《召喚チート付きで異世界に飛ばされたので、とりあえず俺を転移させた神さまを召喚することにしました》第12話 フィンといっしょに
「……えっと」
フィンの言っている意味がよくわからない。
どういうことだろうか。
いや、わからないわけではない。
ただあまりに突然すぎて、頭が混しているだけだ。
「私、そろそろ獨り立ちしようと思っていたんです」
「獨り立ち……って言うと、この村から離れるのか」
「そうです。村を離れて、冒険者としてこの世界を見て回りたいんです」
「なるほど」
つまり、自分を俺の旅に同行させてくれと、そういうことだ。
というか鍛冶師じゃなくて冒険者なのか。
「フィンはまだ、獨り立ちにはし早いんじゃないか? ドワーフは獨り立ちが早いのか?」
フィンはどう見てもまだ十二歳かそこらに見える。
ドワーフの獨り立ちというのはそんなに早い年齢でするものなのだろうか。
それともこちらの世界ではそれくらいが普通なのか。
「ドワーフは十五歳になったら一人前として認められます。私は十六歳なので、もう村を出ていてもおかしくない年齢ですよ」
「えっ、フィンって十六歳だったのか……」
もうしいと思っていた。
やはりドワーフだから若く見えていたのか。
「やっぱり、ずっと年下だって思ってたんですね……。ドワーフは背が低いので仕方ないのかもしれないですけど……」
「悪い。気づかなかった」
「うぅ……。まあいいです……」
思わぬところでフィンを傷つけてしまった。
フィンはしいじけていたが、割とすぐに立ち直ったようだ。
よくあることなのかもしれない。
「父親にはもう話したのか?」
「はい、昨日の夜に。々言われましたが、なんとか納得してもらえました」
「そうか」
パパさんにも々と思うところはあっただろうが、娘の自立を優先したということなのだろう。
昨日フィンの鍛冶の腕はまだ未だからとか言っていたが、自立と鍛冶の腕はあまり関係がないのだろうか。
「ふむ」
フィンを連れて行くメリットとデメリットを考えてみる。
まずメリットは、これからもフィンと共にいられることだ。
フィンは可いし、いい子だ。
信用もできる。
この世界で生きてきたフィンになら、々とこの世界の常識を教えてもらうこともできるだろう。
さすがに異世界から來たことや、魔王を倒す使命を持っていることは話せないだろうが。
そもそも魔王を倒すとも限らないし。
だが、仲間がいるというのはそれだけで心強いものだ。
それはフィンも同じような気持ちなのだろう。
生活費の問題もある。
今更だが、プロメリウスに俺一人で放り出されて、元引きこもりの俺が日銭を稼いで生きていくことができるのだろうか。
その點、フィンならどこに行けばどういう仕事があるのか、最低限の知識は持っているだろう。
頼りになるはずだ。
俺が文字を読めないという問題も大きい。
フィンに頼めば、空いた時間を使って文字を教えてもらうこともできるだろう。
識字の問題は早めに解決しておくに越したことはない。
デメリットは、そもそも俺が誰かと一緒にいるということに慣れていないところか。
日本では四六時中誰かと一緒にいるなど、考えただけでのがよだつものだと思っていた。
その考えの底は今でも変わっていない気がする。
フィンの戦闘能力にも疑問が殘るところだ。
昨日はLv.6のテンタクルフラワーにやられていた。
テンタクルフラワーは比較的強い魔ではあるようだが、それはフィンが戦えたとしてもそこそこの強さでしかないということを示しているのではないか。
隠し事をしなければならなくなるだろうということも大きい。
親しい人への隠し事というのは、それだけで心的な負擔になりかねない。
チートや使命のことは抜きにして、異世界人ではないということは話してしまうのも手ではあるか。
それに、ここでフィンの同行を斷ってしまえば、もう二度とフィンに會えないような気がしてならない。
俺はこういう時の勘だけはいいという自負がある。
やはりフィンに來てもらったほうがいいか。
だが、そもそもの子と二人で旅なんて俺に耐えられるのだろうか。
俺だって健全な男だ。
貞ではあるが、間違いが起こらないとも限らない。
「…………」
「……ど、どうでしょうか」
フィンは張した面持ちで、俺のことを見つめている。
「いくつか確認したいことがある」
「はい。なんでしょうか……?」
「一日この村で過ごしてわかったが、俺はこの世界の常識に疎いようだ。俺と一緒に行くとなると、フィンに々と常識のようなことを聞いたり、フィンに迷をかけてしまうこともあると思う」
「それくらい全然へっちゃらです。ちゃんとソーマさんの力になりますよ!」
俺の言葉に対して、フィンはとてもやる気だった。
ありがたいことだ。
「それと、フィンの戦闘能力はどの程度なんだ? 昨日はテンタクルフラワーにやられていたが、この世界で旅をできるほどの強さはあるのか?」
「そうですね、そこを突かれると弱いんですけど……。私の武は槌つちですから、ああいった素早くて細い魔には弱いんです……。でも、この森の中ならだいたいの魔は狩れると思います」
「それはすごいな」
だいたいの魔は狩れるのか。
それなら戦力としては問題ないか。
というか、あれ。
むしろ普通に俺の方が弱いのでは……。
まあ俺も鍛えればなんとかなるだろう。
そのうちガチャからいい裝備品も出てくるだろうし。
「あと、プロメリウスにはどんな仕事があるのか教えてほしい。稼ぐと言っても、どういう手段があるのか、どういった制度なのかもよくわかっていないんだ」
「大丈夫です。私に任せてください。いざとなったら、私がソーマさんを養いますから!」
「いや、さすがにそれは……」
ダメだろう。
ヒモになるのはマズイ。
引きこもりになってしまう。
まあ召喚チートがあるし、最悪召喚したを売るだけでもなんとかなるはずだ。あまりやりたくはないが。
問題なのは、召喚で出てくるものが大木の棒だというところか。
ガチャはいつになったら本気を出してくれるのだろうか。
「……わかった。俺と一緒に來てくれるか、フィン?」
「っ! はっ、はい!!」
俺がそう言うと、フィンは嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。
綺麗な笑顔だった。
それから、フィンの荷をまとめるのを手伝う。
フィンの荷は案外ない。
日用雑貨類はプロメリウスで揃えるつもりなのだという。
そこそこ貯金もあるらしいので、萬が一のときはしお世話になるかもしれないと言っておいた。
「それじゃあ、そろそろ出発しましょう」
「うん」
「そうだな」
パパさんの持っていく武類の積み込みも終わったので、いよいよプロメリウスに出発することになった。
パパさんは、俺に何も言ってこなかった。
積もる話はプロメリウスに著いてからにするつもりらしい。
村のり口近くには、ここに住む村人たちが待機していた。
もちろん全員ドワーフだ。
フィンよりもだいぶ小さい子どもを連れている者もいる。
とはいえ、さすがに村人の全員が行くわけでもないようだ。
村全の三分の一といったところか。
「よし。今回の分は全員揃ったな。それでは出発する」
村長らしき男が聲を上げると、それぞれの馬車がき始める。
「それでは行きましょうか」
「うん」
「ああ」
パパさんが手綱を引くと、俺たちの乗る馬車もゆっくりとき始める。
プロメリウスへの遠出が始まった。
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