『スローモーション』

の子の聲は山を揺らし、木を倒れさせた。そして最も重要なのが、サテラの放った魔法がピクリともいていないということだ。

これは…なんというランクだったか……確かに見た覚えはあるのだが僕は思い出すことができなかった。

毎度、月での戦爭が終わると、僕だけ休憩時間があった。そこで僕はたくさんの魔、知識を勉強した。だがその中でも、そんな魔法は聞いたことがない。

他人の魔法を止め、その衝撃波で周りにまで影響を滅ぼすなど……。

の子の表は、まるでこの場にいるずべての人を貶めているようだった。いや、確かにそうなのだろう。

の子は手を上げて、不敵な笑みを浮かべた。

『生作』『木屬霊召喚』

!?

僕は驚きを隠しきれなかった。昔見ていた魔導書の中に記されていた魔法ランク「無ランク」そして先ほどの攻撃も多分それなのだろう。それだけならばまだ恐れるに足りない。重要なのは彼が召喚魔を使っていたことだ。

まず、無ランク魔法とは、どんなものでも限度がない。それを使っている限り、そのレベルは上がり続けるのだ。そして、その中でも最もランクが上がりやすく、最も強力な魔法であり、取得がとても難しいもの。そしてそれは強力すぎて魔法と呼ばない。それこそが――――――――――――――――召喚魔。召喚された霊などはどの子もランクは上位で、召喚した人の話を死ぬまで聞くというシステムである。

僕もしくて仕方がなかった。あの悲しみの世界を覆す力がしかった。けど、今は月も歪み、母も亡くなった。父などというものの概念はこの世界にはなく、「結婚」を知るのは一部の貴族らのみになる。

「……ど、どうして、そんなものが使える！？」

「何者なんですか？貴」

國王は何とか驚きを押さえ、慌てたようにの子に向かって言うが、その髪のから落ちてきた冷汗は、彼の「驚き」と「焦り」を語っていた。

一方のサテラは冷靜に対応しているものの眉間のしわは、彼も焦っていることを隠しきれなかった。の子は表を変えないものの、その笑みからは邪気が増していて、魔法技の衰えている者はその場で立っていることすら不可能で、地面にへばりついていた。

ピ―――――――――――――――――。

そこで、また僕の脳に機械音が響いた。

―――――――――――――――――――また貴方？いや、今回は違うかな……。

―――――――――――――――――――はぁ？てめー何俺の乗っ取ってんだよ？

―――――――――――――――――――リーゼルト……？そう、だよね！

―――――――――――――――――――……その調子だと、お前はまた「三人目の貴方です」とでもいうつもりか？

―――――――――――――――――――間違ってはいないよ～。けど僕を呼び出したのはどうして？

―――――――――――――――――――サテラを守ってくれ。お前にしかできない！

―――――――――――――――――――へ？

―――――――――――――――――――お願いだ！俺が自分の中に封印されている今、頼みの綱はお前しかいない！

―――――――――――――――――――……分かった！！！

―――――――――――――――――――あぁ、まかせｔ……。

それっきり、このの主であろう「リーゼルト」の聲は聞こえなくなった。

彼の言葉を聞いた僕は驚きでいっぱいだった。彼の記憶の中での彼は、ヤンキーでやさくれていた。なのに、何が彼を変えたというのか。

「リオン様ー！國王様ー！頑張って―！！！！」

「はい！頑張らせていただきます！」

「あぁ、一杯な！！」

後ろからシアノンの応援。そして一度振り返って、笑顔でサテラと國王は応える。

その瞬間、僕の心はとても溫かかった。今までなかったものが、心の中で満たされた。

「友達」「」「」

僕は今まで何をしていたんだろう。こんな大切なものを見逃して。

僕の目から涙が流れた。初めて家族以外の人のために泣いた。僕は聲を上げない。僕は決意した。この人たちを全力で守る。

僕はありったけのの中にある魔力をすべて右手に凝させた。無ランク「臓作」発準備、完了。

「さぁ終わりだぁ！！！！霊よ、奴らを叩き潰せー！」

『了解』

『はぁーい』

二人の霊が出てくる。ひとりは緑の長髪ポニーテールのの子。およそ15センチくらいの大きさだ。もうひとりは緑の足に屆くくらいの長髪のの子。大きさはおよそ20センチだ。

『さぁーて植のみんなー♪レッツゴー』

『山も、花も、草も、我々と共鳴せよ！！！』

二人の聲とともに、木はサテラたちへと猛スピードで発され、山、花、草たちはみな削魂唄という人の魔力を弱め、神も衰えさせる植霊上位の魔法を使った。

普通の人間ならばこの一撃は防ぐことはできないだろう。だが今のレティラーは違う。彼は負ける気がしなかったのだ。この避けることが不可能な一撃に。

お願い。僕のランクが、彼より上でありますように――――――――――！！

『臓作！』

僕の全力を使って放った魔力が一直線にの子に直撃する。サテラたちは皆目を丸くしてこちらを見ていた。

手ごたえはあった。息切れしながらも、僕はの子がいる方を見つめた。

「うっ！！」

の子が心臓を押さえ、うめき聲をあげて倒れた。

臓作は、人の臓を瞬時にこまらせ、力が強ければ破させることもできる。今回彼は全力で放った。果たして彼は無事なのだろうか。

そして霊もいつの間にか消えていた。恐らくその主がそれを現化させるほどの魔力がないのだろう。

僕は忘れていた。これは……リーゼルトの…からだ……。

うっ。

リーゼルトが、出てくる。居場所がない僕は、何処へ行く？

「あ、あれ？ここ何処だ？」

「「「リーゼルト/君！！！」」」

俺に向かって三人がぶ。俺は彼らに向けて微笑んだ。

俺が出てくる瞬間、俺はレティラーをとある窟に飛ばした。殘っていた彼の力で。

だがこれは俺の。

俺のは持たなかった。そしてまた俺の意識はブラックアウトする。。。