《転生先は現人神の神様》43 古代種?

そう言えば米。米がない。しかし、この辺りにないのは確認済みだ。

しいのが何もないじゃないか。殘念だ。

いくら《月の魔眼》と言えど、森の中を探すのは難しい。《視の魔眼》の視加減もまた難しい。世界はそこまで甘くない。

ちっ。

……あれ? カカオの苗木とか《質創造》できるんじゃ……。食べ作れたんだからできるよな? チョコをそのまま作るより、霊に育ててもらって加工した方が遙かに味しい。そうなると、実じゃ意味はない。作るなら苗木だな。

あれ? 《質創造》で全て解決するじゃないか。米もこれでいいじゃん。何してんだ私。今まで探してた時間の無駄さよ……。流石創造神様の力の一部……頭おかしすぎて思いつかなかった。

自家栽培が捗るな。捗りすぎて外部から買う必要が一切なくなったが。

「…………」

「どうかしましたか?」

「いや、今までの悩みが全て解決して何とも言えない気持ちになっただけよ」

「……良いことでは?」

「力……能力……それらは使いこなせなければなんの意味もないのだよ……」

「それは、そうですが……」

「はぁ……テンション下がるわぁ……」

「だだ下がりですね……」

質創造》でできる食べは極普通であり、霊の加護のあるこの世界からしたら不味い分類である。しかし、《質創造》で作った霊達に育てて貰えばいい話じゃないか。なぜそんな簡単な事に気づかなかったのか。

これが《質創造》でできた食べは不味いという思い込み、決めつけというものか……。

「はー……食料にもう用は無いわ」

魔道やらなんやらを見るとしよう。何か參考になるか面白いのがあると良いけど。

ルナフェリア一行が街を歩く時、先頭がルナ。ルナの後ろ左右にジェシカとエブリン。2人の後ろにアストレートとマハが続く。

普通に考えると、ルナの後ろ左右に護衛のアストレートとマハ。侍のジェシカとエブリンがその後ろになるだろう。何故かと言うと、どう見ても護衛対象はルナであり、メイドの命はそこまで重要じゃないのがこの世界での基本だからだ。

しかし、この一見護衛対象のルナ本人がこの中で最強である。ルナとアストレートとマハで、ジェシカとエブリンを挾んだほうが安全だ。ちなみにシロニャンはルナの頭上でグデっとしている。

ルナは星晶裝備で腰にデュランダル、そして月杖が後ろを追尾している。そしてメイドの2人は腰にメイス。アストレートは腰にレイピア、マハは本を持ってかに周囲の警戒をしている。シロニャンはルナの頭上で手足を投げ出し完全寛ぎモードだ。

この一行が非常に目立つ。歩いてると人が避けていく程度には目立つ。巨2人、2人、小を頭に乗せた巨1人だ。目立たない訳がない。

だからといって、これに釣られて近づくと凄い睨まれる。顔が整った5人から睨まれるもんだから堪ったものではない。それでも近づくと護衛の2人から威圧が飛んできて、更に近づくとから後ろ以上の威圧が飛んでくる。

3人共並の《魔力作》じゃないので、他の奴らは威圧に気づかない。周囲からすれば近づいていった奴が突然腰を抜かすか一切けなくなる。

そして一行は何事もなかったかのように歩いて行く為、近づいていった奴は周囲から笑われる。周囲からはただ達に睨まれて腰を抜かす弱者。本人からすれば威圧され、明らかな強者であることに気づく。それと同時に周囲には一切威圧がれてないのも周囲の反応で察してしまう為、より壽命がむ思いをする事になる。

しい薔薇には棘がある。

と言うよりこいつらは植系モンスターだ。薔薇の棘なんて優しいもんじゃない。場合によっては普通に狩られる。尚、思考が筒抜けの為まともな用なら威圧はされない模様。

そんな目立つルナフェリア一行だったが、數々の店を冷やかし、ルナのテンションも戻らず、不貞寢した模様。

「結局テンション戻らなかったね」

「うん……」

◇◇◇◇

「依頼なんか知らねー! 出発だー!」

ドラゴン倒せるルナからしたら、護衛依頼の報酬……どころか大半の報酬が大したものではない。そのくせ護衛依頼は護衛対象に移速度を合わせねば為らず、守らなきゃ為らずで非常に面倒だ。

