《転生先は現人神の神様》66 いともたやすく行われるえげつない行為
今日もアトランティス帝國は平和である。
「"ナビゲート"……そこに盜賊いるから狩っておいて」
「ホーホー(行ってくる)」
……平和である。
「さて、フィーナ。《攻撃魔法》を教え始めたけど、無駄な殺生はやめるように。『気にらない』と言う理由でボコるのもなるべくやめる。理的に事を判斷するように。行する前にまず考えてから。じゃないと獣と同じ。攻撃手段、力を持つ事に責任を、誇りを持ちなさい」
「責任……誇り……」
「『何のために力を使うのか』……騎士達は祖國のため、護るため。冒険者達は生きるため、困っている人を助けるためだろう。力があればこそ、力の使い方は考えなければならない。『何のため、誰のため』この理由は人により様々である」
「むー……」
「だからルナ様、難しいですって」
「じゃあ……生きる以上、誰にも迷をかけないと言うのは不可能だ。だからせめて、泣かせる事がないように生きなさい」
「迷かけないで生きるのは無理なの?」
「1人で山にでも篭って自給自足しないと無理じゃないかね? 相手が迷と思ってなかろうと、自分が迷かけたかなと思えばそうだし、逆もまたそうだ」
「お母様も迷かけることあるの?」
「そりゃああるさ。ファーサイスには無茶振りしまくったからな。それを苦笑しつつもやってくれたからこそ、こちらも手を貸すんだ。恩には恩を。恩に仇を返すような者にはならないようにな?」
「じゃあ私も皆に何か返さないとね」
「そうだな。まずはすくすく育ってくれればそれで良い。たっぷり遊んで、學んで元気に育てよー」
「あい!」
いつも側に控えているブリュンヒルデと、代で護衛に付くワルキューレ隊の2人はチラチラとして、揃って苦笑していた。
だって第三者から見ると両方大差ない見た目してるから。この2人の會話はどうにも見た目とのギャップが酷い。
見た目相応のセラフィーナと言う比較対象がいるだけに、ルナフェリアのギャップが非常に目立つのだ。
そのうち慣れるんだろうなと思いつつ、今しばらくは楽しもうと思う3人だった。
「あ、へいかだー」
「へいかだー」
「へいかー、こんにちは」
「うむ、元気いっぱいだな。何してるんだ?」
1人でぶらぶらと歩いていると、遊んでいた子供達に捕まる。
「ふむ……。どれ、手本を見せてやろう……ほいほいほい」
そして、子供達が遊んでいたを理解したルナフェリアは全力で……そう、全力でやった。もしいたらプロでさえ涙目になるパーフェクトである。
「わー!」
「へいかすごーい!」
「めざせへいかー!」
「「おー!」」
「はっはっはああああああ!?」
「はーい、大人げないですよー」
そしてふふんとしてる間に、ひょいっとブリュンヒルデに持ち上げられ、脇に抱えられ連れて行かれる。
どう考えても『陛下』を運ぶ方法じゃないが、特に暴れる事もなく干される布団のように運ばれるルナフェリアであった。わりと見慣れた景である。
「……また陛下なんかしたのか?」
「あの運ばれ方はそうなんだろう」
「子供の遊びに參戦して完璧にやってたぞ」
「「ああ、なるほど……」」
……この國では見慣れた景である。
ここはファーサイスの大通り。
頭にシロニャン、後ろにブリュンヒルデ、護衛にワルキューレ隊のお調子者、ディアナとローゼを連れて歩く。
ルナフェリアはいつもの星晶ドレス。ブリュンヒルデは當然侍服。護衛の2人はいつものお仕事著。
一見どこかのご令嬢一行だ。貴族ならこの組み合わせは不思議ではない。
一番先頭を歩いているの背中に翼がある事に目を瞑ればだが。
これといった用事は無く、完全に暇つぶしと言うか、気分である。
アトランティスほどではないが、この國も人以外の種族をよく目にする。
ちらほらと尾がゆらゆら、耳をぴくぴくとさせている獣人が歩いていたり、ドワーフのおっちゃんが酒場で騒いでいたりしている。
「半年ちょっとじゃ対して変わらんか?」
「基本的に大通りは変化しづらいですからね」
「ふむ、それもそうか。……新作でも探すか」
料理の新作を求め歩いていると、とあるお店の正面が騒がしい。
「おや?」
「治安部隊は……まだのようですね」
