《転生先は現人神の神様》75 遊戯室と神々に見放された國
「なんだ!?」
「おぉ!?」
「ひゃあ!」
驚いているのは4大國の王族の方々である。
護衛騎士の數人も驚きはしたけどすぐに剣を抜き、警戒にった。
が、全くの無駄である。
「やあ諸君」
「む……? む!? ヒルデか! ってことは……」
「わらわが転移させた」
「……あー、名前変わったんだっけか?」
全員既に待機していたため、迎えに行くとか言っといて行かずに、突然の強制転移である。一斉にいつもの遊戯室に移させられた。
王族と騎士達は突然視界が切り替わったから驚き、警戒した。
全くもって正常な反応である。
代表して話すのは1番仲が良いであろう、ファーサイスの王だ。
「最初に改めて自己紹介をしよう。元『夜と魔を司る神』月の神ルナフェリア。そして今は『時空と自然を司る神』萬神シュテルンユニエールだ。ユニエールで構わんぞー。今後はこの姿だ。覚えておいてくれ」
「ユニエールでいいのだな。……で、いったい何をしたんだ?」
「む? ……ああ、それぞれいた空間とここの空いてる空間をれ替えただけだ。時空を司るからこその蕓當だな」
「ふむ……『時空と自然を司る神』って何ができるんだ?」
「ではご飯でも食べながら説明しよう。……その前に、クリスティアーネ王妃」
「は、はい?」
シュテルから白いが抜けるように現れ、そのはファーサイスの王妃へと向かいながら、翼を広げた大人のに形作る。
そして……翼と腕で抱きしめるように包み込む。
《神聖魔法》ではない、神の奇跡その。
"神の抱擁セイクリッドエンブレイス"
「……溫かい」
「どうだ、治ったか?」
「っ! 痛みが……は、はい!」
「ほ、本當かティア!」
「本當よ。ありがとうございます。ユニエール様」
「休養中に相談に乗ってくれていたそうじゃないか。だから気にしないで良いぞ。さあ、食事だ」
ジェシカの"完全復元リストレーション"でも治らなかったとなると、やはりガンは厄介だな。まあ、"神の抱擁セイクリッドエンブレイス"には無関係だが。
時空神と自然神、できる事をそれぞれ説明する。
そして、目立つ神眼についても一応説明する。説明されたところでよく分からんだろうが。
そう言えば月神の時にあった魔眼達だが、ちゃんと今もある。
無いのは月神固有の《月の魔眼》ぐらいだ。固有なのに魔眼なの? と言うのは、あれが模倣だったからだ。本來はちゃんと紫の神眼。
多數あった魔眼が今では神眼の中に含まれている。魔眼の元は、神眼の機能を一つ一つに分け、グレードダウンしたやつだそうだ。
「はぁー……とんでもないな」
「そりゃあ今までの模倣とは違ってれっきとした神だもの」
「模倣であれだもんなぁ……」
「今ならを失わず余裕で龍脈復活できる! 枯らした時點で神罰與えるけどな」
「龍脈にはらんよ……。最悪違った利用の仕方もあるが……」
「うちとの関係が悪化しない限りその両方は無いだろうよ」
龍脈を枯渇させた際の神罰は、霊の加護消失が主な容だ。法國じゃないなら《神聖魔法》沒収してもあまり意味がない。
ただ、ファーサイスの霊の加護消失が意味することは……周囲の國すら巻き込むということだ。ファーサイスから農作を買ってない國の方が珍しいレベルで、周辺國家はファーサイスから輸している。
『うるせぇ! 龍脈に手出すぞ!』って言えば何も言い返せなくなる自技である。死なば諸共の作戦である。
とは言えそこまで切羽詰まる前に、シュテルがくだろう。神の國もファーサイスから買っているのである。無くなったら面倒だから止めてくれ神である。
「そう言えば近いうちに式を上げるのだが、來るか?」
「式?」
「フェルの結婚式をな」
「ほー、王太子遂に結婚かー。この格好でいいか?」
「いいぞ」
「ふむ。で、こっちの式ってどんななんだ?」
「神殿で誓った後、どちらかの家でパーティーだな。まあ、今回は王太子だから、當然城だな。立食パーティーになるだろ」
