《転生先は現人神の神様》閑話02 終わる生と始まる生

せまい……せまい……。

なんでだっ! なにがあるんだ……。いてっ!

せまい……だして……。

ご飯は貰えるけど、狹い中で食べては寢る退屈な日々。

◇◇數週間後◇◇

さわ……さわるな! この! この! ああっ! はなせー!

さっきよりも小さい所に閉じ込められ、ゆらゆらと運ばれる。

やっぱりかたい……でれない。

◇◇◇◇

むむむ……ひろくなった。いままでとけしきがちがう。においも変わった。

今までより広くはなったけど、やっぱり出れない。

ご飯は貰えるし、水も貰えるけど、き回れないのが不満。

いたい! なにすんだ! この! いたい! やめろ!

◇◇數ヶ月後◇◇

ある日またゆらゆらと運ばれる。

そとにだされた。……したがやわらかい、においがいままでとぜんぜんちがう。

にんげんたちがどこかにいった。……ひろい! すごくひろい!

◇◇數日後◇◇

おなかがすいた……おいしいのがこない……。のどがかわいた……。さむい……。

ふんふん……これは、おいしくないけどしょうがない……。

……にんげんがこない。

◇◇數日後◇◇

いたい……いたい……うごくのがつらい……。

なにかがささった……ちがでてる……。

おなかがすいた……のどがかわいた……いたい……。

◇◇數日後◇◇

さむ……い……い……たい……。

から……だが……う……ごか……ない……いたい……。

たすけ……て……。

◇◇數日後◇◇

………………なにか……くる……い……くし……かない……。

「……ネズミ?」

……に……んげ……ん……だ……。たす……けて……。

「いや、ハリネズミか。何でこんなところに……。……? 怪我してるのか! えっと、獣醫でいいんだよな? 調べないと分からんな……一番近いのは……」

◇◇◇◇

「ああ、いらっしゃい」

「こんにちは」

「あの子は良くなりましたよ。回復まではもうしかかると思いますけど」

「そうですか……まあ、どう見ても死にそうでしたからね……」

「……確認しましたが、捨てられた子でしょう」

「あの子はどうなるんです?」

「飼われるのでしたら回復次第お渡ししますが……」

「……折角ですし、うちで飼います。俺も先はそんな長くないですが、妻にも先立たれてますし、一人暮らしなので丁度いいです」

「では、治ったら連絡します」

「お願いします。その間に調べて準備しておきます」

◇◇數週間後◇◇

またせまくなった。でもたすけてくれたひとといっしょ。

けっこうだしてくれる。ひろくなる。

「トイレはあっちだって言ってんだろー! ハリネズミってトイレ覚えねぇの? いや、そう言えば同じところでするな? そこをトイレにしてしまえ」

なんだこれ、まあいいや。ここでしよう。

「よし、次からもそこでしてくれ」

◇◇數ヶ月後◇◇

ごはんがおいしい。のみものもある。このひとのちかくはおちつく。

いきのびたかいがあった。

「俺の布団にいるのは良いんだが、針落とすのやめてくれんかね。普通にいてーんだわそれ。後寢てる時に飛び込んでくるのもやめてくれ、たまに刺さる」

グリグリしながら言っても言葉は通じない訳で。

ハリネズミって余り懐かないんじゃなかったのか? こいつが例外なのか?

「お前の名前はシロニャンな! 確か前にやってたゲームのハリネズミペットが、そんな名前にしてたはずだ。針も白いし良いだろ。行も貓っぽいし丁度いい。シロニャンな」

◇◇數年後◇◇

そろそろべつのがたべたい。

ぐりぐり。

「む、飽きたか。同じものを食べ続けると飽きるとか人間か」

ふんふん……もぐもぐ。

「でも食べる量は減ってきたか? お前何歳なんだ? ……俺がくたばるのが先か、お前がくたばるのが先か……どっちだろうな……」

◇◇數ヶ月後◇◇

「じゃ、ちょっと買い行ってくるからな!」

にんげんがでかけた。……ねよう。

……よるだ。

ふんふん……ふんふん……? にんげんこない……。

…………! たべもの! にんげんこれからだしてた。

……でてこない……のみものは……ある。すこしずつのもう。

たべものでてきた。たくさんあるけど、これもすこしずつたべよう。

……にんげんこない……。

◇◇數日後◇◇

む、にんげんきた?

