《転生先は現人神の神様》61 EXの実力は……

ファーサイス新年祭から約半年が過ぎようとしていた。

學園も問題なく……教師側の不足問題はあるが一応回ってはいた。

とりあえず後は學園長と4大國に丸投げである。

そして丸投げしたルナフェリアはと言うと、"ドラゴンブレス"にさらされていた。

「ふむ……"ドラゴンブレス"も魔法の一種……霧散させることが可能だが、當たって強制レジストした方が楽だな」

保有魔力量による強制レジストの方が、神の能力を使用して霧散させるより楽である。なぜなら何もしなくていいから。まあ、1人の場合と言う前提だが。

「にしても、生じゃないだけあって楽なだ。生だったら絶対こんなところに來たくは無かったな……」

ルナフェリアのいる場所……それは創造のダンジョン火山地帯だ。

バリッバリの活火山であり、有毒ガスが吹き出ている場所まで存在し、道らしい道は無く、大きい巖から小さいのまでゴロゴロ転がっている。

そして當然気溫は非常に高く、マグマが流れている所まであるのだから勘弁してしいものである。

これで出てくる敵が火屬の純正竜だったり、亜竜だったりするのだから殺意が高い。ワイバーンはここでは癒やしである。ワイバーンも食われる側。

普通に攻略するなら大量の水分と、何らかの方法で有毒ガスを防ぎ、更に竜種に通用する対空手段が必要になる。

正直無理ゲーな気がするが、そもそもこのダンジョン自が攻略考えてないなので、何の問題もない。

では何かというと倉庫扱いで、最高級食材をむならこのぐらいの難易度を要求されるだけだ。

一般的ななら1層目から手にるし、鉱石だって基本的なは下の方で採れる。

最高級のを目指すなら竜種などになるので上の方になり、當然土地が竜種に最適化されるので人類には辛くなる。海とかもう最悪。陸な分火山の方がマシか。

「さて、大確かめたかった事は終わったから、食材になって貰おうか」

先程ブレスをかましてきたのは中位炎竜のヴォルケイノドラゴン。

シードラゴンと同じランクの火屬バージョンだ。

月杖・エーレンベルクを手に持ち、魔力を流し槍として構える。

そして、首元に転移して切り飛ばす。

「おっと、勿無い勿無い。竜はも使えるんだ」

その場でバラして"ストレージ"にしまっておく。

純正竜は狩れる者が非常にない。その為需要はあるが供給がほぼ皆無である。

味しく、鱗や皮は防に、骨や爪は武に、臓は調合で薬になる。

ルナフェリアは基本的に純正竜……と言うか、生をそんな狩らない。

『必要な時に、必要な分だけ』だ。人類は『魔』と言い敵としているが、この世界に住んでいる生には変わりない。よって、積極的に狩って回る事はしない。

今回も確認と、の補充のため狩りに來た。

流石にシードラゴンのが枯渇したのだ。食い過ぎである。

以外は使う予定がないので売る予定だ。

きっと生産ギルドが小躍りしながら持って行く事だろう。

一匹じゃ足りないかなぁとふらふら飛んでいるルナフェリアの元へ、縄張りにったのが気にらないのか、咆哮しながら飛んできた。

「グルアアアアアアア!」

「うるせぇ!」

開けてる口の目の前に転移して、口の中に槍部分を突っ込み上顎から頭にかけて貫いた。

遠くてもうるさかったのに、自分から目の前に転移したもんだから余計にうるさく、イラッとして即座に殺された哀れなドラゴンは泣いていい。

「よし、2匹分あれば今回は良いか。サイズもそれなりだったし」

杖に纏わせていた魔力が霧散し、ルナフェリアの姿が掻き消えた。

そして冒険者ギルド本部にある、ダンジョンへのり口へと帰ってきた。

國のトップで、現狀冒険者のトップでもある人が突然現れた訳だが、他の冒険者達は慌てふためく事は無かった。

「お、陛下だ」

「ほんとだ、陛下だ」

など口々にしながら立って軽く頭を下げるものだったり、その場で跪く者だったり、座ったまま軽く頭を下げるだけだったりと様々だった。

ルナフェリア自冒険者登録してあるし、ギルマスだダンジョンだと結構出りするためいちいち跪いたりしないで良いと言ってある。冒険者達に禮儀とかを気にするのもなんか違うし。