「って言うと正直収穫祭とかと大差ないな?」
「うむ。神殿での誓いと集まる口実の違いだな」
「そりゃ良いな。前世の結婚式考えた奴の魂引きずり出してしばき倒してやりたいぐらいだわ」
「お、おう……何だそれは。いったいどんな式なんだ」
「こっちでも誓いはある。まあ、正直ここはどうでもいい。問題はその後だ。結婚披宴は地獄でしか無い」
「披宴って言うとパーティーじゃないのか?」
「パーティーとは言うがこっちとは全く違う。ただの黒歴史暴大會だ」
『え゛っ』
「前世は結婚してたからな。當然自分の式もやったし、他の式にも出たが……正直どっちも辛いわ。暴される側は勿論見てる方も辛いわ。そっとしといてやれよとか思うわ。他人の不幸はの味とか言うが、あれは純粋に心に來る」
『うっわぁ……』
「言葉通りにウエディング姿を披するだけにすれば良いものを……。まあ、違うようだし參加してみるか」
後日結婚式に參加し、神の雫がふんだんに使用されたフルーツケーキを主役に提供。その後終始穏やかに食事をしていたという。
主役である王太子と公爵家ご令嬢は、適度に料理を食べつつ挨拶しに回っていた。
シュテルはそれを見て『前世もこんな式だったら純粋にいい思い出として殘ったろうに……』とボヤいていたらしい。
「あの、ユニエール様」
「む、なんだ? 勢揃いで」
「そのお召しを見せてもらえないかと思いまして」
「ああ、なるほどな。レースが気になるんだろう?」
『はい』
全員揃ってこくこく頷いていた。
「レースは・ヒルデも絶賛してたな」
「レース『は?』」
「レース部分や下半はともかく、上半見て思うことがあるだろう?」
「……なるほど。ちょっとと言うか、著るとなるとかなり恥ずかしいですね……」
「ベアテの技は絶賛だが、エブリンがちょいちょいエロに走るからなぁ……」
「なるほど……。は聖魔布ですよね?」
「うむ。聖魔布自重ねないとけるんだ。それを利用してこのレースだな」
「このレースの細かさでも素晴らしいですよ。ただベアテと言うと確か……」
「わらわの従魔だな。アラクネだ」
「ですよね。元々糸を使うからこその……でしょうか」
「元々趣味のようだしな。《裁》高いぞあいつ」
「売りには出していませんよね?」
「基本的にの服だけだな。魔だけあって商売には興味なさそうだし。聖魔糸以外にも自前の糸があるはずだし、売れなくもないとは思うが……ベアテ次第だな。基本的に自由にさせてるし」
「売るようになったら是非王家に!」
念話でベアテに聞くと、自前の糸で作った小が沢山あるらしい。作るだけ作って使わないから別に売っても良いとのことで、早速ベアテに來てもらう。
當然アラクネの姿だとれないので、人化狀態だが。
「ああ、ベアテ。悪いな」
「いえ、何しようかと思っていたので問題ありません」
「あれ、人化……ですか?」
「人の國で暮らすなら必須だからな。人化の魔法を教えてある。ベアテ、そこに出してくれ」
「分かりました」
空間収納からズラッと小が出て來る。
「おお、っても?」
「どうぞ」
ハンカチやらスカーフやらを手に取る陣は、手りの良さに激していた。
聖魔糸は例外として、アラクネの糸自が耐久、手りなどかなり良い糸のようだ。マーストのトップのおっちゃんもやって來てテンションが上がっていた。
アラクネの時點で爵位持ちだし、うちのベアテは皇帝種だからな。糸にも強さが現れるのだろう。耐久無いと魔に逃げられるし。
手りは自由にできるようだ。粘著を持たせるのが基本だが、《裁》好きのベアテは手りにも拘ったようだな。
「うむむ、アラクネの糸は間違いなく最高級品になりますな。まずアラクネを探す時點で大変ですし、かと言って糸だから倒してはダメ。幸い會話はできるので取引が可能かもしれませんが、それも個差あり……。そしてアラクネの強さは言わずもがな……。今のところベアテさんしか碌な手経路がありませんな」
