《俺にエンジョイもチートも全否定!~仕方ない、最弱で最強の俺が行ってやろう~》第六回 戦闘の始まり
あれから約二日間。
一日前辺りにロナワールはもう一度屋の上に登り、敵陣のテントを観察していた。
もちろん、「千里眼」というスキルを使って。
そして観察する事一日であった。
あの時から約二日間、これだけの出來事があったが、藍の膨大な魔力は未だに回復していない。
すでに魔力切れを起こした狀態で、魔力を使った。
彼を診斷した醫師はそう答えたのであった。
普通ならば死んでいるはずなのだが、どうして生き続けられるかに関しては醫師も、ロナワールも分からなかったのであった。
そして、それを待つ間もなく、敵陣はいた。
け、早く終われ、そう思っていた敵陣が、一番いてほしくないときにいた。まるで計算していたかのように。
「ロナワール様、斥候によると約千萬人が突進してきているようです」
「なっ……ランは戦える狀態か?」
サタンは一度肩をすくめ、そして殘念そうに頭を橫に振った。
大賢者シアンがもつ、有能な部下はなくとも五萬人。その一人一人が藍の三分の二ほどの実力を持つ。
すべて出すのなら、およそ六萬人は集められるらしい。
そんな現場に、藍は不可欠であるが、ける狀況ですらないというのだ。
「仕方がないな……ランのテントに向かう、急げ」
「了解しました!」
冷靜を裝ってロナワールはそう言った。
心は不安で満たされていた。シアンはそう簡単に相手できるものではないし、部下二人はロナワールが特に力をれていた部下たちだ。
彼らにとって慣れたロナワールの太刀筋では、勝てるはずもないのである。
きっとシアンのところで修行も積んでいるはずだと予測を立て、ため息をついた。
歩くこと十分。
裏にあった藍やほかの兵士たちのテントがある場所につき、サタンがロナワールを案する。
サタンによるとここ全てのテントの位置とそこにいる者を覚えているらしい。
「ラン、今回の戦は……」
「行きますから、ご安心ください」
ロナワールはテントをめくってり、そう言おうとした。
休憩していろ、というつもりだった彼の言葉を遮り、藍は安定した聲でそう言った。
なるべく疲れを見せないように。
サタンは傍で、その考えが見えているかのように微笑んだ。しかしサタンは忘れていたのだ。
ロナワールの鈍を……。
「休憩していろ」
「いいえ、出ます。必ず。」
しっかりとした聲で返すロナワールに眉ひとつかさずに藍は答えた。
彼にとってきっとこのくらいは耐えられるのだろうが、見ていたフェーラはすでに気圧されていた。
フェーラも黙っているわけではない。
「ランさん、無茶です、もうやめてください!!」
いままでよりも強く、怒いかりながらフェーラはそうんだ。
藍は、これにすら怯むことはない。ロナワールでさえ怯まなかったのだから、當然だろう。
突然んだフェーラにサタンは驚いた。
ゆったり系であり、癒し系のフェーラは、どう見てもそうやってんだり怒るタイプではなかったのだ。
同時に藍への嫉妬を覚えた。
「いやだわ、私は行くの!」
そうはっきりと藍は言った。
それはもうすでに決心がついているということで、この場ではだれも否定することが出來なかった。
その時だった。
藍の周りが眼では見ることができないほど輝いた。
ロナワールは魔で目を強化し、なんとかその景を見ることができたが、周りの人たちは全員耐えていることができないようだ。
そこで、ロナワールは目撃したのである。このの原因を。
「スキルが……進化した……だと!?」
そう、藍の必殺技「蒼なる瞳」が「漆黒なる藍の瞳ブラックアンドブルーアイ」へと進化したのだ。
辺り一面に、『蒼なる瞳が進化しました……進化型は……』
という機械の音が響き渡る。
無機質でが見えない聲。気持ち悪いと言わざるをえなかったが。
『力をすべて回復しました』
そんな聲が聞こえた後、藍の周りを渦巻いていたは消えた。
「進化なんて……聞いたことねえよ」
「とりあえず、これでいいわよ」
呆れるロナワールにそう言った藍。
知らずのうちに敬語が消えてしまっているということはこの場の誰もが気づくことはなかった……わけではなかった。