それ故、喧嘩売ってきた場合は容赦なくしばき倒すとも言ってある。冒険者には冒険者の対応をだ。

割と目立つところに張り出されているし、初めてきた奴らは付に行ったら聞くだろう。

そして現狀はそれぞれ好きな方法となっている。

そもそもちゃんとした作法を知っている者自が冒険者にはない。しかも故郷がてんでバラバラ。中央出じゃない者も普通にいるので、自分達が好きな方法で敬意を払う事に落ち著いたようだ。

この辺りは別にルナフェリアが言った訳ではなく、冒険者達の間で決まった事だ。

見た目から嫉妬の対象にもなりやすいが……神生命で自分達より倍ぐらい年上という事を知ると大大人しくなる。

「うむ。何か問題は?」

周囲を見渡すが特に何もなさそうであった。

冒険者達に見送られ、ロビーの方へと向かう。

「無いならば良い。死に急ぐなよ」

すっかりブリュンヒルデに更正された……と言うか、正直生前の口調に戻しつつ、々偉そうな……命令形になった。

どちらかと言うとこちらの方が楽だな、となったため甘んじてれた。割りとひゃっはーしても違和がなくなったのだ。それも考えての更正なのだろうが。

そのおかげ? で、人形の様なから『あ゛?』って言葉が聞こえるようにもなったのだが。ブリュンヒルデは苦笑していたが、ストップがかからなかったから許されたのだろう。

ちなみにその聲を引き出したおっさん(冒険者)は魔力付きの睨みにより腰を抜かしていた。周りにゲラゲラ笑われたのは言うまでもない。

周りの冒険者達は知っているのだ。

強面のちんぴらに聲かけられてビクビクオドオドする……な訳がなく、張り倒す側だと。むしろ吹き出さないのに必死だった。何人か耐えきれずにプルプルしてたからな。よもやあれが冒険者最強のEXだとは思わんだろう。見てる側からすれば最高の娯楽である。見てる側からすれば。

ロビーの方はいつもと違う……何だか騒がしいじがしていた。

ダンジョンに潛っている間に問題でも起きたかと思いつつ、変わらぬペースで歩いて行く。この土地で起きた問題は最終的に自分のところにやってくるのだ。だったら最初から突っ込んだ方が早い。早い方が対処が楽だったりするしな……。

