《負け組だった俺と制限されたチートスキル》第五十話 犯人探し

翌朝。

ミリルが絶句していた。

あのミリルがだ。

「コウスケ……これなに?」

その視線の先はいうまでもなく、夜に襲い掛かってきた刺客三人だ。

今彼らは縄によって一纏まりにされている。俺がやった。

「昨日の夜、勝手に家にって來た奴ら」

出來るだけ完結に答える。

どこで誰が聞いているか分からないので、俺が何かを悟っていることも知られたくなかった。

それとミリルを俺の推理で混させたくないということもある。

には俺とはまた別の視點から考えてしいのだ。

二つの見方によっては、たどり著く真実も違うだろうから。

「昨日の夜?」

「ああ、お前は快眠スキルでぐっすりだったな」

俺が皮じりにそう言うと、ミリルはムスッとし顔を伏せた。

最近表かになってきているような気がする。

共に行する俺としてはその反応が新鮮で面白くて、嬉しい限りである。しかし當の彼は不満げ。

このままだとあれだ。

しばらく口を利いてくれなくなる。

「悪かったって、でも無警戒過ぎるのは危ないぞ?」

とりあえずは一言付けたし謝った。

するとミリルは、

「コウスケがいるから大丈夫」

と嬉しい一言を言ってきたではないか。

しかし心は微妙だ。

つまりそれは俺に依存しているということになるのだから。

だが俺は依存という言葉にあまり良いがなかった。

どうしても人をダメにするといったイメージが先行してしまうのだ。

言うほどの実験はないが、何となくそんなイメージがあった。

それにミリルとはいずれ別れる予定。それなのに俺に依存するのは良くない。むしろダメだ。

「俺に頼らなくても出來るようにしろよ?」

「……考える」

まさに口だけ。

いつも無表だからって、ごまかせると思ってるのか。

いや、でも真偽スキルが発していないから、本當なのか?

あれ、分かんなくなったぞ。

考えられるのは言葉のニュアンスでごまかした可能。もしそうなら中々の策士である。ついに表だけでなく口も悟られないように特化しだしたか。敵にいるとかなり厄介なタイプだな。

