《負け組だった俺と制限されたチートスキル》第四十七話 エルフの里

話はついた。

俺の気を余所にしの間リーフとウリスとの間でシリアスな空気が流れていたが、流石に俺と言う怪しい客人を待たせるわけにもいかないと判斷したのか、見張り番であるウリスは仕事を全うするために涙を拭って言葉を告げてきた。

「お待たせしてすいません、お通り下さい」

ただそのトーンはかなり低く、何も知らない人が聞いたら不審を抱く程度に暗い。しかしそれを突っ込めばまたしても人間を疑われかねないので黙って通り抜けた。

それに俺には何も言う権利はない。こういう場面は第三者が割ってはいる話ではない。

後は一人でもリーフとでも語り合ってくれ。

そう心の中でウリスという青年へ告げ、俺たちはエルフの里へとった。

「……すいません、コウスケさん」

リーフが暗い表、聲音で謝罪してきた。わざわざ謝ることもないというのに律儀な奴である。

今更ながらこの年の真っ直ぐな心意気に銘をける。俺がこれくらいの時に知り合いを殺人によって失ってしまえば、このようにすぐに立ち直れはしないだろう。

それを踏まえるとかなり神的に大人である。

しかしそうだな……表ではそう見えても裏ではきっと穏やかではないだろう。

ならばその調子のまま、里の案をさせることはリーフに負擔を與えてしまう。

「無理はしなくてもいいぞ」

「……いえ、せめて父の元までは案します」

俺の言葉を余所にリーフは前を向き言い切った。

しっかりしている。

素直にそうじる。

ミリルも含め、異世界の子どもは向こうの子どもより芯が強い。

まず見習うべきなのは確かだ。

「ここです」

リーフの導。

俺たちは進む。

エルフの里は木の上にあるらしいので、多分ここから木の上へと移るのだろうことが予想されるが、今のところそんなものは見當たらない。

そしてしばらく歩くと、こんなもの地球にないだろう、と真っ先に思うほどでかい木が視界に映った。

一言で言えばデカイ。

二言で言えばかなりデカイ。

とにかく大きい木だった。

流石は異世界だ。と口元に笑みが浮かぶ。

「この大木の上に里があります」

「まさか一本の木で里を形しているとはな……」

しみじみとそれをじる。

予想では、いくつもの木にツリーハウスのようなものがあり、木々の間を吊橋のようなもので連結している図を想像していたからだ。

その予想は見事に裏切られた。

こんなでかい木が出てくるなんて誰が予想するものか。

俺はその大木を見上げながら心底心しっぱなし。

ただリーフにとってはここは故郷、そんなもの見慣れたものなのだ。

それゆえ、何のアクションもなく歩いていく。

仕方ないとは言えど、を分かち合えないのはし寂しいと言うものだ。

この気持ちをどうにかするべく、もう一人へと言葉をかけた。

「凄いな、ミリル」

「うん」

會話が終わった。

知っていた、知っていたがこのを分かち合いたかった。

それにミリルも言葉こそないが顔だけは樹を見上げているので、心はもっと高揚しているのだろう、と信じたい。

さて、気持ちを切り替えよう。

俺はリーフを追った。

今この瞬間だけは、リーフに従うことが最善だ。

するとリーフが立ち止まった。

見ればこの大木の幹に大が開いている。

これは樹として結構なダメージではないのか? と心配になるくらいの空

しかしリーフは顔一つ変えずそのへとっていく。つまりそこが目的地なのだ。

慌てて俺も続く。

そこは當然だがし薄暗い空間。

だが予想した上へ登るための梯子のようなものはどこにもなかった。

どういうことだろうか。

し目を閉じていてください」

「あ、ああ」

うが、今のところは言うことを聞かない選択肢はない。

目を瞑った。

直後、リーフの口から聞いたことのない言語が聞こえてくる。

本當に何一つ分からない言語。

認識も出來ない。

不思議な言葉だった。

まるで念仏のようにそれを聞いていると、途端にリーフが言葉を止めた。もしかしなくてもその念仏のようなものを終えたのだと、言うことは分かる。

「目を開けても大丈夫です」

従う。

「っ!」

思わず息を呑んだ。

