《職業魔王にジョブチェンジ~それでも俺は天使です~》変貌させられたダンジョン。

「よし、行くぞ」

ゴーレム達を先行させてから約三十分後、クレアシオンは料理を食べ終えて、ダンジョンに潛る準備をしていた。準備と言っても失った魔力とエネルギーを補給するだけだったが。

クレアシオンは転生で魔のスキルレベルが全て下がってはいるが、使えた魔が使えなくなった訳ではない。ただ、詠唱が必要だったり、威力が大幅に減ったり、魔力を多く使うぐらいだ。転生前ですら詠唱を必要とした魔は何日にも渡って不眠不休で詠唱すれば使えない事はないのだが、事実上不可能だ。

の呪文を多く知っているスキルレベルの低い魔師と魔の呪文がないがスキルが高い魔師では後者の方が威力が高く、前者は狀況に応じて使い分け、に対処ができる。一概にどちらが強いかは決められないと言える。

「……ご主人様、罠が次々と解除されています……」

ソフィアがマップを確認して、冷や汗をかきながら、言った。マップ上では次々と敵対反応が消え、あり得ない早さで罠が消えていっている。

これはゴーレム達が、クレアシオン達のために罠を解除しているからだ。だが、クレアシオンが罠解除を教えた訳ではない。いつの間にか、ゴーレム達がにつけていたのだ。

ゴーレム數でダンジョンに挑ませ続けていたら、罠解除をするゴーレムが現れはじめていた。

そして、罠を解除するゴーレムと敵を倒すゴーレムにわかれ、敵を倒すゴーレムも前衛と中衛――魔で作られたゴーレムは魔法や魔を使えず、弓は持てる矢の數に限りがあるため、使わない――に別れて効率よく任務を遂行するようになっていった。

ダンジョン窟にも関わらず、草木が生い茂っていた。だが、ソフィアの事前報と違い、毒々しい植に変わってしまっていた。

「ああ、普通に攻略してたら間に合わないからな。走るぞ案を頼む」

クレアシオンは毒々しい植を気にせず、ダンジョンを走り出出す。邪気が溢れてる時點で予想は出來ていたのだ。

普通は、何人かでパーティーを組み、襲い來る魔との戦闘を極力避け、罠がないか探り、罠が有れば慎重に解除して、慎重に地図を作りながら攻略するものだ。

人が集まるダンジョンなどは地図をギルド等で購する事がかのうだが、地図が有ったとしても走って攻略など命知らずな事は誰もしない。

彼がダンジョンで走る事が可能なのは、マップでソフィアが案をしてくれる、というだけではない。

もちろん、ゴーレムたちが、邪に屬する魔を殺しながら罠を解除してくれているからでもない。

ゴーレム達には邪に屬する魔を殲滅しろ、と命令していた。通常の魔は指定されていないので、ゴーレム達に攻撃しない限り、無視されていたのだろう。

「シャーー!!」

「危ない!!」

彼が走っていると橫の壁際に生えてる草の間から、蔦が襲い來る。敵知が遅れたのは隠に長けていたのだろう。反応が出てからすぐに、ソフィアが慌てて知らせる。

だが、クレアシオンの手が一瞬ぶれ、次の瞬間には蔦は切り裂かれ、植型の魔の本に短剣が刺さっていた。

クレアシオンの右手には剣が握られている。あの一瞬でアイテムボックス(力業)から短剣と剣を取りだし、蔦を切り裂き、短剣を投擲したのだ。

彼は倒れた魔を見向きもせず、足を止めずに走り続ける。しの時間も惜しいのだ。……強の腕が魔を回収していたが。

彼がダンジョンを走る事が可能なのは、圧倒的な経験に裏打ちされた技があるからだ。これまで、何千とダンジョンを攻略してきたからか。魔が何処に潛んでいて、罠が何処にあるか、それらは全て経験に基づく勘でわかる。

転生したときに知系のスキルを失っているが、経験というものは無くなっていない。知系のスキルを再びに付けるのも時間の問題かも知れない。スキルが無くても、似たような事を無意識にしてしまっているのだから。

「ステージ3クリア」

草影から襲い來るビッグスパイダーをサンダーボルトで殺し、暴食のアギトが喰らう。

「……ステージ4……クリア」

 左右からマシンガンのように飛んでくる種を跳んで回避する。種を飛ばした魔は空中を舞うクレアシオンが通るで有ろう放線の頂點に照準を合わせる。

しかし、跳んだ勢いが無くなり、あとは重力に従うはずの彼だったが、黒い魔素でできた魔法陣を足場に上下逆さに著地することで、種の弾道から逃れると同時に氷の刃を投擲して魔を切り落とした。

