「ねぇリオン様。リーゼルト君は、大丈夫なの？」

「わかりません。けれど、命に別狀はないですよ。このことを聞きつけて、私の上も駆けつけてくれましたし、……後癥とかが殘らない、ということは保証できませんが」

此処は救急醫療室の門前。地球で言う、いわゆる病院のことだ。地球で言う、「救急室」の門の前に、サテラとシアノンはいる。

醫療室のけて中が見える窓からは、サテラの上だと思われる緑髪の男が、何やら魔法の詠唱を行っているのが見える。

サテラは座って暗い表。シアノンは立って、泣きながらずっと醫療室を覗いていた。

準人、もといリーゼルトは昏睡したままだった。その表はまるで安らかに眠っているようにも見えた。彼のに取り付けられたいくつもの機械。まるでそれは意味がないようだった。

「ねぇ、リオン様。本當にリーゼルト君は助かるの？あたし、心配で……」

「心配するだけ無駄ですよ」

いつもの聲じゃない。これは「賢者」としての発言だった。事実は変わらない。ここで自分たちが泣きわめくことで変わることは何もない。

サテラもリーゼルトが心配だった。シアノンみたいに泣きたかった。けど、賢者として、この國のNO.2の偉い人として、それはじぶんでも許すことはできなかった。

「……サ…ごっほん。リオン。」

果たしてサテラと呼ぼうとしたのかわからないが、彼は戸いながらもサテラを呼んだ。

緑髪の男だ。

恐らく治療が終わったのだろう、彼はサテラと泣いているシアノンを治療室の中に招きれた。その彼の表は、なんだか余裕をじられた。

「……彼はもう大丈夫だろう。後癥も多分殘らない。」

男はその一言とともに、治療室のドアを閉めた。無言の部屋の中に、パタンとドアを閉める音が響いた。シアノンはリーゼルトに近づき、その手を握り、また泣き始めた。

サテラはリーゼルトをちらっと見ながら、その目線を窓に向けた。

「おっと。自己紹介がまだだった。オレはアーステン・レスナだ。これでも魔法は上級な方だ。ただ屬が強すぎてあまり魔力が高いとオレのがついていけないんだよ。そこが悩みさ。あと、俺の家系によると、「レスナ」の方が名前らしいぜ」

「……」

レスナが笑った。肩までの長さの緑髪を結んでいるゴムがし緩んだ。彼がそこにあった椅子に座ると、サテラは彼の方に振り返った。ただし冷たい目線で。

「上。」

と一言だけ。おそらくレスナの態度が気にらなかったのだろう、サテラは厳しい音質で言い放った。レスナは一度ビクッと肩をかし、こう言った。

「……サ…リオンだけこっち來い」

レスナは人差し指を立て、サテラに向けた。恐らく「來い」という意味だろう。サテラは小さく舌打ちして彼に付いて行った。

そしてまだ「リオン」に慣れていないのか何度も「サテラ」と言いそうになるレスナに、サテラはし怒りを覚えた。だが何といっても彼は上。たかがそんなことで自分の評判が下がったらサテラとしても良いものではない。

「はい……。」

そしてまたパタン。とドアが閉まる音がした。シアノンは小さく反応したが、その目線はまだリーゼルトを心配そうに見つめていた。

ろうかに二人の足音が響く。そこは國立の魔法病院には絶対必須の賢者用地下室。関係がない人は近づくのすら厳なため、話には最適だ。

「うちの組織のボスからの伝言だよ。ハヤトくんのログインボーナスを速くそろえろだってよ。次の月に一気に渡せという命令もあるからな。一度だけは目を覚まさせてあげろとも言われた。そして三回目の目覚めでログインボーナスに移れという話だ。」

そう言いながらレスナは地下室のドアを閉め、階段を下りた。そしてサテラも。

悠長と言うレスナとは反面、サテラの顔は青ざめていた。

「……ボスが！？と、ということはやはり、準人君は……！」

「……そうだね。彼は「……の子」だよ。」

レスナの表も厳しく、険しくなり始めた。その時レスナがなんと言ったかはよく聞き取れなかったが、大なんと言ったかは分かった。

サテラもそんな時に向けて準備をしておけと言われたばかりなのだから。

「さっさとギフトを開けて、ギフトをそろえなければね。」

「でも、異様に魔力が流れてくるから、魔法陣が未完全になってしまうことは……！？」

レスナは目を閉じて、頷いた。

サテラは焦っている。もし、もしのことがあったら……！

だがサテラが期待した答えは、出てこなかった。

「それでも、貫き通せと……向こうの組織は…もう狙ってくるから」

「そんな……！」

サテラは目に涙を溜め、地面に座り込んだ。

だが彼は賢者として、決して泣くことはなかった。一筋でも希があるのなら、命に代えても準人は守ると、決心したからだ。

「……ボスがそういうのなら仕方がないよ。サテラ。君の希も、ボスは裏切るのが得意なんだから…」

「……そうですか。あとその名前はもう使うなと前も言いましたよ……」

サテラは立ち上がった。その顔はきりっとしていた。まるで未來への道がもうわかっているかのように。

そしてサテラの名前のことは、レスナもそれに応じ、もう「サテラ」とは呼ばないと土下座しながら宣言したのは余談だが。

「戻りましょう。準人君のところへ」

「あぁ。彼もきっと、待っているだろうな」

レスナはサテラの頭をで、自分は先に階段を上がり、ドアを開けた。

サテラはぐしゃぐしゃになった頭を直し、一度レスナをにらんでから、彼もドアから出た。

いきなりのまぶしいに二人は怯みながらもリーゼルトの病室に向かった。

「っ……っつ」

ドアを開けると、號泣しているシアノンが見えた。

それを見て、サテラは罪悪を覚えた。

――――――――――――ボス、どうして……？