「EX認定されたのがいるとか聞いたんだが、冗談だよな?」

「いえ、半年ほど前に認定された方がいます」

「おいおい、SSすらいなかったんだぞ?」

聞こえてきた會話から察するに、どうやらEXにご不満のご様子だ。

まあ確かに、SやSSをふっ飛ばしたからな。

とは言え正直、この問題は想定済みで対処も楽だ。力を示せばいいのだから。冒険者も基本的に実力主義だからな。と言うか実力がなければ人知れず死ぬだけだし。

とりあえず何か抗議している男を無視して、ダンジョンの付だ。

売り捌くものがあるからな。

「あ、陛下。お帰りなさい」

「ただいま。今回はいいお土産がある」

「お土産ですか? カニがいいです」

「……殘念ながら海エリアは行ってない」

すっと……數枚の鱗を差し出す。

「…………ま、ままままさか!」

「中位炎竜、ヴォルケイノドラゴンの鱗」

「ついに純正竜の素材ですか!」

ルンルンで走っていった。置いてけぼりである。

ヴォルケイノドラゴンのは渡すつもり無いので、ついでに狩ったと言うか、襲い掛かってきたから狩ったワイバーンを提供しようかと思ったのだが……。

「あれがEX? あれがなれるなら俺らもとっくになってるだろ!」

「はぁ……陛下をあれ呼ばわりですか……」

ため息を隠す事もなく、あからさまに付嬢は呆れていた。

どうもSランクにはなったが、辛うじて……ってじのようだな。

ぶっちゃけギルド側的には『失敗』扱いらしいが。何でこいつらをSランクにしたんだ? という意味で。

そう、このSランクは3人のPTである。

「ああ? いやいや勘弁してよ……。折角この國に著いて街並みにして、ギルド本部が中央に來て喜んでたのに君らがいるのかい……」

新たにギルド本部にってきたイケメンの男がって早々に嘆きだした。

そして明らかに向けられたSランク3人が男を見て上げた聲は……。

「「「げぇ……」」」

「人を見て『げぇ』とは隨分な挨拶だね?」

お前も人のこと言えない嘆きっぷりだったが……と言う突っ込みは無粋だろうか?

「おい、あれってまさか?」

「……だろうな。炎魔剣のシルヴァン」

炎魔剣のシルヴァン。

Sランク冒険者で、火を纏う魔裝用している。

魔裝はアーティファクトであり、かなりのレア

ルナフェリアが簡単に作っているが、本來魔裝が超の付くレアだ。純粋に製作が難しい。"ルーン"で作しないとほぼ実用皆無の代になる。

そして現在この世界に"ルーン"を使えるものは……という事でシルヴァンが持っているのは天然だ。

なお、シルヴァンの強さはSランクで上位の方になる。そして3人組は下位だ。

「君達の相手は時間の無駄だし……ああ、ブルーナさん。ギルマスに顔出しておきたいんだけど?」

「そろそろ來るのではないかと思うのですが……」

「うん?」

ルナフェリアが帰ってきて、純正竜の素材を持ち帰った。ダンジョンの擔當をしている付嬢がルンルンで呼びに行ったのをばっちり見ている。

そしてギルマスがやってきた。

「おう、ついに狩ってきたって? ……なんだ、お前も來てたのか」

「さっき到著したよ」

「「「おい! ギルマス! これがEXってどういうことだ!」」」

『はぁ……』

「……てめぇらも來てたのか。Sランクの問題児共……」

最初こっちに話しかけてきたギルマスだが、イケメンに気づいた。

そして3人のびにより付嬢……と言うかギルド員がため息をつき、ギルマスも微妙な顔をしていた。

「まあ……お前らは後でいいや。それでどの部分売ってくれるんだ?」

以外全部。後はワイバーン全

「まじか。がないのは惜しいが……元々目當てか?」

「うむ」

「そうか。まあ、ワイバーンのでも高級食材だからありがたいもんだな。一気にっつうのは厳しいから、小分けでもいいか?」

「うむ、構わん。それと數だが、ヴォルケイノドラゴン2分とワイバーン4分になる」

「まじか!? 一ずつかと思ったが……。それなら商業と生産で綺麗に分けられそうだな。戦爭に為らずに済みそうだ」

生産ギルドは素材として使いたい。商業ギルドは他に運んで稼ぎたい。だからな。

貴族とかがコレクションとして竜のうろこを飾っておいたりするらしい。まあ、確かに綺麗だから分からなくもないが。

「っておい! スルーすんなギルマス!」

「うるせぇ! 大事な商談中だ!」

ギルド職員がちらちらとルナフェリアを見ているが、先程から特に変化はない。

そもそも眼中にないのだ……。どうでもいいことにいちいち反応はしない。

「ふむ……この子が噂のEXなのか……」

シルヴァンが興味を持ったようで、わりと行われる『威圧挨拶』をルナフェリアに仕掛ける。

『威圧挨拶』とは、お互い威圧を向け合い強さを図る。初めて同士の冒険者がたまにやっているが、Sランクは基本的にやらない。自分達の強さに自がある者達だし、同じ數十人以外格下だからだ。