それに気づいたサタンとフェーラは靜かにそれを見守るのであった。
「結ばれろっ!」
「リア充が現れますね、サタン様」
笑顔で二人はそう言っていた。
「行くぞ」
「分かったわ!」
笑顔と憎しみに混ざって、戦は始まろうとしていた。
そこで、斥候が帰ってきた……。
「大変です!!前方からおよそ千を超えるSランクの魔が!!」
息を切らしながら、斥候がそう言った。
Sランクの魔と言えば、リーゼルトたちが戦っていたものはBランク。
Sランクともなれば、ロナワールでもキツイだろう。
「なん……」
噓ではないのか、とロナワールはそう言おうとした。しかし斥候の真剣な表を見て、それは噓ではないことと、いまからその軍団に挑むということに気付くのだった。。。
―――――――――――――――――――☆―――――――――――――――――。
「何人用意できたかな?」
「人っていうか、魔ですけど……千です」
敵陣のテントで。
かつて部下であったライトブルーの肩にかかる髪をもつユノアがシアンに語り掛けていた。
さらり、と足まで屆く銀髪が揺らめいた。
「そっか、意外に良いじゃん♪」
「褒めていただき、栄です」
嬉しそうにそう言ったシアンに、もうひとりの元部下の黒い子のような髪のレイアがそう微笑んだ。
ユノアも嬉しそうである。
その隣にいるのは同じく元部下のエアン。ピンクのツインテールで子力が高そうである。
「とりあえず、わたしはロナワールと勝負するね」
そうシアンが言った瞬間、その赤い瞳が戦意に燃えた気がした。
その瞳がっていたことは間違いはなかった。
ユノアたちは怯んだ。いくら何でも、彼らにこれほどは耐えられない。
そして同時にこれをまともに浴びることとなるロナワールにしだけ同した。
勿論彼はこれくらいで怯むとはシアンも思っていない。
「り、了解しました!」
「あなた達は、藍って子をどうにかして」
「はい」
レイアがそう言った後にシアンが命令をし、ユノアが答えた。
シアンの隣で空気を消して立っていた準隊長アキルーテが小さく舌打ちをした。
(知っているくせに、藍も、彩も、リーゼルトも、全部を知っているくせに)
アキルーテはものすごくシアンに不満を抱いていた。
平和に。
アキルーテはそれだけを尊重してきた人なのだ。
勿論それにシアンが気づいていないことはない。ただアキルーテなどを相手している暇がないのである。その気持ちはアキルーテも気付いており、なお、そこにも不満を抱いていた。
「じゃあ、行くしかないか。ユノア、魔を全部放出して」
「ぜ、全部、ですか!?」
ユノアは驚いた。
Sランクの魔を千も送り込むというのだ。
「ただの手探り。それすらもクリアできないのなら、この戦いにふさわしくない」
「そうですよね、あの計畫は……」
「分かりました、全て放出致します」
レイアのそのセリフを聞いたとたん、ハッとしたようにユノアはそう言った。
ユノアの特技は魔の使役。そのスキルも丁度持っている。
普段ならばスキルなど使わないが、Sランク千となると、スキルを使うことになる。
力が減ってしまうため、ユノアは前方にはあとから出てくる。シアンの護衛として。
ユノアは急いでテントから出て、魔を待機させている森林に向かった。
「お行きなさい、そして、全てをも壊しつくしなさい」
ユノアはそう命令した。
自分たちには手を出すなと、そのストッパー魔法もかけながら。
魔たちはつばをとばしながらユノアの逆方向に向かっていく。
大魔王城のある方面だ。用にユノアだけを避けていく。
かつて、ロナワールが全力で練になるまで教えてくれた魔法である。
(今更、裏切るのか……)
そう思った途端、心が痛い。
ユノアは頭を振って忘れようと試みる。
そして大魔王城から背を向けて、全てを忘れ去るようにテントに向かって走り去った。
『この駒も、使いおさめか』
とある部屋で、年が水晶球を覗いていた。
そこにはシアンたちと、森林に向かったユノアの姿が二通りで寫されている。
それを見て、年はため息をつき、水晶球の畫面を閉じた。
そして、ニヤリと笑った。
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