
「ほう、なぜだ?」
「霊が月神の子供だとしたら、妖族は穣と大地の神の子供だから」
「なんと……」
「霊は魔法の扱いに長け、多自然の恵みの力を持つ。し前に説明した通りね? それに比べ『妖族』は自然の力を多く持ち、魔法に多優れる。つまりこの國からしたら、霊達より妖達をけれた方が得ね」
「ふぅむ……しかし『妖族』は見えるのか?」
「霊と違って『妖族』は見える。長は霊達と同じぐらいで、見えるけど隠れるのが上手い。この國で一番會いやすいのは水の妖ニクシーかしらね」
「水の妖ニクシーか……どんな姿なんだ?」
「まだ見たことないから姿は流石に分からないわねー。ただ、水がそのまま人の形をしている……じだと思うわ」
「ふむ……どの道様子見だな……」
「私の言葉を信じるか。それとも戯言と切り捨てるか。どっちであろうと別に私は困らないし、それは貴方達次第ね。まあ、『妖族』に喧嘩売った場合、それこそ自然が襲ってくるけど……どうするかは貴方達次第ー」
そう、結局何を言おうが、どうするかは君達次第なんだ。
々悩んで人生を歩むと良いさ。私は既に1度人生は終えているからな、助言ぐらいはしてやるさ。
かないけどな。取引なら考える。
さて、パーティーももう終わりかな。
虐げられた奴隷、敵地の天使なお嬢様に拾われる ~奴隷として命令に従っていただけなのに、知らないうちに最強の魔術師になっていたようです~【書籍化決定】
※おかげさまで書籍化決定しました! ありがとうございます! アメツはクラビル伯爵の奴隷として日々を過ごしていた。 主人はアメツに対し、無理難題な命令を下しては、できなければ契約魔術による激痛を與えていた。 そんな激痛から逃れようと、どんな命令でもこなせるようにアメツは魔術の開発に費やしていた。 そんなある日、主人から「隣國のある貴族を暗殺しろ」という命令を下させる。 アメツは忠実に命令をこなそうと屋敷に忍び込み、暗殺対象のティルミを殺そうとした。 けれど、ティルミによってアメツの運命は大きく変わることになる。 「決めた。あなた、私の物になりなさい!」という言葉によって。 その日から、アメツとティルミお嬢様の甘々な生活が始まることになった。
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