威圧を向けられたルナフェリアは目線だけちらっと向け、挨拶されたので挨拶してあげた。徐々に強くしていくにつれ、シルヴァンの顔が引き攣っていった。

そしてついに両手を上げ降參的に首を振った。それを見たルナフェリアは視線を戻し、それによって威圧から開放される。

シルヴァンは問題児3人に呆れた顔を向けつつぼやく。

「自分で言うのもあれだけど、君達良くこんな化に喧嘩売る気になったね……。まあ、何も考えてなさそうだけど……」

その問題児3人は変わらずギルマスに詰め寄っていた。

「ぽっと出がEXで何で俺らがSのままなんだよ!」

「「そうだそうだ!」」

「うるせぇ! ぽっと出だろうが何だろうがその実力があり、てめぇらとは比べにならない程にがでけぇからだよ!」

「「「うぐっ……」」」

「そもそもこの國の王だぞ! 陛下だからな? 不敬罪で死にてぇのか?」

「「「ぐぬぬ……」」」

「このギルド本部自陛下からの借りもんだからな? 冒険者代表であるSランクのてめぇらの行のせいで追い出されたらどうしてくれんだ? あ?」

「「「…………」」」

「別に塵芥が騒いだところで追い出すつもりはない」

「「「……塵芥ってなんだ?」」」

「じんかい、ちりあくた。つまり、とるに足らないどうでもいいゴミですね」

「「「なんだと!」」」

付嬢の解説により意味を知った3人がまたも騒ぎ出した。

「上等だ! 勝負しろ勝負! EXってんなら逃げねぇよな!?」

「ふむ。1対3か、良かろう。たまには違う者達との模擬戦もいいだろうしな」

「「「1対3だとぉ!?」」」

「む? 當然だろう? Sランク3人程度相手にできずになにがEXか。訓練場はこっちだ、ついて來い」

「「「上等だぁ!」」」

4人が冒険者ギルド本部からでていき、訓練場へ移した。

その後に続いてぞろぞろと冒険者達もでていった。

「……良いのかい? ギルマス」

「陛下が良いってんだから良いんだろう。お前は行かないのか? 見學してきたらどうだ」

「確かに、気になるから行ってこようかな?」

「しばらくここにいるのか?」

「その予定。ダンジョンあるんでしょ?」

「おう、あるぞ。あっちがダンジョン用の付だ。後うちは宿にもなってるぞ。3階がそうだ」

「じゃあ一室よろしく!」

「言っとくから部屋る時はあそこで鍵貰えよ」

「了解。じゃあちょっと見てくる」

「おう」

ギルド通りの一角に新しく建設された訓練場。

現在その場に結構な人數が集まり、見學者に囲まれた中央には帝とSランクの3人が向かい合っていた。

「へっへ、降參するなら今のうちだぜ?」

「そうそう。……しかも子供を甚振る趣味はねぇからな!」

「そうだ―――」

「ぬかせ。ルールは特に無い。好きにすると良い。貴様らに合わせて近接で相手をしよう」

「「「上等だ! 後悔すんなよ!」」」

びながら3人が駆け出した。

「あいつら、陛下相手に強気だな」

「模擬戦云々の前に、この國じゃなかったら不敬罪でもう死んでるぞ」

「ほんとにな」

「と言うか、あの近衛組が怖いから誰か鎮めて來いよ」

「馬鹿言うな。お前が行って來い」

近衛組……それはつまりルナフェリアの眷屬達である。

基本的にルナフェリアに付いてない者は訓練場で訓練か、見回りをしている。

そして、近衛達の模擬戦を日々目にしている冒険者達。

見た冒険者達の想は『この國やばくね?』だ。

あの3人が勝てるとは微塵も思ってない見學者達である。