見れば今俺がいるここはさっきの薄暗い空間ではあったものの、その外。そこから見える外が全く異なる景だったからだ。

「これは?」

流れのままリーフへと問う。

気のせいじゃなければ今目の前で起こっていることは異常だ。

目を開ければ違う場所にいた、それが通常のことなわけがない。

「ここがエルフの里です」

場所を聞いているのではない。

「ま、魔法か?」

「えっと……そんなじです」

俺の中で不思議な現象は全て魔法と言う認識になっているのでそう尋ねるしかなかった。

しかしリーフの顔を見るに、今の出來事はこの世界で言われている魔法とはし違うのだろう。

ただ俺に魔法とそれに近い現象の違いを説かれてもきっと理解できないだろう。なので詳しくは聞かなかった。

もちろん魔法について詳しく知りたいという好奇心はある、だが今はそれを聞けるような狀況じゃないことくらい分かる。

今はしでもリーフに負擔をかけるべきではない。

もし今何とか耐え切れているリーフの神が壊れてしまうのは、彼しか頼るしかない今は々厄介なのだから。

「じゃあ早速案してくれ」

「はい」

なので促した。

もちろん先ほどの理由もある。

しかしそれとはまた別の理由もあった。

それは単純に好奇心だ。

この里はエルフの里。

ファンタジー好きの人ならまず興で卒倒するレベルであろう。ただ俺はそこまでではないが、それでも興しているのだ。

今なら勇人の気持ちもしだけ分かった。これは不法國しても見ておきたいと言う気持ちが。

ただ俺は今でも勇人という人間は嫌いである。それを忘れてはいけない。

「行きます」

リーフに続くように一歩踏み出した。

今日何度目かの息を呑みこむ。

そこにはここが木の上だと忘れてしまうほど立派な町があったからだ。

きっと木の上なのだろうから、地上が見えるスカスカの足場だろうな、という懸念も吹き飛ばされる。

それは何故か。

そんなの簡単だ。

何せあれほど巨大な木なのだ。そこからびる枝もかなりの太さで人が十人ほど並んで歩いてもこの木から落ちることはないだろう。見事なものだ。

それに多分この里は木とともに長していくのだ。枝がびればその分、里の面積も増えるのだから。

なんとも夢のある里だ。

しかしそれだけではない。

行きう人々全て

多分思春期真っ盛りのあいつらがここへ來たら、誰しも一人には一目惚れしてしまうくらいに綺麗、可い、格好良い人たちでいっぱいだった。

本來ならここは天國のような場所だと歓喜するのだろう。

しかし俺はそれとは全く別のを抱く。

リーフは當たり前だが、ミリルだって彼らの顔面偏差値に負けてはいない。むしろ勝っている。

つまりこの場にいる中で顔面偏差値が底辺なのは間違いなく俺。

その事実に居たたまれない気持ちになるのは必然だった。

それを抱きながら歩き続ける。

チラチラと向けられる視線に耐えながら。

すると一際大きな建が見えた。

何かの會館だろうか。

とにかくそこらへんにある建と比べると大きいということだけは分かる。

するとその中から人影が現れ、こちらに笑顔を向けてきた。

當然整った顔立ちを持つエルフだ。

しかし々歳を食っていたので、俺の自尊心は揺れかずに済んだ。

「おや、リーフ殿、どうされたのですか?」

その男はリーフへとそう言葉を発した。

その時リーフはし顔を顰めたように見えたが次の瞬間にはもうその影は見えない。

しかし気のせいではないだろう。

「僕の客人を父の元へ案しようとしているところです」

「客人……?」

リーフの後ろにいる俺たちを見て、その男は目を瞬時に丸くする。

そりゃあ今話題の魔人を連れているのだから、その反応は當然である。

だがその後直ぐに平靜を裝ったように口を開いた。

「ほ、ほう、魔人ですか、この短期間に二度も訪れるとは珍しい」

見るからに揺しながら言葉を述べていく男。

あまりにも分かりやすいその表に苦笑いを浮かべかける。

しかし先の事も知っている上で笑うことは出來なかった。

空気を読む。

大事なことである。

「彼らは僕の命の恩人なんです」

「命の恩人?」

はて? とワザとらしく首を傾げる男。

「報告が來ていないのですか?」

「報告……」