ルナからしたら守るのは別に良い。良いんだが……移が遅すぎてダレると言う結論が出た。

よって、そのまま東門へ行き自分達だけで出発することに。脳筋は辛抱強くない。自分の事だから余計に。自分の用事がなければお爺ちゃんを発揮していくらでものんびりする模様。

要するに、自分の用事はさっさと済ませたい分である。

マースト東門から出てしばらく……。

「あ、商業ギルド忘れてた……。はー……まあいいや、それよりマハ」

「なんでしょう」

「貴の持ってる魔導書が気になっていたの」

まはの まどうしょを てにいれた。

「……あげませんよ?」

「…………」

まあ、構造と言うか原理が知りたかっただけだ。

《月の魔導》はこういったの解析もできるからねー。《魔導工學》にある"アナライズ"の上位互換の様なだが。

ふぅん……これは使えそうだな。使えそうだが、使い手がいないのが問題か。

魔導書は魔法の紙……そのまま魔法紙で良いだろう。それに魔法陣を刻む事により、保存しておくことが可能のようだ。つまりオリジナル魔法を魔法陣にして本として保存しておく事ができる。

逆に言うと、オリジナル魔法を魔法陣にする知識が必要がある。今のこの世界じゃ使い手がほぼいないと言う訳だ。魔法紙は作るだけ作っておいて、放置かな。

魔導書をマハに返し、土地の整地に思考を回す。

質創造》で必要……と言うか好きな植系を生して、植えていく。マナ濃度は徐々に上がっていっているので、霊達を一足先にお引っ越しさせておく。この際本の方からグノームも分の方へ來ていてもらう。

植えては育てて大きさを見て、それに合わせて場所などを調整する。流石に苗木からすぐ収穫レベルまでは育たない。にもよるが大1週間もあれば実をつける。それもだいぶおかしいのだが。

そして、今回の土地には神木もある。こいつがどんな影響を與えるか……だな。恐らく今の私の土地より長が早い……と思うのだが。1週間きるやもしれんな。木が育ってしまえば実はかなり早い。今の土地より木を減らし種類を増やす事もありそうだ。數日様子見。

神木と言えば、これがあるなら森の妖や花の妖とか、生まれてもいいと思うんだがな?

と言うか、神木のあるこの辺りが1番生まれる可能が高く、生まれやすい狀況下にあるはずなのだが……。

霊の數が激減していたからだろうか? アンデッドのせいだな。しかし、今回霊達をお引っ越しさせたから、生まれるのも時間の問題か? 比較的近い地の霊、グノームも今はいるしわんちゃんあるな。

森の妖ドライアド、花の妖ピクシー。どっちかでも生まれんかねぇ……? 両方生まれれば最高なのだが……果報は寢て待てとも言うか。

車並みに、爽快に走する白いプチ豪華に見える馬車を、ギョッとした様子で見送る商人や冒険者達をよそに、ルナフェリア一行は快適な旅を続ける。

そんな馬車は車より遙かに優れたサスペンションを発揮し、中は非常に快適であった。魔法って凄い……としみじみじるルナであった。

そもそもの話、車の付いているシャーシ部分と部屋となっている箱部分が繋がってないんだから揺れる訳がなかった。二重構造で空間拡張と重力魔法が駆使された非常識馬車だ。

走るとこれらの維持に使われている"メディテーション"の効果が増すが、同時に重力魔法によるサスペンションの消費が増える為正直どっこいどっこいである。

よって、車部分にもサスペンションが一応組み込まれており、重力魔法による消費を多抑えている。多。結局出前機システムはボツだった。

ルナに小さくて何もねー村と判斷された村は外側を走してスルーして行った模様。

宿? 馬車の方が優秀。

風呂? こんな村にある訳がない馬車のでいい。

食料? "ストレージ"に沢山ある。

最早引き篭もりが家ごと、部屋ごと移しているようなだった。

皆が一度は思ったであろう、『寒いから布団から出たくない』『このソファーかねぇかな……』といった究極である。

まあ、皆が寢ている時間に《思考加速》と《並列思考》を駆使し設計したで、ベリアドースまで大2ヶ月と言われている期間をこれだけ快適に過ごせるなら元は取れてるだろう。2ヶ月どころか、1ヶ月きりそうな速度である。