ルナフェリアに"テレパス"で止められて無ければ、とっくに眷屬に張り倒されているであろう3人組はそれぞれ武を構える。

直剣と盾、両手斧、メイスと盾と言う脳筋PTだ。

さて、一応私は魔法がメインだからな。たまには攻撃魔法縛りもいいだろう。

エーレンベルクかウロボロスか……今回はエーレンベルクにするか。

後ろで待機していた月杖・エーレンベルクを手に取り、魔力を流す。

本來月杖というだけあって杖だが、杖は魔法である。

魔法とは所持者の魔力作や魔力増幅を助ける、行うだ。

つまり、杖に魔力を流し増幅させ、その魔力を刃とすれば立派な近接武の出來上がりだ。剣やら何やら作っているが、自分で使う分には月杖1本で十分だったり。

とは言え、あくまでこれは理論上は可能と言うレベルの魔法技なため、一般的ではない。

杖本が助けてくれるとは言え、魔力を維持しないと當然形を保てない。本來ない刃を魔力作で維持しつつ近接戦闘しなきゃ為らないので、普通にミスリル製の剣に魔力を込めた方が遙かに実用的とされるからだ。

炎魔剣のシルヴァンも魔力を流すだけで炎を纏う魔裝を使用している。ルナフェリアのやり方だと、炎を剣の形にしなきゃならない。どちらが大変かは言うまでもないだろう。まあそれを息をするように行うのがルナフェリアなのだが……。

槍、斧、鎌……はたまた薙刀か……両手鎚……場合によって変えればいいか。

とりあえず槍でいいな。

先端に浮いている水晶が基點になり、水晶の周りを回っている2つのっかが回転を止め、大きいっかが元側、小さいっかが先端側で補助となる。

杖自が大2メートル後半で、更に槍として刃がびるため結構なサイズだ。

「では初めます。準備はよろしいですか?」

「「「おう!」」」

「では―――」

開始の合図は眷屬であるフリードリヒが擔當する。

そのフリードリヒは3人組にのみ準備が良いか聞いた。

この3人は似た者同士で仲が良いPTだ。実力は確かにSランクで連攜もしっかりしている。々子供っぽいのが問題と言えるが。

その為、今回もしっかり連攜をして仕掛けてきていた。

絶妙に対処のしづらいタイミングで三方向からの攻撃だ。

「「「おらぁ!」」」

「ぬるい」

神である能力と"プレスティージオ"を存分に活かし自分の倍ある武る。

これが普段の近接戦闘スタイルだ。眷屬の騎士達との模擬戦の場合、これに魔法攻撃も加わる。

こちらからは攻撃を仕掛けず、その場からかず武をクルクル回して全て弾く。

こいつらまだ本気じゃないな。まだまだ様子見狀態のようだな。

という事で、煽っておこうと思う。こいつらなら簡単に釣れそうだ。

「その程度ではあるまい? せめて1歩でもかしてみせよ」

「「「このやろう! 泣いても許さねぇからな!」」」

「ははははは」

更にスピードが上がり熾烈化するが一切変わらず全て弾いていた。

「いやいや、Sランクでも下の方とは言え3人同時で1歩もかないのか……。とんでもないね陛下……」

「ああ、この國は初めてだったな。普段の模擬戦の方が激しいからなぁ……」

「普段の模擬戦? 僕達以外にSランクがいるのかい?」

「いやいや、この國の……と言うか、陛下の個人的な護衛達だ。扱い的には一応近衛兵」

「近衛兵なのに個人的な?」

「仕事容的には他の國で言う近衛兵なんだけど、彼らの給料は稅じゃなく、陛下のポケットマネーからでてるんだと。そもそもこの國自軍がないからな。ほら、あそこにいる人達がそうだ。あの紋章は覚えておいた方が良いぞ」

