《職業魔王にジョブチェンジ~それでも俺は天使です~》キャンディ・ポリス〜対価~

この閑話、思ったより長くなりそうなので、中編?にしました。

男は頭の上にあるを指で弾いて笑い、

「悪魔だなんて人聞きが悪い。……俺は天使だぞ?」

そう言いながら、男は、ジンに背を向け、半円狀に囲みながら銃口を向ける強盜達に向かってゆっくりと歩き始めた。

その男は、サブマシンガンの銃口が向けられているにもかかわらず、特に気負った様子を見せない。

「……誰だ?テメーはどっから來た?」

強盜のリーダーらしき男が低い聲で、急に現れた男に誰何する。その聲で、混していた強盜たちは幾分、平靜を取り戻したようだ。ジャキッと狙いが定められた。

「……おい、なんでもするといったな?」

だが、男は聞こえないかのように振る舞い、ジンに再度尋ねた。

「する!!ボクに出來る事なら何でもする!!だから――」

「――ならば、ならば、我は甘味を所する。貴様の最も味とじる甘味を我に捧げよ!!」

まだ春先とは言え、長袖を著るとし暑い時期だと言うのに男はを隠すように黒い手袋をして、ロングコートにを包み素が一切見えない。

「どうした?」

「え?」

そんな男が仰々しく、両手を掲げ、お菓子を要求する大の大人にジンは呆気にとられていた。何度も念押しをするものだから、命や魂でも取られるのかと思っていたのに甘いものをよこせというのだ。拍子抜けもいいところだった。

だから、ぐりんっと顔だけ振り返る男にジンはつい聞き返してしまった。

「え、じゃないだろ?お前が味しいと思う菓子はなんだ?」

「マ、ママの作ったチェリーパイ……」

「旨いか?」

「お、味しいよ!」

ジンは元気よく答えた。なぜか、この怪しい男と話していると、心が落ち著いてくる。任せておけば、大丈夫だと、そんな安心が有った。

それとも、この事件に巻き込まれるまで當たり前だった、外で遊んでいると、母親に呼ばれ、家にった瞬間、鼻腔をくすぐる甘ったるく香ばしい生地の焼ける匂い、まだかまだかとパイを切り分ける母親を催促し、皿に乗せられたパイをフォークで刺して口一杯に頬張る。

あわてて食べたせいでに詰まらせ、咳き込み、母親に渡された牛を笑われながら飲み干し、しょうがない子ね、と口を拭われる。

そんな當たり前だった『日常』の風景を思い出したのか、今にも泣きそうだった年に笑顔が戻っていた。

ジンの言葉に男は満足そうに頷き、

「ならば、我、クレアシオン=ゼーレ=シュヴァーレンは契約に従い、力を執行する」

聲を張り上げた。

「ヒーロー気取りが!!調子に乗るなよ!!」

無視をされて怒ったのであろう銀行強盜のリーダーの小銃がクレアシオンに向けて火を吹いた。鳴り響く銃聲、恐怖にぶ人質達、それらを聞きながらも強盜のリーダーは騒ぐ人質を黙らせようと天井に向けて威嚇撃をしようとした。

銀行強盜として、このまま訳のわからない男に好き勝手されるのは面白くなかった。

好き勝手させているとせっかく恐怖で従わせている人質達が従わなくなってくる可能があったからだ。

強盜達も好き好んで死ぬわけがない。人質諸とも死ぬのは最後の手段だった。その為には人質には従って貰い確実に逃走する機會を手にしなければ為らなかった。

ここで異を見過ごす余裕はない。それに、人質に対する見せしめに調度いいとも思った。俺達は殺すことに一切、躊躇はない、と。

だが、上げようとした腕は途中できを止めることになった。

「なっ!?」

撃ったれたはずの男は死んでいなかったのだ。それどころか、ゆっくりとゆっくりとこちらに向かって歩いて來るではないか。

「こんなので殺せるわけないだろ?」

そう言ってクレアシオンは右手人差し指と中指の間に挾まっている弾丸を後ろに指で弾いた。

甲高い金屬音が鳴り響き、クルクルと回転して落ちる弾丸が酷くゆっくりにじられる。この銀行の中にいる人間は開いた口が塞がらなかった。誰もがクレアシオンが脳天をぶち抜かれる景を幻視していたからだ。

「う、撃て!!殺せ!!アイツをこれ以上近づかせるな!!」

ゆっくりと変わらずに歩いてくる男に半狂になりながらもなんとか指示を出す。その指示に従い銀行強盜たちは訓練された兵士のように淀みなく一斉にサブマシンガンを構え、引き金を引く。ジンの母親はクレアシオンの後ろの我が子が巻き込まれ、ぶが、全ての音がマシンガンの駆音に飲まれた。

「どうやったか知らねぇが、これで……」

リーダーが手を上げると、鳴り響いていたガトリング音はやみ、銃口から靜かに煙が上がる。

サブマシンガンによる集中砲火。萬が一にも逃げ出せないように、弾幕を張り、その景を見た者たちは、誰もが見るも無殘な塊にり果ててしまっただろう、と思っていた。

だが、言葉が出なかった。

「……どうなってやがる?」

やっと絞り出した言葉がこれだった。銀行強盜たちは見ている景をれられずにいた。否、誰ひとりとして、目の前の景を疑った。それほどまでの異常が起こっていたのだ。

「レディース&ジェントルマン!!紳士淑子からご老人の皆様方!!これより、他ではお目にかかれないショーをご覧にれましょう!!」

無傷のクレアシオンが両手を掲げ、注目を集めてから、惚れ惚れするような、一禮を魅せた。だが、そこに驚いたのではない。無數の弾丸が彼を中心に衛星のように軌道を描いて廻っていたからだ。周囲には一発も著弾した跡が見られない。

「え……?」

何が起きたか分からず、呆然としている我が子を見つけ、ジンの母親は、その場にへたりこんでしまった。

クレアシオンは兇悪な笑みを浮かべながら顔を上げ、どこからか取り出した幾何學模様の描かれた仮面をつけた。

「さあ、【傲慢な道化師】によるショーの始まりだ!!――死んでる暇はないぞ!!」

そういい彼が指を鳴らすと大量出で今にも息絶えそうだった怪我人の傷が塞がり、土だった顔は、の気を取り戻し、冷えっきていたは溫もりを取り戻した。

その奇跡――銀行強盜たちにとっては悪夢のような景に彼らが怯み、一歩また一歩、と無意識に下がり出すと、クレアシオンは大きく一歩踏み出し、仮面をずらした。

「――さあ、の対価を貰おうか?」

仮面の隙間からは、悪魔のような笑顔が覗いていた――――

お菓子一つでく天使(自稱)!

悪魔のような天使(自稱)の笑。【傲慢な道化師】によるショーとは?何を企んでいるのか?銀行強盜たちのトラウマ待ったなし!

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