◇◇◇◇

そして、小國群最初の王都。

王都の門で下半に正直な騎士を威圧してこまらせ、何事もなくる。何事もなく。

このになってから、こういう奴には慣れたし、元男として分からなくもない。ないが、こちとら思考が読めてしまうのがまた問題だ。威圧して黙らせるに限る。キャーキャー騒ぐ気など頭ない。そんな歳はとっくに過ぎた。いやむしろ、元々歳的に若くないと言うのもあるが、神となって拍車がかかったじか。

王都の中央にはそこそこ立派なお城がどんと構え、周囲には貴族達のお屋敷、更にその周囲に平民達が住む家が雑に並ぶ。全的に石造りの町並みだ。

「魔眼である程度見ていたから知っていたけれど、ファーサイスはかなり進んでいるわよね」

「進んでいる……ですか?」

「私ファーサイスで貧民達……いわゆるスラム街というのを見ていない」

今いる王都は平民達の住む家の影となるように貧民達、スラム街が存在していた。

だが、ルナの言う通りファーサイス王都にはスラム街が存在しない。スラム街……簡単に言えば貧民達が集まった所だが、要は何らかの理由により仕事を失った者達だ。更に何らかの理由で親を失った孤児もそこに加わるだろう。

ファーサイスではこういった者達を纏めて農民としている。ファーサイスは農國だ。人が増えたら畑を増やせばいい。そして、消費しきれない野菜は他國に売ればいい。野菜はいくらあっても困るものではない。最悪料にもなるだろう。

幸い資金にはそこまで困っていないのだ。野菜は沢山採れ、港町があるため塩も採れる。

孤児だってい頃からしずつ農業を教えていき、將來立派な農家となる。自分が死にそうな時、死に狂いでファーサイスへやって來た時、寢る所に食べる、住む所……食住を用意してくれて仕事まで貰える。

他の國では基本的に無視だ。パトロールしてる騎士何かに聲掛けようものならその場で切り捨てられる場合すらある。そもそもパトロールしている騎士と言う時點で珍しいだろう。

孤児院もあるにはあるが、孤児院と言えば教會だ。つまり法國の関係者だ。この世界の教會が孤児など相手にする訳がない。それこそ一部だけだろう。

ファーサイスはとりあえず農業をさせる。それによって多の出費はあるが、働き手が増えれば最終的にはプラスになり、街の治安も良くなる。ファーサイス上層部が法國を信用していないので、孤児院なんかも存在しない。農業に放り込んだ方が國的にも、子供的にも遙かに良いだろう。中には人間以外の者達も普通にいるのだ。

農家からすれば草むしりだけでも十分役立つ。い子供には草むしりをさせ、力を付けさせる。人手が多いに越したことはない。農業は必須だが重労働だ。しっかり食事や睡眠を取り、元気になった時に農業しながら今後を決めればいい。

そういう意味で、ファーサイスは進んでいるだろう。

「その子供が実はスパイだったりしないんですかね?」

「あるらしいわよ。その場合は喜んで外が搾り取りに行くらしいけど」

「…………」

「上層部からはファーサイスは実力者の國と呼ばれているのよ? 元のチェックはしっかりしてるようね。暗部も優秀だこと」

「平和な國なんですがね……いえ、裏でそう言う人達が頑張っているからこその平和ですか……」

「そうね。逆にそう言う者達がいないとああはいかない。國は綺麗事では回らないってね」

この世界で平和なのはテクノス、マースト、アエスト、ファーサイスの四大國だと思う。

テクノス技大國はドワーフの國で鍛冶やら採掘やらが盛ん。マースト商業國はそもそも商人達の集まり。アエストは若者達の集まる學園都市だが……國としてはちょっと怪しいか?