アラクネの糸を使用して服を作るにはかなりの量が必要になる。ゲームみたいに蜘蛛倒したら糸がドロップする訳もなく。
そして糸は様々な用途があり、王族貴族のお嬢様方はドレスが私服。
耐久、手り、艶と全てにおいて優れたアラクネのドレスは、持ってるだけでステータスとなり得るだろう。
ワイワイやってる陣は放置して、王達の方に移する。
「そう言えば、わらわがいない間にベリアドース滅んだな? 人の気配が無いぞ」
「あー、やっぱ滅んだかー。滅びそうとは聞いてたから、危なくなったら帰ってこいって伝えてたのが帰ってきたからなぁ」
「冒険者追い出しに反対だった者達はとっくに國を捨て、他の國に移り住んだようだぞ」
「ふむ……うちにもそこそこ來ているようだな。遠いとこまでご苦労なことだ」
「難民は國によって扱いが違うからなぁ……。金あるならこの國目指した方が良いだろうな。爵位持ちの魔すらけれるならと來るだろうよ」
「うちは問題起こさず暮らすなら誰だろうと構わんからなぁ」
「中央はまだしも、東と西からしたら珍しいだろうよ」
滅ぶだろうなと思っていた大國が、寢ている間に滅んでいた。
そもそもすぐ東が魔の領域にも関わらず、冒険者という対魔の専門家を追い出す時點で意味が分からん。『そら、そうなるな』という言葉しか無い。
「既に魔が住み著いているからな……後でギルドに言っとくか。忘れてたわ」
と言うかギルドは既に知ってる可能が高いか。
ベリアドースが滅んだとなれば、次は小國群だが……魔の位置を考えるとまだっぽいか? でも他の領地持ちが城と連絡取れなくなればそこから報ると思うのだが……。見る限りまだっぽいな。
これ終わったら教えておこう。
「今後は予定あるのか?」
「いや、特に無いが。基本的に『神』としてくのは『世界が滅びそうな時』だけだからな。のんびり王でもやってるさ」
我らは不老不死。のんびり行こうではないか。
なお、ビリヤードだったり、ダーツやりながらの會話であった。
王家はやはり王家。
いなかった間のお禮としてお土産をもたせ解散した。
王家パーティーも終わり、會議室で定期會議の日。
會議が大終わり皆で休んでいる時、シュテルが気になるブリュンヒルデ。
「ユニ様、どうかなさいましたか?」
「んあー……法國の上層部の諦めが悪いというか、未だに職者してるのもいるし、ちょっと呪いでもかけてやろうかと」
「呪い……ですか……」
「神の呪いはキクゾー。ってことでちょっと行ってくる」
「あ、はい」
法國上空へと転移し、特定の者に呪いをかける。
と言うか、何で未だに法國のトップが変わってないんだ? あの容、引きずり降ろされるどころか、殺されてもいいレベルだと思うのだが。
まあ、呪いかけるからいいけど。
ぱぱっと呪いをかけて、會議室へと帰る。
「お帰りなさいませ」
「うむ」
「いったいどのような呪いを?」
「聞きたいか? 男が聞いたら『ひえっ』ってなりそうだが」
「私には関係ないので」
「この部屋拡散されるのだが……まあいいか」
呪いは至ってシンプルである。
呪いの名は……。
チンチンペイン。
名前の由來は『ぽんぽんぺいん』だ。所謂腹痛。お腹をぽんぽんと言う。
でも今回はお腹じゃないのでな。職者には良いだろう。
「ったらちんこに激痛が走る」
「職者ってそう言う……。なるほど、効果的ですね」
「ちなみに本人の興度関係なくな!」
「んん?」
「男には朝立ちという生理現象がある。っているので適応される。つまりちんこの激痛で飛び起き、のたうち回る訳だ。ハハハハハ」
『ひえっ』
「ちなみに、この生理現象は寢ている間に繰り返される。さて、何回のたうち回ることになるのか。そして、本人は痛いのは嫌だからってほしくないのに、が勝手に反応する男の悲しい現実。ハハハハ」
ちなみに一週間に2回、的興時のみ激痛がある日がある。しっかり眠れよー、行為は許さねぇけどな!