「……酔っぱらいが騒いでるだけか。シラフの方が強いしすぐ終わるだろ」
再び新作探しに戻ろうとしたら、シラフがぶっ倒れた。
余裕を持って相手していた方が突然倒れるものだから、周りもびっくりである。
しかも倒れ方がヤバい。突然力が抜けたように崩れ落ち、びくんびくんしている。
酔っぱらいの男以外、外野はよく分からないが『ヤバい』と言うのはじていた。
「な、なんだ?」
「……毒か?」
そして、分かってしまったルナフェリアの方がちょっと慌てていた。
すぐに男の橫に転移し、細かい狀態を確認する。
「ひゃはははは! おいおいさっきまでの威勢はどうしたぁ!?」
「うるせぇ小僧」
「へぶぅ!?」
魔法により一撃で轟沈した酔っぱらいは放置して、びくんびくんしている男をチェック。
「おい、聞こえ……ねぇな。既に意識不明か。じんま疹も出てるし、呼吸も怪しい……む、嘔吐か。全部出してしまえ。ディアナとローゼは"ヒール"し続けろ。効果は薄いがしないよりはマシだ」
「「はっ」」
すぐにアレルギー用の《神聖魔法》構築にる。
《神聖魔法》は舊回復魔法。神々の力の一片のため、普通新規構築は不可能だ。
できてもモドキや馬鹿でかい魔法陣で効率が悪い、下手したら逆に殺す魔法ができる事だろう。
だが、本人が神なら話は別だ。問題なく作られるだろう。
展開された陣に凄いスピードで魔導文字が表示されていく。
その橫でディアナとローゼは"ヒール"をかけ続け、ブリュンヒルデは《生活魔法》で嘔吐の処理や気道の確保をしている。そして、シルヴェストルが空気を送る。
時間が稼がれている間に構築された魔法を男に使用し、しばかり様子を見るとすぐに落ち著いてきた。
「ふむ、ちゃんと効いたようだな」
「ルナ様、今のはなんだったのです?」
「わらわも詳しくはないが、前世だと運発アナフィラキシーと言われていただろうな。アレルギー癥狀の一種だが、この世界はどこまで知っているのか」
「以前……結構前ですがお城で似たような癥狀を見ました。亡くなり毒を疑いましたが一切出ず……でしたね。回復魔法も効果なかったですし」
「一回かけただけじゃダメだ。それに"キュアポイズン"とかだろう?」
「ええ、そうだったはずです」
「これは毒じゃないからな、質の問題だ。だから"ヒール"で死なないようにするしか無い。しかも毒と同じで時間との勝負だ。質だから癥狀に多の差はあれど、こいつは重癥だな。あのまま放置してたら死んでたぞ」
「質ですか……」
アレルギーと言っても種類があるが、甘く見てるところっと逝く。
全で……しかも部で拒絶反応が同時におきればな。
やって來た治安部隊の騎士達に事を説明しておく。
毒じゃないから店は悪くないとも言っておこう。客がいなくなるからな。
「む……あれ……?」
「起きたか。はくか?」
「……? ああ、問題ない。俺は何でこんな所で寢てたんだ……?」
「貴様普段食べないでも食べたか?」
「む? そう言えば腹減ってるな……?」
「そりゃあ全部出したからな」
「は? 出した?」
「まあ、狀況を説明してやるか。あの酔っぱらいと遊んでたのは覚えてるか?」
「酔っぱらい……ああ! そうか、何か突然苦しくなった! ……それから記憶がないな……」
「だろうな。速攻で意識飛んだもんな」
「ルナフェリア様が偶然いなければ死んでいたでしょうね」
「まじか……?」
「マジだ。で、何食った?」
「……そこの店の魚の定食食った」
「魚食べたのは初めてか?」
「ああ、初めてだ。昨日著いてな」
「ふむ、殘念だが魚食うのはやめとけ。質の問題だ。また死にかけるぞ」
「折角來たのに食べるなって!?」
「気持ちは分からなくもないが、死にたくはないだろう?」
「そりゃそうだが……」
「ふむ、納得できないならさせればいいな。張れよ? ちょっと待ってろ。魚獲ってくる」
海に転移し、數種類の魚を適當に捕まえ、転移で戻る。
こいつにはを張ってもらうとしよう。大通りど真ん中で行う。理由? 他の奴らにも見てもらう、知ってもらう為だ。口だけで説明するより楽だからな。
さっきアレルギー用の魔法を作ったばかりだし、死ぬことはない。
何回も死にかける事になるわけだが、本人が納得するまで験させてやろうじゃないか!