まあ、アエストがどうなろうが私からしたらどうでもいい事だが。権力爭い好きだな人間は。

問題があるとすれば、小國群は観するような所じゃなく、元々観するようなを持ち合わせていないお爺ちゃんには何の魅力もじなかった。

なんで馬車の旅してんだ? って狀態だが、馬車の旅を初めて數日して気づいたんだ。そう言えば観なんかする質じゃねぇなと。前世とは違った町並みで最初は目新しく、キョロキョロしていたが、そんなもんファーサイスで見慣れたのだ。しかもファーサイスは水の都とも言われるだけあって綺麗なのだ。後の祭りである。

結局何が言いたいかというと……。

「帰りてー」

「「ええ?」」

「騎士達と訓練してる方が遙かに有意義……」

これである。

元・お爺ちゃん、現・は飽きっぽい。

今世で半年、前世だと1年ちょっと。化けの皮が剝がれ始めていた。大慣れたせいである。

「中に篭ってるのが悪いのかね? 屋の形変えて外でティータイムを……いや、ティータイムから離れるべきか。お嬢様と言えばティータイムという偏見だった訳だが……」

「大招いて招かれてのティータイムが貴族だから間違ってない」

「……流石にバリエーションの問題で飽きるのよね。新しい土地の早く実をつけないかねぇ? 読書しようにもこの世界、紙は普及してるが本が怪しい。書く人がそうそういない……むむむ」

仮に読書した場合、速攻で読破してしまう挙句に忘れないので読み直す必要もなく、記憶から掘り返せばいい為そんな続きそうもない。

スペックが高すぎるのも考えものである。天才というのはこういう苦労があるのだろうか。

……宿はここでいいか。普通にいい宿にしよう。治安悪そうだし、この國。わざわざ絡まれに行く趣味は流石に持ち合わせていない。どうせ外歩いたら向こうから寄ってくるんだろう? 知ってる。

この半年ちょっとで私も學んだんだ。大人モードだろうが、モードだろうが、絡まれる事に変わりはないとな! ばっかだからか? いかつい男でも仲間にするか? ……そう言えば、ワンコ呼ぶとか言って呼んでねーな。でもあの子は逆にな……。

まあ、既に夕方だし一泊してすぐに出るか?

「一泊して明日には出ようと思うけど、観とかしたい?」

「我々は來たことありますので」

ジェシカとエブリンは來たことがあり、アストレートとマハはそもそも興味がない。という事は、用はないな。さっさと次行こうか。

◇◇◇◇

王都を出て、各村々を周りながら旅を続けるルナフェリア一行。最短ルートではなく小さい村を回っているので、ファーサイスを出発して一月が過ぎようとしていた。

現在とある村から出発して道……と言えなくもないところを走っている。

「しかしすごい人気ね。聖一行は伊達じゃない」

「村を巡って《回復魔法》使ってたからね~」

「王都とか大きな街より、ああいった村を中心に回ってましたからね」

「教會のない村々をわざわざ回ってたら聖とも言われるか」

「私がやりたいからやっているだけの自己満足なのですが……」

ジェシカやエブリンからすれば、自分達がやりたい事をしているだけであり、本人達からすれば自分達のを満たすためにしているだけにすぎない。

自分達がそう思っているだけに、周囲から聖一行とか言われるのはどうも居心地が悪いようだ。だが、人間の行原理何か誰もそんなもんだろう。いかに『』を他人の迷にならないよう満たすか、人間として生きるうえで重要なのはそこである。迷とならず、むしろ謝される方法ならなお良いだろう。

2人は謝される方法であり、しかもこの世界は移がそもそも命懸けなのだ。別に気にする必要はないのだが……。

「でもなんか悪い気がするんですよ……」

「母國が《回復魔法》持ちを抱え込んだりしなければ、こういう村々にも《回復魔法》持ちが1人はいるんじゃないか……ってね……」

この2人と真面目な話をすると、そら聖一行言われるわなって。

「貴方達は気にしすぎなのよ……そもそもその辺りは國のトップである王族達が考える事であって、ただの……1人の聖職者が考えることじゃない」

「分かってはいるんです……でも、生まれた國が……」

「たとえ抱え込んでいなくても、好き好んで辺境の村に住み著く人間は極一部でしょう。《回復魔法》を持った者が村で生まれたとしても、確実にお金になるなら村から出て大きな街に行く者も多いでしょう。ただでさえ辺境の村に住む若者は都會に憧れる」