「あの人達もヤバそうだね……。あれ、國章とは違う?」

「今日來たのによく分かったな、違うぞ。國章は神霊樹……あの木と霊様だ。でもあの人達が付けてるのは通稱ルナ印。神様と霊様のマークだな。陛下の個人的なマークみたいなもんだ」

「なるほど、私兵なんだね?」

「まあな。ただ、確実にあの人達は騎士だぞ。きや仕草を見れば俺らとは違うことがすぐに分かるからな」

「それより殺気立ってる事が気になるんだけど?」

「そりゃああれだ……。奴らの陛下に対する態度が気にらんのだろう……。まあある程度わかったとは思うがその辺り陛下自はかなり緩い。代わりにあの人達にめっちゃ睨まれるな」

「ああ、うん。なるほど……。彼らはいつもあんなんだからねぇ……」

見學のシルヴァンとこの國に來てそれなりになる冒険者が話している最中も、模擬戦は続いていた。

「ふむ、お手上げか? では今度はこちらからだ。防能力の確認といこうか。ゆくぞ? 凌いでみせよ」

右足を一歩だし、重心をかすとともにメイスを持っている男の前に移。槍なのでシンプルに突きを繰り出す。

左手に持っている盾でギリギリ弾かれるが……弾かれたままくるっと周り、橫薙ぎに振り抜く。

とっさにメイスで防ごうとするが、そのまま吹っ飛んでいった。

「なっ……ぐふぅ……」

「なにぃ!?」

「よそ見とは余裕ではないか」

「っ! ぐっほぉ……」

飛んでいった男に気を取られた隙きに近づき、大鎌の形にしたで足元を払う。

とっさに下がらず、ジャンプしてしまった男……。

左腕で右から左に振り抜いたので、フリーになっている右で空中にいる男にそっとれ、魔法で吹き飛ばす。思いっきりぶん毆るのは絵図ら的にあれなので。

「ジャンプなんぞするからだ、うつけめ」

そして殘った最後の1人も簡単に吹っ飛んでいった。

「貴様らたかが1回防いだだけで油斷しすぎだ。全員2発目で沈むとは何事だ。不完全燃焼もいいとこだ。……フリードリヒ、たまにはサシでどうだ?」

「ええ、喜んで」

Sランク3人組に代わり、眷屬纏め役のフリードリヒが反対に立ち、構える。

こちらはルナフェリア特の片手剣と盾だ。

「行きます!」

「うむ、こい」

どちらが先か、開始の合図なんかは不要である。弱者から、挑戦者からくのだ。

そもそも自分達の主をどうこうできるとは思っていない。

模擬戦もよくするので様子見なんてこともしない。いきなり消えるように斬り込んで行くが當然のように防がれる。

魔導剣と月杖がぶつかり合い、風が巻き起こる。そんな打ち合いが続く。

下級の冒険者は目ですら追えないような打ち合いだ。1回振ったように見えても音は3回とか聞こえる。しかし、このぐらいならまだ上級の冒険者なら見える。

ただ、ぶつかりあった時の音と、ぶつかった際に揺れる髪や服からどれぐらいの力が込められているか、それを考えるとヤバさが分かる。

しかも、2人の表を見る限りあたかもそれが當然の様に変化がない。

挙句の果てには魔法まで飛びい始めた。正確にはフリードリヒの魔法をルナフェリアが対抗魔法……逆屬の魔法をぶつけ相殺している。火には水、風には土、には闇。的確に相殺させている。