「ご主人様……。狩り殘しが多くないですか?」

通常の魔ならともかく、邪に屬する魔も多く殘っていた。ゴーレム達が通った時間から考えて、クレアシオン達が通るまでに魔素と邪気から生まれたという事はないだろう。

その事から、ゴーレムが狩り殘してしまったのでは?とソフィアは考えてた。だが、

「……いや、わざとだ」

「……わざと、ですか?」

ソフィアはクレアシオンを怪訝そうにじっと見た。彼の言葉を自分の魔度が悪い言い訳だと思ったのだ。

「ああ、『マスターが強くならないと、俺たちが強くならない。早くレベルを上げてくれ』だとよ、言われなくてもそのつもりだ」

だが、この言葉に思わず納得してしまう。ああ、あのゴーレム達ならやりかねない、と。

ゴーレム達は彼の魔だ。魔ではない。ゴーレム達がいくら敵を殺してもレベルは上がらない。彼らの強さはクレアシオンの魔のレベルに依存しているのだ。

その後も、クレアシオンが何かをカウントしながら、立ちはだかる魔を殺していき、彼の後ろをソフィアは魔で、アレクシスはダンジョンでもきやすいよう、ウルフ系の魔に擬態して魔を倒しながら追隨した。

◆◇◆◇◆

「ステージ8……クリア」

クレアシオンは走りながら、小さくそう呟いた。彼は強化を施し、ダンジョンにった時から一切、足を止めず、ペースを落とさずに魔を殺しながら、走り続けていた。

だが、ソフィアとアレクシスは違った。疲労とレベル酔いできが悪くなってきていたのだ。

「……ご主人様、ペース……落としませんか?」

ソフィアが息も絶え絶えに、休憩を提案する。彼は自分より小さなクレアシオンが走り続けているので、休憩を中々、言い出せなかったが、限界だった。

クレアシオンの方がソフィアやアレクシスより、魔を倒していたため、彼の方が酷いレベル酔いに耐えていると思っていたのだ。

しかし、そうではない。レベル酔いとは、脳が急激に上がった能力に著いてこれず、混を起こすことによって、引き起こされる現象だ。

彼の場合は、元々高かった能力を取り戻しているようなもの。言うなれば、レベルが上がるごとに、中に付けられた鎖や重りが落ちて外れていく様なものだ。

つまり、彼にはレベル酔いなどなく、だだ、今の彼は、先を急ぐあまり、彼達を気遣うことを忘れていただけだ。

「ソフィアは実化を解いていいぞ、アレクシスは俺の影に潛ってろ」

「いいのですか?」

彼は後ろを振り返らず、しでも前に、前に進もうとしていた。そんな彼の姿を見たら余計に休み辛くなってまった。

「ああ、俺はもうし進んでから休む。夜営はゴーレム達を見張りに付けるから気にするな」

「では、失禮します」

もうしで休む、と聞き、ソフィアはし気が楽になり、休むために実化を解いた。アレクシスもクレアシオンの影に潛り、休憩をとる。

その後も、彼は順調に進んだが、三階層に踏みり、三階層の中盤辺りに差し掛かった時、異変が起きた。

「っ!?予定変更。ここの階層で今日は夜営。明日は九階層前で夜営することにする」

突如、クレアシオンが立ち止まり、予定変更を告げた。予想外の事が起きたのだ。異変に気がついたソフィアが実化を解き、彼に訪ねる。

「どうしたのですか?」

「九階層でゴーレムが五同時に消えた」

「あのゴーレム達がですか!?……って!?九階層ですか、ダンジョンボスの前の階層ですね!?」

彼がカウントしていたのはゴーレムが制圧したダンジョンの階層のことだった。ゴーレム達はクレアシオン達が三階層を攻略している間に、中ボスと対峙していたのだ。

そこには、あわよくば、ゴーレム達でダンジョンボスまで倒そう、というクレアシオンの意図が見え隠れしている。

彼の答えに彼は驚きを隠せないでいたが、瞬時に切り替え、九階層の報を集めた。

マップ上では、一階層丸々、一つの巨大な部屋になっており、その真ん中には大きな敵対反応が一つだけ有った。

部屋の外にはゴーレム數の反応があり、五を殘し、撤退を開始していた。撤退するときにもまた、ゴーレムが倒されていたのか、他の階層にいたゴーレムも合わせて九にまで減っていたのだ。

部屋の外に殘るゴーレム以外はこの階層に集まり始めている。

ソフィアの【叡知】で調べた報ではこのダンジョンの中ボスはBランクの魔であるミノタウロスだった。

それに比べ、クレアシオンの魔によって作られたゴーレム達はCランク上位程度だった。だが、単純な力で負けていてもBランクのミノタウロスに蹴散らされるほど、弱くはない。

戦闘技等を考慮すると、ゴーレム達はBランクの魔に匹敵するはずだ。二でも居ればミノタウロスを余裕で倒せるはずだった。

これは何か異常が起こったのだろう。ダンジョンに邪気が溢れていることから、中ボスも、ダンジョンボスも全く違う魔れ替わっている可能もある。

ありがとうございました。

引っ越しして、一人暮らし始めました。慣れない事ばかりで、4月から新しい生活が……。

出來るだけ頑張りますが、ペースが落ちるかも知れません。

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