「むぅ……」

「人類全てから《回復魔法》を沒収する。もしくは人類全てに《回復魔法》を持たせるのが正直1番楽ね」

「……人類全てに持たせるなんて可能なんですか?」

「無理ね。我々の力が云々より、け止め先の問題で無理ね。一片とは言え神々の奇跡の力。全員がけ止められる訳がない。無理にやれば普通に死ぬ。生まれ持った適正が必要」

宗教國家はまあ、いいだろう。人が生きる上では必要なのかもしれない。が、冒険者ギルドや商業ギルドなどがあるように、回復ギルドでも作れば良かったんだよ。回復ギルドが管理して各國に特定人數滯在させるような組織をな。1つの國が丸々抱え込むからこうなる。小國だったならまだしも大國だから尚の事悪い。バランスが崩れてるんだよ。

《回復魔法》は命に直結する魔法だ。醫學が発展していないこの世界では生命線である。そんな力を持つ者を一國が抱え込んだらそりゃ崩れる。しかもそれを自覚した上で他國に強気に出てるもんだから周りは敵だらけだ。この世界はまともな聖職者の肩が狹い。

『《回復魔法》を使える者は神々に選ばれた優れた者だ!』

ぬかせ。んなわけあるか。たまたま《回復魔法》をけ止められる枠を持って生まれただけだ。神々が選んだわけじゃない。そう生まれてくる『可能』がこの世界に與えられているだけだ。

調合による魔法薬、所謂ポーション系も存在はするがこっちの問題は素材だ。大未開の地に行く必要があるから確保の時點で命懸け。冒険者がよく取りに行って帰ってこない。

「一応考えているんだけどねー……」

「難しいですか?」

「正直天罰として國ごと消えてもらった方が早いし楽。それっぽく見せる為に私がこの場から高高度から打ち下ろしタイプの魔法を使うとか。っぽいをしたの柱を落としまくったりね」

「それは……」

「反対でしょう? 慈長の神が乗り気じゃないしねぇ……。3柱全員賛だったら今頃吹き飛ばしてたわ」

「「ええっ!?」」

「権能を使ったもう1つの方法が無くもないのだけれど、十分とは言えないし……。完璧にやるなら創造神様と相談が必要になる可能が高いのよねぇ……。はぁ、面倒くさい……でも我々4柱じゃ権限足りないっぽいし……1人ずつ《回復魔法》を回収するなんて面倒くさすぎる……」

そもそも私の仕事じゃねぇし! しかし、利用されるのはムカつくわけで。

「あ? 霊達を法國にいる事を止すればいいんじゃね?」

ボソッと呟いた言葉が聞こえたらしく、ジェシカとエブリンがギョッとこちらを見た。

「不の地の完だ。そうすれば勝手に滅びるし? 滅んだ後に霊達戻せばいい。そもそも神託として警告は行われていたそうじゃないか。それを無視しているんだ、覚悟はできてんだろ」

神託をける巫さんがこの世界には存在する。こちらは熱心な信仰者がなるようだ。

とは言え、神々が人類に伝えたいことなどほぼ無い。神とて未來は分からんのだ。ただ、気まぐれに熱心な信仰者に助言をしたりするぐらい。だが、神々の名を使い好き勝手やっているから警告を2回ほどしたらしい。無駄だったようだが。

天罰とか一切の干渉は権限が無く不可能だった為、無視されても変わらず見ているだけしかできなかったが、そこへ私という存在が現れた。干渉が一応可能になったのだ。

それはそうと……奴隷商の馬車か……。とりあえずスピード落とすか。

ルナフェリア一行のし前に大き目の馬車が走っていた。普通の馬車の後ろに牢屋の様なが繋がって運ばれている。中には奴隷達が乗っていた。

この世界、奴隷は普通に認められている。

何かしらの犯罪を犯して捕まった犯罪奴隷。お金が無くなりを売った借金奴隷。

この2つの奴隷が存在するが、犯罪奴隷は兎も角借金奴隷は人権がある。

簡単に言えば『お前借金返すまで逃さねぇからな!』というのが借金奴隷だ。食住は保証され、住み込みでお仕事となる。暴力も止だし、同意のない行為も止だ。これらを破った場合は主の方が罰せられる。そのまま主が奴隷落ち、なんてこともあり得る。借金を返しきれば奴隷からは開放される。

