図書室らしきところに著いた。どこの世界もルールは同じで、図書室は軽い會話、ページをめくる音、本を探す時の足音のみが聞こえてくる。

俺は左腕の痛みから來る聲を噛み殺し、聖らしき人を探す。周りからの視線が気になるが、今は無視だ。確かに俺の服裝は、この學園の制服ではない。

まずは醫療関係の本棚の辺りを探した。居ない。

次に神職関係の本棚の辺りを探した。しかし居ない。

その次に大衆文學の本棚の辺りを探した。でも居ない。

ダメ元で戦関係の本棚の辺りを探した。やっぱり居ない。

最後に魔法関係の本棚の辺りを探した。だが居なかった。

「はぁ……聖って呼ばれている人はどこに居るんだろう………」

その後どう思ったのか、俺は能小説の雰囲気を漂わせた本棚辺りに行ってみることにした。

「きゃっ」

「ッ、ごめん……ッ………」

本棚の周辺を歩いていると、よそ見をしていた所為で人とぶつかってしまった。ぶつかった衝撃で、左腕の痛みが強く襲いかかってきた。その痛みで俺は座り込んでしまった。

「こ、こちらこそすみません」

俺とぶつかったのは、キリカと同じくらいの歳の金髪のだった。型は……うん、キリカよりはスタイルは良いかな？そのの橫には一冊の本が落ちていた。

「あの……その腕は大丈夫ですか？」

俺が癖で周囲を観察していた時、は話しかけてきた。

「え、ええ……ッ…ただの砕骨折…ッ………」

「ちょっと見せてもらえますか？」

がそう言うと、雰囲気が急に変わった。雰囲気的に逆らったら強手段を取られそうなので、俺は言われた通りに左の袖を肩まで上げる。骨を折られたた左腕の二の腕は黒ずんだ紫に変し、腫れていた。

「これがただの砕骨折って言うのですか？」

俺はそっぽを向く。今、俺が探しているのは聖であって、目の前にいるではない。

「聖と呼ばれている人を探している。その人に見せたら治してもらえると言われた」

「なら運がいいですね。その聖と呼ばれている人は私です」

こんな展開はありなのか？だって聖様だよ？こんな、能小説が置いてある本棚みたいな雰囲気を出している所だよ？普通はそんな所には來ないでしょ。

だがツッコミはれない。

「出來過ぎな偶然だな」

素っ気なく俺は言う。まだ本なのかどうか怪しい段階だから當たり前の反応だと俺は思う。

「偶然なんかではありません。これは我が主である神のお導きです。貴方はむしろ、聖に合わせてくれた神に謝すべきです」

「おお……なんか聖様っぽい」

「むぅ……これでも私を聖だと思わないのですね……」

だって、それっぽいことなんか誰だって言えるもん。

「まあいいです。今、その腕を治しますね」

―我らの主である神イーナクよ　主の子らの傷を癒し給え　〈復元リストレーション〉―

し焼けるように痛いが、黒ずんだ紫の部分は腫れが治まり、のが元に戻った。しかし、何故がしだけ不快を覚えた。その不快は、治癒に対してのものではなく、どこかにある人間の何かをくすぐる様な不快だった。

見た目が治った腕をかしてみる。二の腕から痛みは來ない。骨がしっかりと筋のきをサポート出來ている事が確認できる。ただの回復系統の神なのだろうか？

と言うか、俺の勝手な偏見だったのか、魔素で出來ているこのに神聖ながって來ているのに全く拒絶反応が無かった。そして復元リストレーションって………

「本當に治った……ありがとう。ところで、やっと聖様だと認識は出來たのだけれど、一つ質問がある。恩人に対して失禮だと思うが、この本の容について訊きた…い……」

俺は落ちていた本を拾ったが、丁度開いたページには大きく絵が描かれていた。その絵は、聖と思われるキャラクターが、教會に突撃して來たオークに的な意味で襲われそうになっているシーンだった。その挿絵から能小説だと俺は確信させられた。

その瞬間、聖と思われるの華奢な手が本に向かって飛んで來た。反的に俺の腕は本を持ちながら躱す。

「大丈夫だ、俺は人の趣味を否定しなっ⁉︎」

また華奢な手が本に向かって飛んで來る。見ると、聖と思われるの顔は赤くなっている。

「わ、分かった、返すから取り敢えず落ち著いてくれ」

俺は本を床にそっと置き、返卻する。はそれを自分の他の能小説だと思われる本に重ねると、無想に「付いて來なさい」と俺に言い、本を借りに行った。なんとなく服従したほうがいいと思ったので、俺は彼の後を歩いた。

図書室を出た後、俺は敷地にあるベンチで聖と思われるの隣に座らされた。

「…………他の人に言ったら……分かりますよね？」

「それよりまず、名前を確認したい。君はシャヌアと言う名前の聖か？」

「ええ、そうです。で、この本の事を他言したら――」

「勿論、言わない。だから、その殺気を仕舞ってくれ……そもそも、俺は他人の趣味には口出しはしないし、興味も無い。だから誰にも言わない。しかも最近來たから知り合いないし…………」

言ってて、不思議と自分の首が苦しかった。そして寂しい……

「そうですか。それなら良かったです。それにしてもどうして左の二の腕を砕骨折したのですか？」

安心したのか、聖シャヌアからは明るい雰囲気が漂っていた。

「合格した編試験の実技試験。ローサムって言う筋巨人の化けに蹴られた」

「ローサム先生⁉︎貴方、どうやってその人に勝ったの⁈」

やっぱり、編試験は難しいのか……これは後が面倒臭くなりそうだ……

「いや、勝ってない。二割の攻撃力をずっと木刀でけ流して、二の腕を蹴り砕かれた後に自分の武に毒屬の屬付與エンチャントであの化けの木の剣を壊した。でも留めを刺せなかった」

「留めを刺すって……それはもう殺し合いじゃ無いの…………」

「え？試験でしょ？ま、筆記は余裕だったな〜キリカの家の書庫で勉強した甲斐があった……」

「キリ……カ？ハハッ、私の訊き間違えかしら？今、キリちゃんの名前を呼び捨てで聞こえた気がするわ……」

急に聖シャヌアから殺気が溢れ出て來た。何か悪いことでも言ってしまっただろうか？

「あ、もうこんな時間じゃん！アトラを迎えに行かないと！それじゃ、直してくれてありがとう。これは禮みたいなものだけど」

俺は聖シャヌアに暇な時間に作ったクッキーを包裝したを境界スキマから取り出して投げ渡す。そして急足でその場から離れた。

―　―　―　―　―　―　―

「くっ、まだ訊きたいことが沢山ありましたのに……」

私はそう呟いて、キャッチした小布袋を開いてみました。中にはクッキーがいくつかってあり、鮮度は良い方です。私はし複雑な気持ちでしたが、そのクッキーを食べて見ると案外味しく、なぜか負けたじがしました。

「悔しいですけど味しいです………し妬ましいですね…………はっ、聖たるもの、その様なを抱いてはいけません！もっと、心に余裕を作りませんと！」