《転生先は現人神の神様》76 お疲れ様《エピローグ》

「調子はどうだ」

「あぁ……ユニ様。調子はまあまあ……ですかね」

背に翼を持つ、シャンパンゴールドの綺麗な髪を持ったが……ベッドに橫になるお婆ちゃんの側に腰掛ける。

大神殿の一室。

大きな窓ガラスの向こう側には、流れる水と燃え盛る炎。更に咲き誇る様々な花にハーブ達。そして漂う霊達と、パタパタ走ったり踴ったりしている妖達。

平和な中庭がベッドに寢ながら見えていた。

お婆ちゃんは非常に穏やかな表をしており、病気で臥せっているわけではない。

「エブリン……を張って逝けるか?」

「ふふっ……勿論ですよ」

「幸せだったか?」

「ええ……とっても」

「そうか。……會った時は21歳だったからもう70年か」

「早いですね……。すっかりかなくなってしまいました……」

「わらわもそのぐらいの歳になったことあるからよく分かる」

「ふふふ…………ユニ様」

「なんだ?」

「最期のお願いがあります……」

「言ってみろ」

「ジェシカと最後の晩餐をしたいのです」

「……近いか」

「はい。もう數日……と言ったところでしょうか……」

「そうか……良いだろう」

「ありがとうございます」

ベッドで寢ているお婆ちゃん。エブリンも90歳を超えた。

この世界で90歳。醫學も栄養學なども発達していない世界。

頑張り過ぎといえるだろう。

シュテルが獲ってくる食材と、霊達の加護と、自前の《神聖魔法》の賜だ。

その日の夜はジェシカと晩餐を楽しみ、その數日後……。

「……そうか、逝ったか」

寢ている間に逝ったのだろう。一切苦しんだ様子はなく、ベッドの上で安らかに眠っていた。

「ヒルデ」

「はい、國葬ですね?」

「ああ」

「今日中に準備を終わらせます」

早速き出したヒルデを見送り、國民達へと伝える。

『我が國の諸君。エブリンが安らかに逝った。よって、國葬を明日行う。驚きの93歳だ。大往生と言えるだろう。知らない者はいないだろう―――』

そしてそれから2年後、再びベッドの橫である。

エブリンと來れば次は……。

「調子はどうだ、ジェシカ」

「ユニ様……なんというか、やりきった気分です……」

「そうか、悔いは無いか?」

「強いて言うなら、結局ユニ様にお仕えしないで終わったことでしょうか……」

「結局最期まで聖してたな」

「気づいた時にはこんなですよ……。まあ、來世に期待しましょう……」

「そうか」

來世に期待という言葉に、思わず苦笑してしまうシュテル。

「ユニ様。私はとっても……幸せでございました……。これも、見守ってくれていたユニ様のおかげです」

「70年も一緒にいれば娘みたいなものだ。気にする必要はない。それに、ジェシカ自の努力の結果だろう。何か願いはあるか?」

「そうですね……では、エブリンと同じところへ」

「やれやれ。死んでも一緒か」

「ふふふ……どちらかが男だったら、子供もいたかもしれませね」

「かもじゃないだろ、まったく……」

「ふふっ。それと、意識がはっきりしているうちに、ピアノを聴きたいです」

「ふむ。そう言えば最近弾いてなかったな。今日1日ピアノ弾くか」

言葉通り朝から寢るまで丸1日ピアノを弾いていた。

そして數日後、エブリンと同じように穏やかな顔で靜かに、永遠の眠りについた。

「噓みたいだろ。これ、死んでるんだぜ……」

「……2人して隨分穏やかに逝きましたね」

「まったくだな……。さて、また國葬か」

「今度は一月後にしますか?」

「生きる伝説が伝説になった……か。そうだなぁ……他の國からも來そうだしな」

「では4大國への連絡と準備を始めます」

「うむ。わらわはまた國民に知らせないとな」

『國民の諸君。遂に……聖が逝った。90歳だな。ジェシカもエブリンも2人とも壽命だ。こればっかりは、わらわとてどうしようもない。當然國葬は行うが、一月後だ。4大國への知らせもれる予定だからな。今回は聖一行の國葬だ。ジェシカとエブリン両方纏めて行おうと思う。やはり2人セットじゃないとな―――』

そして一月後、約一週間も続く聖一行の國葬が行われた。

各地より集まり、祈りが捧げられた。

直接お世話になったお爺ちゃんお婆ちゃんもやって來た。元々アトランティス帝國へ村ごと越してきた中にいたりしたのだ。

霊達や妖達まで參加し、慈長の神アリスリナスまで降臨した。

時空神の力を使えば以前より遙かに楽に降臨できる。

もはや娘と変わらない2人の葬儀に出たいと言うのだから、斷る理由もない。

そして、國葬が終わりしした後……。

目の前に憎たらしいほどニコニコした、若い頃のジェシカとエブリンがいた。

え え 、 分 か っ て い ま し た と も。

むしろ分からないわけがないだろう?

ブリュンヒルデと近衛達が既にいるんだぞ?

この2人が來ないわけ無いだろ……。

來世に期待とかしっかりフラグ殘して逝ったしな!

ジェシカが來るのにエブリンが來ないわけもないしな! 百合ップルが!

「驚いてくれません……殘念です……」

「だから言ったでしょう?」

「空気読んでエブリンが死んでから神界行ってないんだぞ。どうせ創造神様のところにいるだろうからな!」

「えへっ」

「正直國葬するかも迷ったわ……。とは言え『人間』が終わったことには変わりないからな。區切りを付けるためにもやった。その方が良いだろう?」

「はい。これからは聖ではなく、ユニ様の従者ですから」

「わらわに仕えたいというのが13人もいるとか、好きな奴らめ」

「ユニ様照れてますねー?」

「……ヒルデ、再教育」

「はい」

「ひえっ」

「元々その予定でしたからね」

「と言うかお前、婆ちゃんの時の落ち著きはどうした」

「いやぁ……が軽くてテンション上がりまして……」

「……分かってしまうのがなんとも言えない」

「ですよね! だから―――」

「でも再教育は変わらん。しっかり見て貰って來い。かなり前で忘れてるだろ」

「はーい……」

後どのぐらいこの者達といるかは分からないが、きっと永い事だろう。

私も慢心せず、眷屬に捨てられないようにしないとなるまいな。

廻を外れて私に仕える事を選んだ者達に後悔などさせないように……。

「さ、契約するぞ」

「「はい!」」

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