そして、この辺りの決まりがないのが重犯罪奴隷だ。食住保証なし、暴力に同意のない行為も全て認められる。それらを全て含めて罰とされる。殺そうがなんだろうがどうでもいい、いわゆる終刑の1つとして扱われる。何をしても當然奴隷から戻ることはない。

犯罪奴隷は重犯罪奴隷と軽犯罪奴隷が存在するが、軽犯罪奴隷の方がイメージする奴隷に近いだろう。主人の所有と見なされ、他の者は基本口出しができない。

犯罪者とは言え人類なので値段が高く、早々使い捨てる者はいないが……どうなるかは主次第と言ったところだ。

さて、ここで問題がある。し前を進む檻の中に1人だけ不當に捕まった、所謂見た目がいいから、需要があるからと拉致られた者がいるということか。

テンプレですねー。まあ、金にはなるだろうさ。こういう者は大でっち上げで軽犯罪奴隷にされる訳だ。そうじゃないとな?

運が悪いですねと素通りしたいところだが、々その対象が気になる訳で。と言うか超気になる。

「むむむ……」

「どうかしましたか?」

「いやぁ、し前を奴隷商の馬車が走ってるんだけど、中に拉致られたのが1人混じってるようでねぇ。このまま見なかったことにするか、連れて行くか……」

ジェシカとエブリンが非常に不愉快そうな顔になるが、まあ當然か。

「えっと、子供ですか?」

「子供ね、6歳ぐらいの」

「それは……」

やれやれ……まあ、見なかったことにすると言う選択肢はほぼなかったんだがな。拉致し返すのはちょろいし。何より気になるんですよ。

「じゃあちょっと拉致ってくるわ。向こうがそれをむなら……ね」

「え? はい」

拉致するのは簡単なんだよ。そう、《空間魔法》ならね。方法は簡単だ。檻の中に直転移。以上。

檻は周りを布で囲まれていて一応対策はされているようだ。ご苦労様だな。だが無意味だ。

正方形の狹い檻が更に中で仕切られているため余計に狹い。年齢は関係なく男別で分けられており、犯罪奴隷の男數人がドナドナされていた。

大半が20以上の大人の中に1人だけぽつんと耳の尖ったが膝を抱えて座っていた。ちゃんと綺麗にし栄養を取っていれば、間違いなく將來は人になると思われる顔をしている。

だが、今は見る影もなく頬は痩せ、綺麗だったと思われる金髪も薄汚れボロボロ、四肢は骨と皮のような狀態をしていた。

全てを諦めたかのような顔は、とてもその年でするような顔ではなく、の瞳には何も映っていなかった。

そんな絶したの前に、不意に裝飾はシンプルだがかなりの値だと思うドレスを來たが現れた。背はよりし高いぐらい……だろうが、纏う気配がとてもとは思えぬものだった。

何かしらの犯罪で捕まったボロボロの者達がおり、周囲は黒い布で覆われ外は見えず、ただ覆われていない上部分から太ぐらいはる所だ。そんな所に突然貴族、下手したら王族ぐらいのなりをしたが1人で現れた。明らかに場違いである。

そして、そのから言葉が発せられる。

その聲もまたやけに落ち著いた、とても年相応には思えぬ聲だった。

「他の者達は自業自得だけれど、貴は違う。付いて來たいなら連れてってあげる。どうする?」

その言葉を聞いた耳の尖ったの瞳が揺れ、微かにが差し込んだ。

「食べを探すために森に出て、奴隷商に捕まったようね。このまま奴隷として生きるか、この手を取るか……選びなさい」

スッと差し出された小さな右手。

骨と皮だけの様になった細い腕……細い手に、確かに意思を、力を込めて手を取った。

耳の尖ったが摑むのは確かな未來。今この時が、この子にとっての大きな分岐點。耳の尖ったはこの日手に取った溫もりを忘れない事だろう。

痩せ細った手を確かに握り微笑み頷いた場違いなは、その直後に耳の尖ったと姿を消した。唖然と見ていた他の奴隷達はいなくなった事でき出したが、何だったのかは理解できない。