この対抗魔法での相殺は高等技になる。

対抗魔法は魔力の多い、攻撃力の高い方が低い方を打ち消す魔法法則だ。《防魔法》は《攻撃魔法》に強い事になる。

火の攻撃魔法にはそれ以上の水の攻撃魔法を重ねるように放てば良い。そうすれば相手の火の攻撃魔法を打ち消しつつ、自分の水の攻撃魔法が相手に屆くだろう。

そう、相手に屆くのだ。つまり相殺させるには同じ攻撃力の対抗魔法をぶつける必要がある。

これをしているのは後から魔法を放つ方。つまりルナフェリアである。これにはSランク4人も真っ青。

相手が放つ魔法を屬から込めれた魔力量まで把握し、それに合わせ逆の魔法を同じ量でぶつける。

これを近接戦闘しながら行っているわけだ。余程魔法に無知でない限りヤバさが分かるというもの。

しかし、どうも驚いている者がない。それはつまり……。

「まさかこれが、普段の景かい……?」

「ああ、そうだ。最初は目を疑ったが、サシな分まだマシだな。ハハハハ」

「サシな分まだマシ……?」

「そうだぞ? 大陛下対騎士達だからな。達だ、た・ち。それであれやってる」

「んな馬鹿な……」

シルヴァンは恐る恐る話していた冒険者に問うが、それ以上の事が返って來た。

「マジだマジ。いやもう、俺はあの人達が本気で戦ってる所を見てみたいね。俺はあくまで訓練だから確実にセーブしてると思ってる」

「俺は見たくないぞ? あの人達が本気で戦うとかどんな狀況だよ……」

「いやまあそうなんだけどよ。逆に気になるじゃないか」

「怖いもの見たさってやつか? 分からなくもないが……うーむ……」

この國に來てそれなりになる冒険者達が話しているのを聞きながら、目の前で行われている模擬戦を呆然と眺めるSランクでも上位の方なシルヴァンであった。

「―――むぅ……參りました」

「うむ、満足。さてSランク、不満があるなら聞くが?」

ブンブンブンブンと勢い良く橫に振るSランクであった。

「わらわはギルマスとの商談に戻る。邪魔したな。ヒルデ、ギルド本部だ」

「畏まりました」

模擬戦中に帰って來た事を察しやって來たブリュンヒルデと、護衛の眷屬2人を連れてギルド本部へと戻る……前に。

「おっと、シルヴァンといったか。君もきたまえ」

「えっ、僕?」

「そうだ、行くぞー。ちなみに付いてくれば君の悩みが1つ解決するだろう」

「悩み……?」

「まあ、ルナ様が言った時點でほぼ命令となるのですが」

「…………元々戻るつもりでしたしいいですけどね」

ここ半年でルナフェリアはブリュンヒルデをヒルデと呼び、ブリュンヒルデはルナフェリアをルナ様と呼ぶようになった。正直フルネームでは長いのだ。

ギルド本部はすぐそこだが、ギルドに向かっている最中に要件を済ませる。

「まあ、用があるのは君が持っている武の方だが」

「えっ? あっ!」

"プレスティージオ"でシルヴァンの腰にある剣を引き寄せ、眺める。

そして、本人へ返す。

「別に奪ったりなどしない。ほれ」

「見せるぐらいなら言ってくれれば……」

「アーティファクトで貴重品だから預けるのは不安。技的にもアーティファクトの手れを任せていいのかも判斷しかねる。更にどういう手れをすれば良いのかもはっきりせず、もし壊れたらと思うと……で、手れを一切していない。と言ったところだろう?」

「うっ……はい……」

「まあ、分からなくもないがな。酷使しすぎだ。近いうちに機能しなくなるぞ」

「ええっ!? そ、それは本當ですか!?」

「そもそも刃もボロボロだ。お世辭にもいい狀態とは言えん。とは言え下手に手を加えなかったのは正解だろう。しでも"ルーン"を削ったらそれでオジャンだ」

「……この魔導文字ですよね?」

「うむ。まあ、何が言いたいかと言うと修理ぐらいならしてやるぞ。それなりの修理費を出してもらうが」

「むむむ……」

「用はそれだけだ。わらわは生産ギルドにも登録しているからな。修理ならそちら経由か直接言え」

つまり腕に関しては生産ギルドで調べろということだ。

さて、商談商談。

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