どの魚か特定した方が良いだろうしな。
「ほら、食え」
「お、おう……うん、うめぇな」
パクパク食べているが、特に変化は見られない。
軽くをかせて見たが、特に変化は無い。
「おんやー?」
「特に問題は見られませんね?」
「……騎士よ、ちょっと店主を呼んでくれ」
「分かりました」
見ていた治安部隊の騎士に店主を呼んでもらい、尋ねる。
「魚の定食だが、スープのダシやはなんだ?」
「えっと……ダシは一応なのですが……」
「いや、いい。貝だなこっちの可能が高いか。ちょっと待ってろ」
別に私相手に口を開く必要はないからな。
使用された貝を持ち出し、手早く調理し數? 食わせる。
「おら、け」
「なんだってんだ……」
「……來たか」
「ぐっ……なん……」
バタン……びくびく……。
「おら、起きろ」
魔法で直して叩き起こす。
「な、何だ今の?」
「今のがそうだ。貴様は特に癥狀が重い、ほっといたらあのままさようならだ。原因は魚じゃなくて貝だったようだな。魚は食っていいが貝は避けろ。じゃないと死ぬと思え。不安なら食った後しばらく運止だ。貴様は特定のを食べた後に、運すると死ぬ。特定のは今回ので貝だと分かったから、それさえ避ければ問題ない。他にもあるかもしれんが、現狀確定してるのは貝だ」
「一応確認しますが、その貝に問題があったと言うのは?」
「それはない。今食わせたのは《鑑定》で確認済みだ。そもそも貝に問題があるなら、あの店で食べた他の客もこいつのようになっているはずだろ? スープに使用されていたからな。相當な數出ているはずだ」
「確かに。我々はそんな報告はけていない」
治安部隊の騎士達の確認にはしっかりと返しておく。
私の信用云々ではなく、貝自に問題があるなら産地であるシーフープの方で結構な規模の対策が必要になるからだ。
今回のはこいつのアレルギー癥狀なので、シーフープは関係ない。
こういうのがあると納得させ、『いともたやすく行われるえげつない行為』は終了した。
世界が違えば常識が違う。アレルギーなんて馴染みのない世界で納得させるには、実際に経験させ、そのヤバさを見せるのが手っ取り早い。
白目向いてびくんびくんしてるの恐怖でしか無いからな……。
ちなみにこの世界、アレルギー持ちはかなりなそうだ。
恐らくアレルギー持ちは小さいうちに死ぬんだろう。もしくは、この世界に満ちているマナが何か影響しているかも知れない。
能力は前世よりこの世界の者達の方が高いし、的に強い。寄生蟲いないしな。寄生しないと生きれないやつは死ねという。
でも菌はいるんだよな……。風邪には普通になるようだし。
さて、新作探すか。
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