ちがうにんげんだ! ふんふん……ちがう!

「さて……とりあえずシロニャンを探さないと……」

ふんふん……このにおい、すこしまえにかいだ。

たすけてくれたひとがつれてきたやつ。

「あ、いたいた。ケージにれておかないと……ごめんな……父ちゃん死んだんだ……」

◇◇數日後◇◇

「しろにゃんー」

さわるな! この!

「こらこら、ハリネズミの針は痛いからダメよ」

「ぶー」

◇◇◇◇

ごはんはちがうひとがくれるようになった……。あのひとどこいった?

……たすけてくれたひとがいい。

たすけてくれたひとみつけたけど、びみょうにちがう。

においがしないし、うごかない。それにかたくてうすい。

……もう……あえないきがする。

たすけてくれたひとといられないなら……もう……いいかな……。

じぶんも……もうながくないきがするし……。

さいごは、あのひとのにおいがする……やわらかいところがよかったけど、しょうがない。

せめてここで……。

◇◇◇◇

「しろにゃんぜんぜん食べない」

「ケージから出すとずっとあそこに行くの」

「そうか。ハリネズミって知能高いのかな? 父ちゃんの仏壇の寫真の前だもんな……。えっと確か……あったあった。ほら、これをやる」

…………! あのひとのにおいがする!

「ハリネズミってあんまり懐かないって見たんだけど……本當なの?」

「あの子は特別じゃないか? 捨てられて怪我したのか怪我して捨てられたのか分からないけど、死にそうな所を拾ったって父ちゃん言ってたしね。それもあるんじゃないかな」

「そう……。こら、邪魔しないであげなさい。あの子にとってお爺ちゃんは特別なのよ」

「むぅ……」

◇◇數日後◇◇

………………もういっかい、あいたいな……。もっといっしょにいたかった。

ずっと……いっしょに……いたかった……。

……もういっかい……あの……ひとと……あ……いた……い……

◇◇白い空間◇◇

あれ……ここは……?

「いらっしゃい、シロニャン」

ふんふん……においがしない……。

「私はそういう存在ではないからね。私は創造神……あなたの願いを葉えてあげると言ったら、何をむ?」

あのひとにあいたい! ずっといっしょにいたい!

「……そう。會わせてあげる。見た目は全然違うけど、間違いなくあなたを拾った飼い主。そして、あなたには知能もあげましょう。まずはちゃんと話そう」

◇◇◇◇

創造神と言う神様から、知能を貰って話を聞いた。

助けてくれたあの人は熊埜堂 林太郎。今はルナフェリアと言う月の神をやっているらしい。

帰ってこないと思ったら、この創造神様が元兇だった。

でも、この後會わせてくれるらしいから、別にいいや。

ハリネズミのまま、シロニャンとして一緒にいたいとも思うし、折角だから同じ人として一緒にいたいとも思った。……悩ましい。

「んー、流石に同じ存在となると神だから無理だけど、ようは人形ひとがたならいい訳だ」

うんうん。

「でもハリネズミのしいわけだ」

やっぱ無理だよね……。

「ルナのいる世界は今までいた世界とは違うからね。問題ないんだこれが。とは言え、すぐにはできないわね。新しい種類追加しないと」

早く會いたいけど……會えるなら待つ。

「まず本はハリネズミにして《人化》でも作るか……それで種族は……。どうせルナは契約するだろうから……月の民にしちゃおうか。従魔契約……いやいっそ霊系? ルナエレメンタルヘッジホッグとかどうだろう。月霊針鼠……あれ、これちょっと強すぎ……」

ずっと一緒にいたいから強くていいよ。

「むむむ……。まあ、ルナと契約するなら強くても良いか。一緒にお仕事してもらいましょうか。待てよ……そうだ、あなたには可能をあげましょう」

可能

「そう、可能。生命の神。進化の。最初は弱いけど、努力次第で最強へ。最初のうちはルナにでも手伝ってもらいなさい」

わかった!

◇◇◇◇

「うん、これでよし。ここで目が覚めるから、川沿いに南に行くのよ? そうすればルナがいる王都に著くから」

分かった!

「教えることは教えたし……じゃあ、いってらっしゃい」

行ってきます!

『……ルナ、王都から北の森まで見てみなさい』

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