《老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件》338話 魔神ヴェルツフェルセン
ヴェルツフェルセンが完全にそのの部に沈み込む。
表の漆黒の皮がテラテラと沢を放つ鱗のように変化する。
過去の魔王の姿を模した塊はみるみる形を変えていく。
たくましい両腕はむしろその経をめて、しかし、引き締まりしなやかに、丸太のように重厚な二足の足も同様だ。
見るからに力あふれるたくましい魔王の姿が、引き締まり濃厚に濃されていく。
先程までの病的までに痩せていた男、ヴァルツフェルセンの顔貌が浮き出してくる。
印象としては暗で卑屈に見えた男の表は、しいを手にれて自信に満ち溢れているようだった。
【ユキムラ、これから君ならわかる絶を與えてやろう】
両の手を頭上に掲げるとトプンとまるで水面に手を突っ込んだように空間を摑み、そして引き抜く。
現れたのは巨大な剣、両手持ち用と思わせる剣を軽々と片手で扱う。それが二刀である。
「おおおお、降神剣 黒ヘイと至神剣 白バイじゃないか!!」
【ハッハッハッハ! それだけではないぞ!】
さらにのがを包み込み、見事な鎧が現れる。
最後にそのを摑んで頭上に乗せると兜に変化する。
「ぬおおおー!! 聖邪鎧 ヴァルヴァリウスに全スイヨウてを知チーダオるシークィン!!!」
「師匠、知っているんですか?」
「ああ、どれも課金でしか手にらない上に錬値を最大値にすると恐ろしい能力になる裝備……
ま、まさか、全てMAX?」
【フハハハッハ! 當然だろ!】
「いいなーーーーー!! 俺も作れなかったんだよなー---!! 強いの!?
やっぱ強いの!!?」
【今から貴様がをもって知るだろう。まぁ、知るときには死ぬことになるだろうがな!】
「そっか、験できるのか……!」
あまりに純粋に喜んでいるユキムラにヴァルツフェルセンの笑いもし引きつってしまう。
「ユキムラちゃん、ヴァルちゃんも呆れてるわよー」
「仕方ないだろ、VOでも一人も居なかったんだ。アレを全て揃えた奴は!
つまり、俺達が初めてその力を知るんだ! ワクワクするじゃん!」
「ユキムラさんが時々理解できません……」
「ユキムラにーちゃんは病気だね……」
「でも、もうさっきのヤバそうな雰囲気が、ユキムラちゃんの世界になっているわ」
月桂冠のような兜、しい羽のようなエフェクトに、白銀に輝く見事な鎧、共に力強さとしさが同居した真っ黒な剣と真っ白な剣。
見ようによっては天使のようなその姿、ヴァルツフェルセンの真の姿。
【あまりふざけてすぐに壊れるなよユキムラ君】
「すぐに壊れたらその裝備がよく見れないじゃないか!」
【減らず口を……!】
雙剣を構えてヴァルが突っ込んでくる。
「全員気をつけろよ! あの剣、能力通りならやっばいぞー!」
ユキムラは振るわれた黒を避け、白を両刀でける。
一度の斬撃をけたはずなのにユキムラの刀は激しい斬撃の雨に襲われる。
【ふははは! 流石によく知っているな!】
「ああ、黒はけること不ならず。全ての防を過する。
白は避けること不ならず。全ての回避を無効にする。
こりゃ厄介だ!」
【その余裕いつまで続くかな!】
鎧と冠がを放つ。
「出た! 始めてみた! ミラージュボディ!!」
同じ姿をしたヴァルが3現れる。
「ソーカ、ヴァリィで一! タロ、レンで一! エテルノが一! 任せるぞ!!」
矢継ぎ早にユキムラは指示を飛ばす。
後は仲間を信用するしか無い。
ユキムラは改めてヴァルへと向き直る。
威風堂々とした姿、自でさえ手にれることを葉わなかったVOでも最強であろうと噂された裝備のさらに最高の狀態。
彼の心の中は未知への裝備の能力への期待で燃え上がっていた。
「さてさて、鎧も兜もまだ能力があるからなぁ……
対策が無いわけでもないんだし、ま、やってみるか!」
ユキムラは迷うことなくまっすぐにヴァルに突っ込んでいく。
ヴァルは呼び出した分を差し向けようとするが、白狼隊のメンバーがそれを阻止する。
分は能力こそ本と同等だが、武の能力まではコピーできない。
【まぁいい。普通のプレイヤーがこの裝備に勝てる道理はない!】
システム上の最高の威力、速度、度の攻撃。
理論的な最上の攻撃だ。
しかし、既にユキムラはシステムのきを超えるものを知っている。
嵐の中心に迷うことなく突していく。
【な、何なのだ貴様は!】
これにはヴァルも虛を突かれる。
反撃の隙など、あるはずもなかった。
しかし、確実にユキムラの刃はヴァルを掠めた。
【何なのだ、何をしてるのだ貴様は!
ありえない! そんなシステムは存在しない!】
「ゲームじゃあるまいし、限界なんて勝手に設定しないでほしいなぁ。
それにしても、凄いなそれが聖邪鎧の自回避か!
攻撃の半分を無効にする。いや~無茶苦茶強い!