ただそれは今のところありえないのでいいが。

って、またしてもミリルの策略か、考えが大幅にずれた。

そして何だか、もうどうでも良いか、と考え始める自分がいる。

「……はぁ」

そして燃え盡きた。

ミリルを言い負かすのは後にしよう。

不完全燃焼だったが、時間をそれに費やすのは勿無いと判斷した俺は、早速この刺客たちをリフリードさんの元へと運び込んだ。

驚くリフリードさんと口を開けたまま固まったリーフが俺を出迎えてくれる。

「こ、コウスケさん、それは?」

そりゃあ昨日の今日來たばかりの俺が、早速一仕事終えてきたのだ。揺もする。

「夜中に家に潛り込んできた奴らだ」

「……なに?」

リフリードさんが低めの聲で問いかけた。

やはり彼の認知の範囲ではなかったか。

「理由は分かりません、頑なに口を閉ざしていたので」

「そうか……」

本當ではあるが、噓でもある。

この場合噓になるのか本當になるのか。

俺自に真偽スキルが働かないのがし殘念だった。

「その件はこちらで調べよう」

「お願いします、もし拐事件と関係があるようなら連絡を下さい」

「分かった」

リフリードさんとわすべき會話はこれくらいか。

そうだ、後一つだけ聞いておこう。

「リフリードさん」

「なんだ?」

「今事件解決のために出ている捜索人數はどの程度でしょうか?」

ここは平穏なように見えるが実際は、王族が拐されるというのはかなり一大事である。

そのため今でもかなりの人員がお姫様探しに割かれていることが予想された。

そしてその人員によっては俺がどこを調査すべきなのかも決まってくる。もし人數ならとりあえず西へ、大人數ならばきっと捜索活が続けられている西に行く必要はない。

「そうだな……大五部隊ほどといったところか」

「五部隊?」

俺が首を傾げたのは何も言葉の意味が分からなかったと言うわけではない。俺が疑問に思ったのはその數だ。

なくないですか?」

権威のトップに當たる王族が攫われているにも関わらずたった五つの部隊しか出ていないというのは不思議だ。

もちろんその人たちが捜索のエキスパートで、鋭という作戦であるなら何も文句はない。

「あぁ、それは正確には私の所から出した部隊數だ」

なるほど。それならばその人員も変ではないか。

むしろ何故それを先に言わない。

「じゃあ戦士長の管轄外からの人員はどの程度くらいなんでしょう」

「それは私にも分かりかねるのだ、生憎ともう一つの捜索隊の管轄者はこの里の宰相でリーンドと言って、そいつは主義が過ぎる奴でな、私には一切報がってこない」

「リーンド……」

またしても出たその名前。

まだ確証は持たない方が良いとは思うが、ますます怪しさが増してきたことは間違いない。

「一応は気をつけてくれ」

「はい」

リフリードさんもリーンドのことは気にかけているようだ。

なら、今俺が口出すことではないな。偉い人は偉い人とやりあっていればいい。

俺がわざわざ突っ込むような場所ではない。

ただ俺自の邪魔をしてきたら問答無用で叩き潰す。

俺はリフリードさんと別れた。

ちなみにリーフはついてこなかった。

理由は聞いていないが、恐らくはまだ立ち直れていないのだろう。もちろんリーフがいれば他のエルフ族に顔が利くので惜しいが、それが理由なら無理に連れ出すなんてことはしないほうが良い。むしろ足手まといになりかねないのだ。

