《老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件》35話 散策

門の前には衛兵が立っている。

ユキムラ達の立派な馬車に呆気にとられていたがすぐに誰何をしてくる。

「失禮ですがこの街に何か用ですか?」

真面目そうな衛兵が訪ねてくる。

「こちらはファス村の村長とその従者です。ジュナーの街のギルド長の紹介狀があります」

レンが者の席から降りて対応してくれる。

なんとなくこういうのを車に乗ったまま対応するのが居心地が悪い気もするが、こういうものらしいのでユキムラも我慢する。

「確認いたしました。ようこそジュナーの街へ」

本來ならいろいろとチェックをけてからの場になるが、ギルド長からの推薦狀があるためにそのまま場させてもらえた。

重そうな木製の扉が上がっていく、このあたりで一番大きな街だけあって、いざとなったら急で閉められるよう落下式の開閉方法を取られているようだ。

扉が空いていくと衛兵が一生懸命手押し車を回している。

「毎回これでは大変ではないのか? 魔導式に改造してあげたくなるな」

「領主に言ったら泣いて喜びますよきっと」

すでに門の改良に想いを馳せ始めるユキムラであった。

そして必要な道の用意と材料を考え始めるレン。息ぴったりである。

すぐにテーブルに図面を引き始める、思い立ったら形にしないと気持ちが悪いユキムラ。病気だ。

「門を稼働させるのは風で空気圧を利用すればいいよね、でもあの重量を支える圧空気に耐えられるってなるとミスリル強化だよなぁ、コスト面が凄いことになるねー……」

「いっそ巻き上げ式は維持して行くほうがコストは安いですね」

「そうか、それならあれ、単純に土魔法発でよくないかこれ?」

「あ、そうですね筒狀に土を上下させるだけでもいいですね」

もう二人の世界だ。宿泊予定の宿屋での渉も村長がやる羽目になってしまう。

いつまでたっても出てこない二人を村長が呼びに來るまで、ずーっとあーでもないこーでもないと議論しているのでありました。

「約束は明日でしたっけ?」

「明後日の朝からです、ギルドと役場には到著したことは知らせるように使いは出しました」

「レンは敏腕書じゃな、すっかり」

「師匠は研究になると周りが見えなくなりますから僕がフォローするのです」

久々にを張っているが、さっき一緒に怒られたじゃないか。

「それじゃぁ軽く街でも回りますか」

「そうですね、師匠は初めての街ですからね」

「儂は殘ってのんびりするよ。何か連絡が來るかもしれんからな」

「ありがとうございます、そしたら通信機を渡しておくので何かあればこれで」

「うむ、わかった。いってらっしゃい」

長距離用通信機とは別に短・中距離用の小型通信機もできている。

街中だろうと空間魔法上を音聲が飛ぶ原理なので通信阻害は起きないすぐれものだ。

ただ距離が離れると魔法力消費が大きくなりすぎて難しい。

村長に禮を言い宿から街へでる。

馬車ではずっと門の構造を考えていて町並みをさっぱり見ていなかったので、改めて町並みを見渡す。

道路はしっかりとした石畳、建も石造りの統一された作りだ。

的に統一された雰囲気を持っていて、RPGでよく見かける西洋風の町並みだ。

ドット絵とは異なりまるで外國にでも迷い込んだような気持ちになる。

街の構造もVOで知っているのでとりあえず散策することにする。

「あ、師匠。これ村の」

レンが見つけたのは道屋に並ぶ村製の魔道だ。

「凄い値段だね……」

「そりゃ、これでも破格の安さなんですよ?」

この世界の通貨単位はzゼニーだ。食パン一つで200zくらい。

そして魔導式コンロは300,000zだ。

平均的な街での給與は一月200,000zくらいだから高級品だ。

なお、それこそ貴族とかしか手にらなかった頃は桁が二つくらい上がる。

「お! お客さんお目が高い! その商品は今大人気でなかなか手にりませんよ!

やっと荷されたんですよ!」

店頭で商品を食いるように見ていると調子の良さそうな店員が出て來る。

「そんなに売れているんですかー?」

「そりゃーもう! 仕れる端から売れていきますよ!見てください! こんなに小型なのに3段階の火力調節ができて、最大火力だとあっという間に湯が沸きますよ!」

店員が興して商品を手渡してくる、ユキムラとレンはひっくり返したりこねくり回す。

「あー、2世代前のだね~。なんか王都のほうが優先されてるって本當なんだね」

「ある程度は仕方ないでしょうね、型落ちがやっとここまで降りてくるんでしょうね」

「ちょ、ちょっとお客さん言いがかりはよしてくださいよ~、これはほんとに荷したばっかりの最新モデ……ってちょ、な、なにしてるんですか!?」

いつの間にか魔導コンロはバラバラにされていた!

「お、おい! 壊したら買い取ってもらうからな!」

「ん、いや。はい。これが今の最新モデル」

バラバラになったはずのコンロが組み立てられ店員に返される。

目の前で起きたことに信じられないのも仕方ない、突然作業臺が現れ、そこでバラバラにされたコンロがすぐに元通り、しかもその能は……

「最新型では火力は無段階調整出來ます。

最大火力も2世代前からは3倍まで強化されています。

連続使用も3日間可能になっております」

レンがセールスマンのようにスラスラと説明していく。

店員が唖然としている間にユキムラは次々とコンロを改良していく、10臺ほどあったコンロはすっかり最新モデルへと変貌を遂げていた。

「レン終わったよー、そろそろ行こう」

「はい、師匠」

腰を抜かしている店員を置き去りにスタスタと歩いていってしまう二人、殘された店員はボーゼンとするしかなかったのでありました。

「そういえば、なんでさっき改造してたんだっけ?」

「なんででしたっけ?」

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