耳の尖ったが瞬きした瞬間に周囲の景が一変していた。何が起きたのか理解できずキョトンとしており、瞬きしながらキョロキョロしだした。

「おかえりなさいませ。付いて來たのですね」

「まあ、この子からしたらそれしか選択肢が無いでしょうよ」

ジェシカに返しつつ、首についているっかを外してあげ《魔導工學》で素材へと変え、"ストレージ"に放り込んでおく。

奴隷の首は魔道の一種でそう簡単に外れない。簡単に外れてはいけないものだから當然だ。無理やり外そうとすればそのまま死ぬ可能があるため、ちゃんとした手順を踏む必要がある。

だが、ルナからすれば魔道なので関係ない。魔道を解析し、確実に安全に無理やりぶち壊す力技である。

魔道力源は當然魔力。奴隷の首は付けているの魔力を使用している。だが、魔道が魔道である為の魔法陣をピンポイントでぶち壊してあげればいい。そしたらもう機能しないので、外すだけだ。

「さて、この子の名前はセラフィーナ。6歳」

「エルフかぁ……。奴隷商なら喜んで捕まえる……」

「ふふふ……」

「この子……ハイエルフですね?」

「「えっ!?」」

「そう、マハの言う通りハイエルフよ」

耳の尖った。名前はセラフィーナと言い、6歳である。エルフ同士の子供で先祖返りだろう。

金髪にエメラルドグリーンの綺麗な瞳で白い。まさにエルフといった外見をしている。まあ……今はボロボロだが。しばらくすれば健康になるだろう。

エルフやドワーフの上位として、ハイエルフとハイドワーフが存在する。より霊に近く保有魔力が非常に多い。20歳程で長が止まりそのまま生き続ける不老種だ。不死ではない。

古代種とも言われ非常にレアであり、現狀先祖返りで生まれた者達しかいない。

「エルフはより野菜。特に果実が好きだったっけ?」

「森に住んでいるのでそう言われてますね」

「ふむ。とりあえず"ピュリファイ"」

「んっ……」

"ストレージ"からペルシア(モモ)を取り出すとキラキラした目で見つめている。さっきまでの死んだ目が噓のよう。子供が幸せそうな顔でパクツイているのは良いだ。

「聖域の果実なら誰でもああなると思います……」と言う呟きはスルーさせていただく。

「さて……子供用の家と服か。部屋は流石に今は無理ね……」

椅子、皿にコップ、スプーンやフォークを子供サイズでサクッと作る。

ほとんど喋らないが、最初はこんなもんだろう。《魔導工學》で作っている間も興味津々だったし。この様子ならすぐ元気になるだろう。

夜を越すために道から外れた奴隷商の馬車を抜き去り進む。

セラフィーナが夕食を食べた後船を漕ぎ出したので、ジェシカが自分の部屋で寢かせ帰ってくる。

「あの子はどうするのですか?」

「普通に両親に育てられたけど目の前で亡くし、ハイエルフのせいで村でも浮き、1人で頑張ってたけど結果奴隷商に捕まった……。寄りもないしこのまま連れて行くつもりよ」

「あの……私が面倒見てもいいですか?」

「ジェシカ子供好きだしねー。私も嫌いじゃないけど」

「私が育てるつもりだったけど、まあいいでしょう。やりたいと言うならやりなさい」

「子育て頑張りましょう、エブリン!」

「私はあまり自がないのだけれど? 経験なんて無いし」

「私だってありません」

そらそうだ。お前ら未婚じゃないか……。孤児院なんかも擔當してなかったようだし。まあ、見守ってるとしよう。そう言えばこの2人、この世界だと既に結婚しててもいい年齢だったな。する気無さそうだけど。

忘れる前にベアテにセラフィーナ用の服一式を頼んでおいて。靴はこっちで作るか。

これから行く街で買おうかと思ったけど、ハイエルフだからな……あー、拐対策しておくか。GPS的なの用意しておこう。後は種族をエルフに偽裝しておこう。とりあえずこんなもんだろう。

◇◇◇◇

あっ! 野蠻な 盜賊が 飛び出してきた!