全てを知るが全屬狀態異常も防ぐし、壁としては最良の裝備だね!」
攻撃を捌かれても嬉しそうに攻撃を繰り返すユキムラにヴァルは困していた。
【なぜだ!? なぜ貴様は楽しそうなんだ?】
「え? 君は楽しくないの?」
【楽しいわけがないだろ!】
「どうして?」
【大っ嫌いだからだよ、この世界が、この世界を救おうとする神と神が!!】
「……もったいない……」
嵐のような攻撃と対峙しながらも、ユキムラは魔人達が言っていた言葉を思い出していた。
『あの方も寂しい人なんだ……』
あの言葉の本當の意味を今をもってじていた。
【糞! なんで當たらない! この攻撃を避ける回避なんてステータス限界でも無理なはず!】
未だにゲームの世界から出られていない。
この自由な世界において。
「貴方も、この世界を作った神の一人だったはずだ。はじめはこの世界をしていたはずです」
ユキムラの言葉の刃は、幾度となく弾かれる実際の刀よりもヴェルのではなく心を切り裂いた。
【煩い!! 俺は悪くない!
世界が俺を嫌ったんだ!】
「ふむ……何があったんですか?」
ヴァルの斬撃は揺している神とは関連なく、常に致命の一撃を凄まじい速度で繰り返してきている。話しているときぐらいし緩めてくれてもいいのに、ユキムラは思わなくはないが、彼の人の心に積もった想いの表れのようなものだと考えている。
【俺は言われたようにしたんだ! 畫期的だと褒めて貰ったんだ!
なのに、なのに……世界が俺を否定した!! 俺の、この力を!!】
ヴァルからが放たれる。
剣戟の嵐がまるでスローモーションの様にユキムラに降り注ぐ、突然の拍子の変化にユキムラは恐ろしい反速度で対応する。
まるで水の中をくように迫りくる攻撃を避ける。
神たちに與えられた能力は既にユキムラ達のに刻み込まれていた。
このような能力を弄さずとも同じ時間軸、いや、もっと上の時間軸に存在できた。
「いや、時間をることなんかしなくても、時間は剎那から無限まで當たり前のように存在していた。
俺も、諦めずにもっと挑んでいけばよかったな……結構ギリギリまでは行けたんだけどねぇ」
【糞システム、糞運営、無能、アホ、世界が俺を、俺を批判したんだ!!】
「アレがなくても……終わってたんだろうねぇ……貴方のせいじゃないと思うよ。
時代だったんだよ……」
認めたくはないけれども事実は存在する。
ユキムラ自も冷靜になって振り返れば、激に駆られて自死を選ぶことも無かったのかもしれないなぁと思うことも多かった。
【煩い!! 何も知らないくせに!!】
「うん。ただ、一言だけ貴方に伝えるとすれば、俺は『ありがとう』って言うよ」
【は!? 馬鹿にしてるのか!!】
「馬鹿になんてしていない。あの時間停止、悪い変化と言われがちだったけど、俺は楽しかった。
絶対に無理で超えられないって言われていたけど、何かは倒せたからね、まぁ、流石に気が続かなかったけど、それでも、挑むものが出來たってのは、他の人はわからないけど、俺は楽しかったよ。
だから、『ありがとう』なんだ。」
【くそっ! くそ!!】
「思うんだけど、貴方はあのゲームを、この世界を自分の力で実際に『生きた』ことが無いんじゃないか? 自分の力で立ってみない? 楽しいよ?」
【やめろ! それ以上ふざけたことを抜かすなー!!】
「システムの限界、その先がこの世界にはある。
貴方が作ったシステムも、この世界の人間は乗り越えたよ。
周りを見て皆よ、この世界の人間が貴方のシステムを乗り越えて、楽しそうに戦っている姿を」
分と戦っているメンバーは皆必死だ。楽しんではないない。
しかし、歪められた時間の中で互角か、それ以上の戦いを繰り広げている。
【MOBが……システムを超える……】
「ここはゲームじゃない。世界なんだよ。
ここには人生があるんだよ!
俺は、VOが終わったことで、この世界で本當の人生を手にれられた!
こんなに素晴らしい世界を作ってくれた神様、神様、そして貴方にも謝しているんだ!」
【……ユキムラ、君は……馬鹿だな……】
「よく言われるよ。でもさ、馬鹿になるぐらい世界って楽しいんだよ、楽しくて楽しくて仕方がないんだ」
【……ふ……ふふふ……ふははははっは!!
あーあ、こんな馬鹿に必死になってた自分が本當に馬鹿みたいだ……
俺はやっぱりこの世界は嫌いだ。
それでも、それでも一つだけ、ユキムラの言葉に騙されてみよう……】
嵐のように続いていた攻撃がピタリと止む。
そして、分もヴァルのに帰っていく。
「……ユキムラ、お前は言ったな。俺がVOをやっていないと」
2つの刀が消えて長槍が現れる。
裝備も含めて統一のある聖騎士のような裝備に変化する。
「それは大きな間違いだ!
お前の國ではユキムラが伝説のプレイヤーだとすれば、私の國では、この俺!
ヴェルツフェルセンが最強のプレイヤーなんだよ!」
「おおお! もしかして1998年から15年間無敗を誇ったワールドチャンプ!
うおおお! 一度手合わせしたかったんだ!!」
「お前が大會に出ないのが悪い! いざ尋常に勝負!」
すっかりと毒気が抜かれた聖騎士が見事な槍捌きでユキムラに対峙する。
「ああ、ならば俺もあの世界の裝備でお相手いたす!」
ユキムラの裝備が道著と手甲へと変化する。
ノリノリでPvPを始める二人に白狼隊の他のメンバーもポカーンと見守るしか出來なかった……
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