《負け組だった俺と制限されたチートスキル》第五十三話 求めよさらば與えられん
【強化】を遠慮なく使い、森全の音を耳で拾う。
何か一つでも不自然な所を見つければ良い。それさえ見つけれればきっと……
そこで不意に思ったことがある。
何故リーンドはああも自信満々だったのかということだ。
昨日今日やってきたばかりの俺はともかく、リフリードの部下たちは毎日のように眼になって捜索を続けている。
當然見つからないという現狀は変わることないが、見つかるわけがないという確信にはならない。
なのにリーンドは當然であるかのような態度だったのだ。
彼が自信家であると考えれば不自然ではないかもしれない。だがもしも、その自信は格によって現れたものではなく本當に見つからないと思っている場所にお姫様を置いているとしたら……?
それならばあの自信も納得できる。
つまりリーンドは俺たちが現在行っている正攻法では見つからない場所にお姫様を置いていると考えられるのだ。
すなわち裏をかいている。
俺たちは森の中を捜索していた。主に魔人が逃げたとされる西を。ならその反対である東を隠し場所として選んだとすると、これも裏に當たる。
しかしそんな単純な策でああも自信満々には語れないだろう。
ならもっと大きく見る。
俺たちは森、いや外を捜索していた。
そう考えたらどうだろうか。
外の裏、要するに反対は。ここで言うとは里の中。
そうだ、お姫様が里の中に初めからいるとしたらどうだろう。
俺たちの捜査の範囲外だ。
もし既に里にも捜査がっているとしても、里は奴、リフリードの手の中も同然。きっと重要なことはバレないように働きかけた可能が高い。
段々見えてきた。
あの自信はそこから來ていたのだ。
二重、三重の策を取っている。
外にいると思っていたお姫様が実はにいる逆転の発想が見破られることなどないという自信に、それを確定付けるために里捜査を権力でごまかしたことでその策の匿を増している。
加えて今現在、外から來た者を里にいれない方針を取っている。つまりそもそも里の捜査をさせないことでお姫様のところまでたどり著けないという現狀なのだ。
完璧な筋立て。
それを踏まえるとあの自信も納得だ。
外の捜査結果が著しくない今この手を打ったリーンドには帽する。
こうも進展がないと改めて里にいるんじゃないか、と疑問を抱くものがいても可笑しくない。その気運が高まった今、その者たちを外へ隔離することがリーンドの王手だったのだ。
俺には多種族という理由で里へることを許さなかった。恐らく別の理由を持ち出してリーンドはリフリードの配下たちも里への帰還を許さないだろう。
そうすればしばらくの間、外にいる連中は中へ干渉できない。
未だにその目的が分からないが、わざわざそこまでしてし遂げたいことが詰まらない理由であるわけがない。
大方お姫様を見つけたのは自分だとでも宣言して、名聲を掌握するとか、それとも王族へお姫様の柄と換條件を出して、権威を手にするか。
俺のリーンドに対してのイメージからしたら、こんなところだ。
まあ正直それは重要じゃない。
問題はそんなリーンドの罪をどうやって明かすかだ。
生憎と一番堅実で確実だと思われていたお姫様捜索が、実は一番困難なことが分かってしまった今、狀況は最悪といえる。
さっきまで言っていた木をよじ登る方法も手段にれておくが、今は無理だ。リーンドがあそこに居たということは、今あの大木周辺には多くの見張りがいると思われるからだ。
そんな中、よじ登るなんて無謀なこと出來るわけがない。
そんなことをすれば最悪、不法侵で殺されても文句は言えないのだ。リーンドのことだ。きっとそうする。
ならばどうすれば良いのか。
リフリードさんと連絡が取れれば一番は良いのだが多分無理だ。リーンドがその可能を摘んでいるだろう。
ならリフリードの配下たちと共に里へ侵攻するのはどうか。
いや、それも無理だ。
どこの馬の骨かも知れない魔人族に従って故郷を侵攻するなんて奴がいるわけがない。
そうだな……いっそあの木、切り倒すか?
