《絶対守護者の學園生活記》護る為の戦い
魔王からの使いであるクソ王子に連れられてやってきたのは俺の故郷があった場所。ここを指定してきた魔王は相當格が悪いみたいだ。
そしてその魔王は今、俺と正面から向き合っている。クソ王子は當たり前のように魔王の隣へと移した。魔王はリーフェさんの姿を依り代として顕現している為、聲は低くなっているが見た目はほぼそのままだ。しかし頭にゴツい角が生え、凄まじい圧を放っている。武闘大會頃の俺だったら立ってるだけしか出來なかったのではと思うほどだ。
「おいおい、その姿でそのセリフは似合わないぞ?」
「我もこのには納得してなくてな。代わりに小のを寄越してもらおうか?」
「冗談だろ」
「さて、どうだろうな?」
軽い皮を込めた會話が始まる。大事な戦いを前になんて會話してるんだと思うかもしれないが、俺にはどうしても魔王から聞き出しておかなければいけないことがある。
魔王も戦闘前の余興を楽しむといった覚で話に乗っかってきてくれている。このチャンスを逃すわけにはいかない。
「男のよりの方が良いだろ? 俺だったらそうするけどな」
「ふむ、不思議との方が適合率は高いのは確かだな。……このように小と最後の會話を愉しむのも良いが、先に済ましておくとしよう」
「ん? なにを―――」
するつもりだ?そう最後まで俺が言い切る前に、魔王が素早く腕を振るった。
その瞬間、宙を何かが舞った。
ドサッ、と人が地面に倒れた音がする。そして俺の足元に、さっきまで宙にあったモノが転がっている。
それはシャルとアリスの弟であり、裏切り者でもある年――――クソ王子の首だった。
分かってる、こいつは自業自得だ。こうなってしまっても仕方ないことをしでかしたんだ。この世では人の命は前世より軽い。だから心を強く持て。弱った姿を魔王に見せるな。
「む、思ったより揺しないのだな」
「……なぜこいつを殺した?」
「なに、既に用済みだからな。要らぬものを持っていても仕方あるまい」
さも當たり前のように魔王は語る。
「今までもこんなことをしてきたのか?」
「人族の間では定期的に掃除? ゴミ捨て? 廃棄? をするのではないか? 我もそうしたまでだ」
「ゴラムとシミルもか?」
「そんな者もいたような気はするな。有象無象のことなど一々覚えてられぬわ」
「クソ野郎が……!!」
世の中には仕事として殺しをしている輩はいる。それは仕事だからという理由であれば、ただ単に殺しが好きだからというのもある。それはもちろん許されないことだが、だからといって全て消してやる!とはいかない。誰にだって限界はある。距離的な問題や実力的な問題。どんなに正義が強くとも、返り討ちにあって死んでは元も子もない。妥協が必要となってくる。
もちろん俺だって妥協はしている。ユウちゃんを攫ったような貴族様なんて他にもいるだろうし、闇というのはどこにでも潛んでいる。
そして俺は、俺の手の屆く範囲は絶対に守り抜くと誓っている。言い換えれば、俺がカバーできない範囲はそちらで対応してくださいだ。こんなの當たり前だろう。
まぁなんだかんだ無駄な話が長くなったが、要はこういうことだ。
俺の大切を害そうとするこいつを、絶対にぶっ倒す。
「魔王、お前のそのの持ち主を取り戻す方法はあるのか?」
「面白いことを聞くな。答えは否だ。我の魂はこの小娘の魂と同化し乗っ取っている。小如きに出來るわけがない」
「ならお前の魂だけ取り除けばいいってことだな?」
「やれるものならな」
余裕そうな魔王。しかし良いことを聞いた。
同化してしまってるのならもう不可能かもしれない。でもほんのしでも可能が殘ってるのなら、俺はそれに賭ける。
《消失》の力で、魔王の魂だけを消し去る。
やれるかどうかじゃない。やるんだ!
俺は相棒の刀を構える。ここでお話は終わりという合図だ。
「さて、そろそろ始めようか」
「我を満足させてみろ、小」
指をくいくいっと曲げ、挑発してくる魔王。
守る為の、いや――――
護る為の戦いが今、始まろうとしていた。
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