「と言うかユニ様、連呼するのは止めましょう」
「ダメか」
「ダメです。容姿を考えて下さい」
「……興するな?」
「はぁ……」
「……冗談だ」
「分かってますよ」
法國、とある一室。
「グフフフ……」
「…………」
えた下品な男……一応法國のトップである。塗れもいいところだ。
ベッドの上には10人中全員が振り向くと言っていいであろう、がいた。
が、このは死んだ魚のような目をしており、気力がない。
ふごふご男がに近づくが途中で―――
「ん? んひぃいいいいいい! 痛い痛い痛い! んほおおおおおお!」
―――間を抑えてのたうち回っていた。
脂汗も相まって見た目も更に悪化。
気力の無かったもこれにはドン引きであった。
とは言え一応國のトップである。護衛の者がバタバタってきて、當然この狀況ならが疑われる事になる。
としてもこれからも抱かれ続けるぐらいなら、死んだ方が良いという思考なので、特に何も言わないだろう。
だが―――
『その者は何もしていない。わらわが呪っただけだ』
部屋に聲が響き、護衛の者が周囲を警戒する。
「何者だ! どこにいる!」
その問に答えるようにの前、護衛達の間に姿を現す。勿論、神威開放狀態で。
「一応答えてやろう。わらわは萬神シュテルンユニエール。元ルナフェリアだ。月の神ではなく、萬の神となったのでな。名が変わったのだ」
「め……神……様!?」
「貴様らは神々の怒りを理解していないようなのでな。加護と《神聖魔法》の沒収だけでは足りんのだろう? 直接的な、実害が出る呪いもくれてやる。泣いて喜べ」
更に、同じ境遇の達もここに転移させ、集める。
「君達はどうする? 死を選ぶなら痛み無く送ろう。先をむというのなら、を前に戻そう。この國にいたくないと言うのなら、我が國に來ると良い」
「を……前に戻す……?」
「《神聖魔法》の比ではない、神の奇跡そのを験してもらおう。しかし、起きたことを忘れることはできん……ん? いや、できるか。ただ、その場合今後を選択するのは全て忘れた君達だ」
考え込む達。と言った方が近いかもしれんが。
それに、急展開すぎて飲み込めていないとも言える。
「ふむ、わらわも長くこんなところにいる気も無いのでな。この國大嫌いだし。我が國に行くか。そこで考えればいい」
実在する神々の怒りより、自國の國のトップを選んだのだ。最期まで國と共に、自分達の主と共にすればいい。
神を信じ、神を恐れるなら普通元兇は真っ先に排除するだろ……。2年経って相変わらずなのだ、さぞかし好きなのだろうよ。
陣を"プリファイ"で綺麗にして、大神殿へと転移する。
「お帰りなさいませ」
「うむ、不憫なので連れてきた。今後はその子らが自分で選ぶだろう」
學園の卒業生を我が國も雇っているので、大神殿も今じゃそこそこ人がいる。
當然、帰ってきた時にオートマタも再起してある。結局名前を付けていないが、1人しかいないので別に困らんのだ……。
アトランティスへ來てから數日、記憶を持ったまま生きる事を選択した様だ。
強い子達である。"神の抱擁セイクリッドエンブレイス"でを抱かれる前へと戻してやる。
記憶を忘れたいといった場合々厄介だったが、だけならこれでいい。
記憶ともなると時空神の力を使うしか無いからな。
さて、しのんびりするか。
その後、アクウェス法國は住民全てが神から呪われた。
『常に1番好きな事ができなくなる呪い』と、法國上層部の職者には例の呪い。
食べるのが好きだった場合、最低限以上を食べると全に激痛が走る事になる。
寢るのが好きだった場合、十分な睡眠を取った直後激痛で飛び起きる事になる。
そして、『常に』なので好きなものが変わろうと今度はそれに反応する。
他の國に縋ろうにも呪いばっかりはどうしようもない。神がかけた呪いだ。人類に解除など不可能である。
そして、他國も當然巻き込まれたらたまらんわけで。何が神の逆鱗にれるか分からんのだ。下手に手を差しべる訳にはいかない。そもそも、最早法國に価値がない。掌クルッと裏返し知らんぷり。
法國には騎士達がいる。いや、いた。《神聖魔法》が使える聖騎士達だ。
勿論既に《神聖魔法》は沒収されたので、ただの騎士だな。
食べが手にらないなら取りに行くしか無い。ただ、位置的に法國は西大陸の大中心にある。魔がしょっちゅう森からやってくるとは言え、遠いわけだ。
ではどうするか? 近くから奪えばいい。
幸い森からの襲撃がそれなりに激しく、裏を取れる。
しかしいざ進軍を開始すると……一定距離進んだ瞬間法國の王都、聖都に戻されるのだ。當然シュテルの嫌がらせである。他への侵略など許すはずもなかった。
著々と滅びに向かっていった。殺すなどという慈悲もない。
苦しんで、嘆いて、後悔して死ね。神々に見放されるとはそういうことだ。
この世界に生として生まれた時點で、無條件に神々の慈をける。
謝する者、謝しない者。もしくはより近い霊達に謝する者もいるだろう。
それ自に神々がどうこう言うことはない。結局どう生きるかは生きるもの次第だから。だが間違いなく、生まれた時點で加護はけるのだ。
この世界はそういう世界なのだから。
シュテルの前世、6番世界よりこちらの世界の生がでかかったり、強かったりするのはマナの存在もあるが、神々の加護の影響もあるのだ。
特に慈と長の神、アリスリナスの加護の影響が大きいだろう。
聖職者の國が、神々に見放された、呪われた國となった。
本來仕えるべき神々を見下し、驕った結果だ。
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