多分この剣があればいけないこともない。ただし時間は馬鹿みたいにかかるとは思うが。
馬鹿な考えはやめよう。
そんなことをすれば俺はとんだ極悪人だ。
エルフ族だけでなく、國、世界を敵に回しかねない。そんな覚悟俺にはない。
せめて知り合いでもいれば可能がゼロではなくなるのだが……あ。
俺は再び【強化】を使った。
探す。
ギリギリ知り合いと言える男を。
そして見つけた。
「ミリル、行くぞ」
問答無用にミリルを抱え上げ走り出す。
素早く慎重にくためには仕方のない対応だ。
子ども扱い、又は足手まといになっていると認識させてしまう行為だが、今は我慢してしい。
ミリルは顔を背けていた。そのため彼がどういう表をしているかは読み取れない。
それはそれで良いか。
俺は走る。
目的の人の元へ。
幸いにもその男は一人で行していた。
近くの茂みにり、その者の名を告げる。
「ウリス」
ビクッとを震わせ反応するウリス。
そしてキョロキョロと辺りを見渡した。
「こっちだ」
正直この賭けはリスクが大きい。
俺とウリスの関係なんて、リーフの知り合いという間接的なものだ。強いて言うなら直接顔を合わせて話したことのある數ないエルフ族ともいえるが、それでも関係は薄い。
ウリスはこちらに気がついた。
そして目が合うなり聲をあげかける。
「っ! あ……コウスケさん」
しかし見覚えのある顔だと分かった途端、息を吐いて落ち著きを取り戻した。
「驚かせてすまん、ちょっと々事があってな」
「事は何となく分かります」
ウリスは察したようにそう言った。
今のところ、目に見えて敵意はじない。
ホッとしたいところだが、まだ安心は出來ない。
「現狀を聞いてもいいか?」
とりあえず報収集も兼ねて、ウリスが俺たちを騙そうとしないか探りをれてみることにする。
「はい、ついさっきのことです。リーンド様が急発表をするということで里への場を制限せよと、お達しがありました」
「それは今までもあったことなのか?」
流石に発表ごときで突然里への場を制限するなんて、里の住民が「はい、そうですか」と納得するとは思えない。
「例はないですが、時々あります。主にその時は王族が姿をお披目なされるので、厳重な警戒をするためだと聞き及んでおります」
「なるほど」
それならばエルフ族の住人がけれるのも仕方がないのかもしれない。
もし不埒者が里への出りに紛れて侵してしまったら、王族の命に関わる一大事になってしまうのだから。
しかも今は、お姫様が攫われたという一大事。エルフ族の警戒心が増しに増しているため、その施策もすんなりけれたわけか。
リーンドと言う男、見事としか言いようがない。
敵でなかったらどれだけ心強かったか。
「なら俺はやはり里へはれないのか?」
「そうですね……同種族のエルフも規制されていますので、多種族の……その魔人族であるコウスケさんは厳しいかと……」
ウリスの言葉に偽りはない。
「なら里へる別の方法はないか? 誰にも見つからないり口なんかは」
「え? まさか里へ行くおつもりですか?」
「ある事があってな、どうしても行かなきゃならない」
「事ですか?」
ウリスは若干疑いを持った顔で俺を見た。
これはごまかしたらダメだな。
「これから話すことはただの戯言だと思って聞いてくれ」
「は、はあ」
「俺は攫われたお姫様が里の中にいると考えている」
「……え?」
呆気にとられた表のウリス。
「そしてリーンド宰相が黒幕だと思っている」
「ま、待ってください! え……姫様が里の中に? そしてリーンド様が黒幕?」
目に見えて混しているウリスに同を抱きながらも俺は口を閉じない。
「ただの戯言だ、信じなくても良い」
「でも……それをわざわざ自分に言ったってことは、確信を持っているんですよね?」
「まあな」
中々察しの良い男だ。
そう、俺は危険を承知でそれを口にした。戯言だと保険をかけたとしても、その危険はなくなることはない。
「そうですか……」
これから先の言葉によっては俺のウリスへ向ける対応が変わる。
俺の意見を尊重してくれるのであれば何もすることはないが、もし否定し、敵意を向けてきたなら、それに応じた態度を示すしかないのだ。
それはすなわち戦闘行為を指す。
「分かりました、リーフを保護してくれた恩もあります。それにリーンド様は以前から良くない噂もありましたし、これを機に反抗してみるのもいいかもしれません」
「……いいのか?」
「はい、ここでコウスケさんを裏切ってしまえば、永遠にリーフから嫌われてしまいかねませんし」
「そうか、助かる」
俺はホッと息を吐いた。
思いのほかリーフと言う存在がを言った。
「では案しますね、自分とリーフしか知らない里への通路を」
「そんなものがあるのか?」
ウリスの言葉に問い返さざるを得なかった。
「はい、昔からリーフとは悪戯をして遊んだ仲でして、その際誰にも見つからないように里にれるような逃げ道も作っておいたんです」
「そ、それは良かった」
もしそれがバレたら厳重注意だけでは済まないだろうな……何しろ、それは実質里を危険に曬しかねないのだから。
それは今この狀況にも言える。
今、里の中樞であるリーンドにとって俺はイレギュラー、つまり危険分子なのだから。
待っていろお姫様、そしてリーンド。今そこへ行ってやる。
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