轢き殺す 轢き殺す

轢き殺す 轢き殺す

選択肢なんかねぇよなぁ? ひゃっはー!

「どっちが野蠻か分かったもんじゃない」

「ハハハ、馬車って急には止まれないのよ?」

「明らかに加速したと思います……」

「最早話すことすら無くなったね……」

「盜賊とは會話するだけ無駄だと知ったもの。と言うか會話にならない。わざわざ馬車止めて降りるだけ無駄。どうせこのメンツ見たら襲ってくるのよ。戦っても技無いからつまんないし」

「「…………」」

ジェシカとエブリン、反論できず。盜賊ほいほい。

今はそこそこ開けた草原。魔法を使い伏せて待っていたようだ。魔法使ってる時點で私からしたら『ここにいるぞぉ!』って自己主張してるようなもんだからな。喜んで追いかけ回してやったわ。

草原なのが運の盡き。《結界魔法》によりどんどん狹くなる逃げ場。馬車はどんどんスピードを上げていき、最初のうちは直進だけだったのに曲がり始める。さぞ恐怖しながら死んでいった事でしょう。盜賊に慈悲はない。人権もない。私の馬は兇暴です。馬車だけど。

「今回ほいほいされたのは23人か。大量ね」

終わった後には赤黒く染まった草と片が殘されていた。ついでに馬車にも『々』こびりついていた。うわきちゃない。

セラフィーナは座ったジェシカの膝の上に乗って、抱き付いていたから見ていない。モザイク必須。見せられないよ。

ただこれ、問題がある。

後処理が面倒くさい……。放置する訳にもいかない。人類だろうと魔だろうと、余裕があれば死は焼き払うのが基本。じゃないとアンデッドだったり病気の元になるからだ。更に食の魔も寄ってきたりする。どちらかと言うと病気と食対策だ。焼いても骨殘ればアンデッドになる時はなるからな。

しょうがない、やるか……。

「じゃあ処理してくるから……」

「はい。ルナ様がはしゃいだ結果ですからね」

「くそう……」

まあ、ヴルカンとウンディーネにやってもらうんだけどね! 私は焼いた後にステータスリングの回収だ。冒険者ギルドにでも渡さんとならんからな。

馬車の扉を開けたと同時に……。

「「「「な、なんじゃこりゃあ!」」」」

というび聲が聞こえた。

冒険者の様だ。し後ろに馬車がある。商人の護衛だな。面倒だから放置に限る。わざわざ相手する理由もない。

「ウンディーネ。馬車を綺麗にしてくれる?」

「はーい」

「ヴルカン、殘らず焼卻。ウンディーネの水も」

「わかったー」

ウンディーネの《水魔法》と作リキッドコントロールにより馬車が包まれ綺麗になる。

ヴルカンの《火魔法》と火炎作フレイムコントロールで々赤黒かった部分全てが燃えていく。他の部分には一切燃え移ったりせずにだ。馬車を綺麗にした水はそのまま炎の方に放り込まれ即座に蒸発する。

ヴルカンが火を消すとステータスリングだけ殘るので、"プレスティージオ"で全て回収し作業完了だ。ヴルカンとウンディーネにお禮を言って、ぽかんとしてた冒険者達を放置し、馬車に乗り込み出発する。ガチな放置である。

そもそも出てきた盜賊を馬車で轢き殺して《霊魔法》で処理しただけだし? 何か問題でも?

「もうすぐベリアドースにりますね」

「次の街が既に領地だったっけ」

「そうなります」

「冒険者の數が隨分増えてきたわね」

「冒険者ギルド本部があるからねー」

「この國ではあまり外を出歩かない事をお勧めしますが……」

「そんな治安が悪い?」

「冒険者は男が多いから、この國に來た時は大変だったなぁ……でも稼ぎ時ではあった」

「怪我人多いですからねぇ」

「つまり私が楽できそうな國と言う訳だ」

「「はぁ……」」

とりあえずぶん毆って黙らせればいいと言う超簡単な手段を取れる訳だ。素晴らしい。大話しを聞かないからな、こういう手段が取れるのは非常に楽だ。

という事で、ベリアドース大國西の街に到著だ。一ヶ月半ばだから、遠回りした割には早いな。

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