そこまでいくと、先ほどまで何ともないリーフの表に影が浮かんだ。

男はそれに気が付き、手を叩く。

「なるほど……例の勇者の件ですか」

それを話したのはさっきのウリスという男だけのはず。つまりもうその報はここへ伝わっているということだ。

攜帯電話もないこの世界でその事実。

信じられないほどに報が早い。

「とても惜しい戦士を亡くしましたね」

きっとその言葉はリーフを勵ますために言った言葉。

その男の表は悲しみに満ちていた。

しばしの沈黙。

こうなるのも二度目だ。

俺は話にらない。

こればかりは時が解決するしかない。第三者はれない。

「すいません、先を急ぎますので」

沈黙を破ったのはリーフだった。

中々れない俺にしてはありがたいことだ。さっさと終わってしかったから。

だが男が口を挾む。

「その件ですが、一度私の元でお話をさせては貰えませんか?」

「リーンド様が直々に?」

「そう通りです、近頃の騒によって、リフリード様はお忙しいご様子、ここは私でも十分に対応できることであると認識しておりますが」

「ですが……」

何やら難しい會話にったご様子。

ますます俺がる隙がなくなった。

それにその會話を聞く限り、リーフの父も含め、この男、リーンドもかなり立場が上の人のようだった。

政治特有の黒い思とやらがぷんぷんと臭ってくる。

まあそんなもの知らないのでただの偏見である。

「ご心配なさらずとも、リーフ殿の客人に無禮など働いたりしません」

人當たりのよさそうな笑みを浮かべてリーフに告げるリーンド。

だがリーフは乗り気ではなさそうだった。

むしろ拒否したいが、相手が相手なので強く出れないといったじのようにも見える。

その表を見てしまえば、俺が會話にるしかなさそうだった。

「すいません、俺たちはリーフと約束をしていまして、どうしてもリーフの父と會わなければならないんですよ」

「……約束ですか?」

気のせいだろうか。

俺が話し始めた瞬間、この男の目に敵意があったように見えたのは。

しかしもう一度確認しようにも今はもうその様子は見えない。

引っかかるな。

「ええ、契約のようなものと考えてもらえれば」

「契約……それならば仕方ありません、お引止めして申し訳ありませんでした、では失禮いたします」

そう言ってリーンドは立ち去っていった。

しの間だと言うのに、無に疲労に満ちたリーフの表

それだけあの人を苦手としているということが伺える。

する。

俺だってああいう手合いは苦手である。

「……助かりました、ありがとうございます」

しみじみと言ったような謝の気持ちが伝わってきた。

やはり相當苦手としている相手だったらしい。

そんなリーフの心を察し、思わず俺は苦笑いを浮かべた。

「それであの人は?」

「リーンド様と言って、現族長を補佐するの宰相にあたる方です」

「宰相ね……」

日本的に言うと総理大臣やそれに連なる大臣クラスということだろうか。まあ多は齟齬があるだろう。だがそれくらいだと考えるのが妥當。とりあえず言えることは、権力者だということだ。

なるほど、それはそれはやりにくかったことだろう。

俺だって総理大臣と抗弁なんてしたくない。

しかし、そうなればもう一つ疑問が出てくる。

「リーフ、お前の父親は何者なんだ?」

あの會話では宰相であるリーンドと並び立つような存在に思えた。

そうでもなければ、宰相クラスの男が素直に引くワケがない。

「父は戦士長です」

「戦士長……」

その名稱にもちろん聞き覚えはないが、何となく戦士のトップだと言うことは分かった。

これも無理やり日本的に言うならば、軍の総司令や防衛大臣あたりだろうか。

全て日本の知識で考えるのはあまり好ましくはないが、今はいかんせん知識が足りないので仕方がない。

「分かった、じゃあ行こうか」

「はい」

リーンドはかなり気になるが、彼は俗に言うお偉いさん。よそ者である俺は土足でっていい話題ではないだろうし、ましてや批判なんてもってのほかだ。

仕方ないと俺は割り切り、もう一人の権力者であるリーフの父の元へと向かった。

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