「行くか」

「うん」

エルフの里三層。

地上への降り方はリフリードさんに教えてもらった。

それはごく簡単な方法だ。一層ずつ階段で降りていくと、最下層である一層に地上へ繋がる階段があるということらしいのだ。

あの時リーフが行った転移のようなものは、急用などに使われるものらしく、通常はこうして階段を下りるということだった。

リーフの判斷は正しい。

俺のような魔人が突然住民たちのいる層へ訪れるのは混を招きかねない。だからこそリーフは急用だった転移を使ったのだろう。

だが今はもう俺と言う魔人がこの里を訪れているということはある程度エルフ達へ知らせたようなので、堂々と俺は層を移していく。

チラチラとエルフ族たちの視線が向けられるが、向こうから聲をかけてくる者は誰一人いなかった。やはり魔人という見た目であるため、怖がられているのだろう。

ただミリルに対して向けられる視線は何か俺とは違った気がしたが。

著いた。

多分ここが地上へと降りる階段だろう。

それを見ると、今まで當たり前のように過ごしていたこの場所が木の上だったのだということを実させられる。

本當に凄いなこの木とこの里は。

その階段のり口には見張りがいた。

早速その男と目が合う。

俺の知っている人ではなかったので、こちらからは話しかけようとは思わなかった。すると向こうから聲がかけられる。

「あ、魔人族の……コウスケ様ですか、話は聞いています、どうぞお通り下さい」

軽い會釈をしてそこを通り過ぎる。

見事に怖がられていたな。

「コウスケ、無想」

「お前にだけには言われたくないよ」

そんな一言二言言い合いながら俺たちは地上を目指して歩みを進める。

てっきり階段と言う名の梯子で地上へと降りるのかと思っていたのだが、案外しっかりとした階段が俺の目の前にはあった。

何となく理解した。

多分これは木の幹の中を掘って作ったものだ。

普通そんなことを出來る木なんて存在しないのだが、流石異世界、當たり前のように今目の前にそれがある。

この木は馬鹿でかいだけじゃなく、生命力もずば抜けているようだ。

心しっぱなしの俺。

これだけでもこの里に來た価値があるというものだ。

貴重な験。

これを糧に頑張るとしましょうか。

地上へと著いた。

階段を降りる途中は特に何もなくただ薄暗いだけ。

なので黙々と降りただけだ。

そして著いたこの場所。

外から見ればどこに階段へのり口があるか分からないように草や蔦でカモフラージュされていた。

これならまず一目では分からないだろう。それにこれほどでかい木の上に里があるだなんて誰も思わないだろうし、ましてや幹の側に階段があるとは考えもつかない。

隠れ里という意味では良く考えられている。

さて心するのはお仕舞いだ。

仕事の時間である。

「まずは……」

魔人の男が去って行ったとされる西へ向かうべきだろう。

ただそれよりも先にやることがある。

【強化】発

耳を澄ます。

木や蟲、そして人のさざめきが聞こえる。

ただしそれは目的の音ではない。

人の足音は恐らく捜索隊のもの。何せそこら中で聞こえてきて話し聲もする。

拐犯ならばこんな無用心に話なんてする訳もない。

探せ。

無言の足音を。

簡単に言っているが、きっと一生かかっても出來かどうか分からない蕓當を俺は自分に求めている。

ただしそれは強化がない話だ。

今は強化によって果てしなく強化された聴覚がある。

それくらい造作もないと言えば噓になるが、出來ないことはないはずだ。

「一どこにいるんだ?」「くそ、魔人め」「まだまだ見つかりそうにないな」「はぁ、早く飯を食べたい」「リフリード戦士長の地位向上のために頑張るぞ!」

そこら中から面白いくらいに會話が拾える。

しかし手がかりは何一つない。

強いて言うなら西に行った捜索隊の進展狀況が芳しくないということが分かったくらいか。

もっと聴覚を研ぎ澄ませようとするが、これ以上やると耳が壊れそうなのを察した。何より近くにいるミリルの呼吸音、心拍音が特に聞こえてくるのだ。

もちろん聞きたくてやっているわけじゃない。

音を選別するカクテルパーティー効果なんて言うが、流石にこれだけ聴覚が強化されてしまえば全ての音を拾ってしまう。

聞き分けは出來るが、ってくる音の調整は出來ない。

だからこそ俺はこのままの聴覚で聞き続けた。

ここでもしミリルが話しかけてこようものなら俺の耳が発狂するだろう。

まあミリルがそんな悪戯をしないことくらい分かっているので、俺はじっくりと音を聞き続けた。

そして――

「……いつだ?」

「明日の朝にでも……」

怪しい會話を捉えた。

ただそれは目當てのものではない可能が高いと俺は読んでいた。というのも、お姫様を攫った犯人は魔人一人。當たり前だが一人で會話なんて出來ない……出來ないよな?

ま……まあいい。

ただしもしその聲が魔人の男の聲だったとすると、そこには別の共犯者がいるということになる。

今のところはそれはリーンドが最有力だが、あいつ程の権力者があの里から出るとは思えない。むしろ怪しまれるからだ。

だったら一誰なのか。

可能は広がるばかりではあるが、一つだけ確定していることは、その者たちがリフリードさんの手配した捜索隊ではないということだ。

いくらなんでもその會話をしている奴らだけ、他の捜索隊と距離が離れすぎている。それにそいつらは積極的に捜索が行われている西ではなく北方向にいるのだから間違いない。

俺は強化を解除した。

「ミリル、行くぞ」

「うん」

何も言わずにミリルは頷いてくれる。

ありがたいことだ。

俺も頷き返し、足を進める。

一応の手がかりの下へ向かうために。

目指すは北。

地図的に言えば、セントリア公國という國がある方向。

何となくだが、その國は関わっていない気がする。その國は全ての國家と國境を隣接している唯一の國なのだ。

そのため外上、無茶なことをするとは思えない。無茶なんてしようものなら、多くの隣接國家から袋叩きに合いかねないからだ。

良くも悪くも忙しそうな國である。

果たしてこの事件は國家ぐるみなのか、の騒なのか、はたまた魔王の思なのか。

何はともあれ俺はそれを解決するだけだ。

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